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RSSフィード ホーリーメイデンズ2
   

日時: 2014/09/07 23:37
名前: 流離太

前作、ホーリーメイデンズの続編です。
アヤカシを退治する魔法少女なお話です。
性転換要素がありますので、苦手な人はご注意を。



第壱夜「模造された少女(7)」 ( No.7 )
   
日時: 2014/09/07 23:46
名前: 流離太

 それから数分後。メイデンズが立ち去った場所に、姿を現す者がいた。
 切り揃えられた前髪の間からおでこを覗かせる眼鏡少女―― 氷央だ。

「へぇ……、やるじゃない。作戦は半年前にこっくりを倒した時の応用だけど、チームワークは比べ物にならないわ」

 眼鏡をくいっとずり上げ、先程まで繰り広げられていた戦いの感想を述べる。
 そんな氷央の胸元がもぞもぞと動き、胸元から、白い、掌大の生物が姿を現す。綿菓子のようなフワフワした毛に包まれたそれは、一言で表現するなら、羊のぬいぐるみのよう。

「きゃっきゃっきゃ! それでこそ食いでがあるってもんだじぇ! まぁ、当て馬を出しておいて正解だったかぁ?」

 下品な笑い声を発する羊似の生物の言動に、氷央は頷く。

「そうね。『彼ら』の性能がいかに優れていたとしても、用心に越したことはないわ。……まぁ、あいつには悪いことをしたわね。パーフェクトに仕事をこなすためとはいえ」
「まぁ、そう気に病むなって! 使えないアヤカシを有効活用できてよかったじゃねーかよ! 案外、あいつも地獄で感謝してるかもしれないじぇ? きーっひっひっひ!」

 氷月の言葉を受け、羊似の生物は嘲笑を上げる。
 すぐ近くで、氷央らの言う「あいつ」が聞き耳を立てているなど知らず。

「―― どういう意味だよ……っ」

 電柱の影から、直径一m程の円盤が姿を現す。「合わせ鏡の悪魔」だ。その体には、さっきメイデンズに受けた傷が無数についている。

「あんれま! 生きてたんだオメェ!」
「てっきり、死んだかと思ってた」

 氷央は、驚いたような声を発しながら、決して姿を崩すことがない氷柱花のように、微塵も表情を変えない。

「うるさい!! そんなことはどうでもいいんだよ!! それより、今の話はどういうことだっ!! ボクちゃんが当て馬だったってっ!?」

 合わせ鏡の悪魔は、体をわなわなと震わせ、いきりたつ。その姿は、燃え盛るフライパンのよう。
 対し、氷央はサラリと言う。

「ええ、そうよ。あなたはメイデンズの力量を調べるための捨て駒だったの。それくらい、普通にわかるでしょ? あなた一人程度が倒せる相手に、大蛇が封印されるはずないわ」
「んな……っ?!」

 合わせ鏡の悪魔は、目を皿のようにまん丸く見開く。まさか、ここまであっさり戦力外通告を言い渡されるとは、夢にも思わなかっただろう。
 そんな合わせ鏡の悪魔の気持ちなどそ知らぬ顔をして、氷央は背中を向ける。

「……というわけで、あなたにはもう用はないから。あとはどうぞ、好きな所で暮らして、好きなように人間を襲えばいいわ。願わくば、メイデンズに狩られないように祈っててあげる」

 スタスタと、用が済んだとばかりに、氷央は歩いていく。
 だが、合わせ鏡の悪魔は、これで終わりにする気などない。いや、これでは気持ちが治まらなかった。

「―― うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 さっきの戦いで変形した円盤状となり、合わせ鏡の悪魔は飛び掛る。そのまま氷央の細いうなじ目掛けて一直線に。
 ……だが、合わせ鏡の悪魔の思惑が叶うことはなかった。

「ギャッ……?!」

 何か鋭い衝撃を食らったという記憶しかない。気づいたら、地面に墜落し、雪の中で仰向けになって倒れていた。
 そんな合わせ鏡の悪魔の顔面を、氷央は思い切り踏みつける。

「モゲッ!?」

 黒いストッキングに包まれた脚線美が外気に晒されるのも構わず、氷央は革靴の底を、合わせ鏡の悪魔の顔面へと押し付ける。

「……物分りの悪い馬鹿だな。そんな体で、僕に勝てるわけねぇだろ?」

 まるで、水晶で出来た刃の切っ先を思わせる目つきで、氷央は合わせ鏡の悪魔を見下ろす。

「せめて同じ十二神将として、命だけは助けてあげようと思ったんだけどなぁ……とても残念だよ、合わせ鏡の悪魔」

 そう言うや否や。氷央は爪先を合わせ鏡の悪魔の縁にひっかけ、空中へと蹴り上げる。

「―― うっぎゃあああああああああああああ!!!」

 悲鳴を上げながら上空へと吹っ飛ぶ合わせ鏡の悪魔。
 その真下で、氷央は虚空へと手をかざす。すると、何処から現れたのか、ひび割れた黒金色の横笛「カナボー・フルート」がその手に握られる。

「……行くよ、饕餮(とうてつ)」

 氷央は吹き口に、紅をさしたように赤い唇を付け、息を吹き込む。

 ―― 古(いにしへ)丹羽が大江山。
 鬼ども多く篭もり居て。
 都へ出でて人を食(は)み。
 金(こがね)銀(しろがね)盗みゆく――

 虚空に染みこんでいく笛の音につられるよう、蒼白い鬼火が、一つ、二つと辺りに灯っていく。間もなく、鬼火は雲霞のように、氷央の体をスッポリ包み込む。
 炎に焙られたセーラー服は藍色の鎧へと変化を遂げていき、肩部と胸部を覆う。袖部分は着物のように広がっていき、スカートの後ろはコートのようにかかとまで長く伸びていく。華奢な足を包むストッキングは厚さを増してズボン状の下穿きとなり、焦げ茶色の革靴は将校が履くような軍靴へ。
 そして、変化は服だけに留まらない。背中の辺りまで伸びた柔らかな黒髪が、炎に焼かれていくように、襟足の辺りまで短くなっていく。同時に体は、相変わらず細身だけれども、筋肉の締まった少年のモノとなる。薄桃色だった爪は深い青へと染まっていき、突き刺さりそうなほど長く尖る。
 最後に、二本角の夜叉を髣髴とさせる面が目元を覆い隠し―― 氷央は、蒼き炎のようなマフラーをたなびかせる「鬼」へと変化を遂げる。

「……滅ぼせ、いと蒼き地獄の炎よ―― 鉢特摩(はどま)」

 氷央が言霊を唱えた瞬間。地表から、昇竜のごとき火柱が立ち上る。それは、合わせ鏡の悪魔の小さな体をあっという間に飲み込もうとする。

「ひっ……ひぎぃいいいいいいいいい……ッ!!!」

 血走った一つ目をカッと見開き、迫ってくる炎を前に成す術もなく――合わせ鏡の悪魔は断末魔の雄叫びを上げた。
 ……やがて、それも聞こえなくなり、辺りは再び静寂に包まれる。  氷央は変身を解くと、踵を返し、その場を後にする。
 いつから降り出したのだろうか。粉雪がしんしんと、氷央の足跡を覆い隠していった。


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