>> メダロットライズ にもどる

RSSフィード 【    T h i r s t    】
   

日時: 2014/01/07 22:08
名前: 通りすがりのコンビニ店員



 ――どこかの国の、ある街の、薄汚いスラム。
 救いがあるのかないのか分からない、そんなお話。











                    【    T h i r s t    】










CAST




《渇く者》サースト
            ――彼は何に乾いているのかわからない。



《奪う者》バンデット
            ――彼はひたすら奪い、与える。



《踏みにじる者》トランプルド
            ――踏みにじって進んでこそ強者。



《悟る者》ニルヴァーナ
            ――貪欲であればこそ。



《憧れる者》ローギング
            ――まるで恋するようにその唯一に憧れて。



《支える者》ケイン
            ――彼は杖。彼は翼。寄り添い支え続ける。心が折れ、翼もげるまで。



《報復する者》ローラン・ロード
            ――復讐が幸福を産まないと誰が決めた?














・補足・

『城』 巨大なビル。最下層地下1階から最上階50階まで。最上階に近づくほど強い。最下層の地下を除いた各階に闘技場が設置されており、国のお偉いさんがお得意様の賭けが行われている。入ったら最後、死亡率90パーセント。ただ地下1階で行われる選抜戦(惨劇)を生き残り、闘技場に出て一勝することができれば、馬鹿みたいな大金が転がり込む夢の場所。敗者にとっては墓場。巨大なビルは天にそびえる墓標だとさえ言われている。それほど生き残れる人は少ない。
イメージは無限城と天空闘技場たして、2で割った感じ。1階1階が広く高い


『決闘』 城の闘技場にて行われる試合。使用していいメダロットは一機のみ。メダロットとそのマスターが共闘して戦う。相手を全滅させるか、相手のマスターを殺せば勝ち。よって、いかにして相手のマスターを殺すか、また自らのマスターを護るかが重要になってくる。マスターは武器を所持していいが、銃や火器類は禁止されている。マスターの武器について。なぜこのような微妙な規定になっているかというと、もともと許可されていたのは盾などの防具で、ナイフなどの刃物ぐらいならばOKという風潮だったが、誰かが何を思ったか鞭で戦いだし、それで勝ち進み闘技場が盛り上がって以来、銃や火器類以外の武器なら使用してよくなった。銃や火器類が禁止されているのは、90パーセントを超える死亡率が、本当に絶望的な数値に変わるからである。






※感想不要
 若干の、グロ、残酷表現があるので注意





Re: 【    T h i r s t    】 ( No.6 )
   
日時: 2014/01/12 00:00
名前: 通りすがりのコンビニ店員

≪悟る者≫ニルヴァーナ




 貪欲であることを正義とした。
 そのことに後悔はない。
 その正義は自分のためだけの正義であり、他者にとっては踏みにじる行為でしかなかったが、それでも自分はこうして全てを掴み生き残っているのだから、ニルヴァーナにとってそれは確実に正しい行いだった。





 ニルヴァーナはメダロットだ。彼女にはマスターがいる。マスターは『城』の王だ。
 彼は醜い男である。


 トランプルドという男は顔の左半分が潰れている。生まれついての物だ。彼の顔はとても醜い。だが顔以上に酷いのは中身だ。心根がこの街で一番腐っているからこそ、彼はこのスラムで王になったと言ってもいい。
 残虐なトランプルドは、弱者をなぶり、解放するそぶりを見せては、またいたぶる。泣き叫ぶ女や子供の声に笑い、妻や子を目の前で殺されて、絶望を目に宿らせる男の顔を覗き込むことをよく好んでいた。






「あれか? 俺の息子だ」



 ニルヴァーナはあるとき闘技場で、男にひどく似ている少年を見かけた。


 見た目は全然似ていない。灰色がかった金髪に見事な碧眼。どこか人間離れした、天使と見紛うほどの容姿。しかし闘技場の上で微笑み、ひとりの男を化け物に変え、嬉々としてそれを殺した少年は、確実にトランプルドの息子だった。




「あの子供はお前を殺しに来たんじゃないのか」


「そうだろうな」


「どうする気だ?」


「どうもしない。ここまで来たら殺すだけだ」




 簡単に言い放ったトランプルドに、ニルヴァーナは落胆と悲しみを覚えた。




 トランプルドは醜く、残虐で非道。最低を地でいく男だ。そんな彼には多くの敵と、復讐者がいる。彼を殺すためだけに『城』の最上階を目指している者は多い。事実この階までたどり着いた者の半数はそんな者たちだ。彼らは実に強かった。おそらく彼の息子もそうだろう。先ほどの戦いで、少し見ただけでも、あの少年と相棒のメダロットによる戦闘は素晴らしいものだった。


 あぁ、終わりだな。


 ニルヴァーナの中でひび割れる音がした。


 かつてトランプルドは貪欲だった。醜く、残虐で非道。最低を地でいく彼を、それでもニルヴァーナがマスターと認め、彼と共に在ったのは、全てを奪い食い尽くそうという醜悪な姿が、彼女の正義を体現していたからだ。
 そう、彼は確かにニルヴァーナのマスターだった。
 美しくはない。賢くもない。だが強く、なによりも飢えていた。貪欲だった。おぞましい程に。


 それが、今はどうだろう。
 飢えていた男は全てを奪い、食い尽くした。そうして『城』の頂に立ち、今度は踏みにじる楽しみを覚えた。挑んでくる強者を返り討ちにして、絶望に叩き落す。そうやって、嬲って遊ぶのだ。
 トランプルドはいつしか現状に満足するようになった。
 『城』の頂点に立ち、自分以上に強い者がいなくなったのだから、ある意味それは当然のことなのかも知れない。けれど自分より弱者のものを嬲って遊ぶことだけに満足を覚えた彼は、すでに飢えてはいない。
 これがニルヴァーナの落胆。


 飢えを忘れた男は次第に堕落していった。堕落しても男は強く、『城』の頂点であり続けた。だから表面化はせず、誰も気づかない。本人さえも自覚しない。共にいたニルヴァーナでさえ、少年を見るまでは、トランプルドが弱体化しているなど確証していなかった。
 けれどニルヴァーナは悟る。男を化け物に変貌させ、嬉々として殺した息子相手に、「どうもしない。ここまで来たら殺すだけだ」と言ってのけたこの男の目は、ふし穴だ。あの素晴らしい戦いで、あの少年の力量を測ることも出来ていなければ、強者の出現に高揚もしていない。戦う者として、この男は既に終わっている。


 きっと、あの少年は最上階まで生きて登ってくるだろう。それだけの力の燐辺を見せた。
 今は自分たちを下回る力量も、最上階に来るころには格段に飛躍しているはずだ。王の座を脅かすどころか、奪い去ってしまうほどに。ニルヴァーナにはその光景がありありと想像できた。




 おそらく――少年がこのビルを登りきったとき、トランプルドは死ぬ。




 貪欲であることを忘れ、小物に成り下がったこの男は、死ぬ。




 それが



 ニルヴァーナの悲しみ。










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