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RSSフィード 六角形の神サマ
   

日時: 2020/04/14 13:14
名前: 海月

神様と参拝者。
おじいちゃんと孫。
メダロットとメダロッター。

どれも、二人を結ぶ言葉達。





◎登場人物
・村崎醤(ムラサキショウ)
御守(ミモリ)高校二年D組。主人公。
一人いるだけで賑やかで、多分不憫の星の下に生まれてきた少年。
ロボトル経験は浅いが、その知識・覚悟で勝ち星を取りに行く。

・カグラ
醤の愛機。KBT型メタルビートル。
掴み所のない性格で、みんなを我が子や孫同然に可愛がるおじいちゃん。
御守神社に祀られた道祖神で、『虫の知らせ』を頼りに困っている者を助けに行く。

・波花梓音(ナミハナシオン)
御守高校二年D組。醤のクラスメート。
御守町のメダロット博士の娘で、醤とは幼稚園から一緒だが話した事は少ない。第陸話までは。
カグラを祖父として慕い、傍にいるためなら強行手段に出るドライバー娘。

・マリア
梓音の愛機。NASβ型クリムゾンナース。
思い立ったが吉日の性格で、動物に例えると”猪”。
捨てられたメダロットだが、カグラに救われ、御守神社で一時期共に暮らした。

・佐藤甘太(サトウカンタ)
御守高校二年D組。醤の友人その一。
佐藤商店の息子で、サディスティックな性格。
座右の銘は、『一円を笑った者は一円で泣かす』。

・ジー
甘太の愛機。CMO型ナチュラルカラー。
佐藤商店の万引きGメン。
趣味は覗き。自分がカメレオンである事を完全に棚に上げている。

・グルコ
甘太の母の愛機。MDM型メダメイド。
佐藤商店の姉御。甘太の育ての姉でもある。
恐らく、今作で男前ランキング三本指に入るであろう乙女。

・尾根翠(ビネスイ)
御守高校二年D組。醤の友人その二。
陸上部のエースで、正真正銘良い人。
爽やかだが、走って解決出来ることは走って解決しようとする脳筋。

・ハリップ
翠の愛機。RBT型ラビウォンバット。
翠の足の速さに誇りを持っている。
時間の無駄が大嫌いで常に動き回っており、多分マグロと一緒で動かないと死ぬ系男子。

・蜂矢蜜希(ハチヤミツキ)
御守高校二年D組。醤のクラスメート……と友人の中間ぐらい。
陸上部のマネージャーで、翠の彼女。
恐らく、今作で一番女の子らしい女の子。……だったら良かったが、作る料理はどの毒よりもポイズン。

・リボン
蜜希の愛機。SLR型セーラーマルチ。
見ていて安心できる女の子、その二。
趣味は、恋バナとお菓子作り。何故、それをマスターに伝授しないのか。

・泡瀬美園(アワセミソノ)
御守高校二年A組。醤の想い人。
文武両道、可憐な美貌と、学校中の憧れの的。
どうやら、誰にも言えない秘密を抱えているらしい。(シンラ以外)

・シンラ
美園の愛機? KWG型ヘッドシザーズ。
自分が一番大好きで、煽り検定一級のおjお兄さん。
元道祖神で、カグラとは古い知人。

・古戸宗輔(フルドソウスケ)
鎖界高校二年三組。醤の小学校時代の友人。
ロボトル部門:バリバリ最強No.1。
頭脳部門:チンパンジー。

・ジェームズ
宗輔の愛機。NIN型ワイアーニンジャ。
身体は忍だが、心は西部のガンマン。
技は一号、力は二号、バトルする様・モンスター。

・村崎紀醤(ムラサキキショウ)
醤の父。
メダロット社に勤めており、村崎家には月に一度しか帰っていない。プチ単身赴任中。
好きなものは、メダロットとお祝い事。

・村崎ゆかり(ムラサキユカリ)
醤の母。
怒る姿は鬼神そのもの。
家族が危険な目にあったりいなくなったりする事を、何よりも嫌う。

・波花椒吾(ナミハナショウゴ)
梓音の父。御守町メダロット研究所所長。
町の人々からは親しみを込めて、『御守のメダロット博士』と呼ばれている。
心配性で、一人娘の梓音を気に掛けている。

・的間圭一(マトマケイイチ)
御守高校二年D組クラス担任。
着眼点がいつもずれている。
メダロットが好き。

・カーゴ
圭一の愛機。DOG型ブルースドッグ。
苦労が多い圭一を、優しく見守る事が多い。
必要時、ちゃんと自分の意見を言える子。

・タバスコ
どう見ても未来人です本当に(ry)な、白い衣装に身を包むゴーグル男。
メダロット強奪を生業とし、邪魔者は全て排除しようと試みても逆に排除される、多分醤と同じ星の出身者。
その実体は、秘密結社テクノポリス・御守神社周辺エリアリーダー。

・Mr.ジャム
メダロット協会公認レフェリー。ロボトルではジャッジ担当。
爽やかを通り越して暑苦しい。
いつも審判せずに性犯罪を起こす。

・Ms.マーガリン
メダロット協会公認レフェリー。ロボトルでは実況担当。
職務放棄する先輩(Mr.ジャムと読む)の代わりに、最終的なジャッジも兼ねている。
趣味は、『人の傷口に塩を練りこむ事』。





なるべく白字でネタバレ回避を心掛けております(震え声



六角形の神サマ 第拾話/商人之進(前篇) ( No.10 )
   
日時: 2018/01/14 16:34
名前: 海月

佐藤商店。
其処は、佐藤甘太(サトウカンタ)の実家が経営している、古き良き時代を感じさせる店舗である。
扱っている商品は、食品や日用品から、メダロットまで多種多様。

この日、最初の来訪者は、客ではなかった。

「いらっしゃい……よぉ、村崎。休みの午前中から何買いに来たんだよ?」
「……おう」

甘太は、顔馴染みの村崎醤(ムラサキショウ)の姿を確認すると、大きな欠伸をした。
醤は短く返事した後、ハタキを持つ甘太の前に仁王立ちする。

「な、何だよ?」

とてつもない威圧感を放たれ、怪訝な顔で甘太が尋ねると、醤は息を吸い込んだ。

「ここで働かせてください!!」
「は?」
「働きたいんです!!」





『六角形の神サマ』 第拾話/商人之進(前篇)





「なーるほーどーねぇ~」

カウンターの椅子に腰掛け、甘太は、醤から受け取った履歴書を眺めていた。
その正面には、緊張した面持ちで醤が腰掛け、次の甘太の言葉を待つ。

「村崎家のシステムじゃローンの完済が何時になるかわからない、と」
「左様です」
「今や小学生でも自分の小遣いでメダロット買ってるっつーのに村崎、お前って奴は……」
「うるせぇで御座います!」
「社会ってのは敬語使えば良いってモンじゃねーぞ」

履歴書から目の前に視線を移し溜め息をつく甘太に、醤はすかさず怒鳴るが、いつものように軽くあしらわれて終わった。

KBTシリーズ1式、税込五千円。10回払い。利子無し。
それが、醤の甘太に対するローンの詳細である。
初回は既に返済しており、残りの4,500円なんて時間を要さずに用意出来ると醤は思っていた。
が。
村崎家のお小遣いシステムがお小遣い制となり、経済状況が悪化。
平日は醤があまり手伝えず、実質カグラ1人で日給・五百円を稼いでるようなものなのである。
『それなら、9日働けば完済出来るじゃん』とお思いかもしれないが、オイル代、メンテ代、弾薬代……と、ロボトルするだけで、更に言えばカグラが生きるだけで賃金は消えていくのだ。
何らかの意思でローンの完済を遅延させている訳ではない。決してない。

そこで醤が考え付いたのが、アルバイトだったのだが……。

「おいおい、志望動機嘘書くなよな~。『メダロットで遊ぶ金欲しさ』だろ」

面接官が予想し過ぎていた通り、一筋縄じゃいかなかった。

「遊ぶ訳じゃねぇ! 理由はどうあれ真剣なんだよ!」
「はいはい、“真剣ロボトル”な」
「その真剣じゃ、いやちょっと入ってるかもしんねーけど! 頼むから雇ってくれよ!」
「性格真面目って……ウケる、チンピラ過ぎてクラスの女子三分の二から引かれてる奴がw」
「うるせぇ履歴書もう見んなああ!! つかお前何つった今!?」
「履歴書見ずにどう面接しろっつーんだよ」

醤がぐうの音も出なくなった事を確認すると、履歴書をテーブルに置き、甘太は椅子から立ち上がった。

「ま、良いや。ウチもアルバイト雇う余裕はあんま無ぇから、最低賃金で勘弁してくれ」
「あ、りがとうございます……?」
「おれとしても金が返って来ないと困るしな。メダルごとKBT1式返してくれても良いんだけど」
「何だ? オレの知らない所でカブトメダル狩りでも流行ってんのか?」

ドライバーを両手に襲い掛かる少女を思い浮かべながら、醤は少し低い声で言い放つ。
冗談だ、と甘太は手を振った後、醤に向かって黒い布の塊を投げた。

「わっ!? 何だコレ!?」
「佐藤商店のエプロン。村崎君、君には今この瞬間から早速接客と掃除をして貰おう」
「わかった……お前、コレ着て仕事してた事あったっけ?」
「良いんだよ。おれは生きながらにして佐藤の看板背負ってっから」
「無駄にカッコ良いな!?」

そんなやりとりをしながらも、醤はエプロンを着終え、甘太はハタキを手渡した。

「じゃあ、おれは会計すっからよろしく~」
「よし、どっからでもかかって来いやアアア!!」
「とりあえずその近付く奴皆殺しにしそうな顔どうにかしろ」

醤の気迫に、甘太は呆れながら、再び会計のパイプ椅子に腰掛ける。
すると、勢いよく戸が開くと同時に、数人分の足音と声が店内に響いた。

「ら、らっしゃああああ!?」
「ラーメン屋か」
「よおカンタ! 相変わらずしけた顔してんな!」

醤に突っ込みを入れると、我が物顔で入ってきた小学生の男児3人を、甘太は頬杖をついたまま見やる。

「うっせ。まーた立ち読みか悪ガキ共」
「へっへー、今日ポンポンの発売日だかんな!」
「あれ!? 全部紐ついてんじゃん!?」
「ざんねーん、佐藤商店ではもうポンポンの立ち読みは禁止でーす」
「生意気だぞ! カンタのクセに!」
「観念して買ってけ。3人1冊で割り勘すりゃマシになんだろ」

「バカ」だの「アホ」だの罵声を浴びせながらも、3人仲良くお金を出し、漫画雑誌を手に店を出ていく小学生達に、甘太はひらひらと手を振り見送る。
その間、醤は口を開けたまま何も話す事が出来なかった。

「あざしたー、またの御来店をお待ちしてまーす」
「……良いのか今の?」
「ラーメン屋に対応云々を言われたくねーんだけど」
「オレもだよ!?」

やっと喋る事が出来た醤は甘太に食って掛かるが、甘太は物ともせず淡々と語る。

「良いか、村崎。商人にとって大事なのは客に媚びる事じゃない、利益を得る事だ」
「いやその利益を得るために愛想が必要なんじゃ」
「愛想良くすりゃ100パー利益が得られるか? 次に繋げられるか? 答えはノーだ。
 なら、“今”金を落とさせる事に1点集中するしかねーだろ」
「わかった! だからこの店客来ねぇんだ!」
「……雇い主にここまで言えるバイトも珍しいな」

甘太が小さく息をつくと、商店の戸が再び開いた。
甘太と醤の視線は、入ってきた若い男女2人に向けられる。

「いらっしゃいませー」
「い、いらっしゃいませ」
「だから私じゃないってー」
「俺でもねえよ~」

完全に2人の世界に入っているリア充に、醤は頭を上げないまま拳を握りしめた。
甘太は、醤を諭すように肩に手を置く。

「さっきのアイツらみてーに、必ずしも店員を相手にするとは限らねーんだって」
「……オレが言いたいのはそういう事じゃない。どっちでもええわ」
「ホンマにな」

短い返答に答える事なく、醤が観念して頭を上げると、甘太が言葉を続ける。

「商売には妥協も必要でな。さっきみたいに譲歩すりゃあ、どっちにも利益が入るってモンよ」
「リア充にどう妥協しろっつーんだよ」
「金を毟り取る」
「妥協かそれ?」

小声でやりとりをしている間に、カップルの男性が女性に声を掛けた。

「何買うか決まったか?」
「うーん……やっぱ良いや。出よ」

女性がそう返すと、来店時と同じく腕を組みながら、2人は外へと向かう。
が、店内に響いた声により、出る事は叶わなかった。

「お客さん」

2人が首を傾げながら振り向くと、そこには会計席に座る、店の壁を満面の笑みで指差す店員。
男女がそちらへ目を向けた後、何の事かわからない醤も指差す方を見た。
すると、店の壁に貼られた、達筆な字で書かれた1枚の紙が目に入る。
『ひやかしお断り』。

「あ、あの……?」
「御覧の通り、ウチは何も買わずに出られる店じゃないんすよー」
「そんな馬鹿な話が……!」
「馬鹿な話ついでにもう1つ。ウチはですねーお客さん、」

醤が張り紙から甘太へ再び視線を移すと、甘太の目が僅かに開いた。

「開業以来、何も買わずに店を出た人誰1人としていないんですよー」
「……!?」

店内を支配する只ならぬ空気に、甘太以外の人間が絶句した。
満面の笑みから普段の表情に戻り、考える素振りを見せながら、甘太は呑気に喋る。

「それで提案なんですけどね、当店では5円チョコを取り扱ってましてー」
「…………く、ください」
「まいどー」

料金を机に置き、商品を受け取ると、男女2人は足早に店を出て行った。
“逃げる”という表現が1番しっくりくるのかもしれない。

「あざしたー、またの御来店を」
「来る訳ねぇだろ極悪商人!!」

醤の声が、先程の甘太と別の意味で店内に響いた。
甘太が不服そうに眉をひそめる。

「んだよ。お前は客が帰ると元気になんなー?」
「ヒトをコミュ障みてぇに言うな! 今のは流石に無ぇだろ! 妥協は!?」
「だから互いに5円チョコで」
「佐藤それ『妥協』ちゃう!! 『脅迫』や!! 恐いわひたすらお前が恐い!!」
「うるっさい!!」
「いって!?」

掴みかかる勢いで醤が怒鳴っていると、背後から何者かに頭を叩かれ、醤は両手で押さえる。
頭に痛みが響くまま振り向くと、そこにはモップが付いた右腕を振り上げたままのメイド型メダロット・メダメイドが仁王立ちで立っていた。
醤は殴った相手を確認すると、咎めるようにその名を呼ぶ。

「グルコ!」
「何騒いでんのよ! お客さんが来たらどーすんの!?」
「どうせ来ねぇだろ!? 後お前もうるせぇ!」
「失礼ね!」
「いてっ! 殴んなって!」

醤に第2撃をお見舞いすると、グルコは今度、甘太を睨む。

「カンタ! 友達と遊んでないでちゃんと店番やんなさい!」
「仕事してたっつーの。ついでに村崎も」
「何でショウがウチで仕事してんのよ!?」
「今朝おれが雇って、ここのバイトになったから」
「あんたっ、おかみさんに許可とらないで勝手な事して!」

そのまま説教を続けるグルコに、甘太は指で両耳を塞ぐ。
頭を擦りながら、醤は呆れたように笑った。

「相変わらずだな、グルコ」
「ああ、そろそろ落ち着いて欲しいもんだ」
「ヒトをヒステリーみたいに言わないでくれる!? っもう、図体ばかりデカくなって中身子どものまんまなんだから!」

そう怒りながら、グルコはスプリング音を響かせながら雑誌コーナーへと向かった。
そして、いつの間にか宙に浮いていたエロ本目掛けてモップを振り下ろす。

「あんたもちゃんと仕事しなさいっ!」
「いでぇ!」

打撃音と叫び声が同時に上がったと思うと、床に雑誌が落ち、何も無かった空間に徐々に姿が現れ始めた。

「いてて、姐さんは容赦無ぇなあ~」
「ジーが真面目に仕事しないのが悪いんでしょ!? 私が悪いみたいじゃない!」

カメレオン型メダロット・ナチュラルカラーのジーは、その場に座り込み、殴られた左手を擦りながら反論する。

「ちゃんと監視してますよ~、こうやって人間共の性事情を」
「あんたが監視するのは万引きでしょーが!!」
「いでええええええ!!」

――アイツ、無茶しやがって……。

ジーの頭にクリティカルしたモップを見て、醤と甘太は心の中で静かに合掌した。
怒り疲れたのか、グルコは大きなため息をつくと、籠を左手に取り、店の戸に右手を掛けながら醤達の方へ振り向く。

「私は買い物に行くけど、ちゃんと店番してなさいよ坊主共!」
「へーへー。グルコー、カリカリしてたら皺」
「出来る訳無いでしょ!!」

甘太の売り言葉に買い言葉を叩きつけ、グルコは勢いよく店を出た。
なおも前後に動き続ける戸に向かって、甘太は言葉を投げかける。

「帰ってくんなバーカ」
「相変わらず凄えな~、お前の姉ちゃん」
「姉ちゃんじゃねー、おふくろのメダロットだ」
「姉ちゃんみてぇなモンだろ。お前が生まれる前からここにいて、生まれたお前の世話とかしてたんなら」

そんなんじゃねーよ、と甘太にしては珍しく不満を露わにすると、再び雑誌を広げた。
話し相手を失くした醤の肩を、ちょんちょんとジーが突く。

「仕事に戻りやしょ。カンちゃんがああなっちまったら、そっとすんのが一番です」
「ジー……」
「さて、仕事仕事!」

場を仕切り直すジーを見て、醤は思わず笑みを零した。

『佐藤甘太』という人間は、掴み所がない気分屋である。
そんな彼の理解者が気の良いパートナーという事実は、友人の1人である醤を密かに嬉しくさせた。

当のジー本人はというと……。

「おっほ、このアングルはエグいねぇ。げへげへげへ」
「……やっぱお前ら似た者コンビだよ」

ジャンルは違えど、マスターと同じく雑誌を開き、自分の世界に浸っているメダロットの姿に、醤は前言撤回せざるを得なかった。





時を同じくして、御守町スーパー。
野菜売り場で、仁義なき戦いが繰り広げられていた。

「私が先に手に取ったのよ……は・な・し・な・さ・いぃい~……!」
「お嬢さんには悪いが、ワシとて手を放す訳にはゆかぬ。一家の食卓(※おでん)が掛かっている故……!」

1本の、太くて立派な大根。
を、買い物籠を片手に下げたメダロット2体が取り合う図。
しかし、見慣れた光景であるのか、周りの買い物客は気に留める事無く、各々自分の買い物に勤しんでいる。
大根の根っこ側を引っ張るグルコは、言葉を続けた。

「あんたっ、男ならこういう時女の子に譲るモンじゃないの……!?」
「譲る、か……なれば、半分にするというのはどうだ? このままじゃ大根が痛む……」
「じゃあさっさと手ェ放しなさいよ!! 半分じゃ意味無いのよ!?」
「す、すまぬ……」

余りの気迫に、葉っぱ側を引っ張っていたメダロット・カグラは、理不尽に内心首を傾げたが、弱々しく謝る。
カグラの手の力が緩んだ隙に、大きく鼻を鳴らし、グルコは素早く大根を奪い取った。
咄嗟の出来事に、カグラは小さく声を上げ、目を丸くした。

「あっ……仕方あるまい、別の大根を探さねば」
「……あんたねぇ、そんなんじゃこの戦場で勝てっこないわよ?」
「確かに、これでお嬢さんに負けるのも何度目になるのか……」
「4回目よ」

しっかりと戦歴を把握しているグルコにカグラは苦笑すると、最初には劣るが立派な大根を発見し、籠に入れる。
一緒に会計に並びながら、2人は会話を続けた。

「良い? 戦場では強く心を持った奴が勝つの。籠に入れたからって安心しちゃ駄目。真の強者はそれすら掻っ攫っていくのよ……」
「それは果たして『強者』で片付けても良い話なのか……?」
「良いのよ。じゃないと……心が折れるから」
「……された事があるのだな」

何時になく落ち込んだ様子に、カグラは会計を終えて財布を閉めた後、グルコの頭を撫でた。
瞬間、カグラの頭にはモップが飛ぶ。
カグラは痛みから頭を押さえ、グルコはモップを振りながら声を荒げた。

「いたたた……」
「ななな何すんのよ!! 女の子の頭を軽々しく触るなんてっ、セッ、セクシャルハラスメントだわ!!」
「せ、せくさるはらすめんと? 何か存じぬが、気分を害してすまぬ」
「そんなんじゃなくて……あーもう、ビックリしたのよ! 私も殴ってごめんなさい!」

“謝る”とは程遠い態度をとると、グルコは仄かに赤い顔でジャラジャラと音を立てながら財布の小銭を出していく。
多かったのでお返ししますね、と店員から小銭を返され、更に赤く染まったグルコは、黙って財布に仕舞った。
頭を擦りながらその光景を見た後、カグラは少し上を見上げ、小さく呟く。

「どの戦いも、経験と心持ち……か」





「暇」
「あ?」

沈黙が支配していた空間で最初に声を発したのは、最初に黙り込んだ甘太であった。
声の主とそのメダロットが雑誌に夢中の間、掃除だ整理だと忙しなく動いていた醤にとっては本当に『あ?』という話なのだが、暇過ぎるというのも事実である。
床に寝っ転がっていたジーも、顔を上げ、溜め息をつく。

「もう誰でも良いから来ませんかねー。ついでに万引きでもしてくれりゃあ、オラも退屈しねーんですけど」
「万引きGメンがそれで良いのか?」

突っ込みながら、客が来たら来たでその体勢は問題ではないのかとも思ったが、醤の口から出ずに終わった。
彼等の待望の存在が来訪したのである。

「いらっしゃいませー」

甘太は目もくれずマイペースに読んでた雑誌を本棚に仕舞っているが、醤とジーは絶句していた。

「「「……!?」」」

顔につけた、白縁の大きなゴーグル。
白を基調とした、未来人を思わせるスーツ。
そして、その右胸に刻まれた“Tc”という文字。

尤も、その招かれざる来訪者も、醤の顔を見るなり指を差し、第1声を失くした訳だが。

「てめっ……タバスコ!! 何でこの店に……!?」
「そ、それは此方の台詞だ! 毎度毎度邪魔をしやがってええ……!」

テクノポリスのエリアリーダー・タバスコは、完全に出鼻を挫かれ、強く歯軋りをした。
しかし、それも束の間。
仕切り直しと言わんばかりにゴーグルを掛け直し、笑みを零すと、勢いよく右手を振りかざした。

「フッ、此方とて何度も黙ってやられてる訳ではない! 行け! テクノポリス制圧部隊!」

タバスコの掛け声で、店内に大勢のメダロットが押し入ってきた。
キツネ型メダロットのア・ブラーゲ、タヌキ型メダロットのア・ゲタマーを筆頭に、戦車型メダロット・タンクダンクが大量に押し寄せ、棚の商品が錯乱する。

「ぎゃあああああ!? 何じゃこりゃああ!?」
「ショウさん!! 万引き犯ですかい!?」
「今日という日が終わったら、お前も『ただの万引き犯なら良かった』と思うだろうよ!」
「いや、良くねぇだろ。村崎ー、何コレ?」

状況判断が出来ず、混乱する醤達の姿を確認すると、タバスコは満足気に口角を上げ、左腕の2つのメダロッチを構えた。

「ア・ブラーゲ! ア・ゲタマー! 奴等を捕らえてしまえ!」
「げっ!? ジー、何とか……っていねえええええ!?」

今の今までいた筈の姿が忽然と消え、醤は怒りに任せて声を上げた。
甘太はその横で、店内の奥の戸を見やり、溜め息をつきながら呟く。

「良かったっつーか、悪かったっつーか……」
「何が“良い”っつーんだよ!? ……っ男子高校生舐めんなよ、1mそこらのロボットに負けるようなヤワじゃねえ!」

そう言って、醤は向かってくるメダロット2体に身構えた。





「何なのよいきなり!?」
「誰かが助けを必要としておる! 間に合うと良いが……!」

野菜が入ったビニール袋を手に下げ、カグラとグルコは商店街の大通りを駆け抜けていく。
突然走り出したカグラに、グルコは声を張り上げ続けていた。

「助けって何!? 何であんたがそんなことわかるの!?」
「う~む、話すと少々長くなるのだが……」
「……勘弁してよ……」
「ん?」

話すべきか否かを悩んでいた最中、後ろからの押し殺したような声に、カグラは首を傾げ、足を止めずに振り向く。
グルコは、口元に手を当て、俯きがちに言葉を続けた。

「こっちって、私の家の方向じゃない……!」
「……なれば、尚更急がねば」

前を向いたカグラもグルコも、走るスピードを上げていく。

辿り着き、カグラが足を止めたその場所は、グルコがあって欲しくない場所であった。
看板の文字を、カグラは読み上げる。

「“佐藤商店”? はて、何処かで聞いたような……?」
「ここ? ここなの? 嘘でしょ、誰が……もしかして強盗!?」
「お嬢さん、気を確かに」

気が動転しているグルコの肩を、カグラが支えた。
余裕が無いグルコは、カグラに声を上げる。

「落ち着いてられないわよ! だ、誰も怪我してないわよね? ねぇ、助けを呼んだのは誰なの!?」
「そこまでは、ワシにも……」
「姐さん、姐さんっ」

小さな呼び声に、カグラとグルコは視線をそちらへ移した。
見ると、物陰に隠れたジーが、手招きをしながら此方を見ている。
グルコは、安堵から声に喜びを含ませた。

「ジー! あんた無事だったのね!」
「しーっ、声が大きいっす」
「この者は?」
「弟分よ!」

カグラの問いに淀みなく答えると、グルコはジーの胸倉を掴んだ。
同時に、ジーの表情が強張る。

「おかみさんは? カンタは? ショウは? どうなってんの?」
「ちょちょちょ姐さん、落ち着いてくだせぇ。おかみさんなら、お昼寝中の所をオラが連れ出しましたって」
「『カンタ』? 『ショウ』とな?」

前後に揺さぶるグルコに、ジーは慌てて指を差しながら答える。
指の差された方向へ目を向けると、ジーの傍らで、エプロンをつけた女性が壁を背に寝息を立てている。
こういう人を“肝が据わっている”というのだろうか。……違うか。
聞き覚えのあり過ぎる名を復唱すると、カグラは手包みを叩き、1人納得した。

「そうか、この店はカンタの実家であったか。して、何故今ショウの名が……」
「待って。あんた、2人と知り合いなの?」
「知り合いも何も、2人はワシの孫なのだよ」
「はい!?」
『ジジイ、話をややこしくすんな』

まさかの返答にグルコが思わず声を上げると、カグラの頭の中に醤の声が響いた。
思い掛けない声の主に、カグラは驚き、話し掛ける。

「ショウ! 今どこにおる!?」
「え? ショウがどこにいるっての?」
「多分メダロッチの通信かなんかじゃないですかねぇ」
『あんまり声出すな。気付かれる』

見回すグルコにジーが説明したように、醤はメダロッチの通信機能でカグラと連絡を取っていた。
そのため、カグラの声は向こうに聞こえるが、それ以外の者の声は向こうに届かない。
醤は声を潜めたまま、言葉を続ける。

『今、佐藤商店の中だ。お前は?』
「ワシは、店の物陰なのだよ。カンタのメダロット? や、カンタの母君とも一緒におる」
「ちょっと! 私はおかみさんのよ!」
「姐さん、落ち着いて」

互いに素性がはっきりしていないため、あやふやなやり取りが続く中、異議を訴えるグルコをジーが宥める。
状況を把握し、醤が一息ついた。

『そうか……それなら話が早ぇ』
「ショウ、店の中だと言うがそちらはどういう状況なのだ?」

カグラの問いに、醤は乾いた笑いの後に答えた。

『…………捕まりました、助けてください』

その声は、語尾が少し震えていたという。
聞こえてきた声にカグラは少し笑うと、安心させるような声色でそれに返した。

「そのために来たのだ。待っておれ」



メダロッチ更新無シ



続ク.





◎次回予告
醤「コンビニ強盗ってよく聞くけど、商店強盗って聞かねえよな」
甘「まあ、あると思うけどな。実際、現在進行形であってるし」
ジ「HAHAHA☆ さしずめボクは女性のハート強盗かな!?」
醤「えー、次回『六角形の神サマ』第拾壱話、『商人之進(中篇)』。どちらの下着強盗様ですか?」
ジ「やだなぁブラザー! Mr.ジャムだよNo.1の~! ホラ、世の女性に聞いただいt」
マ『多勢に無勢でロボトルファイトー! “大体●したい男”ですよね先輩、本当にありがとうございました~』


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