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RSSフィード S・E・……[ピーッ]

日時: 2013/05/26 00:44
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そも、地です。
短編書きました。
利用規約に反してないか心配ですが、最後まで読めばギリギリセーフだと思います。
タイトルの時点で危ないですが……。
まぁ、どうぞ。



Re: S・E・……[ピーッ] ( No.3 )
日時: 2013/05/26 01:28
名前:

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「ねーねーワンダ、あれなーに?」
 
 
暑い夏の日、ミーンミーンと煩い山の麓の小さな公園にて、名門宝条一族の末裔:宝条ルクは尋ねた。
尋ねられた相手はワンダ。
ワンダはメダロットという科学技術の粋を集めた生命体であるのだが、ここでは物語と関係無いので割愛させていただきたい。
このメダロットに関する研究によって宝条一族は財を築き、名門一族にまで上り詰めたにも関わらず、メダロットの説明を省略するのであるから、本当に物語に関係ないと思っていただいて結構だ。
 
ワンダとルクは山の上にある大きな屋敷に住んでいるのだが、活発な性格のルクが外で遊びたいというので、わざわざ山の麓の公園まで車で降りてきたのだった。
まだ3歳のルクを一人で遊びに行かせるわけにはいかないが、彼女の父親は忙しくルクのお守りを出来ない状態にあった。
そこでワンダと車の運転係の執事がルクについてやってきたのだった。
しばらく公園で遊んでいたのだが、ルクは不意に地面に何かを見つけた。
 
そんなこんなで、屋敷に住むお嬢様:宝条ルクは地面を指差しながら、親友のメダロット:ワンダに問いかけているのだ。
 
「どれどれ?」
 
ワンダはルクの指差す方を見る。
当然、ルクの疑問に答えてやろうと思ったからである。
  
「あれはね。蝉よ」
 
ワンダがそう答えるとルクは首をかしげる。
 
「S・E・M・I?」
 
きっと蝉という言葉自体を初めて聞いたのだろう。
お嬢様にありがちな世間知らずな子に育ってはならぬと、ワンダは説明を付け加える。
 
「そう。蝉はね一週間しか生きれない虫さんなの」
「ええー!一週間だけ?可哀そう」
 
3歳のルクは純粋に、短い寿命の蝉を哀れに思った。
 
「そうね。可哀そうね」
 
3歳のルクの感受性の高さに感心しながらワンダはまるで母親の様に答える。
ルクは蝉を再び観察した後、ワンダに向かってこう言った。
 
「でも蝉さん達楽しそうだよー。ホラ!」
 
ルクが再び指を指すのでワンダは再び蝉の方をみた。
 
「そ、……そうだね」
 
その時ワンダは気が付いた。
蝉たちが……たくさん集まっている。
何十匹も集まっている。
そして……。
 
これをルクに見せていていいのかどうかワンダは真剣になやんだ。
 
「ワンダー。蝉さん達何やってるのかなー?」
 
ルクはそういって純粋な眼差しをワンダに向ける。
ワンダはその眼差しをこんなに痛く感じたのは初めてだった。
 
このルクの質問に答えてやる事は簡単である。
〝交尾してるのよー。もっと詳しくいうと乱交よー。ウフフフフ〟と言えば良い。
しかし、そうなるとルクは十中八九〝交尾って何?〟と聞いてくる。
そうなった場合ワンダは答えられるのか?
知識として以前に答えてもいいのか?
〝ペニスをワギナに突っ込むのよ。オホホホホ〟なんて言っていいのか?
3歳の女の子に!
名門宝条一族のお嬢様に!
こんなタイミングでこんなことを教えてしまうと、ルクがどえらい変態に育ってしまうのではないかとワンダは心配した。
そして、導きだした答えがこれだ。
 
 
「な、何をやってるのかしらね、私分からないわ」
 
 
逃げた。
 
「爺やー爺やー!」
 
 
ワンダが分からないなら仕方ないと、ルクはこんどは車を運転してくれていた執事を呼び出す。
何もしらない執事はルクに呼ばれるままにこちらへやってくる。
 
 
「どうしましたかな?お嬢様」
「爺や、セミさん達何をやってるのかな?」
 
執事はルクの指す方を見て、思わず「ほぁッ」と声を上げた。
そして、ワンダの方を見る。
ワンダは目で〝なんとかしてくれ!〟と訴えかけてくる。
  
これはどう答えればいいのか執事だって分からない。
しかし、ここではぐらかしてはルクに何を言われるか分かったものじゃない。
いや、それよりも、教えられるものなら教えておいてもいいかもしれないとすら執事は思った。
いつかは教育せねばならない事。
名門宝条一族の末裔、ルクならば、聡明なる彼女ならば良い理解をするのではなかろうか。
しかし、やはり……。
そう考えた結果、執事はこう言った。
 
 
「あれはね……全力で生きているんですよ」
 
執事は最初、最大限の譲歩のつもりでこう言った。
しかし、口にだして言ってみると、もしかすると本当にそうなのではないかと思った。
 
「プライドも理性もかなぐり捨てて、カッコ悪くても、軽蔑されても、一週間という短い寿命を全力で生き抜いているのです。
あれがセミさんの本気の生き様で、死に様なのですよ……」
 
セミたちには本能を抑える理性なんてない。
短い寿命の中で子孫を残さんと必死になるだけだ。
それを愚かだと捉えるか?
少なくとも彼らは必至である。全力である。
自分の持てる力の全てをSEXに掛けているのである。
そんな生命の本気の姿に執事は68歳という年になって、今更ながら感動していた。
ルクに何かを教えようとして、気が付けば自分が蝉たちに何かを教えられていたのだった。
 
「……爺やの言ってること難しくてわかんないー」
「そうでございますか」
 
たしかに子供には分かりにくかったな、と少し反省して執事は苦笑いをした。
 
「まぁいいや、ワンダー! セミさん踏んだら駄目だからあっちであそぼー」
 
そういってルクはワンダの手を取って向こうの方に駆けていく。
その後ろ姿の見て執事は目を細めた。
 
短い命の中で全力で生きる蝉達。
彼らに執事が魅せられる事はある意味では必然なのかもしれない。
 
彼の仕える宝条家は何故だかは分からないが短命な一族だ。
常に不幸な事故にあい、若くして死ぬ。
しかし、その短い命で宝条一族の人間は常人が一生掛っても成し遂げられない偉業を達成する。
その姿が寿命が短くとも全力で生きる蝉の姿に重なったのかもしれない。
 
ルクもそんな宝条家のジンクスを抱えているのだとするならば……。
短い人生を全力で生きてほしいと執事は本気で思った。
周りからどれだけ避難されようとも彼女が全力で、本気で、必死で生きる事を望んだ。
 
 
執事が宝条家に対する忠誠を胸に刻みつけている頃、彼の足元ではミーンミーンと煩い鳴き声を上げながら、新たな生命が生みだされている真っ最中だった。
 
 
 
 
 S・E・……M・I  おしまい
  
 
 
 
 
 
※最後に出てきたワンダとルクはDISAPPEARANCE四部作(>>[225] >>[429] >>[786] >>[940])
 という糞長い話に出てくるキャラクターです。興味がありましたら、そちらの作品もどうぞ。