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RSSフィード ルーツ・オブ・メダロット
   

日時: 2014/07/26 09:03
名前: silva

えー……初めまして、silvaと申します。
数年前までメダロットにドハマりしていたのですが、真型の発売以降疎遠になっており、興味そのものも半分片なくしていました。

最近になって7を購入し、再びメダ熱が再燃したところで、メダロット小説を自分も書いてみよう、と思い立った次第です。

さすがに皆さんには及びませんが、自分なりに考えて書いてみようと思います。元々は暇つぶしで書いて途中放置していたもののリボーンなので、更新は遅くなると思います。また、アニメ・漫画は未見、歴史関係の設定は弱いので、その辺はオリメダ・オリ設定が出てきます。

それでも良いという方は、たまにでも読んでやってください(礼

2014/7/25追記:
設定の破綻が判明したため、全面的に改稿すべく一旦下げました。仕上がり次第少しずつ上げていきます。



第五話 ( No.7 )
   
日時: 2015/04/12 22:09
名前: silva

「くあーっ、こんなバカなーッ!!」

当人的には予想外の敗北に、思わずミツグは天を仰いで叫んだ。
一方のシオンは淡々としたもので、メダロッチを操作してパーツの受け取り要請をコールしていた。

「な、何だよ?」
「何だよじゃない。真剣ロボトルだろう、パーツはどうした」
「あっ……」

今更のようにミツグは思い出した。
このロボトルは、パーツのやり取りを行う真剣ロボトルだ。つまり、オーカートータスのパーツを一つシオンに持っていかれることになる。

「だ、だがこいつを持ってかれたらロボトルが出来ねえぞ」
「知らん。そもそもその条件は俺も同じだ」
「ミツグ、往生際が悪いですわよ。諦めてパーツを渡しなさいな」
「リーダー、そんな殺生な~!」
「自業自得ですわ」

セイカのほうも取り付く島がない。
だが、さすがに哀れに思ったシオンは「はぁ」と嘆息すると、こう言った。

「仕方がない。今回はパーツのやり取りはなしだ」
「おお!」
「え? よろしいんですの?」
「武士の情けというやつだ。ただし、次のロボトルでは2つのパーツをかけてもらうがな」
「ぐ……わかった」

引き下がるミツグ。そんな彼を鼻で笑いつつ、今度はヒロトが進み出てくる。
シオンの目が、彼を捉える。

「次はお前が相手か?」
「おおよ。オレはミツグみたいに甘くはねえぜ」
「一つ言っておこう。その台詞が出て来ること自体が慢心の証だ」

つまり、

「やる前から負けを宣言しているようなものだ。ブレード、さっさと終わらせるぞ」
「応。ちなみにヒロトとやら、形式はどうするのだ?」
「モチ、真剣ロボトルだ!」

胸を張って言い放ったヒロトに、後ろのセイカは密かにため息をついた。
たった今ミツグがしでかした失敗をもう忘れたのだろうか。

(気合は買いますけど、実力的にはシオンさんの方が上ですわね。その上でこの態度となると……やれやれ)

後悔しても知りませんわよ、とジト目を向けるセイカ。
シオンはというと、真剣ロボトルを宣言したヒロトに、静かにこう告げる。

「いいだろう。ただし、今度は間違いなくパーツをもらうがな」
「ハッ、ほざいてな!」
「俺の台詞だ。メダロット転送!」
「こっちも行くぜ、メダロット転送だ!」

再度展開されたコンバットフィールドの中に、一度戻されたブレードが再び転送される。
対するは、ヒロトのパートナー、ブルーティスのグレイ。

「ロボトルタイムは30ミニット、真剣ロボトルとします。合意とみてよろしいですねっ!?」
「問題ない」
「いつでもいいぜ!」

引き続きレフリーを努めるコハクは、両者の肯定を受けて一つ頷き、両手を振り上げる。

「それでは、ロボトルー……ファイッ!!」




「相手も接近戦型か。シオン、どうする?」
「戦略を立てる必要はない。迎え撃てば、それでいい」

相棒の問いに、いとも簡単に返すシオン。
それを聞きつけたヒロトとグレイは、案の定というかあっさり頭に血を上らせた。

「ナメた口を聞いてんじゃねえぞ、素人が! グレイ、ケモノアギトで食いちぎれ!」
「おおっしゃあ!!」

だっ、とグレイが地を蹴って間合いを詰めてくる。左腕パーツの手、犬の頭部を模したそれがぐわっと口を開き、ブレードに襲い掛かる。
ハイローズの一員だけあり、さすがにメダルも鍛えられている。が、

「奴の動きを止めろ、ブレード。右腕はくれてやれ」
「応! ぐっ……!」

シオンの指示を受けたブレードは、そのケモノアギトの顎の中に、逆にガストソードを突き出す。
元より、KWGはKBTに比べて装甲がそれほど高くない。直撃を食らった右腕パーツは破壊され、頭部にも少なからずダメージが及ぶ。

「ハハッ、どうだよ!」
「単純馬鹿は扱いやすくていい。ブレード、決めろ!」
「応」
「は? ……やべえっ、グレイ、防御だ!」
「無駄だ。がむしゃらの放熱はまだ終わっていない」
「うお―――!?」

―――腕の差と力量を露呈する結果となったこの戦いは、ブレードの放ったハンマー攻撃がグレイの頭パーツを破壊し、わずか1度の攻防で決着がつくこととなった。




「ち、ちくしょーっ、こんなバカなーっ!?」
「認めなさいな、ヒロト。シオンさんを侮ったあなたの負けですわ」

今度こそ、本気で呆れた様子のセイカ。わざとらしいほど大きなため息をついて言う。

「真剣ロボトルですからパーツを一つ、シオンさんにお渡ししなさい。出撃させたメダロットのパーツですから、ブルーティスのパーツをどれか一つ、ですわよ」
「ぐう……し、しょうがねえ……右腕でいいか?」
「どれでも構わん」

パーツのやり取りが終わると、セイカは組んでいた腕を解いて手を腰にあて、二人を一喝した。

「ハイローズともあろうものが、この無様なロボトルは何ですの! これからちょっと付き合いなさい、ロボトルセンターで猛特訓ですわ!」
「「うぇぇぇぇっ!?」」
「問答は無用!」

とほほー、と肩を落とす二人を一瞥したセイカは、振り返ってシオンにこう言った。

「シオンさん。次は、わたくしもお相手いたします。今度は負けませんわよ」
「それは叶わない。俺とブレードが組めば、恐れるべきものなどない」
「言ってくれますわね……見ていなさい、いずれあなたに敗北を味わわせて差し上げますわ」
「楽しみにしていよう」

不敵に笑んで返すシオン。今の二回のロボトルで、ブレードのメダルレベルが2も上がったことで上機嫌になっていた。
その裏には、相棒と己の実力に対する絶対の自信が垣間見える。

去っていくハイローズを見送ったところで、ちょうど予鈴が鳴り響いた。

「むっ、そろそろ下校時間だな」
「そだねー。帰ろっか、二人とも」
「だな。シオン、行こうぜ」

ユウゴが声をかけるが、シオンは軽く首を振って断る。

「いや、俺は少し用事がある。悪いが、今日はお前達だけで帰ってくれ」
「そうか? じゃあ、仕方ねえな。また明日な」
「じゃーねー、しおーん。ばいばーい」
「ああ」

友人たちが帰っていくのを見送ったシオンに、傍らのブレードが尋ねる。

「シオン、どういうことだ? 用事など聞いていないぞ」
「……ブレード、少し付き合え」
「? わかった」

第6話 ( No.8 )
   
日時: 2015/04/20 18:57
名前: silva

翌日。登校したシオンを待っていたのは、

「しーおーんっ♪ おっはよー!!」

やたらテンションの高いコハクの突撃だった。シオンを見るたびこれで抱きついて、というか飛びついて来るのだが、あまりの勢いから周囲は「如月のぶちかまし」と呼んでいたりする。
で、慣れっこのシオンはその頭を掴んで停止させ、挨拶を返す。

「おはよう。それで、今日はどんなニュースがあるんだ?」
「あうあうあう……はっ、そうだった! 聞いて聞いて、昨日またレトルト三世が出たんだよー!」
「またヤツの話か。それはもう聞き飽きた」
「むー、反応薄いなー。でもこれを聞いたらどうかなー?」

得意げににやつくコハクに、シオンは「何だ?」と一言だけで続きを促す。
それを受けたコハクは、ふふふっ、と意味ありげに笑ってこう言った。

「衝撃の事実! なーんとレトルト三世の正体は、この学校の生徒だったのです!」
「…………」
「って、ちょっとー!? その可哀想な人見るような目はヤメテー!?」
「いや……そんな与太話をどうやって信じろと?」

頭痛を堪えるように頭を押さえるシオンの腕から、メダロッチの中のブレードも追従する。

『全くだ。そもそも俺がシオンから聞く限り、三世とやらは人間離れした動きを可能とするうえに正体不明のメダロットを操るのだろう?』
『私も昨日から言ってるんですけど、コハクちゃん聞かなくて』

メタロッチの中からカノンも呆れ気味にそう言った。一方のコハクはというと、「むむむー」と唸ったと思えば、あるものをカバンから取り出した。

「でも、これを見てもそんなことを言ってられるかなー!?」
「!」

提示されたそれを見て、シオンは僅かに瞠目した。それは、銀城の生徒手帳のページの切れ端。この学校の生徒しか、持たないものだ。

「それは、どこで見つけた?」
「ふっふっふ。昨日あたしは、忘れ物に気づいて一度学校に戻ったのです。そうすると、何と! 夕暮れの光に包まれ、赤く染まった学校の裏の大通りで、野良メダロット狩りをしている不良とレトルト三世が戦っていたのです!」
「大仰な表現だな……それで?」
「不良たちは呆気なくやられ、三世も場が収まるとその場で跳躍! どこかに姿を消してしまいました。慌ててその場に急いだあたしは、三世のいた場所にこのページが落ちているのを見つけたのです! 言っとくけど前からあったんじゃないよ? 真新しいページの切れ端が、茂みに引っかかってたんだからねっ」
「……なるほど」

一応、頷いておくシオン。どーだ、まいったかー、と謎の威勢を挙げるコハクに、彼は静かに一つの事実を突きつける。

「では言っておこうか。その切れ端をよく見てみろ」
「よく見るも何も、銀城の生徒手帳のに決まって……アレ?」
「下に書いてあるのは学校名じゃない。ここの系列の会社の名前だ」
「……銀城エンジニアリング?」
「その手帳自体は有り触れたものだ。正体の手がかりとは言えんな」

話は終わりだ、とすたすた席につくシオン。完全にフリーズしたコハクが再起動したのは、それから5分後のことだった。





昼休憩になると、昼食を早々と食べ終えて中庭で休んでいたシオンに、ユウゴが声をかけて来た。

「よう、シオン」
「ユウゴか。何だ?」
「いや、今度校内ロボトル大会があるだろ? 出ないのか?」

そういえばそんな話もあったな、と思い出すシオン。
掲示板に数日前から張り出されており、玄関でどうしても見ることになるため何となく覚えていた。

「そうだな。腕試しに出て見るとするか」
「優勝商品が何とメダロットのパーツ一式+ティンペットだからな。これは燃えるぜ」
「予備のパーツを持っておくのも悪くはないか……ちなみに何の機体だ?」
「えーとな、確かドークスだった」
「ドークスか……」

KWGの中ではメジャーな機体の一つで、現メダマスター・天領イッキの二人のパートナーの片方もこの機体を使用している。
初代ロクショウことヘッドシザースに比べ、装甲が薄い代わりスピードが速くなっているのが特徴だ。

「キャリバースタッグには及ばんだろうが、KWGならば持っておいて損はないな」
「んじゃ、出場ってことでいいか?」
「ああ。どこに行けばいい?」
「いや、俺がやっとくよ」
「そうか、では頼む。俺は今日からロボトルセンターで特訓をはじめることにしよう」

混んでると思うぜー、と苦笑するユウゴ。この時期は各校でロボトル大会が開かれるため、ロボトルセンターはいつも満員・順番待ちなのだ。

「野良メダロットや通りがかりに片っ端から勝負を挑むのも手か……」
「やり過ぎるなよー? レトルト三世に潰されても知らねえぞ」
「用心しよう」

わかっているのかいないのか、動揺の欠片一つ見せないシオンに、ユウゴは思わず肩をすくめた。



その日の放課後。満員を通り越して外にまで人が溢れていたロボトルセンターを遠目に、シオンは街を歩いていた。あの様子では、とても今日中に入るのは無理そうだ。

「シズクを心配させるわけにもいかん。今日のところは諦めるか」
『では、どうするのだ?』

ロッチの中から問うブレードに、「そうだな」と少し考えてから応える。

「家でシミュレーターをやろう。旧式だがやらないよりマシだ」
『アレか……いいだろう』

シオンの家には、以前父が仕事先から送りつけてきたロボトルシミュレーターが一つある。
ロボトルセンターに使われているもののベースにあたるものだが、地形はサイバーのみ、一対一の戦闘しか出来ない、メタなことを言えば「2」までの機体しか出せないなど制限が多い。
それでも、実戦経験の少ないシオンはこれを重宝している。

「そうと決まれば……ん?」
『どうした、シオン』

ブレードの問いには答えず、シオンは足を止めて振り向く。近道をしようと踏み入った公園の中に、ふと気配を感じた。
そこに、

チリーン、

とどこか不気味さを漂わせる鈴の音が響く。

「!」

視線の先に、いた。
幼さの残る顔立ちと、ポニーテールに結ばれた黒髪。
以前は肩からずり落ちていたジャージも、少しはサイズが近づいたのかややゆったりした程度に収まっている。

その少女を、シオンは知っていた。

「……なぜ、こんなところにお前がいる?」
「……工場跡からキャリバースタッグを持っていった人を、探していた。占いによれば、今日、ここを通ると出た」
「それで待っていたか……」
「機体の所有権は、どうでもいい。問題は、あなたにそれを持つだけの力量があるかどうか」

すっ、とメダロッチをかざす。

「……いいだろう。レギュレーションは?」
「手早く。遊びでロボトル、タイムは10ミニット」
「わかった。メダロット転送!」
「メダロット転送」

展開されたコンバットフィールドの中に、2機のメダロットが降り立つ。
ブレードの足がざしゃっ、と地面を僅かに擦るのと同時、がしゃっ、と転送されて来た相手の機体。
白いボディに、赤いツインアイと額のセンサーが目立つ、ローブをまとったかのような女性型。

「VRG-0XNF、ヴァルゴか……フォースプラントと、頭は火薬無効だ。変形してトラップを張ってくるぞ」
「KWGの前で変形させるほど、無謀じゃない」

そのマスターである少女は、やはり言葉少なに呟く。

(アレは味方機との連携あっての機体……となるとメダフォース戦術か? いや、総装甲からするとアンチシー一発では沈むまい。ならば……)

メダロッチがロボトルファイトを告げたのと同時、シオンは叫んでいた。

「ブレード、ガストソード、アタック! まずパーツを一つ破壊しろ!」
「応!」
「させない……ヴァルゴ、防御」

しかし、さすがに相手は歴戦のつわもの。ヴァルゴは少女の指示に的確に従い、ブレードの間合いを微妙に外してダメージを抑えた。下手にかわそうとせず、最小限のダメージでしのぐつもりだ。

「相手は攻撃パーツを持っていない、そのままストームハンマーを使え!」
「応っ!」

繰り出されたパイルバンカーだが、今度はかわされた。真横に移動したヴァルゴは、ブレードが放熱で動けない隙に行動を開始していた。

「フルーツ発動。フォースプラント設置」

右腕パーツが駆動し、ヴァルゴの機体に特殊なトラップが設置される。マスターのオーダーを受け、実行するごとに、メダフォースエネルギーが少しずつ溜まって行くものだ。

「砂地で車両メダロットが、なぜあれ程の機動力を!?」
「レベルの違いだろうな」

若干焦りを見せるブレードとは対照的に、シオンは冷静に状況を分析する。
相手のことはよく知っている。あのヴァルゴのメダルは相当鍛えられているはずだ。実戦経験という面では、ブレードは大幅に遅れを取っている。

攻撃パーツがない、というだけでは勝てる理由にならない。

(それを見越して、ロボトルタイムを最短に削ったか……食えない奴だ)

何かとオカルティックな言動が目立つものの、彼女は強力なメダロッターだ。
決して侮れるものではない。
しかも、あの世代のメダロットにはとある仕様がある。

パーツを使用する、移動するなどの行動が終了した時、余剰分のエネルギーをそのままメダフォースとして蓄積するというものだ。
通常のメダロットよりも、遥かに早くメダフォースを発動できるのだ。

(しかも、ブレードはまだメダフォースを習得していない……なるほど、本当にこちらの腕を試しに来たわけか)

彼女が標的としているのは実力差が明らかなブレードではない。それを操るシオンの方だ。

(―――ならば、それに応えてやるとしようか)

思ったその時には、指示を飛ばしている。

「ブレード! コールドシザー発動だ!」
「了解!」

頭部の索敵が発動し、相手の動きをより鋭く感知・対応できるよう処理能力がアップしていく。
もっとも、この程度で差は埋まらない。

ヴァルゴはさっきから小刻みに動き回って間合いをずらし、判定に持ち込もうとしている。
この動き方が曲者で、車両タイプゆえの方向転換能力を存分に生かし、ブレードの間合いに入っては逃げ、逃げては入りを繰り返している。

(確かに、その動きにブレードは対応できまい。ブレードは、な)

ロボトルを戦うのはメダロットだけではない。メダロッターもだ。
無秩序な機動パターンと言っても、メダロットに自我がある以上どうしてもパターン化は避けられない。
ブレードに索敵を命じたのはただの時間稼ぎ、本命はここからだ。

(……そこだ)
「ブレード! 6秒後に0-9-0から2-9-5!」
「応!」
「えっ?」

シオンの飛ばした指示の意味がわからず、少女は一瞬混乱した。その間にも自ら動いていたヴァルゴだが、ブレードが指示通り動いた瞬間、意図を察した少女の顔色が変わった。

「っ!」
「もう、遅い」

前方に移動したヴァルゴだが、その左側にブレードが飛び込む。その直後、真横にヴァルゴが移動した瞬間、振り返り様に地を蹴ったブレードのソードが一閃。頭部パーツを完全に捉えていた。

「!?」
「……ちっ」

だが、シオンは舌を打った。完全に決まった攻撃だったものの、やはりレベルの差は簡単に引っ繰り返せない。ヴァルゴの頭部パーツは結構なダメージを受けながらもまだ健在。決着はついていなかった。

(だが、それならそれでいい)
「ブレード!」
「わかっている!」

応えた時には既にブレードは動いていた。着地の勢いを溜めに変え、ヴァルゴ目掛けて低空跳躍。
頭部目掛けて、踏み切った足を勢いのまま回転させて回し蹴りを叩き込んでいた。

「脚部パーツで攻撃!?」
「ルールの範疇だ。二脚メダロットの強みの一つでもある」

言って、ニヤリと笑うシオン。確かに、メダロットの脚部パーツには行動が設定されていない。しかし、それで攻撃をしてはいけない、というルールはない。
パラメータの根幹である他、基本的にダメージが集中する部分であるため見落とされがちだが、二脚、つまり人型の機体ならば色々と有効な攻撃手段になりうる。

「……とはいえ」

その笑みが、一秒持たず渋くゆがめられる。有効打を連続で打ち込んだにも関わらず、ヴァルゴを本体機能停止に追い込めない。メダルレベルの差は、厳然たる壁として両者を分けていた。

(……これはダメか。今の攻防でメダフォースを与えてしまった)

着地したブレードと、距離を開けるヴァルゴを見て、シオンは勝機が去ったことを知った。
そこに、少女の指示が飛ばされる。

「あなたの力、見せてもらった。もう、終わりにする」

言って一呼吸、

「ヴァルゴ。【ダメージだま】発動」

瞬間。ダメージパーセンテージを全て破壊力に変換したエネルギーボールが射出され、回避も防御も許さない一撃となって、ブレードを直撃していた。

「ぐわあああああっ!!」

素の威力に加えて、ブレードの与えた少なくないダメージが、そのまま返って来たのだから一たまりもない。キャリバースタッグのパーツは4つまとめて砕け散り、ティンペットだけになったその体からメダルが排出され、地に転がる前にシオンのメダロッチに転送される。

「……俺の、負けか」

ボディの方も回収したシオンが、ぽつりとそう呟く。
ヴァルゴを転送した少女は、やはり情動の薄い声音で、しかし確かな感情を込めて言う。

「あなたの力量は確かに高い。でも、パートナーの力がまだ追いついてない」
「ああ。だから、特訓をするつもりだったんだがな」
「この時期のセンターはどこも満員。諦めたほうがいい。でも」

ピピッ、と電子音がして、メダロッチに何かのデータが転送されて来た。
目を通したシオンは、言わずもがなのことをそれでも口にしていた。

「訓練施設?」
「0番街にある。人はもういないけど、電気が通ってるから使おうと思えば使える」
「……わかった、礼を言おう」

少女はそれには応えず、踵を返した。
最後に、こういい残して。

「その機体は、ただの新型機ではない。意味はいずれわかるわ」



「あなたに良き運命のありますように……ザ・サード」

幕間 ( No.9 )
   
日時: 2016/03/12 22:55
名前: silva

「……2号機の所在がわかったわ。彼が持っていた」
『そうか、あやつが……久々の地球だというのにつまらん用事を頼んで悪かったな』
「そうでもない。ヴァルゴも久々に楽しかったって」

シオンと戦った少女は、その足で地上での拠点になっている一軒家に戻り、パソコン越しに誰かと話をしていた。表情は相変わらずの無表情で、内心はうかがい知れない。
通信の向こうの相手は、ノイズでも入っているのか声がかすれており、聞いているだけでは誰なのかを掴むことは出来ない。

『それで、2号機とクワガタメダルは……』
「実力はまだまだだけど、メダロッターが優秀。あれは、化ける」
『ふむ、それならば問題ないか……全く、こちらで確保出来たのはたったの2機、しかもそのうち1機をライウンが勝手に持ち出すとは……』

通信相手は苛立ちをこめたため息をついたがそれも数秒、気を取り直して続きを尋ねる。

『だがまあ、奴らに奪還されたのでなければよい。ワシらはまだこの場を動けん、お前とニュウドウが頼りじゃ。くれぐれも、2号機が奴らの手に渡らぬよう気をつけてくれい』
「了解よ、教授」
『うむ』

通信が終了し、画面が暗転する。ぽちぽちと操作して電源を落とすと、少女は机の引き出しからカード一組を取り出す。
激動の七日間事件当時にハマっていた水晶玉に代わり、2年ほど前から始めたカード占いだ。
もっとも簡単なワン・カード・スプレッドで、その示すものを読み解いていく。

「……運命の輪……」

はあ、とため息。

「あの時から変わらない……あなたは本当に平穏とは無縁ね、ザ・サード」

元スペロボ団幹部・街角のキリカは、かつての協力者である少年の、“2年前から全く変わらない”姿を思い出して憂鬱そうに呟いた。





―――夜。この日は夕方頃から雲が多く、この時間になると完全に月が隠され、街の明かりだけが輝いている。

そんな中、昼間はメダロッターのたまり場になっている山の上の神社、その境内に一つの姿があった。
闇よりもなお黒い、シルクハットとマント、同色の黒衣、そして顔全体を覆う丸い目と笑みの形に刻まれた口が目立つ仮面。

セントラルシティを騒がす怪人、快盗レトルト三世が、そこにいた。

雲を勢い良く流していく夜風にマントを靡かせる中、仮面の奥から声が流れる。

「……ハンゾウ。いるな」
「はっ、ここに」

呼びかけに答え、三世の背後、石段の上に張り出す古木のこずえを揺らして飛び降りてきたのは、一体のメダロット。
この一帯の野良メダロットたちを取りまとめ、野良狩りから守っているNIJ型、オイニンジャのハンゾウだ。

「三世殿、夜分に何の御用で?」
「……奴らがまた動き出したらしい。裏を取ってくれ」

奴ら。その意味するところをよく知るハンゾウは、機械の顔にもはっきりと分かる苦い表情を浮かべて応じた。

「! 承知……拙者のみでは手に余りますゆえ、四人衆を動かしまする」
「任せる。ただし、気取られるなよ」
「は。しからば、御免」

ざっ、と砂を踏むかすかな音を残し、ハンゾウの姿がその場から消える。
それを気配だけで確認した三世は、しばしそのまま佇んでいたが、風に散らされた雲間から月明かりが差し込む頃になって、不意に地を蹴って跳んだ。

人間の領域を遥かに超越した、その跳躍力が導いた先は、社の屋根の上。ネオンとヘッドライトに照らされる町並みを一望し、仮面の奥で呟く。

「……遂に来たか……今度こそ潰してやるぞ。エクスキューショナーズ……」

第七話:振って湧いた一大事 ( No.10 )
   
日時: 2015/10/22 20:15
名前: silva

翌日、登校したシオンを待っていたのは、

「しーおーんっ、メダロット部に入らないー?」
「……藪から棒に何の話だ」

コハクからの唐突極まる部活への誘いだった。
シオンとてメダロッターだ。メダロット部となれば入部しない理由がまるでないのだが、なぜ部員でもないコハクが誘いに来るのか?
そもそも、この学校のメダロット部には問題があったはず。

「唯一の部員だった部長が去年卒業して、それ以来部員0で今年で廃部じゃなかったか?」
「顧問のみのり先生に話したら、今日中に5人以上集められれば存続出来るんだって。あたしも大会とか出たーい、だからシオンも入ろ?」
「それは別にいいんだが……あと3人は?」

もっともすぎる疑問を呈しつつ教室内を見渡すが、次々と目をそらされる。
どうも廃部濃厚の部にあえて入りたい、という物好きはいないらしい。
完全になくなった後、あらためて新設の申請をした方が早いという事情もある。

「えーと、ユウゴは確定ね」
「確定なのか?」
「すまん、シオン。口じゃコハクには勝てなかったよ……」
「謝られる理由がわからんが。しかし、それでも3人だ。あと2人足りない」

そこは大丈夫、と自信満々に胸を叩くコハク。と、

「むー! シオン今、胸がないとか思ったでしょ!」
「アホか、お前は」

一刀両断。

「そんなことより、心当たりはあるのか?」
「あるよ。ハイローズに入ってもらうの! ほら、名前からしてやってくれそうだし」
「コハクさん、勝手なことを言わないでいただけます!? 私達のチームはそんな理由でつけた名前ではありません!」

隣の教室からずだーん、とドアを開いてハイローズリーダー・セイカが抗議にやって来た。
どうも話を聞いていたらしい。

「ダメ?」
「無論お断りですわ。何が悲しくて部員もいない廃部寸前の部に入らねばなりませんの?」
「どうしても駄目?」
「ダメなものはダメです! お引取りくださいな」
「うー」

取り付く島のないセイカ。だが、ここで動いたのは意外にもシオンだった。

「ハイローズともあろうものが、逃げるのか?」
「……シオンさん、今なんと仰いました?」
「逃げるのか、と聞いている。お前のその耳は飾りか? どこのみやげ物だ?」
「ひ、人をバカにするのにも限度がございますわ! ハイローズをナメると、明日からロボトルの出来ない体になりますわよ!?」

いきり立つセイカに対し、シオンは「フッ」と冷笑を浮かべて返す。

「ほう? どうやってだ? まさか、メダロットを使わず俺自身を殺しに来るか?」
「こ、殺しにって……さすがにそれは……」
「ではどうする気だ? 殴るか? 蹴るか? ああそうか、骨の一本でも折れば入院は確定だな」
「ハ、ハイローズを勝手に暴力団のような集まりにしないでくださいな! わたくしたちはメダロッターですわ!」
「だが、確かお前はたった今、ロボトルの出来ない身体にすると言ったな。つまり、ロボトルでは俺に勝てないからそんなことを言ったのだろう。銀城最強が聞いて呆れる、ハイローズとはただのザコの集まりなのか?」
「そ、そこまでバカにされては黙っていられませんわ! シオンさん! 放課後、体育館においでなさい! 真剣ロボトルで勝負ですわ!  私たちハイローズの恐ろしさをたっぷりと教えて差し上げますわ!」

びしっ、と指を突きつけて宣戦布告するセイカ。対するシオンは、ますます笑いを深めて言う。

「いいだろう。俺達が負けたなら、今の言葉は全て撤回し謝罪しよう。しかし、俺達が勝ったなら三人でメダロット部に加入してもらう。まさか、ここまで言って逃げはするまいな?」
「ハイローズリーダーとして二言はございません! では皆さん、放課後、待っておりますわよ」

言い残して颯爽と去っていくセイカ。その背を見送って席についたシオンは、彼には珍しく得意満面の顔で断言した。

「さて、これで廃部の危機は去ったな」
「もう勝ったつもりなのー!?」
「お、おいシオン、いくらなんでも煽りすぎじゃないのか? いくらお前でも、ハイローズ3人を同時に相手にするってのは無謀だぞ」

ユウゴの忠告はもっともだった。よほど育っているメダロットでない限り、1対3のハンデマッチはどう考えても無謀だ。ましてや、シオン自身はオペレーターとして優秀ではあるが、ブレードの方はまだロボトルを始めたばかりだ。

だが、シオンは逆に意外そうな顔をしてユウゴに言った。

「何を言っている? お前とコハクも来るんだ」
「えー!? あたしもー!?」
「当然だ。何が悲しくてハイローズ相手にハンデマッチを挑まねばならん?」
「か、勝手に決めるなよシオン!」
「諦めろ、ユウゴ。セイカは完全に俺達3人をロックオンしている。今更逃げられはせんぞ」
「だー!? ちくしょう、何だっておれはこう巻き込まれるんだよ……」

頭を抱えるユウゴには同情の目線が集まったが、何の慰めにもならなかった。



その日の昼休み。
シオンが屋上で弁当を食べていると、メダロッチから着信のアラームが鳴った。

「こんな時間に電話? 誰だ?」

相手を確認すると、町内の小学校に通っているシズクからだった。

「シズク? 昼時に電話?」

首を傾げつつ、とりあえず通話に出る。

「シオンだ。どうした」
『あっ、シオンさんですか!?』
「アイリスか? 一体どうし……何が起きた!?」

かけて来たのがアイリスだという時点で、シオンは異変を悟っていた。シズクのメダロッチでアイリスがかけて来たということは、シズクがメダロッチを手放している、あるいはシオンに連絡を取らねばならないのに操作の出来ない状況であるということだ。
案の定、その予感は当たる。

『今、メダロッチの中からシステムをハックしてかけているんですが……暴走メダロットが学校を襲ってきたんです! ざっと見た限りでも100以上で……』
「100!? おい、状況は!?」
『向こうはリミッターが狂っています! 人間もメダロットも関係なく襲い掛かって、怪我人が続出しています! シズクさんもこのままでは……!』

そこまで聞いたところで、唐突に通話が切れた。

「アイリス? アイリス!? 応答しろ、アイリス! ……くそっ、何が起きた!?」

シズクの通っている小学校はここからでは見えない。
だが、アイリスがこんなタチの悪い冗談を言うとは思えない。ネットワークに接続してリアルタイム情報を当たってみると、その小学校の敷地で暴れ回るメダロットたちを移した写真を見つけた。アップされた時刻はちょうど1分前。

「セレクト隊は何をしている!? 肝心な時に役に立たん……!!」

かつておみくじ街で発生した「魔の十日間」事件以降、セレクト隊の信頼度は低落している。
信用回復に躍起になっているのはいいのだが、肝心なところで役に立たなかったり、無関係の人間を拘束したり、ロボロボ団にあっさり騙されたりとさっぱり成果が上がらず、今や「メダロット関連の問題は自分で何とかしろ」というのが共通認識だったりする。

あのメダマスターでさえそんな感じなのだから、本当にどうしようもない。

「シズク……!!」

第八話:シノビガタナ四人衆 ( No.11 )
   
日時: 2015/10/22 20:16
名前: silva

銀城第二小学校はパニックに陥っていた。
リミッターの狂った野良メダロット達の襲撃により、外で遊んでいた下級生達や、体育の授業の準備に出ていた教師達やそのメダロット達が次々と傷つき、倒れていった。

悲鳴と怒号がこだまする中、校庭で暴れ回っていたうちの一機、サムライがそのビームの刃を足を怪我して逃げ遅れた女の子に振り下ろす。

「きゃーっ!!」

だが、

「!?!?!?」

炸裂する直前、その腕が肩から飛ばされティンペットが露になる。サムライが事態を把握した時には、首筋を横切った一閃で頭パーツの首から上が宙を舞い、露出したティンペットの装着する残るパーツも排除され、メダルが地に転がった。

一体何が起きたのか、と女の子が辺りを見回していると、校庭の一角にある国旗の掲揚ポールの上に佇む人影があった。
シルクハット、マント、仮面、黒ずくめの衣装。このセントラルシティでそんな風貌をしているのは、たった一人。子供でも知っている、あの怪人。

「レトルト、三世……!」

強い風が吹く中、小揺るぎもせずその場に佇む三世。マントの中から伸ばされた、白い手袋を嵌めたその手が器用に鳴らされる。
喧騒の中、奇妙に大きく響いたその音を暴走メダロット達が知覚した途端、その一角が崩れ立った。

並み居る機体を蹴散らし、サムライだったメダロットの前にいる1機の許に現れたのは、3機の忍者型メダロット。
そして、待っていた1機もまた、忍者型だった。

ニンニンジャ、ワイアーニンジャ、サンニンジャ、待っていた1機は新型のオイニンジャ。
気がつくと、校内の騒ぎが静まっていた。中に入り込んでいたメダロット達の攻撃の音が聞こえない。

「ハンゾウ殿、校内の制圧、完了いたしました」
「ご苦労。だが、三世殿にこれ以上の御心配をおかけするわけにも行かぬ」
「左様、その通り。背後の憂いがなくなった以上、残るは校庭の連中のみ」
「セレクト隊がアテにならぬ以上、我らで何とかせねば」
「うむ。シノビガタナ四人衆、散ッ!!」

状況を確認した後、四人のニンジャ達はばっ、とその場から駆け出し、周辺のメダロットの掃討に入る。

ニンニンジャのジライヤは、両腕の「くない」と「にんじゃとう」を一見大味に、その実的確に振り回して防御をすり抜けつつ頭パーツを破壊していく。
機体が旧式であるため頭は「カミカゼ」ではなく「かすみあみ」だが、野良とは思えぬ熟練度を生かして接近戦型のメダロット、つまり向かってくる連中に仕掛けて回っては動きを封殺する。

ワイアーニンジャのサイゾウは、距離をとろうとする射撃型を優先的に狙う。
今や「敵影感知」に取って代わられ淘汰されている「忍び込み格闘」の効力により、間合いの外から一気に踏み込んで一撃離脱を繰り返し、身軽さに物を言わせて八方から放たれる弾丸をブレイクをガトリングをすり抜けるように交わす。

サンニンジャのハットリの標的は、バグスティンクやホリィオラクルなど、パーツの充填速度が遅く行動が遅れているメダロットだ。両腕のホールド攻撃で足を止めて行動を封じ、ジライヤやサイゾウの攻撃する隙を作り出していく。

オイニンジャのハンゾウ、四人衆筆頭は、それら3機の間を縫うように駆け回り、必殺のアサッシン攻撃で次から次へと暴走メダを屠っていく。通り過ぎた後には頭パーツを失い、メダルを排出して崩れ落ちる機体が残るのみ。
流れ弾を他の暴走メダを盾にかわしつつ、影から影へと走る。

四つの影が動くたびに暴走メダの姿は減っていき、終わってみれば四人衆は無傷、暴走メダロットも動きを封じられた一部を除いて全滅していた。生徒たちは全て校内に避難しており、幸い重傷者はいないようだ。

「あらかた片付きましたな」
「うむ、だが警戒を怠るな。メダロットがこれほどの規模で暴走することは、通常あり得ん」

安堵しかけたサイゾウに警戒を促しつつ、ハンゾウは周辺を見回す。
破壊されたパーツと排出されたメダル、ティンペットが見渡す限りに広がり、まさに死屍累々というべき惨状だった。

「ジライヤ、この学び舎の者達は……」
「暴走した者どもはリミッターが外されたのではなく、通常の状態で判断力をかく乱されていたようで……レーザーやビームの直撃を食らった者もおりましたが、幸い軽度の火傷で済んでおります。他に、重篤な傷を負った者はおりませぬ」
「そうか。それだけは幸いというべきか」
「……やはり、魔の十日間の時と同じく、電波による誘発でしょうか、ハンゾウ殿」
「それも考えられるが、今の時点では何とも言えぬ。三世殿の御意見を伺って―――」

「避けろ、貴様ら!」

『!!』

事態を見守っていた三世から、突然下された回避指示。なぜ、何のためにとは考えず、至誠忠実なる四人衆はまずそれに従い、その場から大きく跳び退った。
直後、四人衆が集まっていた場所を、地面ごと大出力のレーザーが薙ぎ払っていた。的を外したレーザーは花壇を直撃し、敷かれていた土が蒸発するのが見えた。

「ぬうっ、今のはレーザー攻撃!?」
「!? ジライヤ、あれを見よ!」
「な、あ、あれはッ!?」

攻撃して来たメダロットの姿を認めた途端、四人衆は本物の驚愕に襲われた。
白と緑を基調としたカラー、両腕のミサイルとレーザーを振りかざして咆哮する、シャコに似たその異様。

「ご、ゴッドエンペラーだとッ!?」
「あの威力、もしやリミッターが外れて!?」
「違う! 判断力が狂わされておるだけだ! 見よ、あれは忌むべき初期ロットのパーツであるぞ!」
「何と!?」

シャコ型メダロット、ゴッドエンペラー。あのビーストマスターの後継機であり、やはり兵器型としての側面を持つこのメダロットは、かのマッドサイエンティスト・ヘベレケ博士の手による機体だ。
世界征服のために作り出されたというこの機体のポテンシャルは非常に高かったが、リミッターが外された上に装着されたメダルがパーツの影響を受けて凶暴化。
天領イッキによって倒されなければおみくじ街を基点に多くを破壊し灰燼に帰していたと噂される、とんでもない機体だ。

現状、少数生産されて流通しているものは基本構造だけを踏襲した劣化品だが、初期ロットは試作段階も含め、おみくじ町のとあるメダロッターが使用している調整された3機を除いては全て破棄されている。その、はずだった。

「もし完全にリミッターが外れておるのならば、花壇だけでは済んでおらぬ。何より、この学び舎の者達は誰一人として生きてはおらぬぞ!!」
「では、今のうちに止めねば」
「その通り。ゆくぞ、シノビガタナ四人衆ッ!」
『応!』

キシャァァァッ、と咆哮を上げ、あろうことか校舎目掛けてメダフォースを放とうとするゴッドエンペラー。しかし、いかにパーツの性能が高かろうと、メダルのレベルが低く、さらに暴走させられたのがたったの1機では、四人衆の敵ではない。

「「斬り捨て――」」「「――御免ッ!!」

四方からタイミングを合わせて斬り抜ける、四つの影。ゴッドエンペラーの動きが唐突に止まったかと思うと、そのカメラアイから光が消える。そして、だらん、と掲げていた両腕がぶら下がったかと思うと、全てのパーツが排除され、メダルが排出されてざっ、と転がった。

第九話:伝説のレフリー ( No.12 )
   
日時: 2015/10/22 21:22
名前: silva

「しおんしおんしーおーんー!! 大変だよー!!」

教室に下りて来たシオンを出迎えたのは、血相を変えて廊下を走ってきたコハクだった。

「何だ、いきなり!」
「シズクちゃんの通ってる小学校が、暴走メダの大軍に襲われたってー!! 大丈夫かな? ねえ、大丈夫かな!?」
「その話なら知ってる。ついさっきアイリスから連絡が入った」
「アイリスちゃんが無事ってことは、シズクちゃんも無事なの?」
「というか、ついさっきレトルト三世が出てきて片付けたと言っていた。ニンジャ型を4機ほど従えていたとか聞いたな」
「そ、そっか、よかったぁ……」

安堵のあまりへたり込みかけたコハクだったが、シオンの言葉の中に聞き逃せないものがあったのに気づいて一瞬で立ち直り、詰め寄った。

「って、ちょっと待った!? レトルト三世!? 三世が出たの!?」
「らしい。アイリスはそう言っていた」
「あの謎のメダロットってニンジャだったの!?」
「そう言っていたな。種類の違うものが4機、と聞いた」
「てことはニンニンジャ、ワイアーニンジャ、サンニンジャ、ゲットレディ、その辺かな」
「男型オンリーらしいぞ」
「んんんんー、これは大ニュースだよ! 新聞部に伝えないと!」

言うが早いか、踵を返して教室を飛び出していくコハク。その背を見送り、取り残された形のシオンは、誰に言うでもなく呟く。

「……嵐のような奴だ」
『全くだ。ところでシオン、放課後の件は忘れていないだろうな?』
「無論だ、ブレード。俺とお前、コハクとカノン、ユウゴとスクード。このチームならば、負ける方が難しいというものだ」




放課後に訪れた体育館は、話が広がったらしくほとんど全校生徒が押しかけていた。
新聞部の取材班の姿もあり、このロボトルをニュースにするつもりらしい。

「大事になったものだ……」
『煽ったお前が言うな』

クールに突っ込んでくるブレードはひとまずスルーし、シオンは一緒に来た今回のチームメイトに声をかける。

「コハク、ユウゴ、準備はいいか?」
「ばっちぐー!」
『コハクちゃん、それはちょっと古いですよ』
「こうなったら仕方ねえ、腹はくくったぜ」
『ワシも一丁、ぶちかましたろうやないかい』
「結構だ。行くぞ」

自然と開けられている中央スペース、風紀委員がフェンスを置いて回っている中、ハイローズの三人は既に到着していた。

「遅いですわよ、シオンさん」
「済まないな」

挨拶代わりに言葉の応酬。だが、セイカが不意に気遣わしげな表情で言った。

「……小学校の件は聞きましたわ。シズクさんは……」
「あいつなら問題ない。ライフルがかすめて怪我をしたらしいが、今は家で休んでいる」
「そう、ですの。よかった……」

ほっ、と息をつくセイカ。見ればミツグとヒロトも、態度は違えど安心を表している。
普段あまり仲が良いわけではないとはいえ、さすがに相手の身内に命の危険があったとなっては心配だったようだ。
だが、その緩みをあえて断ち切るように、シオンがばっさりと言う。

「ああ。……だが、それとこれとは別の問題だ」
「!」
「シズクはシズク、俺は俺だ。朝のことを謝るかどうかはこの勝負で決める。始めたばかりの俺と、校内ランキングの高くないこの2人。それに、校内最強と言われるお前達ハイローズが勝つか、負けるか。それが重要だ」
「……よく言いますわね。ランキングに関しては同意致しますけど、コハクさんもユウゴさんも経験だけはそれなりにありますし、シオンさんに至ってはあのオペレーティングの腕。正直なところを言わせていただければ、頭を下げてでも勝負を逃げたいくらいですわよ」
「買いかぶられたものだな……だが、ここまで来て逃げはするまい?」
「ええ。ハイローズの名にかけて、勝利をもぎ取らせていただきますわ。ヒロト、ミツグ、準備はよろしくて?」

両サイドの2人に声をかけると、威勢よく応えが返る。

「いつでもOKですよ、リーダー!」
「同じく、準備完了っす!」
「結構。……こちらの準備は完了ですわ」
「こちらも準備は出来ている」

「「「メダロット転送!!」」」

ブレード、カノン、スクード。シオン側の3機が揃い踏みする。

「こちらも参りますわよ」
「「「メダロット転送!!」」」

ガンプ、グレイ。そして、シオンが初めて見るセイカのパートナーは、

「……やはりネコ型か」
「その通り。『ヴァイスカッツェ』のスノウですわ。ふふ、美しいでしょう?」
「それには同意だ。……と」

目線を横に振るが、ここで両者、とんだ見落としに気づいた。

「……レフリーがいないぞ」
「……ロッチのAIにやらせましょうか?」

それでは芸がない、ということで誰か立候補はいないかと声を上げようとした、その時だ。
学校の外でききーっ、と急ブレーキをかける音がしたかと思うと、体育館の中にどどどどどーっと足音も高く走りこんできた男がいた。
白髪交じりの初老、ネクタイが印象的なその服装。

「大変お待たせいたしました! 私、ロボトル協会公認レフリー、ミスターうるちです!」
「う、うるちさんだーッ!?」
「伝説のレフリーがなぜここに!?」

おみくじ町を中心に活躍する、かつてはあのゴッドエンペラーやブラックデビルとのロボトルにすら現れたという伝説の審判だった。
周囲の驚愕や疑問の声は華麗にスルーしつつ、放たれるのは恒例の一言。

「それでは両者……合意と見てよろしいですね!?」
「はい!」
「問題ない」

シオンとセイカ、両チームのリーダーの合意を確認したうるちは、展開されたコンバットフィールドを離れて下がると、威勢よく腕を振り下ろした。

「ロボトルー、ファイッ!!」

第十話:チームロボトル ( No.13 )
   
日時: 2016/03/13 00:36
名前: silva

ついに始まった、シオン達とハイローズとのロボトル。三対三のフルコンタクトだが、始まった直後はフォーメーションを取りつつも、互いに仕掛けずじりじりと様子を伺っている。

「う、攻めて来ないね、セイカちゃん達……」
「ミツグとヒロトはそんなに怖くはないが、セイカが優秀だからな……チームとして動くと強いぞ」

どうすんだ、と自分達のリーダーに目を向けるユウゴだが、そのリーダーたるシオンは至って平然としていた。欠片も動じた様子を見せず、一瞥で戦いの流れを予測する。
ブレードが尋ねた。

「シオン、どう仕掛ける?」
「スノウが問題だな……。ヴァイスカッツェは、両腕のフリーズ攻撃を、頭の重力制御で連射してくるスピードアタッカータイプだ。熟練度もレベルも高い、一撃喰らえば流れを持っていかれるぞ」

フリーズ・サンダーなどの「停止」攻撃は、くらった機体の機能を一時的に凍結させて無防備にしてしまう効果を持つ。他のマイナス症状と比べて持続時間は長くないが、スノウの場合はそれを手数で補っている。

「スノウ自身の攻撃力は最低だが、ガンプとグレイがそれを補っている」
「停止したところに大威力の攻撃、か。なるほど、サポートなしのフルアタッカー構成というわけだ」

では、どう攻めるのか? ふむ、と目を眇めた一秒足らずで、シオンは回答を導き出す。

「コハク、カノンはまず隠蔽で回避に徹しろ。的を散らすのが先決だ」
「おっけー! カノン、マーダーヨーヨー発動!」
「ユウゴ、スクードは変形して防御に回れ。ポイントマンはブレードがやる」
「了解だ! スクード、ドライブA発動!」

シオン達が動き出したのを見て、セイカも指示を飛ばす。

「来ますわね……ヒロト、グレイを突撃させなさい。カノンの頭を押さえるのです」
「うぃっす、リーダー! グレイ、ニクキュハンマーで攻撃だ!」
「ミツグ、あなたはまず支援に徹しなさい。全員に補助チャージを」
「わかりました! ガンプ、コーラーワークを自分にかけろ!」

凄まじいスピードで突っ込んだグレイの拳だが、一瞬早く隠蔽で姿を消したカノンはそれをかわした。
スクードは隙だらけのグレイを追撃せず、変形して装甲を固めつつ援護体制に入る。
そして、残るは互いのリーダー機。チーム戦では、リーダーの判断力と決断力が勝負を決める。
そのどちらにおいても、シオンとセイカは優秀と言える力を備えていた。

「さて……行くぞ、ブレード。ガストソード、アタック!」
「応!」
「さあ、参りますわよ、スノウ! コールドネイル、アクション!」
「はいっ!」

互いに右腕を振りかざし、正面から突っ込む。交錯は一瞬、

「……外したか」
「速い、ですね……」

どちらの攻撃も、当たらずにすれ違った。そしてマスター二人も、それを責めることはない。

「マイナス症状はまず当たらないことが先決だ。焦るな、ブレード」
「向こうの攻撃は鋭いですわよ、スノウ。カウンターに注意なさい」

「応」
「はい、セイカちゃん」

どちらも接近戦型である以上、攻撃に伴うリスクは同じ。
ただ、その点においては今回、ブレードは多少不利な要素を背負っている。

「さて、どうするか」
「ブレード、とにかくスノウの攻撃は絶対に喰らうな。スクードの守りも無限ではない。持続時間と使用回数、スノウの手数を考えれば、防げて6回。お前が停止を喰らえばその時点で負けだ」
「応」

スノウの攻撃は停止のマイナス症状を備えている。掠めただけでも症状を付加されるという特性は、射程がインレンジオンリーという欠点を差し引いても強力なものだ。
逆にスノウの方は、ブレードの攻撃は多少掠めても、自分の攻撃を一発でも当てられればそれで流れを掴み取ることが出来る。
そういう意味では、この勝負はブレードの方が不利だった。

「ただ……ガンプさえ潰せば、こちらのモノだ」

ただし、それを甘受するほどシオンは甘いメダロッターではない。既に、プランは完成していた。
ミツグとヒロト、それぞれと戦った経験がここで生きた。

(チーム戦とはいえ、ミツグとヒロトはパートナーの特性上、単純な攻撃しか出来ず、当人も乗せられやすい。つまり、ハイローズは実質、セイカのワンマンチームと言える)

相手チームの特性を見抜き、

(そのセイカの指揮能力が、二人の力を生かしている。……が、裏を返せば)

弱点を看破し、

(指令塔が機能しなくなれば、瓦解するということだ)

動く。

「コハク、ユウゴ……仕掛けるぞ」

セイカが不穏な気配を感じる間もあればこそ。
頷いた二人が、全く同時に指示を出す。が、それに被せるようにして大声でブレードに命令するシオンの声が、それをかき消した。

「カノン―――」
「スクード、ド――」
「ブレード!! 突撃だ!! ガストソード、アタック!!」
「応ッ!!」

応じるブレードも、マスターの意を理解して大音声で返し、スノウ目掛けて正面から突撃する。
これに一瞬圧倒されたスノウだったが、チャンスとばかり自分も再び右腕を振りかぶって走る。
そこに、セイカの指示が飛ぶ。

「スノウ、なぐる攻撃ならば貫通はしません! 左腕は捨てなさい!」
「は、はい!」

停止さえ付与すれば流れを掴める、そう理解しているからこその捨て身の指示。
ただの特攻とは違う、勝機を掴むためのダメージ。まさに、肉を切らせて骨を断つ。

(そう、お前は、この状況ならば、そのように指示するだろう、セイカ)

そして、それこそがまさに、シオンの狙った状況。知らず、口元にかすかな笑みが浮かぶ。

「ブレード、ガードしろ! 左腕はくれてやれ!」
「応! ……っぐ!」

果たして、一閃したソード攻撃は、元々耐久には劣るヴァイスカッツェの左腕パーツを、一撃で機能停止に追い込んでいた。が、それによって守られた右腕の爪が、守りを固めたブレードの左腕を切りつけた。
瞬間、外部からの冷却による急激な放熱で、キャリバースタッグの機能にマヒが発生する。
停止のマイナス症状が、ついに付与されたのだ。
動いた戦況に、ギャラリーがいかなる感情の表れか、大きくどよめく。
そして、チャンスとばかりミツグとヒロトが仕掛ける、

「今だグレイ! ケモノアギトで食いちぎってやれ!」
「ガンプ、チャンスだ! ステガレーザー発射!」

その瞬間を、シオンは待っていた。

「コハク、ユウゴ」
「うん!」
「おう!」

グレイとガンプが動き出す間際、その声は奇妙に明瞭に、体育館に響いた。

「―――ショウタイムだ」

第十一話:連携 ( No.14 )
   
日時: 2016/03/13 00:36
名前: silva

瞬間。まずそれは、

「うぐっ!?」

スノウの呻き声から始まった。横合いから突然衝撃が襲ったかと思うと、全身に電流が流れ、メダルからのパーツへのシグナルが正常に通らず、パーツそのものの機能もマヒしている。
停止の症状だ。誰が、と思いかけて気づいた。
その当人が、

「アタシの前で隙を見せるとは、ナメられたもんだね!」
「か、カノンさん、ですか……っ!!」

威勢よく啖呵を切る。カノンのボディであるディアアイドルは、メダフォースエネルギーを使用した変形が可能な機体だ。そのドライブB、右腕に当たる行動は、ヨーヨーを使用したサンダー攻撃。
電流による停止症状を付与する攻撃だ。
今になってようやく、セイカは気づく。

「ッ、まさか、ブレードさんを囮に!?」
「そうだ。こいつのスピードで正面から突撃すれば、受けるしかない。さらに言えば、挑まれれば逃げないお前の性格も織り込み済みだ」
「だ、だとしても、まさかリーダー機を……それに、スノウを封じたところで、まだ二人が残っておりますわよ!」

確かにセイカの言うとおり、まだグレイとガンプがフリーだ。スノウを停止させたとしても、二人の攻撃からブレードは逃げられない。
その、はずだった。
だが、

「……あまり知られていない事実だが、マイナス症状の持続時間は与えたダメージに比例して延びる。そして、ブレードの傷は軽微。対して、防御の出来ないところに直撃を受けたスノウのダメージはそれなりだ」
「!!」

ブレードの停止症状が、解ける。飛びのいた次の瞬間、先ほどまで頭のあった空間をブルーティスの左腕が噛み砕いていた。

「だーっ、外した!!」
「それが命取りだ。ブレード、変形しろ!」
「応!」

指示に応じたブレードが、その姿を変える。頭部が倒れ、両腕を畳み、脚部が展開し、全体がまとめられる。
現れたのは、鈍く青に輝く刀身を持った空飛ぶ剣。それが、

「ドライブA、アタック!」

空中から飛来し、グレイの頭部パーツを粉砕していた。

「ぐ、グレイ!!」

機能停止して崩れ落ちるグレイの背後で、勢いあまってコンバットフィールドの床面に突き刺さるブレード。そこをチャンスとばかりガンプが左腕のレーザーで狙い打とうとするが、

「コハク!」
「うん! カノン、ゴー!」
「行くぞ、ブレード!」

短縮されたチャージが終了して光芒が放たれた瞬間、そこにはブレードの姿はなかった。
どこだ、と目で追ったガンプは、自らの上に落ちた影に釣られて上を仰ぎ、

「はぁ!?」

仰天した。
カノンが、変形して巨大な剣となったブレードの「柄」を握り、振りかぶって跳躍していたのだ。
馬鹿のような隙を作ったガンプの脳天に、

「はあああああ!!!」

巨大な刃は躊躇なく振り下ろされ、その機体を唐竹割りにしていた。
当然、機能停止だ。

「ガ、ガンプ! バカな、何だよ今の!?」
「これぞチームプレイというヤツだ。……ユウゴ!」
「もう動いてる。スクード!」
「おう」

瞬間、セイカは戦慄した。先ほどから全く動かないため、無意識に注意から外していたスクード。
変形を解除したその姿が、停止症状の解けないスノウの眼前に右腕を突きつけている。

「ッ、スノウ、逃げ―――」

られない。カノンの痛打を受けた機体は未だ機能が復帰せず、数秒の時を要した。
そして、それはこの状況ではあまりにも遅かった。

「あ――――」
「スウェットビーム、シュート!」
「終わりじゃ、スノウ!!」

ユウゴの指示と共に、スクードの右腕から黄色の閃光が迸る。
無防備なスノウの上半身を貫いたそれは、間違いなくヴァイスカッツェの頭部パーツを吹き飛ばしていた。
メダルが排出され、機体が倒れこむ。

「―――ショウ・ダウン」

シオンが呟いた直後、戦況を確認したうるちが叫んだ。

「リーダーメダロットの機能停止を確認! それまで! 勝者、観音崎 詩遠!!」

第十二話:門出、そして忍び寄る影 ( No.15 )
   
日時: 2016/04/05 23:21
名前: silva

会場内は声の渦に飲み込まれていた。驚きや呆れも多少混じっているが、歓声が一番大きい。
何よりも、

「すっげぇ!! 何だよさっきのコンビネーション!」
「リーダーを武器にするとかありなの!?」
「マイナス症状ってそんな弱点があったのか、知らなかった」

見事なチームワークを見せた三人と、その指揮をとったシオンへの驚嘆が大きい。
だが、ハイタッチで喜び合うコハクとユウゴを、自身でも形容のしがたい微妙な感情と共に一瞥するシオンの表情には、照れも安堵もない。それを見たカノンが、まだ変形を解かないまま声をかける。

「クールだねぇ、シオン。せっかく勝ったんだからもうちょっと喜びなって」
「その必要はないな。俺達が組んで勝負に臨み、そのパートナーがお前達である以上、勝利は当然の結果だ」

つまり、打つべき手を打った結果、勝つべくして勝ったのであり、特に喜ぶべきことではない、ということだ。
変形を解除して人型に戻ったブレードも言う。

「そうだな。俺もあまり強い方ではないが、シオンがオペレートする以上、余程の相手でない限り負けはない」
「その余程の相手が、ついこの間出てきたワケだがな」

とはいえ、シオンとしてはキリカに負けたことはさほど悔しいわけではない。メダロットの鍛え方やオペレートの腕、何より経験が違う。それは、身を以って知っている。

(伊達にスペロボ団の幹部をやっているわけではない、か)

ため息をつきつつ、肩を落とすハイローズに歩み寄る。

「……わたくし達の負けですわね」
「ああ。約束通り、お前達三人にはメダロット部に入部してもらう。6人ならば別のコンビネーションも取れるだろう」
「けっ、何でお前らなんかと」

まだ不服そうなヒロトだったが、セイカがそれを窘めて言った。

「ヒロト、現実を見なさいな。事実としてシオンさん達はわたくし達ハイローズを上回った、それを認められませんの?」
「いや、それは……」
「それに、約束は約束。わたくしもここまで見事に負けた以上、もはや文句はございません。我々三人、メダロット部にてお世話になりますわ」
「結構。……さて、ミツグ。真剣ロボトルのルールに従い、パーツを二つもらおうか」
「はぁ!? 何で二つなんだよ!?」

普通、真剣ロボトルでやり取りするパーツは、特別な理由がない限り一つである。
だが、シオンの要求にはちゃんと根拠がある。

「最初にロボトルしたときのことを忘れたか? 持って行かれたらロボトルが出来ないということで、次の対戦では二つ賭けるという条件で見逃してやっただろうが」
「あ……」
「わかったら、渡せ。ルール違反はメダロッターの格を提げるぞ」
「………予備のパーツがねえんだが」
「知るか。用意していないお前が悪い」

取り付く島もないシオンであった。困り果てた子分を見かねてか、盛大に嘆息したセイカが言う。

「仕方ありませんわね……『コールドネイル』と『ホワイトテイル』なら予備がありますし、わたくしが立て替えてもよろしくて?」
「ダメだ。最低でもミツグのパーツを一つはもらう。なあなあで済ませてはこの先メダロッターとしてナメられかねん」
「……ミツグ、諦めなさい」
「そんなバカなー!?」
「最初に俺とブレードを甘く見たお前の失敗、その結果だ。甘んじて受けろ」

結局、『ステガレーザー』と『ホワイトテイル』を取得したシオンであった。



ハイローズを部員に加えた後、入部届けを提出して戻ってきたコハクの先導で、シオン達は部室へとやってきていた。
中を見回したシオンが言う。

「ほう……なかなか広いじゃないか」
「元々は会議室だった部屋だからねー。ものが何にもないけど」
「そりゃ、部員ゼロじゃなー」

肩をすくめるヒロト。何だかんだで順応性が高いのがこの男の長所である。
ちなみにミツグはというと、購買部に予備のパーツを買いに行ってしまいここにはいない。

ヒロトの言うとおり、部室の中はパイプ椅子が数脚と古いテレビがあるだけで、他には何もないガランとした部屋だった。

「まあ、備品については追々必要なものを入れていこう。予算が下りればの話だが……」
「んふふー、そこはあたしにお任せー」
「何ですのコハクさん、その自信は……」

それについては誰も答えを持っていなかったが、シオンとユウゴは長い付き合いだ。
コハクが何とかなるといえば、経過はどうあれ最後には何とかなるとわかっている。

「みのり先生は?」
「今日は手続き色々で顔出せないみたい。ま、ウチが強豪校とかじゃなくてよかったね」
「喜ぶべきなのかどうか、微妙なところだな」

ユウゴが首をかしげる。これが強い学校だと、部内で潰しあいやイジメが普通に発生しているというから笑えない。銀城は幸いというべきなのかどうか、実績もさほどないごくごく普通の中学校で、学校内で確執があるというわけでもない。
それよりも、とセイカが言う。

「部長はどなたですの? お話を聞く限りでは我々だけのようですけど」
「んー、シオンかな?」
「俺、か……」
「うや? ダメなの?」

「仕方があるまい」と引き受けてくれると読んで話を振ったコハクだったが、予想に反してシオンは渋い顔になった。どうも、部長では都合の悪い理由があるらしい。

「何かあんの?」
「個人的に少し、な……」
「けどよ、セイカに振るわけにもいかねえだろ? 公衆の面前であれだけ見事に勝ったわけだし、お前じゃないと変な噂が広まるぞ。特に」

じろり、とユウゴがコハクを睨む。

「へ?」
「そこのテキトーニュース発信装置って問題もあるし」
「それあたしのコト!?」

閑話休題。

「……やむを得んか。俺がいない時はセイカに任せるが、かまわんか?」
「わたくしは別にかまいませんが」
「んー、ならセイカちゃんは副部長ってことで。あ、あたしはマネージャーね」

役職を独断で決定していくコハクだが、人選は正しいので誰も何も言わない。

「そんでは部長、一言どうぞ!」
「どこの宴会部長だお前は。……まあいい」

では、とシオンは一同に向き直って言う。

「流されるままに出来上がったメダロット部ではあるが……部活である以上は大会で上を目指したい。今年の夏のロボトルトーナメントへの出場、そして優勝を狙っていくぞ」
「いきなり優勝狙いかよ! まずは一勝とかじゃねえのかよ!」
「ヒロト、そんなだからお前は器が小さいというんだ。いいか、目標は大きく持つものだ。優勝を目指したところで、ほとんどの学校はその栄冠を掴めずに終わる。ましてや一勝如きが部としての目標では、出場すら出来ずに終わるだろう。……いいか、俺が部長を任された以上手は抜かん。もう一度言うぞ。狙うは優勝唯一つだ!!」

勢いに流されてか、コハクを筆頭に全員が「おう!」と掛け声で応じた。






シオン達が結成の号令をかけていたのとほぼ同じ頃。
駅前の喫茶店の前のベンチで、公衆電話をかけている男の姿があった。

「―――はい。間違いなく二号機です。既にメダロッターを得ているようですが……」
『腕はどうなのだ。奪えそうか』
「……はっきり言えば難しいかと。現状ではメダルもそう育ってはいませんが、マスターのオペレート能力が普通ではありません。加えてあのレトルト三世を警戒せねばならない現状、強攻策で奪い取るのは困難です」
『ロボトルで奪うにも、ワンオフのパーツは真剣ロボトルでのやり取りが出来んからな。テラカドくんの監視網をかいくぐることは不可能である以上、それも無理か』
「どうしますか」
『我々の計画には全ての“EXシリーズ”が必要不可欠……現在こちらの手には6機中の4機のみ。うち1機をあのスペロボ団が持っている、か……』
「宇宙空間のクラスター……もぐりこむまではいいとしても、帰還の方法がありません。例の宇宙メダロットの事件以降、ナビによる警戒レベルも跳ね上がっています」
『加えてナビ・コミュンだったか? アレの一般普及のおかげで地上にまで監視が広がっている。1号機は当分諦めるよりあるまい』
「では、我々は……」
『当面確保している分を仕上げるのを優先しろ。4機を近いうちに別のラボへ移送し、調整を行う。メダルの方はこちらで調整を進めておく』
「わかりました。それで、内訳は?」
『追々詳細を伝えるが……明後日の正午、3号機を2番街のラボに運ぶ。くれぐれもあのレトルト三世には気取られるなよ』
「はっ、わかっております。全てはエクスキューショナーズの名の下に」

第13話:部活、そして ( No.16 )
   
日時: 2016/04/28 17:54
名前: silva

メダロット部の始動から1週間。5人は早くも、シオンを部長に据えたことを後悔していた。パートナーともども、である。

なぜならば、部活動中のシオンはいわゆる鬼部長だったからである。
部活の内容は、コハクの持ってくる大会などの情報を元に、ロボトルの訓練やメダロットについての知識を深める学習が主だが、シオンはとにかく手を抜かないのだ。
しかもメダロット好きが高じてか、何とカードロボトルにまで手を出している(あくまで彼個人の趣味なのだが、空気に押されてか部員全員が参加している)。
ちなみに顧問のみのり先生はというと、シオンがバリバリ動く上に有能なため出番がほとんどなく、部室にいてもほとんど傍観状態である。

現在は金曜日の放課後だが、週末だろうとシオンは手を抜かず部員を叱咤する。
今は2対2のコンビプレーの練習中だが、

「コハク、指示が遅い! ドライブごとの充填・放熱のタイムロスをちゃんと計算しろ! メダフォースの無駄だ!」
「ふぇぇえ~っ!」
「ヒロト、お前もだ! 何度言えばわかる、単にグレイを突っ込ませるだけではどうにもならない! 味方の援護がない状況でがむしゃら攻撃をするな! 的になるだけだ!」
「だああああっ、わかってるっての!」
「それとスノウ! セイカの指示をちゃんと聞き取れ! 自分の判断を優先するな、マスターに従え! メダロットとメダロッターは二人で一人前だと言ったはずだぞ!」
「す、すみません、部長!」
「ミツグとガンプ、速ければいいというものじゃない! 考えなしに動き回るな! チャージ時間が長いことは見ようによってはメリットにもなる! 援護パーツがないからと言って攻撃に偏るな、位置取り一つで戦況はいくらでも変えられる!」
「お、オッス!」

本当に容赦がない。欠点や失敗を次々と鋭く指摘し、欠片も手加減をしない。
全員辟易しつつも文句が出ないのは、指摘の内容がいちいち的確なことと、悪口の類を一切口にしないこと、そしてシオン自身も指摘の内容を自分とブレードで実践しているからだ。

「ブレード、聞いていたな?」
「当然だ。……さて、俺の課題は何だ?」
「お前の場合、まず踏み込みが少し深すぎる。KWGは基本的に、どうしても右腕のソード攻撃が主力になるからな。懐に潜り込むのは却って危険だ。間合いをすぐに離せるよう、的確な位置を掴む必要がある」
「ふむ……スピード型の俺には少々厳しいな」
「厳しくとも、やらねば負ける。全員聞け! 今月中に俺とブレードも含む全員、メダフォースの習得を目標とする!」

体育館に響き渡った号令に、一同揃って「え―――!?」と耳を疑った。
だが、シオンはやると言ったらやるのだ。しかも勝算のある状態で。

「メダフォースに必要なのはメダルレベルと熟練度だ。これまでの特訓で十分に素地は整っている、あとはきっかけだ。……出来なかったからと言ってあれこれ言う気はないが、もしサボりが原因だった場合は補習だ! もちろん俺とブレードも例外ではない」




実戦訓練が終わったら、次は部室でメダロットの知識についての授業である。
30分程度の短いものだが、内容は濃い。

「……今日は、ロボトルをする上で外せない、フィールドとの相性について説明する」

メダロットの脚部タイプには、いくつかの種類がある。

「飛行、浮遊、二脚、多脚、車両、戦車、潜水の7つ。それぞれの特徴と、適応するフィールドはわかるか?」
「はーい、あたしわかりまーす」

威勢よく手を上げたコハクの答えは、

「飛行は機動が高くて、射撃に向いてて、『砂漠』『砂地』『アリ地獄』『針地獄』に強い。
浮遊は装甲が少し高いけど機動が低くて、どの地形にも対応できるけど専門家より弱い。
二脚は平均バランスが良くて、『森林』『草原』『ジャングル』『密林』に強いけど、実はだいたいどこでも対応する万能型。
多脚は推進が高いけど装甲が低めの格闘向きで、『山地』『岩場』『火山』『溶岩』に強い。
車両は機動が高くて装甲もそこそこあるし、推進も高くて射撃に向いてる。でも、『街中』『道路』『スタジアム』『ステージ』に強い以外はどこの地形も苦手。
戦車は装甲が凄く高くて射撃向きだけど、機動も推進も最低で遅くて、どの地形でも同じ性能を発揮する。
潜水は装甲と推進が高くて格闘に向いてて、『水辺』『水中』『氷河』『深海』に強い。以上でーす」
「お見事。満点だ」

パーフェクトであった。さすがに何度も受講していると知識も増えてくる。

「さて、これらの地形は本来、『水中』や『砂漠』『山地』などは、普通にロボトルしている限りではまず世話にならない地形だ。にも関わらず、なぜこのようなものが設定されているのか? ユウゴ、わかるか?」
「えーと……メダロッチが展開するコンバットフィールドの設定を変えて、ロボトルに幅を持たせるためだ。元は大会用の設定だったっけか?」
「その通り。クラスターに使用されている地形再現システム、あれが『魔の十日間事件』以後、メダロッチの標準装備とされている。すすたけ村で一足先に出た試作モデルは値打ちがついているな」

ちなみに、特に設定をしないデフォルトの状態では、今いる場所がそのままフィールドに変更される。
おみくじ町の近辺にあるアンダーシェルは「水中」、ヘブンズゲートは「砂漠」に設定されている。基本的に水辺の近くなら水系のフィールド、地上から離れると砂系のフィールドになる。

「ついでに一つクイズだ。潜水メダロットは水中以外の地形では、どのように動くのか?」
「あ、オレ知ってるぜ。空気を取り入れて、それを噴き出して空中を『泳ぐ』んだ。だから砂地や砂漠だとまともに進めねえんだ」
「正解だヒロト、さすがにいつまでももの知らずではないな」
「いちいち一言多いんだよ部長!?」

閑話休題。

「さて、今コハクが上げた中にない地形がいくつかあるが、これは何か?」
「はい。『宇宙』『サイバー』『大気圏』ですわ」
「そうだ。セイカ、それぞれの特徴は?」
「宇宙は全てのメダロットが低重力下で行動が遅くなり、サイバーは脚部タイプに関わらず一定のスピードに保たれます。そして大気圏は、飛行メダロットは最大のパフォーマンスを、それ以外のメダロットは一定の性能を発揮しますわ」
「満点だ。これらの地形は、クラスターなど特殊な状況下でのみ適用される。だから俺たちが気にする必要は通常ないが、覚えてはおけ」

そして、もう一つ。

「飛行メダロットは空を飛ぶ。だから普通、水中以外では自由自在に思えるが、そうではない。なぜかわかるか?」
「ええと、もしかして飛べる高度に制限がかかってる?」
「コハク、当たりだ。正確にはスペックの限界で、『風の翼』に対応している一部を除き、地面または水面から一定の高さ以上には飛べない。無論マザーメダロットはこの限りではないがな」

全てのメダロットの始祖、外宇宙の存在と言われるマザー。現在はこの地球には存在しないが、月にいるのではないか、とまことしやかに囁かれている。

「では、ここまでの内容の小テストをやるぞ」
「なーんか、メダロットの塾に来たみたい……」




―――深夜。山の上の神社の境内に一人佇んでいたレトルト三世の下に、一機のメダロットが姿を現す。
ハンゾウだ。

「夜分に失礼。三世殿、ご報告が」
「なんだ」
「はっ、拙者の手の者からの情報なのですが……3番街近くにメダロット社の支社があるのはご存知ですかな?」
「ああ」

それがどうかしたのか、と目線を向けることもなく促す三世に、ハンゾウは思わぬ情報を告げた。

「その裏、路地の近くにラボがあるのですが……そこで先ほど、宇宙メダロットらしき機体を目撃した、と」
「何?」

宇宙メダロット。そう聞いて三世がまず思い出したのは、あの「魔の十日間」事件の原因となったMST型・ミストラルだ。
しかし、ハンゾウによれば彼ではないらしい。そもそもミストラルは現在、異星からの友好の使者として、彼のマスターと共にクラスターに滞在している。

「よく見つからなかったな」
「そやつのボディはスパインですので……」

閑話休題。

「多脚型のようなのですが、一本足で剣と盾を持ったようなシルエットだったと……」
「一本足で剣と盾だと?」

その特徴で宇宙メダロットと言えば、一つしかない。
ミストラルへの道を阻む最後の壁、最強の宇宙メダロットと呼ばれたあの機体。

「ゼロスーサイド……そんな機体が何故メダロット社に……?」
「わかりませぬ……ですが、警戒が必要かと。ことによれば、エクスキューショナーズが関係しているやも知れませぬぞ」
「そうだな……だが、本当に連中ならばお前達では荷が重い」

三世は四人衆の力を熟知している。ゆえに、その力を過大にも過小にも見積もらない。
ただ、自身の経験とあわせて、事実だけを確認する。

「はっ……いかがなさいますか、三世殿」
「………ハットリに連絡しろ。アレの用意だ」
「『ツクヨミ』ですか……されど、アレは適合するメダルが……」
「当たりは既につけてある。とにかく、出来るだけ早くシーリングを解いておけ。奴らが本格的に動き出したのなら、私も今までのように小競り合いにばかり関わってはいられん」
「承知仕りました。しからば、御免」

ざあっ、と風が強く吹き、それに紛れるようにしてハンゾウの気配が消えた。
三世はシルクハットの鍔を抑えつつ、仮面の下から虚空を睨む。

「……二度と、遅れは取らない」


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