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RSSフィード S・E・……[ピーッ]

日時: 2013/05/26 00:44
名前:

そも、地です。
短編書きました。
利用規約に反してないか心配ですが、最後まで読めばギリギリセーフだと思います。
タイトルの時点で危ないですが……。
まぁ、どうぞ。



Re: S・E・……[ピーッ] ( No.1 )
日時: 2013/05/25 23:30
名前:


 
「突然ですが私とSEXしませんか?」
 
 
 その男はあまりにも唐突に、そしてあっさりと女にそう言った。
 
 
ある蒸し暑い夏の日だった。
山の麓にある小さな町の小さな公園で女は憂いた目で、溜息をついた。
彼女は、今、とても重要な問題を抱えていた。
 
しかし、その男の言葉はそんな重要な問題すら吹き飛ばした。
男と女には面識はない。初対面である。
彼女が一人で黄昏れているところに、いきなり近づいてきて、藪から棒に言葉を発したのだ。
会話の流れも糞もない。
不意な言葉であった。
 
「は?」
 
女はそう返した。そうしか返せなかった。
きっと自分の聞き間違いなのだろう。
もしも聞き間違いでないとするなら、きっと何かの比喩表現か何かのつもりで言ったのだろう。
いや、声をかける相手を間違ったのかもしれない。ならば、自分が振り返るだけで相手は間違いに気づくだろう。
そうであってくれ!
たった一言の「は?」にそれら様々な思いを込めて、彼女は男を見た。
 
すると男はにっこりと笑顔で彼女をむかえた。
容姿端麗で背が高く、どことなく爽やかな雰囲気の漂う紳士風の男だった。
 
「突然ですが、私と、SEX、しませんか?」
 
しかし、全てをぶち壊すセリフが再び放たれる。
女が男の言葉を聞き逃したと思ったのだろう、男はさっきよりも滑舌よく、聞こえやすいように区切って、同じセリフを吐いた。
 
「意味がわかりません……」
 
女は明らかに嫌悪を顔に表現し、少し後ずさりしながら答える。
 
「おや、わかりませんか? 変わった方ですね」
 
男は本当に不思議そうな顔をして言った。
変わった方とお前にだけは言われる筋合いはない、と女は思ったが、男があまりに不思議そうな顔をするので自分の方がおかしいのだろうか、と一瞬不安になった。
いやいや、そんなはずはないと女は正気を取り戻す。
 
「い、いきなりそんなこと言われても分かるわけないでしょ!」
「ほう、ではご説明しましょうか」
 
男は言う。
言うセリフさえまともであれば、本当に誠実な顔をしている。
 
「取り敢えず……聞くだけ聞いてみるわ」
 
女がそう返事をすると男は、コホンッ、と軽く咳払いをして説明を始めた。
 
「えー…SEXというのは英語では性別という意味を表す単語です。 
パスポートの性別の欄にもSEXと書いてありますね。 
しかし、日本でこの言葉が使われる場合、大体の場合は性行為を表してます。
 つまり、今のは“私と性行為をしませんか?”という意味になります」
 
男は説明し終えると、伝わりましたか? とでも言わんばかりに眉をピッと動かす。
 
「いや、それは分かっています」
 
女の反応は実に冷たいものだった。
 
「え?だって意味が分からないとさっきおっしゃったじゃないですか」
 
男が眉間に皺を寄せて、不満そうに言う。
自分の説明がまったくの徒労に終わった事に対し、男はわずかながら怒りを感じていた。
思わず、すいません、と謝罪しそうになる女だったが、そもそも悪いのは自分ではないと気が付き言った。
 
「違う。SEXという言葉の意味が分からなかったんじゃなくて、どうしていきなりSEXをするのかが分からないっていってるの」
 
「SEXをすることに理由なんてありません」
 
いけしゃあしゃあと男は言う。
絶句する女に、男は質問を投げかけた。
 
「理由を持ってSEXをする方が果たしてこの日本にどれだけいらっしゃるのでしょう?」
 
「いや、いるでしょう。子供がほしい、とか」
 
女は男の質問に即答する。
しかし、男はひるまずに語る。
 
「なるほど、子供ですか。はい、なるほど。そういう理由あるSEXも存在するでしょう。
しかし、しかしですよ? 例えばです。 若く、財力もない学生達が自分の恋人とSEXをするとき
果たして、彼らは子供を作るという理由を持っているでしょうか?」

そういわれて女は言葉を失った。
言われてみればそうかもしれない。
果たして、SEXが単に子供をつくる為の手段にすぎないのであれば、まだまだ未熟な中高生達は、童貞がどうだの処女を捨てるだの、性の話題に花咲かせる事も、行動に移すことも無いだろう。
男の追撃は続く。
 
「付き合って5か月の若き少年Vと少女Rが、わざわざコンドームを付け、子供ができないようにしてまでSEXをするのは何故か?少年Kと少女Cが一夜に2回連続でSEXをしたことに果たして理由はあるのか?」
 
多分、理由らしい理由は無いのだろう。
と女は思った。
しかし、この男の弁を認めるわけにもいかない。
とはいえ、女は男の話す内容を否定する材料もなく、低く唸り声を上げて抵抗するしかなかった。
 
「理由なんてありません。そこには理由なんてないのです。だから理由なきSEXが存在してもいいのです」
 
「いや、き、気持ちいいから……そうよ。気持ちいからSEXするのよ」
 
苦し紛れの女から、絞り出すような声で反論の言葉が漏れ出た。
女自身、あまりこういう俗っぽい結論には至りたくなかったのだが、致し方ない。
 
「……なるほど、快楽の為という理由ですか」
 
男は左手の平に右手の拳をポンッと振り下ろして納得する。
意外な程に男があっさり女の主張を認めたので、女は少し調子付いて語る。
 
「快楽とか、お互いの愛情を確かめる為とか、コミュニケーションとしてとか、理由なんていくらでもあるわ。
うん。理由のないSEXなんてやっぱりないのよ」
「確かに」
 
男は女の言葉を受け入れると、顎に手を当てて考える。
一方、女は〝 完 全 論 破 〟とでも言いたげに、腰に手を当てて得意げになっている。
 
「ところで、あなた」
 
しばらく沈黙を守っていた男が言った。
 
「顔面をぶん殴っていいですか?」
「なんでだよ!」
 
相変わらずエキセントリックな男の思考回路に女は声を上げてツッコミを入れた。
男はツッコミを入れられたとは思わず、女が純粋に何故顔面をぶんなぐるのかを尋ねたと思い、真面目に答えた。
 
「趣味です」
「趣味ぃ?」
 
男のまさかの回答に、女は声が裏返った。
 
「女性を殴っていたがる姿を見るのが趣味なんです」
「最低な趣味ね」
 
神妙な顔をして、自らのとんでもない趣向を暴露する男に女は冷たい言葉を浴びせる。
しかしその声を聴くに、女が動揺している事は明らかであった。
 
「殴っていいですか?」
 
お母さん、お菓子買ってもいい~?的な感覚で女に暴行の許可を求める男。
 
「ダメよ」
 
当然の反応を見せる女。
 
「どうしてですか?」
 
何故か諦めない男。
 
「痛いから」
 
ごもっともな理由を言う女。
 
「痛いのは嫌いですか?」
 
当たり前の事を確認する男。
もっとも、この男にとっての当たり前が当たり前でなさそうなので、この場合の当たり前とはあまりを意味をなさない。
 
「大っ嫌い」
 
女が全力で拒否をすると、男は間髪入れずにこう言う。
 
「では、あなたの頬を舐めまわしていいですか?」
 
新たなる変態的提案。
 
「なんでよ」
 
もはや、この男に何か質問をしてもまともな答えが返ってくるとは思えないが、女は一応の理由を尋ねてみる。
半分以上諦めながらも、心の隅の隅の隅の隅の隅に残ったわずかな希望を込めた上での「なんでよ」を発した。
  
  
「趣味です」
 
女は戦慄した。
 
 
「いいですか?」
 
そんな女の気持ちも知らずに、男の暴走は止まらない。
 
「ダメにきまってるでしょ」
「どうしてですか?」
 
諦めない。
何故か諦めない。
ダメにきまってると言われようとも諦めない。
 
「気持ち悪いから」
 
いちいち理由を述べなくてはいけない事自体に怒りを感じながら女は返答する。
 
「気持ち悪いのは嫌いですか?」
「大っっっ嫌い」
 
実に当たり前の質問に、当たり前の回答だ。
 
「では、気持ちいいのは好きですか?」
「気持ちいいのはそりゃ好きでしょ」
 
実に当たり前の質問に、当たり前の回答だ。
……と少なくとも女は思ったはずだ。
しかし、女がそう答えた瞬間に男は満面の笑みでこう言った。
 
 
「なるほど、つまりSEXがしたいということですね」
 
 
「なんでそうなるのよ!」
 
女、絶叫。
 
「さぁSEXをしましょう」
 
元気いっぱいに男が言う。
 
「だからなんで?」
 
質問ではない。
これは拒否の言葉だ。
 
「気持ちいいのが好きって言ったじゃないですか」
 
だが、やはり男は質問として捉え、真面目に理由を説明する。
 
「言ったけど」
 
じりじりと自分が追いつめられていくのを女は実感する。
 
「気持ちいいのはSEXをする理由になるって言いましたよね?」
 
これはマズイ。
 
「それも確かに言ったけど」
 
そして、女は悟った。
この男が変態的な趣味を暴露してきたのは罠だったのだ。
女とSEXする方便を作る為の作戦であったのだ。
実際には男には、そんな変態的趣向は無い。
女は悟った。
でもどっちにせよ、この男は変態なのだろう。
 
「よし、SEXをする理由ができました。さぁSEXをしましょう。ちょっとそこの木の陰で」
「どんだけアブノーマルなプレイをする気よ!」
 
ツッコミを入れる元気だけは健在であった。
 
「さぁSEXしましょう」
「いや……」
 
女の手を取り、低く甘い声で誘う男。
女はなんとかこの男に諦めてもらえるような理由を探しながら、男から上半身を遠ざける。
 
「カモンベイベー。孕めベイベー」
「やかましい!」
 
やはり、ツッコミを入れる女。
ここまで追い詰められてもまだ、それだけの元気がある女も流石であるが、こんなひどい下ネタギャグをすがすがしいほどの笑顔で言えるこの男も大したものである。
 
「あれ?SEXしないんですか?」
 
女の拒否にようやく気が付いた男が不思議そうに言う。
 
「理由ができたんだからしましょうよ、SEX。やっぱりSEXには理由がないといけませんね」
 
男は平然とそう言った。
女はその男の言葉に潜む矛盾を発見する。
 
「あなたさっきSEXをするのに理由は無いって言ってたよね?」
 
勝った!
いや、何に勝ったのかは分からないが、防戦一方だった女に攻めるチャンスが舞い戻って来た。
女はそう思った。
しかし、男はしみじみとこう語る。
 
「いやあ、あの頃の自分は若かった……」
 
そして、女は呆れてこう言う。
 
「ついさっきの話よ」
 
そういってやると男は急に俯いて黙り込む。
その顔からは先ほどまでのような朗らかな笑顔は消え、なにか深刻な問題を抱えているかのような力の無い表情をしていた。
何か男を傷つけるような事を言っただろうか、と女は心配になった。
いくら無礼なこの男だったとしても、傷つけるような事を言うつもりは女には無かったし、もし傷つけてしまったのであればいい気はしない。
 
 
「実は私、あと一週間で死ぬんです」
 
 
男は真剣な顔で言った。
 
「え?」
 
女は何者かに心臓を掴まれたような気分になった。
その何者かが、無理矢理に女の心臓を動かして、女の鼓動を早めさせているような感覚がした。
 
普通ならば、またどうせ嘘をついているのだろうと思い聞き流す所であった。
しかし、彼女は男の言葉を信じた。
否、まだ信じたわけではないが、信じたいと思った。
彼女もまた普通ではなかった。
この男が一週間で死んでしまうという事を信じたくなる〝とある〟理由を抱えていたのだ。
 
「私はあと一週間の寿命です。だからさっきまでの私は若かったのです」
 
男は続ける。
女の動揺なんてお構いなしに話をする。
しかも、相変わらずよく分からない事を言う。
 
「……どういうことなの?」
 
これは普通に疑問に思っただけの質問である。
〝あと一週間の寿命〟=〝さっきは若かった〟の理屈が分からない。
男は語る。
 
「例えば、あと70年くらいの寿命がある20歳の女性が、4年前の自分、16歳の時の自分を振り返り、
あの頃の自分は若かったというのはアリですよね?
残り寿命70年に対して、4年前なら、あの頃は若かったと言うのが許される。
ということは残り寿命が1週間しかない私は、ついさっきの自分にも若かったと言うのが許されるわけです」

 
「ん?」
 
いや、待てその理屈はおかしい。
女はそう反論しようと思ったが、男自身も自分の言っている屁理屈のおかしさに気が付いているのか、女に反論の余地を与えずに話し続ける。
 
「というわけでSEXに理由は必要ないといっていたときの自分は若かったのです。いまは若干、年を取って考えが変わりました」
「なんか今の納得いかないけど、ツッコんでも無駄な気がするしとりあえず許してあげるわ」
 
女は諦めた。
この男の言う事についてあまり、深く言及しても良い事はないという事を女はこの短期間で学んでいた。
今になって振り返ってみると、さっきまでの男の言う事にいちいち反応していた自分は若かったのだな。
皮肉にも女はそう思った。
 
「そうですか、つまりSEXをしてくれるということですね」
 
学習しない男である。
 
「違う」
 
この会話を聞いていた者が100人いれば、100人が口をそろえてこういうだろう。
そりゃそうだ。
 
「ええー!?」
 
しかし、男は驚く。とてつも無く驚く。
目玉が飛び出るほど驚くとは、まさしく今の男を表す言葉なのだろう。
 
「ええー、じゃない。さっきまでのあなたが若かった事を認めることとSEXする事を許可するのでは話が違うでしょ?」
「まったく、屁理屈を」
「お前が言うな!」
 

Re: S・E・……[ピーッ] ( No.2 )
日時: 2013/05/26 00:09
名前:

物語が始まって、未だ話に進展なし。
これまで男は色々屁理屈を並べながら、なんとか女とSEXをしようと、その話術を以てして頑張ってきた。
しかし、とうとう万策尽きた。
どう論破しようと、女はSEXしてくれないだろうことを悟り始めていた。
 
そこで男は作戦を変更した。
 
簡単な作戦である。
 
全部、正直にぶっちゃけるのである。
 
 
「私、本当にあと1週間で死ぬんです」
 
真顔で男は言う。
 
「……取りあえず信じるわ」
 
〝とある事情〟により、女はあっさりと認める。
 
「死に急いでいるんです……」
 
女は沈黙を守る。
今までの上辺だけの紳士面とは違う、真摯な態度の男に何も言えなくなった。
 
「とにかくSEXがしたいんです……ッ!」
 
男が声を荒げる。
苦しそうに、悲しそうに。
今までのように、話術を以てしてスマートに事を運ぼうとするような声ではない。
無理は承知で女に懇願するような様子だ。
 
「私はあと一週間で死ぬわけですが、それまで一体何をしていたと思いますか?
引きこもっていました。毎日毎日誰にも会わず、食う、寝る、出す、しかしていませんでした」
 
女は目を見開いて男をみた。
また、女の心臓が激しく動きだした。
 
「引きこもりをやめて、ようやく外に出てきたのはいいものの、時すでに遅し。
もう私の寿命は1週間しかなかったというわけです……」
 
女はじっと、男をみた。
男が今までになく真剣な顔をしているのと同じく、女もまた真面目に男の言葉に耳を傾けていた。
 
「あなたわかりますか?残り一週間で死ぬ者の気持ち。
もうどうしようもないんです。そして何をしようが構わないんです。
理由とか理性とか世間体とかどうでもいいんです。
どんなに愚かしくても、どんなに反社会的でも、どんなに変態的でも、自分がやりたいと思ったことをするしかないんです。
そりゃあ、SEXがしたいというのは私だけかもしれません。
世界一豪華な食事をしたいって方もいるかもしれません。ドーバー海峡を泳いで渡りたいなんて方もいるかもしれません。
偶々、偶然に、いや必然かもしれません。とにかく私はSEXがしたいと思ったんです。
純粋にッ!! ピュアな気持ちでッ!! S E X が し た い ! ! ! ! 」
 
男は鬼気迫る表情で女に迫り、両手を握る。
 
「改めてお願いします。SEXをしてください! あと一週間で死ぬ哀れな男の為に、SEXしてください!
お願いします。一週間しか生きられないんです! 私の気持ちを分かってくれとは言いません。
あと一週間で死ぬヤツの気持ちなんて分かるはずがありません!それでもどうかこの一匹の哀れな男を救うと思って!」
 
声を荒げる男に対し、女は静かにこう返答した。
 
 「分かるわよ!」
 
 「えっ何が?」
 
男は女が何を言っているのか分からず、頭上にクエスチョンマークを浮かべる。
 
「一週間で死ぬヤツの気持ち」
 
そして、こう女は続ける。
 
 
「だって、私もあと一週間で死ぬんだもん」
 
 
そうなのだ。
これこそが、女が男の寿命を信じた理由。
否、〝信じたかった〟理由である。
 
そして、女が男を信じたかったように、男もまた女を信じたく思うのであった。
 
「もし本当にそうだとするなら何と言う運命、デスティニーでしょう!
あと一週間で死んでしまう男女が偶然にも巡り合った!もしかすると我々はお互いにSEXをするために生まれてきたのではないでしょうか!」
 
興奮する男に女は言う。
 
「あなた、残り1週間で偶々SEXがしたいと思ったって言ったわよね?」
「はい」
 
希望に満ちた目で男は答える。
 
「……私も思った」
 
 
「デスティニィィィィーーーーーーー!!!」
 
 
男、絶叫。
 
「でも……」
 
少し、頬を染めて女は言った。
 
「私なんかでいいの?」
 
完全にやる気満々である。
否、ヤル気満々である。
 
「構いません!」
 
男は即答する。
 
「だって、私、別に美人でもないし、性格良くないし……」
 
一見男と女はまったく同じ思考に見えるが、少し違う。
とにかく自分の欲求を満たさんとする男に対して、女は、飽くまで相手の意志を大切にしたいと考えていた。
 
「確かに貴方は、ブサイクで性悪女かもしれません」
「そこまで言うな!」
 
いくら真剣であっても、情熱と誠意を込めた目でも、イケメンであったとしても、言ってはいけない事を言えばそれ相応のツッコミがかえってくる事が分かるという好例であった。
 
「でも、それでもいいんです」
「……いいの?」
 
一転して優しく、甘い声で囁く男。
そして、完全にその気になっている女。
 
「安心して下さい!もはや誰でもいいですから!」
「なんか安心したくないけどもういいや!」
 
まさにお互いヤケクソである。
 
男は女の方にさっと手を回して、その辺の気の影を目指して歩みを進める。
 
「さあ行きましょう!そしてイキましょう!」
 
 
その時であった。
 
 
「 ち ょ っ と 待 っ た ぁ ! ! 」
 
 
突然、2人の背後から1人の男が現れた。
男(その2)の登場である。
 
 
「なんですかあなた?」
 
男が怪訝な顔で尋ねると男(その2)は、大きな声熱烈と言う。
 
「さっきから話を聞いてたけどな、お前ら苛立たしいぞ!苛立たしすぎるぞッ!」
 
なんだか暑苦しい男が出て来たぞ、と嫌な気分になりながら男は適当にあしらう。
彼が今考えていることはただ一つ。SEXをする事なのだ。
 
「そうですか、結構です。私たちあと一週間で死ぬんです。あなたに分かってもらおうとは思いません」
 
しかし、男(その2)は食い下がる。
 
「だからそこが苛立たしいんだよ!
あと一週間で死ぬという悲劇的な運命を背負っているのは自分達だけだと思ってやがる。
自分達が特別で、自分たちこそ悲劇の主人公だと勘違いしてやがる。そこが苛立たしいんだッ!!」
 
男(その2)の暑苦しい言葉を聞いて女はある事に気が付いた。
 
「自分達だけって、もしかしてあなた」
 
その女の言葉の先を男(その2)は、女よりも先に口に出す。
 
「オレもあと一週間の命だ……ッ!」
 
それを聞いて誰より驚いたのは男であった。
 

「そんな馬鹿な!!」
 
同じ境遇のものが3人も同時に現れるだろうか?
しかもあと一週間で死ぬという異常な境遇の者が。
そんなこの状況を女はこのように表現した。

「デ、デスティニー……」
 
そんな2人を尻目に男(その2)は演説を続ける。
 
「あと一週間で死ぬ。そりゃあちょっとくらい周りが見えなくもなるだろうよ。
でもなお前ら、あまりにも自分しか見てなさすぎるんじゃないか?
あと一週間しか無い命でやることがSEXだけなのか?自分の為の行動なのか?
 少しでも世界に貢献しようと思わないのか?街にでてボランティアに全力で励むとか、財産全部募金するとか!」
 
その言葉について男は反論する。
SEXをする事を否定されることは、すなわち男の存在価値を否定する事と同義なのだ。
……多分。
 
「残念ながら思いませんでした。残り1週間しか無い命を他人の為に捧げようなんてできた考えは私にはありません。
愚かに生きて、哀れに死にます」
 
男は胸を張ってそう言った。
情けなくもあり、誇らしくもあると女は思った。
 
「かーっ!苛立たしい!」
「そういうあなたは、のこり一週間の命で何をしたいと思ってるんですか?」
 
怒る男(その2)に、女は問いかける。
女や男が残りの寿命で何かをしたいと思ったように、男(その2)にも何かがあるはずだ。
 
「あん? オレか? オレはなぁ……」
 
男(その2)はそういって、少し黙った後、勢いよくこう答えた。
 
 
「 S E X が し た い ッ ! ! 」
 
 
「「おいィ!!!」」
 
男がツッコミに回る実に珍しい瞬間だった。
 

「結局、あんたも一緒じゃない」
「あれだけ偉そうなこと言っておいて」
 
当然の指摘に対し、男(その2)はいけしゃあしゃあと答える。
 
「取りあえず、お前にSEXを諦めさせて、オレがその女とSEXしようと思ってた」
 
最低である。
しかし、この物語に置いてそれは今に始まったことではない。
 
「……この女性は私とSEXするんです。どこか他の女性をあたってもらえますか」
 
左目蓋をピクピクさせながら男が男(その2)に言う。
 
「いや、もう、別にどっちでもいいけど」
「ええー!」
 
男は驚いた。
女の尻軽さに驚いた。
しかし、考えてみればこれは必然であるかもしれない。
女にとっての男の魅力とは〝自分と同じ境遇である〟という事だ。
ならば男(その2)にも同じ魅力を感じでもおかしくは無い。
 
「ハッハッハ!お前より俺の方が良いんだってよ!!」
「そんな事言ってなかったでしょ」
「たしかに言ってなかったな。でもオレはこのお嬢さんとSEXさせてもらうぜ」
「いいえ、この女性は私とSEXをするんです!」
 
男と男(その2)の醜くき争い。
それを見ながら女はこう思っていた。
 
「どっちでもいいから早くしてくれないかな」
 
この糞ビッチが。
女がそんな事を考えながら、結構ノンキしてる間、男と男(その2)の口論は意外な方向へ向かっていた。
 
「いいだろう。じゃあこのお嬢さんをかけて……決闘だ」
「望むところです」
 
男と男(その2)はお互い向かい合って、なんか格闘技っぽいポーズを取り互う。
 
「え?ちょっと?」
 
困惑する女。
いやいや待ってくれ、そんな事もういいからさっさとSEXしてくれ、こんな感じで困惑する女。
しかし、女はある事に気が付いた。
 
「あれ?これってひょっとして私を取り合って、2人の男が闘うみたいな?お、お、おぉ~。アイ アム ヒロイン」
 
調子の良い女である。
 
「いくぞ…」
「いつでもどうぞ」
「きゃー! 二人ともやめてーー!(棒読み)」
 
かくして男と男(その2)の戦いは始まる。

「食らえ!」
 
男(その2)はどこから取り出したのか剣を取りだし、男に切りかかる。
 
「はっ!」
「何っ!」
 
しかし、男はこの剣に横から手刀を入れる。
剣は真ん中からぽっきり折れてしまう。
 
「ま、まだまだぁ~!」
 
続いて、男(その2)の取り出したるは全身5メートルの巨大ハンマー。
一体どこから取り出してきたのか?
そもそもどうしてこんなもん持てるのか?
と様々な疑問が残るが今は気にしないで読んでいただきたい。
なぜならば、ストーリー上別にどうってことないからである。
 
「ふんッ!」
 
男は振り下ろされる巨大ハンマーを見事受け止める。
 
「ば、馬鹿な!」
 
動揺する男(その2)を尻目に、男はつかんだハンマーを振り回しす。
 
「うわー!」
 
男(その2)はその勢いで吹き飛ばされる。
 
「く、くそぉ、ならば!」
 
更に男(その2)が取り出したるは拳銃。
いくら格闘戦につよい男も、拳銃相手では手も足も出ないだろう。
そう思って、男(その2)は残酷な笑みを浮かべて引き金を引く。
 
「ふんッ!」
 
しかし、男はなんと拳銃の弾を素手で受け止める。
 
「――――――ッ!!!!」 
 
男(その2)は声にならない叫びをあげる。
一体、この男は何者なんだ!?
無敵じゃないか!!
 
チャリン……と音を立てて男の手からこぼれた弾丸を見る。
その弾丸は男の握力によってぺしゃんこになっていた。
恐怖が男(その2)の精神を支配し始める。
 
「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
 
男(その2)は今度はマシンガンを取りだし、男に向けて乱射する。
 
バババババババババッ!!!と凄まじい音が当たりを支配する。
しかし、男はひるまない。
 
「うおおおおおおおおおお!!!!」
 
男の両手が目にもとまらぬスピードで動く。
そのスピードのあまり残像で男の腕の数が6本になったように見えるほどだ。
そして、高速で動く男の両腕はいずれもマシンガンの弾を掴んでいた。
 
「ひ、ひいいぃぃぃぃぃ!!!」
 
マシンガンでも倒せない男を恐れ、男(その2)は背を向けて逃げ出す。
男はそれを追わなかった。
何故なら早くSEXしたかったからだ。
 
しかし、それが大きなミスとなる。
 
「Hello , President ……Help me !」

男(その2)は携帯電話を片手に通話をしていた。
 
「Please give me a Missile! Big Missile!!」
  
  
通話を終えた男(その2)は、再び男の前に現れた。
今度こそ男を倒せるという確信を以て。
 
「まだだ! まだ戦いは終わって無いぜ!!」
 
「諦めの悪い男ですね」
 
男が再び戦いの構えをとった時、何かかがこっちに近づいていることに男は気が付いた。
その方向を見据え、男は驚愕する。
 
「あ、あれは……!!」
 
 
 
~~~~~~数分前、ホワイトハウスにて~~~~~~~
 
 
大統領は通話を追えるとすぐにある物を持ってくるよう部下に命ずる。
そのある物を聞いた部下は血相を変えて飛び出していった。
大統領には確固たる意志があった。
友人を守るという意思が。
 
しばらくして、黒服に身を包んだ男達が大統領の部屋に入ってきた。
男達はアタッシュケースを机の上に置き、静かに開ける。
そこには1つのボタンがあるだけだ。
 
「Is it really ?」
 
部下のその問いに対し、大統領はたった一言だけこう言った。 
 
 
「For Justice…!」
 
そして、力強くボタンを押した!!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 
「あ、あ、あああ……あれは…………」
 
こちらに向かって飛んでくるものを見つめて、絶句する男。
そんな男に男(その2)は得意げな顔で高らかに言った。
 
 
「  〝  ミ  サ  イ  ル  だ  ッ  !  〟  」
 
 
 
ド カ ー ー ン ! ! ! !
 
おぞましい爆音が鳴り響いき、視界がすべて光で埋め尽くされた直後、それら一帯は荒野と化していた。
男が使おうとしていたその辺の木々も無い。
辺りには黒こげになった男だったものが転がっているだけだ。
 
「……ふッ俺の勝ちだな」
 
その時、土の中に密かに作っていた隠しシェルターの中から男(その2)が現れた。
一体いつの間にそんなものを作っていたのか?
なぜ都合よくこの場所にあるのか?
大体なんで大統領と知り合いなのか?
様々な疑問が生じるが、これについてはこちらは一切の説明をする気は無い。
そして、また理解する必要もない。
何故なら、物語にはあんまり関係ないからだ。
 
「ま、まだ……だ…………」
「何ィ!?」
 
ふいに男が弱弱しくも立ち上がった。
その姿はまるで生まれたての小鹿の様に頼りない姿だったが、しかし、生きている事自身が奇跡の様な状態だ。
 
「き、貴様不死身か!!」
「さぁ……戦いの……続きを……!!」
 
男(その2)は戦慄した。
どうすればこの男を倒せるのか、いよいよもって分からない。
悩む、悩む、悩む!!
 
しかし、その時男(その2)はもっと大事なこと気が付いた。
 
 
近くに黒こげになって転がっている者。
……女の亡骸である。
 
「あっ」
「……あっ」
 
男(その2)が声を上げると、男もそれに気が付いた。
 
「「あああーーーーっ!!」」
 
そして2人同時に声を上げる。
彼らが戦うそもそもの理由が今、無くなろうと、亡くなろうとしていた。
 
「しっかりしてくれ!オイ!」
 
女のそばに駆け寄り男(その2)は必至で声をかけた。
 
「もう……ダメです」
 
しかし、男は静かにこう判断する。
女はすでに生きてはいなかった。
男と男(その2)は泣き崩れた。
声をわんわん上げて、涙をながし、自らの拳を地面に叩きつけて深く後悔した。
 
「なんてことをしてしまったんだ!」
「私達が争ったりしなければこんな事にはならなかったのに」
「オレ達はなんて愚かなんだろう!どうして、どうして……」
 
「……3Pで妥協しなかったのか!」
「3Pにしていればッ!3Pにしていればッ!」
 
男達は泣いた。
泣いて泣いて泣き荒れた。
しかし、女からは何の返事も無かった。
女は死んだのだ。
2人はその静寂によってそれを理解した。
 
「しょうがない別の女さがすか」
「ですね」
 
そして素早く気持ちを切り替えた。
 
「そぉぉぉぉい!!」
 
とその瞬間女が息を吹き返した。
腹筋の力を使い、勢いよく上半身をおこし、叫んだ。

「お、生きてた」
「おぉ良かった!心配しましたよ!」
「嘘付けーい!何今の?ヒロイン死んだよね?なんですぐ立ち直ってんの?もうちょっと後悔する時間長くても良くない?」
 
あまりに軽いノリの2人女はブチ切れる。
そしてそれはまた当然の反応である。
この物語は最初からずっと、当然の反応の繰り返しによって成立しているのである。
 
「いや、でも早く次の女見つけないと、俺達一週間で死んじゃうし」
「っていうかあなたどうせ一週間後には死んでたんだし」
 
実にクールな言い訳をする2人。
 
「もういい、とにかくSEXするよ!」
 
そして、逆に性に燃えまくっている女。
 
「「どっちと?」」
 
男と男(その2)が二人同時にそういうと、女は仁王立ちでこう答えた。
 
「3Pで構わん」
 
男と男(その2)は逆に感動した。
女のこの姿に神々しさすら感じた。
 
 
 
その時だった。
 
「ちょっと待ったぁ!」
 
更に別の男が現れる。
男(その3)の登場だ。
 
「オレものこり寿命一週間でSEXがしたいぞ!オレとSEXしろ!」
 
更に……
 
「私も残り寿命1週間でSEXがしたいわ!私とヤりなさい!」
 
女(その2)の登場である。
 
「オレもだ!」
「私もよ!」
「わしもじゃ!」
「せっしゃも!」
「あちしも!」
「おいどんも!!」
 
 
……さらにさらにと数えきれないほどの男女が現れる。
そして、SEXをしろと煩く訴える。
しばらく、煩くしていた彼らだったが、女の一言で皆だまった。
 
「いいわ!どうせ残り一週間の命よ!」
 
そして、男がそれに続く。
 
「形式なんてどうでもいいです」
 
最後に男(その2)が締めの言葉を発する。
 
「派手に遊ぶぞ!」
  
 
 
 
そして
 
それは始まった
 
男女入り乱れた裸と裸のコミュニケーション
 
 
大乱交パーティが――――――――――――
 
 
 
 

Re: S・E・……[ピーッ] ( No.3 )
日時: 2013/05/26 01:28
名前:

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「ねーねーワンダ、あれなーに?」
 
 
暑い夏の日、ミーンミーンと煩い山の麓の小さな公園にて、名門宝条一族の末裔:宝条ルクは尋ねた。
尋ねられた相手はワンダ。
ワンダはメダロットという科学技術の粋を集めた生命体であるのだが、ここでは物語と関係無いので割愛させていただきたい。
このメダロットに関する研究によって宝条一族は財を築き、名門一族にまで上り詰めたにも関わらず、メダロットの説明を省略するのであるから、本当に物語に関係ないと思っていただいて結構だ。
 
ワンダとルクは山の上にある大きな屋敷に住んでいるのだが、活発な性格のルクが外で遊びたいというので、わざわざ山の麓の公園まで車で降りてきたのだった。
まだ3歳のルクを一人で遊びに行かせるわけにはいかないが、彼女の父親は忙しくルクのお守りを出来ない状態にあった。
そこでワンダと車の運転係の執事がルクについてやってきたのだった。
しばらく公園で遊んでいたのだが、ルクは不意に地面に何かを見つけた。
 
そんなこんなで、屋敷に住むお嬢様:宝条ルクは地面を指差しながら、親友のメダロット:ワンダに問いかけているのだ。
 
「どれどれ?」
 
ワンダはルクの指差す方を見る。
当然、ルクの疑問に答えてやろうと思ったからである。
  
「あれはね。蝉よ」
 
ワンダがそう答えるとルクは首をかしげる。
 
「S・E・M・I?」
 
きっと蝉という言葉自体を初めて聞いたのだろう。
お嬢様にありがちな世間知らずな子に育ってはならぬと、ワンダは説明を付け加える。
 
「そう。蝉はね一週間しか生きれない虫さんなの」
「ええー!一週間だけ?可哀そう」
 
3歳のルクは純粋に、短い寿命の蝉を哀れに思った。
 
「そうね。可哀そうね」
 
3歳のルクの感受性の高さに感心しながらワンダはまるで母親の様に答える。
ルクは蝉を再び観察した後、ワンダに向かってこう言った。
 
「でも蝉さん達楽しそうだよー。ホラ!」
 
ルクが再び指を指すのでワンダは再び蝉の方をみた。
 
「そ、……そうだね」
 
その時ワンダは気が付いた。
蝉たちが……たくさん集まっている。
何十匹も集まっている。
そして……。
 
これをルクに見せていていいのかどうかワンダは真剣になやんだ。
 
「ワンダー。蝉さん達何やってるのかなー?」
 
ルクはそういって純粋な眼差しをワンダに向ける。
ワンダはその眼差しをこんなに痛く感じたのは初めてだった。
 
このルクの質問に答えてやる事は簡単である。
〝交尾してるのよー。もっと詳しくいうと乱交よー。ウフフフフ〟と言えば良い。
しかし、そうなるとルクは十中八九〝交尾って何?〟と聞いてくる。
そうなった場合ワンダは答えられるのか?
知識として以前に答えてもいいのか?
〝ペニスをワギナに突っ込むのよ。オホホホホ〟なんて言っていいのか?
3歳の女の子に!
名門宝条一族のお嬢様に!
こんなタイミングでこんなことを教えてしまうと、ルクがどえらい変態に育ってしまうのではないかとワンダは心配した。
そして、導きだした答えがこれだ。
 
 
「な、何をやってるのかしらね、私分からないわ」
 
 
逃げた。
 
「爺やー爺やー!」
 
 
ワンダが分からないなら仕方ないと、ルクはこんどは車を運転してくれていた執事を呼び出す。
何もしらない執事はルクに呼ばれるままにこちらへやってくる。
 
 
「どうしましたかな?お嬢様」
「爺や、セミさん達何をやってるのかな?」
 
執事はルクの指す方を見て、思わず「ほぁッ」と声を上げた。
そして、ワンダの方を見る。
ワンダは目で〝なんとかしてくれ!〟と訴えかけてくる。
  
これはどう答えればいいのか執事だって分からない。
しかし、ここではぐらかしてはルクに何を言われるか分かったものじゃない。
いや、それよりも、教えられるものなら教えておいてもいいかもしれないとすら執事は思った。
いつかは教育せねばならない事。
名門宝条一族の末裔、ルクならば、聡明なる彼女ならば良い理解をするのではなかろうか。
しかし、やはり……。
そう考えた結果、執事はこう言った。
 
 
「あれはね……全力で生きているんですよ」
 
執事は最初、最大限の譲歩のつもりでこう言った。
しかし、口にだして言ってみると、もしかすると本当にそうなのではないかと思った。
 
「プライドも理性もかなぐり捨てて、カッコ悪くても、軽蔑されても、一週間という短い寿命を全力で生き抜いているのです。
あれがセミさんの本気の生き様で、死に様なのですよ……」
 
セミたちには本能を抑える理性なんてない。
短い寿命の中で子孫を残さんと必死になるだけだ。
それを愚かだと捉えるか?
少なくとも彼らは必至である。全力である。
自分の持てる力の全てをSEXに掛けているのである。
そんな生命の本気の姿に執事は68歳という年になって、今更ながら感動していた。
ルクに何かを教えようとして、気が付けば自分が蝉たちに何かを教えられていたのだった。
 
「……爺やの言ってること難しくてわかんないー」
「そうでございますか」
 
たしかに子供には分かりにくかったな、と少し反省して執事は苦笑いをした。
 
「まぁいいや、ワンダー! セミさん踏んだら駄目だからあっちであそぼー」
 
そういってルクはワンダの手を取って向こうの方に駆けていく。
その後ろ姿の見て執事は目を細めた。
 
短い命の中で全力で生きる蝉達。
彼らに執事が魅せられる事はある意味では必然なのかもしれない。
 
彼の仕える宝条家は何故だかは分からないが短命な一族だ。
常に不幸な事故にあい、若くして死ぬ。
しかし、その短い命で宝条一族の人間は常人が一生掛っても成し遂げられない偉業を達成する。
その姿が寿命が短くとも全力で生きる蝉の姿に重なったのかもしれない。
 
ルクもそんな宝条家のジンクスを抱えているのだとするならば……。
短い人生を全力で生きてほしいと執事は本気で思った。
周りからどれだけ避難されようとも彼女が全力で、本気で、必死で生きる事を望んだ。
 
 
執事が宝条家に対する忠誠を胸に刻みつけている頃、彼の足元ではミーンミーンと煩い鳴き声を上げながら、新たな生命が生みだされている真っ最中だった。
 
 
 
 
 S・E・……M・I  おしまい
  
 
 
 
 
 
※最後に出てきたワンダとルクはDISAPPEARANCE四部作(>>[225] >>[429] >>[786] >>[940])
 という糞長い話に出てくるキャラクターです。興味がありましたら、そちらの作品もどうぞ。