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RSSフィード S・E・……[ピーッ]

日時: 2013/05/26 00:44
名前:

そも、地です。
短編書きました。
利用規約に反してないか心配ですが、最後まで読めばギリギリセーフだと思います。
タイトルの時点で危ないですが……。
まぁ、どうぞ。



Re: S・E・……[ピーッ] ( No.1 )
日時: 2013/05/25 23:30
名前:


 
「突然ですが私とSEXしませんか?」
 
 
 その男はあまりにも唐突に、そしてあっさりと女にそう言った。
 
 
ある蒸し暑い夏の日だった。
山の麓にある小さな町の小さな公園で女は憂いた目で、溜息をついた。
彼女は、今、とても重要な問題を抱えていた。
 
しかし、その男の言葉はそんな重要な問題すら吹き飛ばした。
男と女には面識はない。初対面である。
彼女が一人で黄昏れているところに、いきなり近づいてきて、藪から棒に言葉を発したのだ。
会話の流れも糞もない。
不意な言葉であった。
 
「は?」
 
女はそう返した。そうしか返せなかった。
きっと自分の聞き間違いなのだろう。
もしも聞き間違いでないとするなら、きっと何かの比喩表現か何かのつもりで言ったのだろう。
いや、声をかける相手を間違ったのかもしれない。ならば、自分が振り返るだけで相手は間違いに気づくだろう。
そうであってくれ!
たった一言の「は?」にそれら様々な思いを込めて、彼女は男を見た。
 
すると男はにっこりと笑顔で彼女をむかえた。
容姿端麗で背が高く、どことなく爽やかな雰囲気の漂う紳士風の男だった。
 
「突然ですが、私と、SEX、しませんか?」
 
しかし、全てをぶち壊すセリフが再び放たれる。
女が男の言葉を聞き逃したと思ったのだろう、男はさっきよりも滑舌よく、聞こえやすいように区切って、同じセリフを吐いた。
 
「意味がわかりません……」
 
女は明らかに嫌悪を顔に表現し、少し後ずさりしながら答える。
 
「おや、わかりませんか? 変わった方ですね」
 
男は本当に不思議そうな顔をして言った。
変わった方とお前にだけは言われる筋合いはない、と女は思ったが、男があまりに不思議そうな顔をするので自分の方がおかしいのだろうか、と一瞬不安になった。
いやいや、そんなはずはないと女は正気を取り戻す。
 
「い、いきなりそんなこと言われても分かるわけないでしょ!」
「ほう、ではご説明しましょうか」
 
男は言う。
言うセリフさえまともであれば、本当に誠実な顔をしている。
 
「取り敢えず……聞くだけ聞いてみるわ」
 
女がそう返事をすると男は、コホンッ、と軽く咳払いをして説明を始めた。
 
「えー…SEXというのは英語では性別という意味を表す単語です。 
パスポートの性別の欄にもSEXと書いてありますね。 
しかし、日本でこの言葉が使われる場合、大体の場合は性行為を表してます。
 つまり、今のは“私と性行為をしませんか?”という意味になります」
 
男は説明し終えると、伝わりましたか? とでも言わんばかりに眉をピッと動かす。
 
「いや、それは分かっています」
 
女の反応は実に冷たいものだった。
 
「え?だって意味が分からないとさっきおっしゃったじゃないですか」
 
男が眉間に皺を寄せて、不満そうに言う。
自分の説明がまったくの徒労に終わった事に対し、男はわずかながら怒りを感じていた。
思わず、すいません、と謝罪しそうになる女だったが、そもそも悪いのは自分ではないと気が付き言った。
 
「違う。SEXという言葉の意味が分からなかったんじゃなくて、どうしていきなりSEXをするのかが分からないっていってるの」
 
「SEXをすることに理由なんてありません」
 
いけしゃあしゃあと男は言う。
絶句する女に、男は質問を投げかけた。
 
「理由を持ってSEXをする方が果たしてこの日本にどれだけいらっしゃるのでしょう?」
 
「いや、いるでしょう。子供がほしい、とか」
 
女は男の質問に即答する。
しかし、男はひるまずに語る。
 
「なるほど、子供ですか。はい、なるほど。そういう理由あるSEXも存在するでしょう。
しかし、しかしですよ? 例えばです。 若く、財力もない学生達が自分の恋人とSEXをするとき
果たして、彼らは子供を作るという理由を持っているでしょうか?」

そういわれて女は言葉を失った。
言われてみればそうかもしれない。
果たして、SEXが単に子供をつくる為の手段にすぎないのであれば、まだまだ未熟な中高生達は、童貞がどうだの処女を捨てるだの、性の話題に花咲かせる事も、行動に移すことも無いだろう。
男の追撃は続く。
 
「付き合って5か月の若き少年Vと少女Rが、わざわざコンドームを付け、子供ができないようにしてまでSEXをするのは何故か?少年Kと少女Cが一夜に2回連続でSEXをしたことに果たして理由はあるのか?」
 
多分、理由らしい理由は無いのだろう。
と女は思った。
しかし、この男の弁を認めるわけにもいかない。
とはいえ、女は男の話す内容を否定する材料もなく、低く唸り声を上げて抵抗するしかなかった。
 
「理由なんてありません。そこには理由なんてないのです。だから理由なきSEXが存在してもいいのです」
 
「いや、き、気持ちいいから……そうよ。気持ちいからSEXするのよ」
 
苦し紛れの女から、絞り出すような声で反論の言葉が漏れ出た。
女自身、あまりこういう俗っぽい結論には至りたくなかったのだが、致し方ない。
 
「……なるほど、快楽の為という理由ですか」
 
男は左手の平に右手の拳をポンッと振り下ろして納得する。
意外な程に男があっさり女の主張を認めたので、女は少し調子付いて語る。
 
「快楽とか、お互いの愛情を確かめる為とか、コミュニケーションとしてとか、理由なんていくらでもあるわ。
うん。理由のないSEXなんてやっぱりないのよ」
「確かに」
 
男は女の言葉を受け入れると、顎に手を当てて考える。
一方、女は〝 完 全 論 破 〟とでも言いたげに、腰に手を当てて得意げになっている。
 
「ところで、あなた」
 
しばらく沈黙を守っていた男が言った。
 
「顔面をぶん殴っていいですか?」
「なんでだよ!」
 
相変わらずエキセントリックな男の思考回路に女は声を上げてツッコミを入れた。
男はツッコミを入れられたとは思わず、女が純粋に何故顔面をぶんなぐるのかを尋ねたと思い、真面目に答えた。
 
「趣味です」
「趣味ぃ?」
 
男のまさかの回答に、女は声が裏返った。
 
「女性を殴っていたがる姿を見るのが趣味なんです」
「最低な趣味ね」
 
神妙な顔をして、自らのとんでもない趣向を暴露する男に女は冷たい言葉を浴びせる。
しかしその声を聴くに、女が動揺している事は明らかであった。
 
「殴っていいですか?」
 
お母さん、お菓子買ってもいい~?的な感覚で女に暴行の許可を求める男。
 
「ダメよ」
 
当然の反応を見せる女。
 
「どうしてですか?」
 
何故か諦めない男。
 
「痛いから」
 
ごもっともな理由を言う女。
 
「痛いのは嫌いですか?」
 
当たり前の事を確認する男。
もっとも、この男にとっての当たり前が当たり前でなさそうなので、この場合の当たり前とはあまりを意味をなさない。
 
「大っ嫌い」
 
女が全力で拒否をすると、男は間髪入れずにこう言う。
 
「では、あなたの頬を舐めまわしていいですか?」
 
新たなる変態的提案。
 
「なんでよ」
 
もはや、この男に何か質問をしてもまともな答えが返ってくるとは思えないが、女は一応の理由を尋ねてみる。
半分以上諦めながらも、心の隅の隅の隅の隅の隅に残ったわずかな希望を込めた上での「なんでよ」を発した。
  
  
「趣味です」
 
女は戦慄した。
 
 
「いいですか?」
 
そんな女の気持ちも知らずに、男の暴走は止まらない。
 
「ダメにきまってるでしょ」
「どうしてですか?」
 
諦めない。
何故か諦めない。
ダメにきまってると言われようとも諦めない。
 
「気持ち悪いから」
 
いちいち理由を述べなくてはいけない事自体に怒りを感じながら女は返答する。
 
「気持ち悪いのは嫌いですか?」
「大っっっ嫌い」
 
実に当たり前の質問に、当たり前の回答だ。
 
「では、気持ちいいのは好きですか?」
「気持ちいいのはそりゃ好きでしょ」
 
実に当たり前の質問に、当たり前の回答だ。
……と少なくとも女は思ったはずだ。
しかし、女がそう答えた瞬間に男は満面の笑みでこう言った。
 
 
「なるほど、つまりSEXがしたいということですね」
 
 
「なんでそうなるのよ!」
 
女、絶叫。
 
「さぁSEXをしましょう」
 
元気いっぱいに男が言う。
 
「だからなんで?」
 
質問ではない。
これは拒否の言葉だ。
 
「気持ちいいのが好きって言ったじゃないですか」
 
だが、やはり男は質問として捉え、真面目に理由を説明する。
 
「言ったけど」
 
じりじりと自分が追いつめられていくのを女は実感する。
 
「気持ちいいのはSEXをする理由になるって言いましたよね?」
 
これはマズイ。
 
「それも確かに言ったけど」
 
そして、女は悟った。
この男が変態的な趣味を暴露してきたのは罠だったのだ。
女とSEXする方便を作る為の作戦であったのだ。
実際には男には、そんな変態的趣向は無い。
女は悟った。
でもどっちにせよ、この男は変態なのだろう。
 
「よし、SEXをする理由ができました。さぁSEXをしましょう。ちょっとそこの木の陰で」
「どんだけアブノーマルなプレイをする気よ!」
 
ツッコミを入れる元気だけは健在であった。
 
「さぁSEXしましょう」
「いや……」
 
女の手を取り、低く甘い声で誘う男。
女はなんとかこの男に諦めてもらえるような理由を探しながら、男から上半身を遠ざける。
 
「カモンベイベー。孕めベイベー」
「やかましい!」
 
やはり、ツッコミを入れる女。
ここまで追い詰められてもまだ、それだけの元気がある女も流石であるが、こんなひどい下ネタギャグをすがすがしいほどの笑顔で言えるこの男も大したものである。
 
「あれ?SEXしないんですか?」
 
女の拒否にようやく気が付いた男が不思議そうに言う。
 
「理由ができたんだからしましょうよ、SEX。やっぱりSEXには理由がないといけませんね」
 
男は平然とそう言った。
女はその男の言葉に潜む矛盾を発見する。
 
「あなたさっきSEXをするのに理由は無いって言ってたよね?」
 
勝った!
いや、何に勝ったのかは分からないが、防戦一方だった女に攻めるチャンスが舞い戻って来た。
女はそう思った。
しかし、男はしみじみとこう語る。
 
「いやあ、あの頃の自分は若かった……」
 
そして、女は呆れてこう言う。
 
「ついさっきの話よ」
 
そういってやると男は急に俯いて黙り込む。
その顔からは先ほどまでのような朗らかな笑顔は消え、なにか深刻な問題を抱えているかのような力の無い表情をしていた。
何か男を傷つけるような事を言っただろうか、と女は心配になった。
いくら無礼なこの男だったとしても、傷つけるような事を言うつもりは女には無かったし、もし傷つけてしまったのであればいい気はしない。
 
 
「実は私、あと一週間で死ぬんです」
 
 
男は真剣な顔で言った。
 
「え?」
 
女は何者かに心臓を掴まれたような気分になった。
その何者かが、無理矢理に女の心臓を動かして、女の鼓動を早めさせているような感覚がした。
 
普通ならば、またどうせ嘘をついているのだろうと思い聞き流す所であった。
しかし、彼女は男の言葉を信じた。
否、まだ信じたわけではないが、信じたいと思った。
彼女もまた普通ではなかった。
この男が一週間で死んでしまうという事を信じたくなる〝とある〟理由を抱えていたのだ。
 
「私はあと一週間の寿命です。だからさっきまでの私は若かったのです」
 
男は続ける。
女の動揺なんてお構いなしに話をする。
しかも、相変わらずよく分からない事を言う。
 
「……どういうことなの?」
 
これは普通に疑問に思っただけの質問である。
〝あと一週間の寿命〟=〝さっきは若かった〟の理屈が分からない。
男は語る。
 
「例えば、あと70年くらいの寿命がある20歳の女性が、4年前の自分、16歳の時の自分を振り返り、
あの頃の自分は若かったというのはアリですよね?
残り寿命70年に対して、4年前なら、あの頃は若かったと言うのが許される。
ということは残り寿命が1週間しかない私は、ついさっきの自分にも若かったと言うのが許されるわけです」

 
「ん?」
 
いや、待てその理屈はおかしい。
女はそう反論しようと思ったが、男自身も自分の言っている屁理屈のおかしさに気が付いているのか、女に反論の余地を与えずに話し続ける。
 
「というわけでSEXに理由は必要ないといっていたときの自分は若かったのです。いまは若干、年を取って考えが変わりました」
「なんか今の納得いかないけど、ツッコんでも無駄な気がするしとりあえず許してあげるわ」
 
女は諦めた。
この男の言う事についてあまり、深く言及しても良い事はないという事を女はこの短期間で学んでいた。
今になって振り返ってみると、さっきまでの男の言う事にいちいち反応していた自分は若かったのだな。
皮肉にも女はそう思った。
 
「そうですか、つまりSEXをしてくれるということですね」
 
学習しない男である。
 
「違う」
 
この会話を聞いていた者が100人いれば、100人が口をそろえてこういうだろう。
そりゃそうだ。
 
「ええー!?」
 
しかし、男は驚く。とてつも無く驚く。
目玉が飛び出るほど驚くとは、まさしく今の男を表す言葉なのだろう。
 
「ええー、じゃない。さっきまでのあなたが若かった事を認めることとSEXする事を許可するのでは話が違うでしょ?」
「まったく、屁理屈を」
「お前が言うな!」