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RSSフィード 六角形の神サマ
   

日時: 2020/02/29 23:33
名前: 海月

神様と参拝者。
おじいちゃんと孫。
メダロットとメダロッター。

どれも、二人を結ぶ言葉達。





◎登場人物
・村崎醤(ムラサキショウ)
御守(ミモリ)高校二年D組。主人公。
一人いるだけで賑やかで、多分不憫の星の下に生まれてきた少年。
ロボトル経験は浅いが、その知識・覚悟で勝ち星を取りに行く。

・カグラ
醤の愛機。KBT型メタルビートル。
掴み所のない性格で、みんなを我が子や孫同然に可愛がるおじいちゃん。
御守神社に祀られた道祖神で、『虫の知らせ』を頼りに困っている者を助けに行く。

・波花梓音(ナミハナシオン)
御守高校二年D組。醤のクラスメート。
御守町のメダロット博士の娘で、醤とは幼稚園から一緒だが話した事は少ない。第陸話までは。
カグラを祖父として慕い、傍にいるためなら強行手段に出るドライバー娘。

・マリア
梓音の愛機。NASβ型クリムゾンナース。
思い立ったが吉日の性格で、動物に例えると”猪”。
捨てられたメダロットだが、カグラに救われ、御守神社で一時期共に暮らした。

・佐藤甘太(サトウカンタ)
御守高校二年D組。醤の友人その一。
佐藤商店の息子で、サディスティックな性格。
座右の銘は、『一円を笑った者は一円で泣かす』。

・ジー
甘太の愛機。CMO型ナチュラルカラー。
佐藤商店の万引きGメン。
趣味は覗き。自分がカメレオンである事を完全に棚に上げている。

・グルコ
甘太の母の愛機。MDM型メダメイド。
佐藤商店の姉御。甘太の育ての姉でもある。
恐らく、今作で男前ランキング三本指に入るであろう乙女。

・尾根翠(ビネスイ)
御守高校二年D組。醤の友人その二。
陸上部のエースで、正真正銘良い人。
爽やかだが、走って解決出来ることは走って解決しようとする脳筋。

・ハリップ
翠の愛機。RBT型ラビウォンバット。
翠の足の速さに誇りを持っている。
時間の無駄が大嫌いで常に動き回っており、多分マグロと一緒で動かないと死ぬ系男子。

・蜂矢蜜希(ハチヤミツキ)
御守高校二年D組。醤のクラスメート……と友人の中間ぐらい。
陸上部のマネージャーで、翠の彼女。
恐らく、今作で一番女の子らしい女の子。……だったら良かったが、作る料理はどの毒よりもポイズン。

・リボン
蜜希の愛機。SLR型セーラーマルチ。
見ていて安心できる女の子、その二。
趣味は、恋バナとお菓子作り。何故、それをマスターに伝授しないのか。

・古戸宗輔(フルドソウスケ)
鎖界高校二年三組。醤の小学校時代の友人。
ロボトル部門:バリバリ最強No.1。
頭脳部門:チンパンジー。

・ジェームズ
宗輔の愛機。NIN型ワイアーニンジャ。
身体は忍だが、心は西部のガンマン。
技は一号、力は二号、バトルする様・モンスター。

・村崎紀醤(ムラサキキショウ)
醤の父。
メダロット社に勤めており、村崎家には月に一度しか帰っていない。プチ単身赴任中。
好きなものは、メダロットとお祝い事。

・村崎ゆかり(ムラサキユカリ)
醤の母。
怒る姿は鬼神そのもの。
家族が危険な目にあったりいなくなったりする事を、何よりも嫌う。

・波花椒吾(ナミハナショウゴ)
梓音の父。御守町メダロット研究所所長。
町の人々からは親しみを込めて、『御守のメダロット博士』と呼ばれている。
心配性で、一人娘の梓音を気に掛けている。

・的間圭一(マトマケイイチ)
御守高校二年D組クラス担任。
着眼点がいつもずれている。
メダロットが好き。

・カーゴ
圭一の愛機。DOG型ブルースドッグ。
苦労が多い圭一を、優しく見守る事が多い。
必要時、ちゃんと自分の意見を言える子。

・タバスコ
どう見ても未来人です本当に(ry)な、白い衣装に身を包むゴーグル男。
メダロット強奪を生業とし、邪魔者は全て排除しようと試みても逆に排除される、多分醤と同じ星の出身者。
その実体は、秘密結社テクノポリス・御守神社周辺エリアリーダー。

・Mr.ジャム
メダロット協会公認レフェリー。ロボトルではジャッジ担当。
爽やかを通り越して暑苦しい。
いつも審判せずに性犯罪を起こす。

・Ms.マーガリン
メダロット協会公認レフェリー。ロボトルでは実況担当。
職務放棄する先輩(Mr.ジャムと読む)の代わりに、最終的なジャッジも兼ねている。
趣味は、『人の傷口に塩を練りこむ事』。





なるべく白字でネタバレ回避を心掛けております(震え声



六角形の神サマ 第拾玖話/右腕狩猟祭(後篇) ( No.19 )
   
日時: 2020/03/22 19:21
名前: 海月

『六角形の神サマ』 第拾玖話/右腕狩猟祭(後篇)





「『合意とみてよろしいかなあああ!?』」

 御守高校、廊下にて。知らぬ間に用意されていたスポットライトが、突如現れた二人組を照らす。
「みんなでニコニコ・ロボトルファイト!! メダロット協会公認レフェリーのジャッジ担当・Mr.ジャムと!」
『同じくレフェリー、ロボトルの実況担当・Ms.マーガリン! この戦いは、真剣ロボトルと認定されましたー♪』
 襟元の赤い蝶ネクタイが目立つレフェリー、Mr.ジャムとMs.マーガリンは、手を掲げ、高らかに宣言した。二人とは対照的に、二年D組のクラス担任・的間圭一(マトマケイイチ)は、メダロッチを構えながらも困惑し、対峙する少年に尋ねる。
「な、なぁ村崎?」
「ハイ先生!! 何でしょう!?」
 話し掛けられた少年・村崎醤(ムラサキショウ)は、水を得た魚の如く目を輝かせながら返答する。圭一は、怪訝そうに苦笑した。
「授業中もそれぐらい気持ちのいい返事が聞ければいいんだが、まぁそれは今置いておこう。先生な、村崎と話してたはずなんだけど、いつの間にロボトルの流れになったんだろう?」
「先生!! メダロッターたるもの、ロボトルをしないと!」
「うん、もっともなんだけど。先生としては、もうちょっと念願のパーツを手に入れた余韻に浸りたかったっていうか……何だろう? 至極真っ当な事を言うお前が、今物凄く怖い」
 圭一の愛機は、イヌ型メダロット・ブルースドッグ。両腕には、新品のKBTパーツ。先の戦いでリボルバーを失った醤から、完全にロックオンされていた。
「いやぁ流石は先生、お目が高い! ……リボルバーって、カッコイイですよねぇ……?」
「おーい、村崎~? 一瞬で目が濁った気がするぞ~? テストの時と同じ目になってるぞ~? それにな? リボルバーばっかり見てるけど、ヘッドキャノンも良いもんだぞ? ていうか、勝ったとしてもリボルバーじゃなくて余ってるヘッドキャノンをm」
「そりゃ難しいですよ」
 醤は濁った目を細め、口角を吊り上げる。
「真剣ロボトルでは、『壊したパーツ』から、『ランダム』でパーツを勝ち取る』んですから。……ねぇ、先生?」
 あっ、勝ったら絶対リボルバーぶん取る気だコイツ。圭一、そして傍らで傍観している醤の友人・佐藤甘太(サトウカンタ)と尾根翠(ビネスイ)の確信はシンクロした。Ms.マーガリンは拡声器を口に当て、意気揚々に喋る。
『ショウ選手!! ロボトル前から殺る気満々です!』
「アレ、気の所為かな? 今、漢字変換がおかしかった気がする」
 Ms.マーガリンの言葉に、圭一は首を傾げる。その間に、窓に手を掛け、ひょっこりとカグラが現れた。
「ショウではないか! 大事無いか?」
「カグラ! グッドタイミングだけど、どうした? わざわざ来るなんて珍しい」
「今しがた、『虫の知らせ』が届いたのだよ。はて、ここいらで困っておる者は……?」
「多分、お前の対戦相手だと思う」
「何だか訳わからん単語は良いとして村崎、それは先生の事か?」
 あっけらかんと答える醤に、圭一は最早乾いた笑いしか出てこない。甘太と翠は、『虫の知らせ』を飛ばす程困り果てている圭一に、内心同情した。軽々と廊下に降り立ち、カグラは圭一に挨拶した。
「お初にお目に掛かる。ワシの名はカグラ。孫のショウがいつも世話になり、かたじけない」
「これはこれは、御丁寧に……担任の的間です」
「ホントすいません、先生。リボルバー貰っちゃって」
「だから早いぞ! さっきから! 先生は不本意なんだ!!」
 理不尽な言動を放つ醤に、圭一は泣きそうになりながら訴えた。圭一と握手するカグラの右腕は、現在、ア・ブラーゲのパーツ・フェンシング。事情を知る者からしたら、見慣れない右腕はどこか痛々しい。
「そうだ! 室内なら……パーツ転送、ソッコー!」
 醤が思いついたようにメダロッチの画面を押すと、カグラの脚部が光に包まれ、サボテンナのパーツ・ソッコーが装着された。
「……やっと見つけた、リボルバーだ」
 醤は、そのままメダロッチを構え。
「絶っっっ対逃がさねえ……!!」
 鬼も裸足で逃げ出すような顔で笑った。『リボルバー絶対奪うマン』の完成である。周囲が青ざめる中、カグラだけは違った。
「ショウは大袈裟よのお」
 この温度差である。他にもう一人、こんなトチ狂った状況でも平気な人間がいた。
『それではっ、合意と見て……アレー? 先パーイ?』
 掛け声の途中で、Ms.マーガリンはいつの間にかいなくなった相方を探す。すると。
「キャーッ!!」
「イヤアアアア!! 入ってこないでぇ!!」
「いでっ!! いでででっ!? 何故っ、何故ボクらは理解し合えない!? 何故、すぐに『暴力』という悲しい手段を選ぶ!? だから、この世から戦争が無くならないんだ!! さあ、今こそ……!!」
 悲鳴の合間に聞こえてくるのは、わざとらしいまでの持論。Mr.ジャムは、両腕を広げ。

「『服』という虚構の殻を脱ぎ捨て、裸で抱き合おうじゃないか!!」

 更衣室で着替え中だった女子学生達に、生まれたままの姿を披露していたのであった。Ms.マーガリンによる通報で、駆けつけたセレクト隊員はすぐに連行する。
「違うんですよ、『抱き合う』ってそういう意味じゃ……え? 『裸がアウト』? ちょっと何言ってるかわからないですね。そもそも、オリンピックの始祖はみんな裸で……」
「……何でうちの学校は、次々と変質者が湧くんだ……?」
 Mr.ジャムと、楽しそうにハンカチを降るMs.マーガリンを見て、圭一は自分の職場のセキュリティを憂いた。言わずもがな、運動会におけるタバスコの一件もあるだろう。満足したらしいMs.マーガリンは、笑顔で拡声器を構える。
『気を取り直しまして、合意と見てよろしいかなー!?』
 決して、合意ではないだろう。今の今まで、この女は何を見ていたというのか? 漠然と考える圭一に、彼の愛機・ブルースドッグは慌てて声を掛ける。
「しっかりしてください、マスター!! 要は、ロボトルに勝てば良いんです! 頑張りましょう!」
「そ、そうだな……すまん、カーゴ」
 『カーゴ』と呼ばれたブルースドッグは、普段であれば決して圭一に意見しない。そんなカーゴの言葉は、圭一を鼓舞し、覚悟させるには充分の威力だった。俯いていた圭一は、顔を上げる。
「……よし、先生がただのメダロットコレクターではない所を見せてやる。行くぞ、村崎!」
 そんな圭一を見据え、醤は笑った。
「へっ、そう上手くいくかなぁ……?」
「この作品の主人公って誰だっけ?」
「俺に聞かないでくれ……」
 下衆な笑顔を浮かべる友人の姿に、甘太は尋ね、翠は目を逸らした。Ms.マーガリンは、双方のやり取りを全く気にする事無く、手を振りかざす。

『それではー、ロボトルゥゥゥ……ファイトオ!!』

 Ms.マーガリンが手を振り下ろした直後、先に動いたのはカーゴの方だった。
「カーゴ! リボルバー!」
「了解!」
「構うなカグラ! サブマシンガン!!」
「心得た!」
『右腕パーツ、ダメージポイント二十五』
 カーゴが放った二発のライフルが右腕に被弾するも、カグラは指示通り、カーゴの進行方向を銃撃する。
「!?」
『おおーっと!! 先手はカーゴが打ちましたがカグラ、物ともしていません! ガトリングの雨がカーゴを追うー!』
「くっ! カーゴ、サブマシンガン!」
 みすみすガトリングを浴びる訳に行かず、カーゴは足を踏み締め、逆方向に飛びながらマシンガンを撃った。
「カグラ! 後退!」
「あい、わかった!」
『まずは、お互い様子見といった所! 今回のフィールドは、この廊下か!? はたまた、教室かー!?』
 カグラの回避後、弾丸は廊下上で散らばる。圭一は、苦々しく笑った。
「……村崎、よく気付いたな」
 圭一の言葉を聞き、醤は少しだけ顔を上げる。
「はい、二脚は小回りが利きますから。折角車両に変えたのに、障害物が多い教室に飛び込まれたんじゃたまったもんじゃありません。言いましたよ、」
 醤は、不敵に笑い、ロボトル前の言葉を繰り返した。
「逃がしません」
 圭一は、長い溜め息をつき、天井を仰ぐ。
「正直、驚いたよ。頭の回転の早さが素晴らしい。担任としては、次のテストの点数が楽しみな所だが……村崎、やっぱり廊下でロボトルは駄目だったんじゃないか? 既に教室の扉が多分これ、変形して開かないんだけど」
「先生、大丈夫です! ナノマシンで復活しますんで!」
「ナノマシンが治すのは、メダロットだけだぞ? ナノマシンに学校の修理は、荷が重いんじゃないか? とりあえず、反省文は覚悟しとけよ?」
「リボルバーが手に入るなら何枚でも書きます、そんなもん!」
「お前とリボルバーに一体何があったんだあああ!? 何枚も書かれてたまるか!!」
 狂気的なリボルバーへの執着に、遂に圭一は聞いてしまった。ロボトルに敗北した事は明白だったが、例え返答が得られなくとも、聞かざるを得なかった。ロボトル後に対する現実逃避からか、圭一は無我夢中に指示を出す。
「カーゴ!! 両腕、一斉射!!」
「カグラ! 飛べ!!」
『飛んだアアアアア!! カーゴの銃撃回避! カグラは上空で目標を定めます!』
 直後、勢いよく車輪が回る音を聞いた。カーゴの銃弾を避け、カグラは助走をつけて飛び上がる。
「よし! ミサイル!!」
「心得た!」
 下方目掛けて飛んでいくミサイルは、一斉射撃により足を踏み締めていたカーゴを容易に捉えた。
「よっしゃあ!!」
『ミサイル命中ゥ!! クリティカルです!!』
 右腕を突き上げる醤を、甘太と翠は応援する事無く、ただ茫然と見ている。
「やっぱ強ぇなあ、二人共……」
「はは。本当にな」
 相手も場所も関係なく猛攻を仕掛ける醤に、翠からは苦笑しか出てこない。一度結んだ後、翠は口を開いた。
「……こんなに強くても、勝てなかったんだよな」
「……まーな」
 甘太は、祭りの夜を思い出す。きっと、隣にいる翠も思い出しているのだろう、と僅かに目を伏せた。古戸宗輔(フルドソウスケ)と愛機・ジェームズに圧倒的な力差を見せつけられ、二人が敗北する姿を上手く思い描けない。しかし。
「次は勝つだろ」
 一つの淀みも無く言い切った甘太に、翠は目を丸くする。それがどこか可笑しくて、翠は素直に笑った。
「ああ、そうだな」
 甘太も、翠も。目の前の友人が同じ相手に負ける姿の方が、想像もつかなかったのである。そんな、本人はというと。
「カグラぁ!! 正面にサブマシンガン全開!! わぁーっはははははははは!!」
『きっちり狙いを定め、煙に向かって全力射撃! 鬼です! ここに鬼がいます!』
 最早、勝ったつもりで容赦なく指示を出していた。紛れもなく鬼なのだろうが、醤も、Ms.マーガリンにだけは言われたくないだろう。吸いまれていく弾丸に、奥歯を噛み締めていた圭一だったが、意を決してメダロッチに吠えた。
「カーゴ!! 何も心配するな、こじ開けろォ!!」
「え、何を?」
 目が点になっている醤を余所に、ライフル音。そして、力任せに戸の開かれる音が響いた。
「えっ、先生まさか……!?」
 圭一の立場から考えても、予想だにしていなかった。低い笑い声が、耳をつく。
「減俸怖くてロボトルできるかあああ!! やるからには勝ぁつ!!」
『おぉーっと!! お見事、カーゴは教室に逃げ込みました! 形勢逆転なるかー!?』
 圭一の顔も、修羅に仕上がっていた。煙が晴れると、やはり廊下にカーゴの姿は無い。カグラは少し開いた戸に背を預け、銃撃を喰らわぬよう、慎重に教室を覗き込んだ。
「カーゴ!! ヘッドキャノン!!」
「おわっ!?」
 カグラが素早く首を引っ込めると、ライフルが壁にめり込んだ。煙が上がる弾丸からは、如何程の威力か伺える。
『カグラ、防戦一方です! 飛び込まず、一か八かの判定勝ちに賭けるか!? それとも、被弾覚悟で教室に飛び込むのかー!?』
 カーゴは現在、機能停止パーツが無い。このまま教室に飛び込めば、カグラは蜂の巣だろう。一息つき、醤に話し掛ける。
「ショウ。確認できたのは一瞬だが、どうやら机で防壁を作っているようだ」
「バリケードか、早いこって。隠れて攻撃されたんじゃ、たまったもんじゃねぇ。だったら……」
 目に強い光を宿し、醤は口角を上げた。
「崩すっきゃねぇよなあ……!?」
「うむ、それしかあるまいな」
 カグラは、落ち着ききった声で頷き、教室の戸に手を掛けた。
『これぞまさにロボトル!! カグラ、銃弾の海に飛び込みました! 狭い室内で車両がどこまで活躍できるのか、目が離せません!』
「来るぞ、カーゴ! サブマシンガン!!」
 手の位置より身を屈めて飛び込んだカグラは、それでも数発被弾した。
「くっ……!」
『頭パーツ、ダメージポイント十七』
「カグラ!! ミサイルで裏を吹き飛ばせ!」
「わかった!」
 放たれたミサイルは、バリケードの裏で爆ぜた。
「カーゴ!! 右に回り込め!!」
「了解!!」
 煙を上げながら、飛び出すカーゴ。既に右腕は黒ずんでおり、ただ体にぶら下がっていた。しかし、カーゴのサブマシンガンは、右側からカグラを完璧に捉えている。カグラの右腕は一瞬反応したが、何も行動せず、カーゴと同じパーツを向けた。
「「サブマシンガン!!」」
 醤と圭一の声が重なり、ガトリング同士がぶつかり合う。
『両者のサブマシンガン炸裂ウウウウウ!! 同じパーツだからなせる画ですね、圧巻です!!』
 無論、外れた銃弾は双方の装甲を削っていく。
『右腕パーツ、ダメージポイント五十一。左腕パーツ、ダメージポイント百。機能停止』
『カグラのサブマシンガン、機能停止! 一瞬の間が命取りとなったかー!?』
 カグラは音を立てて後退し、黒くなった左腕を押さえる。頭では理解しているはずなのに、この右腕は確かにライフルを撃とうとした。『何十年もリボルバーをつけていたから、無理もない』、と言う者もいるだろう。しかし、ただ自分のふがいなさに苦笑した。
「ショウは……凄いな」
 あんなに渇望しているリボルバーの頭文字も、口から出なかった。普段何かと熱くとも、ロボトルでは冷静な判断も可能なため、ある程度頭を切り替えているのだろうが。カグラは、リボルバーを失った事実を、醤が痛い程理解している事を、指示をもって思い知らされた。
「うるせぇ!! オレ褒めてる暇あんなら集中しろ!!」
「…………面目ない」
 左腕の機能停止についてしっかり怒っていた醤に、カグラは深々と頭を垂れた。カグラを叱った後、醤は頭の中で作戦を組み立てていく。ここが、正念場だ。自分に言い聞かせ、メダロッチを構えた。
「カグラ!! 何としても壁壊すぞ!」
「……心得た!」
 カグラは、真っ直ぐ前へと駆け出した。圭一は、カーゴに指示を出す。
「カーゴ!! ミサイルだけ気を付けろ! 後は、近付かない限り当たらない! サブマシンガン!!」
「わかりました!」
 カグラに残された行動は、二回分のミサイルと、ソード攻撃。言葉通り『付け焼刃』のパーツに、圭一は脅威を感じていなかった。
『右腕パーツ、ダメージポイント八十四』
「カグラァ!! 床にぶっ刺せ!」
 カグラは身を屈め、床にフェンシングを突き立てる。
「なっ!?」
『カグラ、フェンシングを床に突き刺したァ!! 一体全体、何をしでかそうというのかー!?』
「ぶっ壊せえええええええ!!」
「っおおおおおおおお!!」
 フェンシングを軸に、カグラは体を捻り、机のバリケードを横から蹴散らした。
『カグラの回し蹴りでバリケード大破アアアアア!! カーゴは全身ガラ空きです!!』
 バリケードが無くなった今、カグラとカーゴの目が合う。液晶の奥にあるカーゴの目は、殊更丸かった。
「いけエエ!! ミサイルゥゥゥ!!」
 醤の指示の直後、爆風がカーゴを包み込む。音を立てて、カブトメダルが転がった。

『勝者!! ショウ選手ゥ!!』

 Ms.マーガリンは高らかに宣言し、しゃがんでカグラの左腕を持ち上げた。床からフェンシングを引き抜くと、カグラの体はナノマシンにより回復していく。
「いやぁー!! 見事なまでに教室ボロボロですね、先生!」
「もれなく先生の心もボロボロだけどな……」
 机や椅子が散乱する教室に入る、醤と圭一。珍しく、醤の笑顔もまるで快晴のようである。圭一は、拾ったカーゴのメダルをメダロッチに入れた後、醤に確認した。
「…………なあ、村崎。今からでも遅くないよ、ヘッドキャn」
「リボルバー一択で」
「さっきの威力、見ただろ? 良いぞー、ヘッドk」
「リボルバー 一 択 で」
 笑顔で重圧を掛ける醤に、圭一は涙ながらにリボルバーを差し出した。
「チクショオオオオオ!! こちとらリボルバー様の滞在時間、一日だぞ!? こんな事あんのか!? あってたまるか馬鹿野郎オオオオオ!!」
「よっしゃああああ!! リィボルバァアアアアアアアー!!」
 圭一はひたすら床を殴り、醤は入手したリボルバーを天井に掲げている。テンションに雲泥の差はあれども、どちらもうるさかった。醤は、嬉々として早速メダロッチに登録し、カグラにパーツを転送する。カグラの右腕と脚部は光に包まれ、脚部にはオチツカーが、そして右腕にはリボルバーが装着された。満足気に、醤は何度も頷く。
「やっぱ、一式揃ってるとしっくりくんな~!!」
「……」
 カグラは右手をじっと見つめ、開閉を繰り返す。何も喋らないカグラに、醤は首を傾げた。
「カグラ?」
「……いや、」
 返事をしながらも、右手から目を離す事無く。
「何でも無いのだよ」
 カグラは、ゆっくりと力強く拳を握った。





 鎖界町の、夜。
 古びた一軒家で木造の戸を叩く音に、宗輔は顔を覗かせた。
「おうおう、誰だア?」
「夜分遅くに、申し訳ない」
 声のする方まで視線を下げると、佇むカグラと目が合った。
「アンタぁこないだの……よく家わかったな」
「虫達に聞いたのだよ」
「ハハア、変わったヒトだねエ! まぁ上がんな」
 宗輔は笑い飛ばし、カグラに背を向ける。
「此処で構わん」
 背中に降ってきた否定の言葉に、宗輔は真顔で振り向く。そーかい、と短く返答し、相手の言葉を待った。俯いたカグラは、口を開く。
「……恥を忍んで、頼みがある」
 カグラは、宗輔の目を真っ直ぐ見上げた。液晶の目に、意志を持った光が宿る。
「先日のリボルバーを……ワシらとの再戦まで、使わないでくれぬか?」
 宗輔は、二回瞬きした。すぐに合点がいかず、乱暴に頭を掻く。
「『リボルバー』? ……ああ」
 祭りのロボトルで、目の前のメダロットからリボルバーを勝ち取ったのを思い出す。記憶の中でも、友人は酷く悔しそうな顔を浮かべていた。しかし、あの時と同じリボルバーが、もうカグラにはついている。
「つうか、もうついてるじゃねエか」
「『これ』ではない」
『これ』と呼んだ手を握り締め、カグラは言った。
「言える立場ではないが……とりわけ、大事なパーツなのだよ……!」
 宗輔は、カグラの思いが全く理解できなかった。どれだけ見ても、紛う事無きリボルバーである。しかも、宗輔はロボトルで負けた事が無いため、当然パーツを取られた事も無い。考えるのが苦手な性分だったのもあり、頭の中で『勝者と敗者の違いである』と割り切った。
「大事なパーツなら、何で負けたんだ」
 吐き捨てるような言葉に、カグラの目が大きく見開く。宗輔の言い分は、尤もだった。『力量不足』と言ってしまえばそれまでだが、それでも自分は決して負けてはいけなかったと、自責の念が襲う。
「……!」
「……気にすんな、今のは仕返しだ」
 不機嫌そうな顔から一転、宗輔ははにかんだ。頭の後ろで手を組み、言葉を続ける。
「舐めてくれるモンだと思ってよオ? 負ける訳ねエだろうがよ、俺達が。んな小っせエ事心配してる暇があんなら……」
 宗輔は親指で自分を指し、大胆不敵に言い放った。
「さっさと強くなって、ぶん取り返しに来なア!!」
 雷に打たれたような、衝撃だった。そうだ。醤は、欲しくてやまないこのリボルバーを見事勝ち取ったのだ、とカグラは思い返す。ならば、自分は。
「かたじけない。……そうだな」
 右腕から力を抜き、カグラは宗輔に応えた。
「それが、筋というものだ」





 翌朝。御守高校、二年D組の教室にて。
「……なっ、波花!」
 着席していた波花梓音(ナミハナシオン)は、醤に呼ばれて顔を向けた。いつもと変わらないように見えるが、その視線は確実に数段冷たい。醤がなかなか話を切り出せず、考えあぐねいていると、向こうから言葉が掛かった。
「…………何か用?」
「よ、『用』っつーか、そんな大それたモンでもねぇっつーか……?」
「朝礼が始まるから、さっさとして」
 梓音から急かされ、醤は喉が詰まったような顔をした。何とか喉を鳴らし、たどたどしく話し始める。
「あっ、あのな? ……ジジイの右腕、リボルバーに戻ったんだ」
「!」
 梓音は、僅かに目を見開く。突き刺すような視線の温度も、幾何か柔らかくなったように感じた。
「つっても、元のパーツじゃねぇんだけど……」
「……そう」
 言うや否や、梓音は目を背けた。確かに、こんな短期間で勝てるようになる相手ではない。それでも。
「でも、アイツには絶対勝つ」
 梓音が視線を戻した先には、真剣な醤の姿があった。
「まだ『いつか』だけど、絶対だ!」
 力強い宣言だった。梓音は一度だけ瞬きし、小さく頷く。
「……うん」
 梓音には、それ以上も、それ以下の言葉も言えなかった。もう用事は済んだと思い、梓音が正面に顔を戻すと、醤は慌てたように回り込む。
「あっ! そうじゃなくて! いやっ、それだけじゃなくて……!」
「何なの? 本当に……」
 珍しく歯切れが悪過ぎる醤に、梓音が溜め息をついた時だった。
「ごめん!!」
 微塵も予想だにしていなかった言葉に、梓音は硬直した。かろうじて動いた口が、短い声を吐く。
「…………え?」
「あれ、っは……完全に八つ当たりだった! 悪かった! すいませんでした、波花さん!!」
 謝罪すると、醤は勢いよく頭を下げた。先日の、佐藤商店での一件を言っているのだろう。梓音は、への字に曲げた後、口を開く。
「……村崎、顔上げて」
「波花……」
 許してくれたのか、と思った直後。
「オ゛ッフ!?」
 凄まじい速度で、梓音の右拳が、醤の腹に埋まった。両腕で腹を抱え、醤は悶絶する。蹲った醤を見下し、梓音は尋ねた。
「……満足した?」
「こっ、ちの台詞だこのヤロォオ……!!」
 内心安堵した事は、互いに知る由も無かった。





メダロッチ更新中……――
・リボルバー(KBT-12。うつ攻撃:ライフル)獲得



続ク.





◎次回予告
醤「チャンチャカチャカチャカチャンチャンチャ~ン♪ チャカチャカチャンチャンチャン♪ チャン♪ じじ孫! 三分メイキング~!」
カ「このこぉなぁでは、次回の話に必要なモノを揃えていくのだよ」
醤「それではカグラさん、次回のアイテムを教えてください!」
カ「えー、人物・三人。掃除機・三台。それと、ましゅまろまn」
醤「違うよな?」
カ「……ましゅまr」
醤「違 う よ な ? 次回、『六角形の神サマ』第弐拾話! 『恋之神様(前篇)』!」
カ「舞台・米国」
醤「いい加減にしろ!! この作品自体無かった事にされんぞ!!」


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