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RSSフィード ホーリーメイデンズ2
   

日時: 2014/09/07 23:37
名前: 流離太

前作、ホーリーメイデンズの続編です。
アヤカシを退治する魔法少女なお話です。
性転換要素がありますので、苦手な人はご注意を。



第壱夜「模造された少女(2)」 ( No.2 )
   
日時: 2014/09/07 23:41
名前: 流離太

 二○××年、十二月の旭川市。北海道の北部にあるこの街は、寒さも上位に位置する。今年もその名に恥じず、街や川、草木は白一色に塗り替えられている。
 旭小学校の通学路には、まだ七時にもかかわらず、大小さまざまな足跡が雪面に刻まれている。そんな通学路の途中に、花田中学校二年生「碓氷冬雪」の家はあった。

「冬雪ぃ!! は~や~く~っ!! このまま外に突っ立ってたら、あたしら冬まつりの氷像になっちゃぅ~~!!」

 冬雪の家の前で、拡声器を使ったかのような大声を上げるポニーテール少女。冬雪の幼馴染にしてクラスメイト、「坂田夏月(さかた なつき)」である。
 身を包む紺色のセーラー服から覗く手足は、寒さのせいで真っ赤になっている。

「ひょ、ひょっほはっふぇ……(ちょ、ちょっと待ってぇ……)」

 家の中から、マヌケな返事が返ってくる。冬雪だ。恐らく、口の中に食べ物を一杯に詰め込んでいるのだろう。

「んもぉ!! とか言って、絶対ご飯お替りしてるよっ!! 丼で五杯くらいっ!!」

 夏月は両手にホットミルクのように白い息を吹きかける。細い指先が、じんわり温まっていく。
 いくらコートを着ていても、この寒さ。息を吸い込めば、体の芯まで凍りつきそう。
 夏月の隣で、背の高いショートカットの少女が溜息を吐く。夏月のクラスメイトの「卜部秋綺(うらべ あき)」。釣り目気味だが涼しげな目元、コートの胸部分を押し上げる大きな双丘とは対照的にすぐ折れてしまいそうなほど華奢な腰、スカートからスラリと伸びた長い脚など、どこか近寄りがたい雰囲気が、却ってその魅力を引き出している。

「はぁ……あいつはいつになっても、食欲だけは変わらないな。」

 肩をすくめ、呆れたような視線を玄関に送る秋綺。夏月とは対照的に、震え一つ見えない。

「……ねぇ、なんであんたはこの寒さで平気なわけ?」

 こしこしと、かじかんだ両手を擦り合わせながら、夏月は秋綺にジト目を向ける。

「お前ら道産子は軟弱なんだよ。ちょっと寒かったら暖房やストーブ点けるだろ。関東だとな、コタツひとつで冬乗り越えるんだぞ? 隙間風が入ってくる部屋でな」

 そういえば、秋綺は埼玉から転校してきたんだった。いや、それよりも今――

「……あんた、今、北海道の全住民に喧嘩売らなかった?」

 夏月は青筋を立て、秋綺を睨みつける。秋綺は少しもひるまず、口を開く。

「事実を言っただけだろ? それくらいのことで、一々喧嘩売ってくるんじゃねぇ。本当に猪みたいなやつだな。冬眠でもしてろ」

 瞬間、

 ―― ぷっちん。

 夏月の堪忍袋の尾が、音を立てて切れる。

「ぬぁんだってぇええええ!!! もう一回言ってみなさいよ、秋綺ぃいいい!!!」

 夏月は、秋綺の胸倉を勢いよく掴む。ゴゴゴゴゴという音を上げ、夏月の心は燃え上がる。気温は十度くらい上昇し、周囲の雪が溶け出す。
 熱血リーダータイプの夏月とクールな一匹狼の秋綺。二人がぶつかり合うのは、必然かもしれない。
 秋綺は、面倒くさいと言わんばかりに顔を背け、吐き捨てる。

「はぁ……碓氷が遅いからって、俺に当たるんじゃねぇよ」
「うぐ……っ!!」

 秋綺に、居合い抜きのごとく切り捨てられ、夏月は口をつぐむ。
 冬雪のせいで苛立っていた上に、この寒さ。確かに、八つ当たりじゃないと言えば嘘になる。

 ―― けど、

「ったく、不毛なことしてるんじゃねぇよ。朝のさわやかな気分が台無しだろが」
「む、むきぃぃいいぃいいいいいいい……っっ!!」

 ―― ここで認めるのは、なんか悔しいっっ!!

 顔を真っ赤にし、夏月は両拳をぎゅっと握り締める。
 と、その時。

「うふふふふ。とか言って……本当はホッカイロをどこかに隠してるんじゃないですか?」

 春風のように柔和な笑顔で、秋綺の肩を抱く少女。長い髪をひとつに束ねた三つ網が、微かに揺れている。同じく冬雪のクラスメイト「渡辺春花(わたなべ はるか)」である。

「たとえば……こことか?」

 ふにっと、秋綺の豊かな胸を鷲掴みにする春花。

「んぁ……っ?! ―― なっ、なにしやがるっっ?!」

 秋綺は真っ赤になって春花の魔手から逃れようとしている。が、万力のように胸をガッチリ掴まれ、逃げられない。

「あれぇ? ありませんねぇ……それとも、ここですか? あ、そちらですかね?」
「は、はひぃ――……ぷっ、あははははっ!! ひゃ、ひゃめろ渡辺ぇ!! くぅっ、はぁっ、ひゅひひひひぃっ!!」

 春花のこちょばし地獄! 効果は抜群だ! というナレーションが思い浮かぶほど、雪の中で転がりまわる秋綺は苦しそう。
 夏月の顔に苦笑が浮かぶ。確か、春花はお嬢様キャラのはずだったが……最近では、すっかりネタ要員になってしまっている。

「ひぃ……ふぁ、あはは―― けほっ! けほっ! はぁ……はぁ……―― も、もぅ……らめぇ……」

 春花の攻撃が終わり、秋綺は、ぐったりと雪上に寝転ぶ。目じりに浮かぶ涙は、笑いすぎによるものなのか? 悔しさなのか?

「秋綺ちゃんのは主題のすり替えです。夏月ちゃんは確かに苛立っていましたが、北海道を馬鹿にしたのは秋綺ちゃんですよ? そこらへん―― わかってますよね?」

 にっこりと微笑む春花。穏やかな笑顔の下では、どす黒いなにかが渦巻いている。
 秋綺は、力なくうなずく。

「は、はひぃ……わ、わかりましたぁ……はるか、しゃまぁ……」
「調教された!?」

 なんだか、少し―― というか、かなり悪い事をしたかも。今度、秋綺の好きな塩煎餅を奢ってあげよう。だから、そのままの君でいて。
 丁度その時。背中まである長い髪の頂にリボンをとめた眼鏡っ娘が、玄関から顔を出す。冬雪だ。満腹らしく、この上なく幸せな表情をしている。

「ふぅ……食べた食べたぁ。―― あれ? 秋綺、なんでそんなとこで寝てるの? 風邪引いちゃうよ」

 ぽぇっとしたマヌケ面を傾げ、冬雪は疑問を投げかける。
 元凶である春花は、ニコニコと笑い、すっとぼけている。

「……はぁ」

 夏月は、大きな溜息を吐く。
 相変わらず、濃い朝だ。今日一日が思いやられる。
 そんな夏月の気持ちを、冬雪は全く察していないよう。相変わらず、いじめたくなるようなオーラを放っている。
 夏月は、さらに溜息を追加する。吐く息は、瞬く間にダイヤモンドダストへと変わる。寒空の下でキラキラと舞い、包み込むような朝の光に溶けていった。


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