>> メダロットライズ にもどる

RSSフィード ワンポイント・ウォールプレイヤー
   

日時: 2016/05/01 21:02
名前: ランド

                            STORY

 どんな物語にも主人公がいる。サブキャラクター、そしてモブキャラクターを骨格とし、その頂点に主人公が存在する。
この仕組み、役割に対し、劇中の人物は誰も疑問を感じないし、気付かない。
だが、このシステムを少しイジったならばどうなるのか。
これは、この疑問に気付いたモブキャラクター達による物語である。


一言
 初めまして、ランドと申します。
小説を書くのがド下手な自分ですがしばらくお世話になるのでよろしくお願いいたします。
 舞台としてはゲームの世界を基本ベースにしてますが、キャラクターはアニメの方もポンポン出てくると思いますのでそこだけ御了承を。
 序盤は展開が遅くなるので、ダラダラ読んで頂ければ幸いです。それでは、失礼します。


第1話「背景」 >>1
第2話「平穏の狂気」 >>2
第3話「招き手」 >>3
第4話「月形とユキ」 >>4
第5話「マネートラブル」 >>5
第6話「白への道連れ」 >>6
第7話「忘れられた友に」 >>7
第8話「ストレートフラッシュ」 >>8
第9話「仲間か友か」 >>9
第10話「誰がために鐘は鳴る、か」 >>10
第11話「対 久我二郎」 >>11
第12話「咆哮する平時」 >>12
第13話「月を行きて候」 >>13
第14話「アフターフォロー」 >>14
第15話「ジャンキー」 >>15
第16話「新たな仲間」 >>16
第17話「兵どもが夢の・・・」 >>17
第18話「MJC」 >>18
第19話「暴君、伴沖次郎」 >>19
第20話「凡愚達の挽歌」 >>20
第21話「悪の入り口」 >>21
第22話「伴闘会」 >>22
第23話「Crow to Darkness」 >>23
第24話「MJC春季予選大会開幕」 >>24
第25話「AM9:50 NHT放送局より」 >>25
第26話「対 久我二郎 2戦目」 >>26
第27話「道化への岐路」 >>27
第28話「俺の名を見たか」 >>28
第29話「対 ツユクサカオル」 >>29
第30話「雨も浴びぬ敗者に」 >>30
第31話「物ノ怪」 >>31
第32話「ロッシュ 対 辛口コウジ」 >>32
第33話「閉幕の春」 >>33
第34話「久我の冒険」 >>34
第35話「老兵は牙を剥く」 >>35
第36話「浄」 >>36
第37話「terrorism」 >>37
第38話「流星」 >>39
第39話「闇を恋い焦がれし」 >>40
第40話「合宿地獄一本道」 >>41
第41話「桐に鳳凰」 >>42
第42話「メンドーサ・ライン」 >>43
第43話「老馬の智は道を示すか」 >>44
第44話「動中の静を彼方に」 >>45
第45話「BSoD」 >>46
第46話「久我の挑戦」 >>58
第47話「そして、夜が笑う」 >>59
第48話「この星の条件」 >>60
第49話「復讐鬼と母」 >>61
第50話「雪解けの月」 >>62
第51話「黒い勇気」 >>63
第52話「結末逃避行」 >>64
第53話「42番が冷気を呼ぶ」 >>65
第54話「一葉落ちて天下の秋を知る」 >>66
第55話「Strike Memory」 >>67
第56話「怒り」 >>68
第57話「暗い世界で、男が二匹」 >>69
第58話「MJC秋季予選大会開幕」 >>70
第59話「強いられた死闘」 >>71
第60話「対 ヒョウガ」 >>72
第61話「アセビ 対 ホマレ」 >>73
第62話「持たざる者達」 >>74
第63話「アセビ 対 飛鳥」 >>75
第64話「久我の死線」 >>76
第65話「切り札」 >>77
第66話「対 如月ユア」 >>78
第67話「崩壊の望み」 >>79
第68話「螺旋」 >>80
第69話「お月様と雪ん子」 >>81
第70話「4つの願い」 >>82
第71話「対 紅面ユキ」 >>83
第72話「レッドカペロの純」 >>84
第73話「勝利への悲鳴」 >>85
第74話「君と黒へと行けたら」 >>87
第75話「廻転」 >>88
第76話「Half Sorrow」 >>90
第77話「夢との別れ」 >>91
第78話「New Party」 >>92
第79話「夕飯達の謀反」 >>93
第80話「とある久我家」 >>94
第81話「業苦の眼差し」 >>95
第82話「花子、始まりを見る」 >>96
第83話「Heads or tails」 >>97
第84話「ターニング・イレブン」 >>98
第85話「頂点を掌握せしは人かモブか」 >>99
第86話「岸は沖にて真に雅やかな女を見る也」 >>100
第87話「銃と剣」 >>101
第88話「その声達」 >>103
第89話「MJC冬季予選大会開幕」  >>104
第90話「その男、立花リュウに」  >>105



第6話「白への道連れ」 ( No.6 )
   
日時: 2013/02/22 11:30
名前: ランド

『・・・以上が、メダロットの組み立て方よ!
 ロボトルを始める方は、メダロッターライセンス及びロボトル保険に
 加入してからにしてね♪
 もう一度この説明を聞きたたければ、お手元のメダロッチ・アドバンスの
 右のボタンを』

 説明を聞き終えると、月形はそっとメダロッチの停止ボタンを押す。
そしてメダロッチから読み取り専用のメダル型取り扱い説明機を取りだす。
 今、月形とユキは自宅に戻っていた。すでに外は真っ暗。
あれからメダロットを手に入れた月形は、いちもくさんで家に帰ってユキと共に
メダロットを完成させようと勤しんでいた。
 お茶の間でメダロットの組み立てを行っていた二人は、ガイド音声を聞き終え、
そしてお互いの顔を見合って、納得したように同時にうなずいた。

「なるほど、よく分かったよユキりん」

「うん。
 とっても分かりやすかったね、ツッキー」

「あぁ。
 やっぱり組み立て方間違えてた」

 リビングに散乱したパーツを見て、深いため息をつく二人。
二人は勢いに任せてパーツの組み立てをしたせいで、その手順を誤り、組み立てが
うまくいっていなかった。
 参ったといわんばかりに床に倒れ込み、しばらく天井を眺め、この先を思いやる月形。
 まさかメダロットすらろくに組むこともできないとは想定外であろう。
これでは主人公たちを倒すどころか、ロボトルをすることさえも夢のまた夢
でしかない。
 唖然としている月形の顔を覗きこむように笑顔で見おろしてくるユキ。

「元気だして、ツッキー。
 ほら、一緒におにぎり食べましょう」

「う、うん」

 メダロットの組み立てに入る前からあらかじめユキが作っておいた
おにぎりを差し出され、何も考えずにただただ食べる月形。
 何か心のしこりがとれないまま微妙な表情の月形に対して、相変わらずの
笑顔で話しかけるユキ。

「炊飯器があって良かった。
 電子レンジもガスコンロもあるしね。
 でも、さすがにトーストは無かったけど」

「うん」

「・・・大丈夫だよ、ツッキー!」

「え?」

「ツッキーが一生懸命頑張ってるなら、私もいっぱい応援してあげるから。
 だって私達、一緒の目的を持ったお友達じゃない。
 あきらめないで、頑張りましょう」

「ユキりん。
 良い子なんだね、ユキりんって」

「そんなことないわ。
 ほら、いっぱい作ったから、もっと食べてね」

「えっ、ユキりんの分も食べて良いのかい」

「それはだーめ」

 ユキの応援と手作りおにぎりによって、元気とやる気を若干取り戻した月形。
 一通り食べ終わった後、ペットボトルのお茶を最後の一滴まで飲み終え、
気持ちを入れ替えて、今度こそメダロットを完成させようと意気込む。

「よし、空腹は満たした!
 様々の人想い・・・全端役とユキりんとイセキさんの想いを込め、
 この月形一徳、もう一度メダロットを完成させ」

「ダメだよ、ツッキー。
 食べた後はちゃんとお片づけしなくちゃ」

「う、うん」

 出鼻をくじかれ、ユキと一緒におにぎりのお皿を洗う手間はあったものの、
今度こそメダロット完成へと向けて組み立てにかかることに。

「よし、さっきはたぶん左右が間違って・・・。
 このメダロットの両腕って似てるからな。
 あっ、ユキりん。
 ドライバーを持ってきてくれないか」

「はい。
 新品だから大事に扱ってね」

「うん。
 ・・・し、新品?
 よく考えれば、なんでおにぎりを僕達は食べれたんだ?」

「ツッキーがカタログを眺めている間にとなりのデパートで
 色々買ってきちゃったの。
 あと、歯ブラシ、手鏡、ブラシ、爪切り、耳かき、お米、
 お野菜、おうどん、お味噌汁の素、納豆・・・」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、
 だってユキりん一緒に帰った時何も持っていなかった!」

「送信サービスに決まってるじゃない、ツッキー。
 受信機と送信機があれば、自宅まで一瞬で届けてくれるの。
 ね、便利でしょ」

「な、なるへそ。
 それでお金はどれくらい使っちゃったんだい」

「えーと、ざっと1万5千円くらいかな」

「は、はは、はははははっ」

 月形とは別に、必要なものをすでに送信サービスで確実に買いそろえていたしっかり者のユキ。
送信サービスとはいわば、物質の瞬間移動装置といえばわかりやすいであろう。
メダロットを発明したテクノロジーを持つ現代において、その技術は大したものではない。
とはいえ、やはりお金が残りわずかになり、二人の生活が困窮していくことには変わりない。
 今はそんな過酷な現実に目を背けて、ただ黙々とメダロットの組み立てに
勤しもうと励む月形。

「あれ、頭が反対じゃないの、ツッキー」

「ん?このサンダルって購入者用の特典かと思ったけど、
 メダロットの部品なのか」

「ツッキー、シールの張り方がちょっと適当よ」

「この尖った部品はチョンマゲだったのか。
 フンドシかと思ったよ」

「この刀みたいなの、
 あとで包丁に使わせてもらうわね、ツッキー」

 悪戦苦闘しながらも、二人で何とかメダロットを組み立てて行く。
 時計が真夜中を示しているにも関わらず、二人は一生懸命に、自分達の目的を、
夢を果たすために、メダロットを作った。
 そしてついに、その夢の原石は、形となって二人の前に降り立った。

「で、できた。
 やった、やったぞ、ユキりん!
 これが僕達のメダロット、僕達の、みんなの希望!
 シンセイバーだ!」

「良かった、本当に良かったね、ツッキー。
 後はメダルをはめ込むだけ」

「あ、あぁ。
 このメダルで、良いんだな」

 マネーメダルを手に持って、メダル差し込み口に手を伸ばす。
その手はわずかながらにも震えていた。
 ここから、全てが始まる。
無念のまま終わるのか、目的を果たして夢叶え、この1年を終えるのか。
 その全ての始まりが、この一瞬から。
 メダルが、新撰組型メダロットシンセイバーのメダル差し込み口へと吸い込まれる。
 興奮を抑えきれない月形は、急に立ち上がり、シンセイバーの両肩を掴み、
声を大きくして叫ぶ。

「さぁ、起動してくれ、雄叫びをあげてくれ、
 魂を震わせてくれ、シンセイバー!!」

「あっ、ツッキー。
 メダル入れてから数十分は動きませんって書いてあるわ」

 初期設定を行う関係もあり、全く新しいメダルはすぐには起動できないのだ。
言われてみれば、このメダルは赤子同然なので無理もない話しである。
 すっかりやる気を削がれた月形は、意地になって、起動する瞬間を眺めようと
体操座りのままその場から離れようとはしなかった。

「ツッキー、私お風呂に入ってきちゃうけど、良い?」

「うん、お湯はできる限り冷まさないようにね」

「フフッ、そのまま寝ちゃダメよ、ツッキー」

「大丈夫だ、僕は起きてても夢をみ・・・ん?」

 その時であった。
 シンセイバーの目に火が灯ったのは。
シンセイバーはどこかあどけなく、不思議そうに回りを見渡す。
そして、視線を目の前にいるきょとんとした男の方へと向ける。

「旦那、旦那がワイのマスター?」

「あ・・あ、あ・・・あぁあ!!
 そうだ、僕が、この月形一徳が、き、君の、
 君のマスターだ!」

全てが、始まった。
 ようやく始まった。何にも存在していなかった自分に、始まりが訪れた。
 過去もなにも、こみ上げる想い出もない男が一人、
自分のメダロットを抱きしめ、やるせない涙を流した。

第7話「忘れられた友に」 ( No.7 )
   
日時: 2013/02/23 09:18
名前: ランド


「ユッキー、
 そこの並び替えが終わったらちょっと休憩にしよう」

「あ、はいっ」

 月形とユキがこの世界の住人として正式に誕生し、そしてメダロットを手にした
激動の一日から数日後。 現在、月形とユキは購入したメダロットの前借の清算のために
今日もまたメダロットショップにて、店員のイセキと共に働いていた。
イセキから休憩を言い渡され、レジの前に設置してあるイスに腰をかけるユキ。
店の奥の方からイセキが、片方の手ではペットボトルのお茶を口にくわえ、
もう片方の手でペットボトルのお茶を二つユキに差し出しながらやってくる。

「くぅ~。
 疲れた後にはやっぱコレだよなぁ」

「だ、大丈夫なんですか、イセキさん。
 まだ営業中ですけど」

「大丈夫、大丈夫。
 この時間帯なんて滅多に人こないしさ。
 ほら、もう一本はツッキーに後で渡してやりな」

「は、はいっ。
 毎度ありがとうございます」

 時間帯は平日のお昼時の1時半。客層のメインターゲットである学生、
及びコアな社会人が訪れるにはまだまだ時間があった。
その隙をぬって、イセキとユキはだいたいこの時間に小休憩をはさんでいた。
 一つ呼吸を置く二人。 そして、店の外で拡声器を持って騒いでいる月形を、
窓越しに見つめる。

「ツッキーもアンタも、まー本当によくやってくれてるよ」

「いえ、お金が足りなかった私達に手を差し伸べてくれた
 イセキさんのためにも、精一杯恩返しをしたいんです」

「そ、そういうのはナシナシ!
 照れくさいだろ。
 ん?ってか、ユッキー達って住民税とかどうしてんの」

「えっ。
 ツッキーが細かいことは招き猫がどうとかって・・・」

 笑顔で話題をうやむやにするユキ。恐らくその他もろもろの細かい事情は、
月形の言うべく、この世界の神が何とかしてくれているのだろう。
 これ以上詮索してもしょうがないと悟ったか、イセキは再び、不思議そうに
窓の外でいまだ健闘続ける月形を眺める。

「あー、ただいま月刊メダロットモード最新刊、
 初回特典付き、今だけ店内のポイント2倍セールで販売、販売中!!
 これはお買い得、買うしかない、そう、そうだよな、トラ!
 この台詞で合ってるよな?」

「そそ、本当ならいつも3倍セールやってるけど、
 イセキはんが2倍セールにしろって命令したからね。
 旦那も真っ青の大人の駆け引きでっせ!」

 店内のイセキが聞こえないことを良いことに、無意識のうちに言いたい放題の
月形と、そのメダロットのシンセイバー、愛称「トラ」。
この愛称は月形が誕生したその場で思いつき、そして名付けた。
 場面は再び店内にて、いまだにゆったりとくつろいでいるイセキとユキへ。
イセキとユキがいつものように何気ない会話を楽しんでいると、
急にイセキが、少々挙動不審になり、目線を背け出す。

「そ、それでさ、一つ提案があるんだ」

「なんです、イセキさん」

「アンタ達二人って、けっこー安い日給で働いてくれてるじゃん?
 だからさ、その、店長がよ、もし良かったら、
 正式なアルバイトとして、雇っても、良いって」

「え!」

「い、嫌だったら構わないんだ、無理強いはしないよ」

「とんでもない!
 ぜひ、やらせて下さい!
 私、一生懸命このお店で頑張ります。
 本当に、信じられない。
 まるで自分が何処かの主人公になったみたいに、良いことで溢れてる」

 イセキからの正式なアルバイトへのオファーに喜びを隠しきれないユキ。
どうやらイセキは月形とユキの熱心な働きぶりを評価して、
店長に強く二人を推薦していたようだった。
 だが、それ以外にも大きな理由が存在していたが。その答えが気になり、
うれしさをグッと堪えて、一度冷静に戻り、イセキに問うユキ。

「でも、何でイセキさんはそこまで私達にして下さるんですか?」

「うーん、なんだろな。
 なんかアンタ達をみてると、応援したくなるっていうか、
 そう、昔っていうか、今のアタシにそっくりみたいな」

「?」

「いや、こっちの話しだよ。
 それよりさ」

 精一杯にこの世界の何かに挑もうと行動している月形とユキに、イセキは
何かを感じ取り、応援したくなった。正直なところ、この二人に光るものは見えない。
輝かしいオーラも、思わず魅せられるものもない。だが、それ故に手を貸したかった。
世界の孤独となった今の自分と同じ感覚を持ちあわす彼らに、イセキは
手を差し伸べずにはいられなかった。
 レジの横の棚から一枚のチラシを取りだして、ユキに手渡すイセキ。

「このチラシを見せてやれば、相棒はもっと元気になるんじゃないか」

「これは、町内ロボトル大会、小中学生の部。
 開催日は3月19日の日曜日って、
 今日はたしか3月14日の火曜日だから今週じゃないですか」

「そっ。
 だからケツに火をつけてやんな」

 ついに訪れたロボトルの機会。イセキの月形を煽る思いはまた、ユキの心にも響いた。
チラシを真剣に見つめ、そしてチラシにシワができるほど強く握りしめた。
 その日の夜。二人と一体でテーブルを囲い、ユキが作ったそうめんを食べながら
今日あった出来事等を喋っていた。

「来週からはアルバイトとして正式採用するから、
 手続きをすぐに書いて、シフトを考えておいて欲しいですって」

「やりましたね、旦那!
 これで夢だった店長まであとちょっと!」

「トラ、君は侍のくせに曲がったことばかり言ってるな」

「世の中を生きてくためですがな、旦那」

 トラのボケに対して、あきれるばかりの月形と、それを傍から笑顔で見守るユキ。
 正式にアルバイトで採用されることによって、金銭面での負担は
圧倒的に少なくなるであろう。二人は学校にも通っていないため、シフトは組みやすく、
望みとあらば毎日でもでても良いくらいであった。
 そして、本題でもある町内大会のチラシを、ユキは月形に差し出す。

「そしてこれが今日イセキさんからもらった大会のチラシ。
 当日参加でも良いみたいだけど、どうする、ツッキー?」

「何!」

 そうめんを食べていたお茶碗をテーブルに叩きつけ、急に立ち上がる月形。
そして、ユキに手渡された町内大会のチラシを直視しながら固まる。

「だ、旦那!
 いきなり立ってどうしたん、
 そうめんの汁が飛び散ってきたよぉ」

「ほらほら、トラちゃん。
 拭いてあげるからこっちにいらっしゃい」

 テーブルの振動でそうめんの汁がボディにかかって、慌てているトラを
なだめてやるユキ。そんな二人の会話も、行動も、聞こえない、見えない月形。
口元を一瞬ゆるませ、そして震える声で語り出す。

「ついに来たか。
 この月形一徳、端役という身が、主役クラスを打ち砕くための唯一の場!
 僕達に残された夢への可能性が!」

「へ?、旦那そんな夢持ってたん」

「これが記念すべき初陣だ、ユキりん、トラ!
 初めての大会だからといって、規模が小さい大会だからといって、
 僕は手を抜くことはしない!
 心も体も実績もまだ初心者のこの僕は、全力を尽くすことをここに誓う!!」

「さすがは旦那!
 よっ、ペーパーメダロッター!」

「頑張ってね、ツッキー!
 私も一生懸命応援するからね」

 一同に拍手で迎えられる月形。こうして月形は今週末に行われる町内メダロット大会に
正式に参加することを決めたのであった。

「二人とも、どさくさにまぎれてお皿洗いさぼらないでね♪」

「はーい」

第8話「ストレートフラッシュ」 ( No.8 )
   
日時: 2013/02/23 17:01
名前: ランド


『タスケテ、タスケテ。
 ハヤク、タオシテ・・・』

 月形の目が覚める。寝ぼけ眼で周りを見渡すと、自分の敷布団の横で漫画を手にしたまま
タイマーオフモードにして休んでいる愛機、シンセイバーことトラを見つける。
 首を窓の方向へと向けると、そこにはわずかに光が漏れている。
 ようやく、現実の世界だということを認識し、そしてあらためて思った。

「(またこの夢か。
 この声は決意した3人のうちもう一人の訴えなんだろうか。
 それとも・・・)」

 朝の7時30分。今日はメダロットショップの定休日。
白い割烹着を着たユキが、朝食としてお味噌汁・焼魚・白いご飯・納豆といった
和食の定番メニューを用意していた。

「どうぞ、召し上がれ」

「いただきます!」

 まともな料理を前にして、うれしそうに口に頬張る月形。その月形の幸せそうな
表情を不思議そうに隣のイスから覗きこむトラ。

「メシっていうのは、そんなにうれしくなるもんなの、
 旦那」

「あぁ。
 特にユキりんが作るメシは絶品だ」

「ゴージャスオイル2000よりも?」

「ゴージャスよりも、ウルトラよりも、ハイパーよりもだ」

 あっという間に朝食をたいらげてしまう月形。一方でようやく朝食を取り始めるユキ。
食べるだけ食べ、出された水を飲んでゆっくりとくつろぐ月形。
 そんな月形に対して、ユキが少々興奮気味に話しかける。

「ねぇ、ツッキー。
 せっかくのお休みなんだし、ロボトル大会に向けて
 私にできることがあったらなんでも言ってちょうだい!」

「そうだなぁ。
 じゃあ、なるべく安い食費でおいしいお昼ご飯を作ってもらおうかな」

「え、えぇ」

 月形の返答に対して、表情を曇らせてしまうユキ。その微妙なユキの変化を
まったく気にせず、月形は早速お茶の間に戻ってトラと共に
ロボトルシュミレーションメダルを見ることに。

「えーと、イセキさんから借りたこの
 ロボトルシュミレーション読み取り専用メダルを、
 このメダロッチアドバンスに装着して、と」

「いつのまにそんなハイテクなもんを借りたんでっか、旦那」

「君が展示品の女性型メダロットを眺めている時だよ」

 シュミレーションメダルをメダロッチアドバンスに装着する月形。
すると、メダロッチのヴァーチャルアイのビジョンに
ムービーが流れ始める。

『このシュミレーションメダルでは、メダロット初心者向けの、
 一連のロボトルの手順についてを説明していきます。
 見たい章だけを見る場合には、お手元の真ん中のスイッチを押して、
 キャプチャー画面を・・・』

 こうして数時間の間、月形とトラはこのシュミレーションムービーを見て
勉強をすることに。当然、月形もある程度はロボトルの知識も持っている。
だが、トラにロボトルの手順をおしえさせる意味と共に、また
正式なロボトルの仕方をきちんとマスターしておいたいという思惑があった。
 ようやくムービーを見終わり、クタクタになって仰向けになる二人。
そんな二人を見下ろすように、昼食のチャーハンを差し出すユキ。

「二人ともお疲れ様。
 お昼できてるわよ」

 パンパンになった頭と疲れ切った目、そして何より空腹を満たすために
お昼のテーブルにつく月形。疲れた様子の月形を心配した様子で眺めるユキ。

「大丈夫、ツッキー?
 無理な入れ込みはよくないわ」

「大丈夫だよ、ユキりん。
 大会は今週なんだ。
 何とか普通にロボトルができるためにも、午後はもっと頑張らなくては」

「じゃ、じゃあ、午後こそ私に何かお手伝いを」

「そう、だね。
 それならとりあえず僕の布団を外に干しておいてくれないかな。
 トラが踏みつけてきてぺったんこなんだ。
 その後にこっちの手伝いを頼むよ」

「う、うん!」

 気を引き締めるように、急いでチャーハンを口にかけこむ月形。
そしてすぐさまトラのもとへと走り出す。その様子を心配し、またそれと同時に
どこかホッとしたように月形を見つめるユキであった。
 今度はトラを外に連れ出し、メダロッチ画面を見ながら説明し始める月形。

「君のパーツは右腕がコテツザンゲキ、なぐるの攻撃。
 左腕がレップウシャウト、ねらいうちの攻撃。
 頭部がミブウルフ、反撃の特殊か」

「おもしろいネーミングですな、旦那」

「実際のロボトルでは右腕のコテツザンゲキを使おうと思う。
 やはり左腕のねらいうちに比べるとリスクは低いしね。
 刀を出してくれ、トラ」

「あいよ」

 トラの右腕、コテツザンゲキの鍔から刀が飛び出す。パッケージ的には、
シンセイバーのコテツザンゲキはすでに刀が飛び出ているのが一般的である。
だが、普段からこのように刀を突出させていても危険極まりないため、
何もない時は腰に引っ提げ、戦闘のときのみ鍔から刀が出せる仕様になっているのだ。
 射出した刀を見つめて、感動する二人。

「んで、出してどうすん、旦那」

「うわぁあ!!
 刀をこっちに向けないでくれ、トラ!」

「あっ、申し訳ない」

「とりあえず、シャドーロボトルだ。
 架空の対戦相手を意識して、接近戦だ!」

「あいよ!」

 自分に向けられる鋭利な刀にビビりつつも、実戦に向けて本格的に練習しだすトラ。
 実際に対戦相手を見つけられればこの上ないのだが、実際問題、
どうやってその対戦相手を見つけ、ロボトルを申し出ればいいのか分からなかった。
 しばらくシャドーロボトルをしていると、家事を終えたユキが
月形のもとへやってくる。

「これは何をしているの、ツッキー」

「うん、これはシャドーロボトルだよ。
 トラもまともに自分の武器を扱えないとしょうがないからね」

「へぇ、そうなんだ。
 それで、私は何をしたらいいの。
 今度こそ、ツッキーやトラの役に立ち・・・」

「じゃあ、とびっきりおいしくて、食費がかからない夕飯を頼もうかな」

「!!
 ・・・。
 ツッキーのバカぁっ!!!」

 突然のユキの叫びに、凍りつく月形とそのメダロットトラ。
ユキは目に涙をいっぱいため、そしてその場を走りさってしまう。
 月形はただ呆然とするしかなかった。何が起きたか、事態を飲み込めなかった。
 ユキを引き留めようとして差し伸べた右腕を突き出したまま、ただ情けなく突っ立った。

第9話「仲間か友か」 ( No.9 )
   
日時: 2013/02/23 17:23
名前: ランド


「ツッキー、
 オメーまさかユッキーに手をあげたんじゃねーだろうな」

「手をあげる?
 ユキりんに挙手してどうするんですか」

 ここはメダロットショップの店内。真昼だというのに、天気は暗く、曇にまみれている。
 イセキは前日までとはまるで違うユキの様子にいち早く気付いていた。
喧嘩腰のような口調でその原因について月形に問いただす。

「怒っている理由はよく分からないんですが、
 とりあえず昨日、かくかくしかじか・・・」

 相変わらず、なぜユキが怒っているのか分かっていなかった月形。
度々、心配そうに外でビラ配りをしているユキに目線を配りながらも、
昨日起きたことの一部始終をイセキに伝える。
 月形の説明を聞いているイセキの表情がじょじょに阿修羅のように険しくなり、
そして終わった頃には。

「こんのすっとこどっこい野郎ぉおっ!!」

「ぐはぁっ!」

 イセキの鉄拳が月形に命中する。あっけにとられて、ただ茫然と拳突き出すイセキの
方向を見つめる月形。
 拳を突き出したまま、人差し指だけを一本、月形に向け指し
イセキは荒い口調で喋り出す。

「ユッキーはオメーの役に立ちたいって訴えてんだろがっ!
 いいか、ユッキーはオマエのママじゃねぇんだ!
 ユッキーもおまえと戦いたいんだ、
 それがユッキー自身の今頑張っている目的なんだ、 
 アイツを便利屋扱いすんなっ!!」

「!」

 イセキの店内だということを全く無視した怒声に、月形は圧倒されっぱなしだった。
無論、客はいないが。ユキも同じ使命を持って、この世界で意味を持ち、
生きることを許された仲間。だが、その役目を果たせていないことに、不安を感じていたのだ。
 それに全く気付けなかった月形。
 しかしなお、月形の表情はスッキリしたというよりも、微妙なものにしかならない。

「けど、家事は必要だ。
 ユキりんにメダロットと家事の両立を強いることを、
 この月形一徳、許して良いのか分からないんだ」

「・・・そーだなぁ」

 月形にそっとイスを差し出すイセキ。そして、無言の指示通りイスに座る。
そのすぐ横にイスを持ってきて、豪快に座るイセキ。
 しょぼくれている月形の肩にそっと手をおいて、なだめるように語り出す。

「まっ、オマエがユッキーをただの使いッ走りみたいに思ってるなんて
 ユッキー自身も思ってねーよ。
 たださ、子供にはまだ分からんのよ」

「そうなの、か」

「でも一緒に戦う仲間だってことを忘れて欲しくないわけよ。
 女っていうのはよ、ツッキー。
 例え忙しくてもな、自分が求められることがうれしいもんなのよ。
 どうすればその両立ができるか、今日じっくり考えてみな、ツッキー」

「はい」

 頑張れといわんばかりに、笑みで、月形の背中をひと叩きするイセキ。
イセキが具体的な解決策を言わないことに少々腹を立て、感謝する月形だった。
 その日の夜。バイトの帰り道も別々だった二人。
決まった夜7時という夕飯の時間にキッチンに向かうと、そのテーブルには
コンビニで買ったであろう値引きされたあんぱんが二つ。
すでに、ユキが袋から開けて食べ始めていた。
 月形も恐る恐る席に座り、そしてあんぱんの袋を開けながら、作った笑顔でユキに
話しかける。

「あの、その、えーと、今日も疲れたね、ユキりん。
 そういえば、この後とか、時間あるかな」

「た、たぶん」

「なら、じゃあさ!
 トラと一緒にメダロット基本性能ムービーを見てくれないかな。
 今日イセキさんから貸してもらったんだけど、
 僕はちょっと、やることがあって、さ」

「・・・ご、ごめんなさい。
 やっぱり今日はやることがあって」

 早々とあんぱんを口に頬張ると、居づらそうにユキはキッチンを飛び出して
自分の寝室へと駆けこんでいってしまった。
 落胆の色を隠せない月形。そんな二人の様子を心配したように見つめるトラ。
 手に取ったあんぱんを一口も食べず、がっくりと頭を落とす月形の
服をグイグイと引っ張る。

「旦那、ユキりんはんもきっともう仲直りしたいんよ。
 ちょっと今は間が悪いだけだよ」

「違う、僕がいけないんだ、トラ。
 例え口で仲直りしても、それはユキりんにとって本当の幸せじゃない。
 僕が本当のユキりんの役目を見つけてあげなきゃいけない。
 そうじゃなきゃ、そうじゃなきゃ・・・」

 真剣に悩む月形をそっとしてやるしかないと思うトラ。
ならばと思い、今度は一方のユキの部屋へと足を運ぶ。
 ユキは暗い部屋で一人、月明かりを頼りにして本を熟読していた。
トラが入ってくると分かると、笑顔でそれを迎え入れる。

「どうしたの、トラちゃん」

「その、ユキりんはん。
 旦那ももうえらい反省してて、このままじゃナメクジになるって
 くらいウジウジしてて」

「ゴメンね、トラちゃん。
 あなたにまで色々と迷惑かけちゃって。
 でもね、ツッキーのことだけじゃなくてね、
 私、自分自身にもちょっと怒ってるの」

「へ?」

「私は端役として、何とかしたいってこの世界でチャンスを与えられて、
 今まで何をしてきたんだって。
 ご飯を作って、家計簿つくって、なんだか、どうしようもないなって。
 自分のメダロットを持って、戦う練習して、一喜一憂してるツッキーを見てるとさ・・・。
 なんだか、うらやましくて。
 少しずつ、前に向かって、夢に向かって成長してるツッキーがうらやましくて。
 惨めになっちゃって、自分が。
 ・・・嫉妬なの、ただの。
 いけないよね、こんなこと。
 たかが端役なのにさ、私なんて」

 ユキは両手に持っていた本で顔を覆い隠し、震え始める。
人生経験も足りないトラは、何もしてやれず、言葉をかけてやれず、
ただユキを一人にしてやるしかなかった。
どうしようもない足取りで再び月形のいるキッチンへと向かうトラ。
 するとそこには、ゴミで捨ててあったハズの何かを取りだしている月形の様子があった。

「旦那、なにしてはるん。
 その箱、ワイの乳母車やん」

「あぁ、君の入っていた箱だよ。
 ちょっと手伝ってくれないか、トラ」

 月形はトラが詰められていた箱を使って何かをしようとしていた。
そして、言われるがままに手伝うトラ。果たして彼らは何をしようとしているのか。

 時は過ぎ、空にはまた日が昇る。毎朝朝食を作っていた習慣からか、
ユキは自然に早起きしてしまう。
まだぼおっとしている目をこすりながらキッチンに進むと、そこには
テーブルでふて寝している月形の姿があった。
おまけに、テーブルの上には昨日何かを作ったであろうもののゴミが散乱していた。

「(もう、ツッキーたら。
 こんなに散らかしちゃって)」

 無視することができず、ゴミ袋を持ってきてテーブルの上を片づけようとすると、
あることに気付く。テーブルの上に散乱している小さく切られた紙の後ろには
何かが書いてあるではないか。不思議そうにその内容を見つめるユキ。

「(紙に何か書いてあるわ。
 『今まで以上にボディを洗う券』『ユキりん一日独占指導券』
 『相手メダ役を買ってでる券』『月形(僕)の至らない点を徹底指導する券』
 これって、まさか)」

 さらにテーブルを見渡すと、月形の寝ているその奥に、「ユキりん目安箱」と
書かれた大きな箱が用意されていた。

「(もしかして、この箱からクジを引かせて一日の役割を
 決めようとしたのかしら。
 しょうがないわね、ツッキーったら)」

 どうやらこの箱で引いたクジを二人の一日の役割としてあてようと考えていた月形。
こうやって二人の役割を決めておくことで、ユキにも不公平を与えないように
とした、月形にとって一日中考えた故の最大の配慮なのだろう。
 その非効率さゆえに、笑みをこぼすしかないユキ。さっさと月形を
起こそうとすると、ユキの目に何かが止まる。

「(あれ?
 そういえば、何でこの券の最初の文字に赤い丸があるのかしら)」

 不思議と、券に書いてある文章の最初の文字に赤い丸が記されていることに気付く。
 探してみると、それは全部の券に書かれているではないか。
無意識のうちにその券を全部集めて、熟考にひたるユキ。

「(もしかしてこれって、並びかえれば・・・)」

 そそくさと、赤い丸された文字を先頭にして何かを見つけ出そうとするユキ。
 すると、手が止まり、何かに気付く。

「(これって、やっぱり文章になるわ。
 えーっと、これでいいのかしら。
 ・・・『ゆキりん、イツ、も、あリ、ガ、とう』)」

 その瞬間であった。ユキがその文章を解読したと同時に、月形が飛び起きる。
 そして、ユキがすでにこの券を見ていることに慌てて説明をしだす。

「こ、こ、これはだね、ユキりん!!
 実は、お互いのちゃんとした役割を決めようと思って
 券を作ってみたんだ」

「え、えぇ」

「こうすれば、きっとユキりんも寂しくなるハズだ!
 もちろん、この券以外にも僕は今よりずっと、洗濯もするし、お風呂掃除も、
 料理も・・・りょ、料理はユキりんの邪魔しちゃ悪いかな。
 とにかく、ユキりんを手伝う!
 だから、ユキりんもロボトルの手伝いをして欲しいんだ」

「う、うん」

「あ、あと、その、えーと、さぁ・・・。
 実は、これはまだお楽しみなんだけど。
 券を全部集めると、ちょっと良いことがあるんだ。
 いや、そんなに期待されちゃ困るけど」

「!」

 照れくさそうに言う月形を見て、ユキの目には一粒の涙がこぼれおちた。
月形がどれほど自分のことを思ってくれているのか、ようやく理解できた。
 急に泣かれだし、慌てふためくしかない月形。

「そ、そのユキりん、悪かった!
 僕がいけなかったんだ、だから泣かないでくれ!」

「ツッキー」

「?」

 ユキはゆっくりと月形に向かって右手を差し出す。それは、握手を求める手。
呆気にとられたようにユキの顔を見ると、満面の笑みでいるユキがそこにはいた。
 この時、ようやく月形はユキの心情が理解できた。
 月形も手を差し出し、二人は熱い握手を交わした。

「ごめんなさいね、ツッキー。
 私がイジけちゃったせいで」

「僕も悪かったよ、ユキりん。
 この握手で、また一緒に戦って、くれるかな」

「・・・えぇ。
 だって私達、本当のお友達だもの」

第10話「誰がために鐘は鳴る、か」 ( No.10 )
   
日時: 2013/02/24 14:48
名前: ランド


「えー、まもなく第9回オンド町ロボトル大会、
 シングル制、小中学生部の開会式を行いますでの、
 選手及び関係者は・・・」

 公民館の前の広場にアナウンスが響き渡る。今日は待ちに待った町内ロボトル大会。
午前中の朝早くという時間にも関わらず、広場にはそれなりの人数が集まっていた。
 その関係者・応援席に、大きなリュックサックを背負って、回りを
あたふたと見渡す少女が一人。

「あれれ。
 イセキさんは何処かしら」

「ユッキー、こっち、こっち!」

 すでに席を陣取り、ユキを待っていたイセキ。両手を振って合図を送るイセキを見つけ、
うれしそうに駆けだすユキ。
着いた早々、見るからに重そうなリュックサックを敷いてあるマットに置き、一呼吸置く。
 一休みしているユキに、イセキはすでにもらった今日の大会のパンフレットを渡す手渡す。

「まー、人が少ない田舎大会だことだ。
 でも、その分競争は低いし、なによりシングル制で一対一で戦えるから、
 まぐれ優勝しちまうかもな」

「そうなるように、
 今日はいっぱい応援しましょうね、イセキさん」

「はいはい」

 手渡された資料を読みながら、しばらく談笑するイセキとユキ。
すると、手持ちの資料に不可解な部分があったのか、イセキに尋ねるユキ。

「あの、ここに純正以外は認めないって記載されてますけど、
 どうしてなんですか」

「それ以外にも、大会中はパーツ交換一切禁止。
 1体1だからな、その度にパーツ交換してたら不公平が生じちまう。
 だから、純正のメダロット限定で、試合終了後のパーツ取引も無し。
 これはMJC公式ルールだぜ」

「良かった、ツッキーが一体のメダロットしか持ってなくて」

「そのツッキーは今どこにいるんだ?」

「それが、朝早く一人で飛び出しちゃって、
 たぶん開会式の人の中にいるとは思うんですけど」

 この大会は純正メダロットのみが参加できる。つまり、決まった型番号のパーツ以外
許されず、他のパーツを組み込むことは一切認められないのだ。
これも、金銭面で差がでないようにという、考慮なのだろう。
 しばらくすると、ようやく次のアナウンスが流れる。

「これより、第9回オンド町ロボトル大会の開会式を始めます。
 参加者は中央広場に集まって下さい」

 アナウンスと共に一斉に人々が広場へと足を運びだす。
無論、ユキやイセキも開会式へと向かう。

「えー、本日は晴天にも恵まれ、
 絶好のロボトル日和となりました。
 これもみなさまの日ごろのおこな・・・」

 長く、退屈な閉会式の言葉が続く。この閉会式の言葉が終われば、後は
あれよあれよという間に1回戦まで向かうことになる。
特に目ぼしいことも行わず、少人数の大会の身の丈に合った、短い開会式が終わる。
ここでようやく参加者は今大会の対戦表を受け取ることとなる。
 開会式が終わって一足先に応援席で一休みするユキとイセキ。

「今日の大会は誰か強い人が出るのかしら」

「さーね。
 ユッキー達は相手の情報とかは調べてないのか?」

「えっ。
 そういうことは全く」

「でかい大会になればなるほど、相手の情報が必要になってくるぜ。
 宇宙人みたいな奴を除いて、大抵強い奴はきちんとした
 情報を掴んで備えるもんだからよ」

「な、なるほど」

 イセキの言うべく、戦いは大会の開始前から始まっていると言っても過言ではない。
どのメダロッターがどういう傾向のメダロットを使用するのかが分かれば、
いざ当たった時に不利に働くことはまず無いからだ。
 イセキの言葉に感銘し、そして何かヒントを得たように納得するユキ。
 そんな二人の前にようやく、彼がやってくる。

「おはよう、ユキりん。
 あれ、イセキさんもいるのか」

「おはよう、ツッキー」

「アタシがいちゃ何かマズイのかい、ツッキー」

「アルバイトはどうしたんですか。
 確かシフト今日入ってましたよね、イセキさん」

「バーカ。アンタらの姉貴分のアタシが見てやらなくてどーすんだ。
 店には客から苦情が来たから対応のため出張中ですって
 張り紙したから大丈夫だよ」

 イセキの適当さに、困惑を隠しきれない月形。
 月形が現れたのを確認して、ユキが持ってきた大きなリュックサックから
何かを取りだそうとする。取り出してきたのは、ナフキンで包まれた何か。
そのナフキンの中身は手作りのおにぎりが入っていた。
おにぎりをそっと、月形に差し出すユキ。

「はい、まだ朝ご飯食べてなかったでしょ?
 おにぎりいっぱい作ってきたから食べてちょうだい」

「おぉ、さすがはユキりん!
 いてもたってもいられなくて、朝食抜きでここにきちゃったからな。
 いただきますっ!」

「ツッキーったら、慌てん坊なんだから」

 うれしそうに、ユキが作ったおにぎりを頬張る月形。
ついに訪れた初大会、初ロボトルを前にして、月形は朝から興奮しっぱなしであった。
 おにぎりを次々に口へと入れ込む月形を横目に、イセキが大会の詳細について尋ねる。

「それで。
 参加者は結局どれくらいだったんだい」

「えーっと、18人だったかな」

「これまた少ねーな。
 それで、対戦相手は分かったのかい」

「確か僕が11番だから、12番の久我二郎(くがじろう)、君だったかな。
 開始は9時40分だから、あと20分後だ」

 18人という極めて少ない人数。だがこれも、地域の大会ならば仕方がない。
その分、イセキが言ったように優勝する機会は増え、経験・実戦・自信をつけさせるには
もってこいの場である。
 朝食を食べ終わり、トラのメンテナンスに入る月形。

「何処かに異常はないか、トラ。
 コテツザンゲキの刀は問題なく、セットできるか」

「バッチリでんがな、旦那!」

 正直なところ、月形自身も1回戦も勝てないということがあっても決して不思議では
ないと悟っていた。いや、これが普通なのであると。
ただ、今の自分が、ある程度の知識を得た自分が今どのレベルにいるのかを把握したかった。
 そうこうしているうちに、時は過ぎ、あっという間に開始10分前に。
時が近づいたのを月形に伝えにいくユキ。

「ツッキー、あと10分だよ」

「うん。
 ユキりん、僕、頑張ってくるよ。
 僕達の友情でここまできたんだ、トラを鍛えてきたんだ。
 だから、僕達は一緒に戦ってるってことを忘れずに、全力を尽くすよ」

「私も一生懸命応援するから。
 ツッキーが、トラちゃんが勝てますようにって」

「この月形一徳、端役代表として、
 行ってきますっ!!」

 ユキに見送られて威勢よく、トラと共に広場へ向かう月形。
その背中をやや心配そうに見つめるイセキ。ふと、イセキは疑問に思った。

「(ん?
 そういや、アイツって・・・)」

 月形は自分が戦うフィールドへと到着した。すでに前の対戦は終わっており、
今このフィールドには、審判しかいなかった。
後は、ロボトル開始時刻を待つのみ。
真剣な眼差しで、あと数分後に死闘を繰り広げるであろうフィールドを見つめる月形。
自然と拳を強く握りしめた。
 そんな月形の姿を見て、話しかけてくる男が一人。

「おい、おまえが月形一徳か」

「?
 確かに、僕が月形一徳だけど」

「ッチ、初心者くせー面だな。
 どうなんだ」

「正真正銘の初心者だ!
 僕はまだ生涯一度もロボトルをしたことはない」

 現れたのは、後ろで髪を縛っている、少し目つきの悪い男。
何処か喧嘩腰の口調に対して、月形もややムッとした表情に変わる。
 月形の初心者であるという発言を聞いて、男まもた苛立った顔をみせる。

「ッチ、だからこんなクソみてーな大会は嫌なんだ。
 誤射して俺のメダを傷つけるなよ」

「さっきから聞いていれば失礼だな!
 スポーツマンシップの風上にも置けない」

「この全国大会経験者、全国プレイヤーの
 久我二郎様に喧嘩を売ろうってのか?」

「(彼が久我二郎君。
 全国大会に出場したっていう設定のモブキャラなのか。
 いかにも端役らしい小悪党な性格だが・・・!)
 全国だからといって偉いわけではないハズだ、久我君。
 初心者として、胸を借りるつもりで君に」

「久我様と呼びな、ビスケット坊や」

「何っ!」

「こいよ、おらっ!」

 挑発され、カッとなった月形は久我の襟元を強く掴む。
それに反応してか、久我も月形の襟元を掴み、そして拳を振り上げた。
 同じモブ同士、月形は最初は久我に対し同情と、理屈のない親密感から
どんな態度をしてこようと許容しようという気持ちがあった。
だが、あまりにも行き過ぎた彼の言動に、さすがの月形も熱が入ってしまう。
あまりに無益な争い、そしてモブのために戦う月形にあってはならぬ行為。
 その様子を見ていた審判が、慌てて二人の間に割って入る。

「君達、一体何をしているんだ!
 喧嘩をやめないと、二人共失格にするよ。
 はやくこっちにきなさい、もう時間がきてるよ!」

 審判の制止によって、何とか最悪の事態は免れた二人。
不敵な笑みを浮かべながら、久我は小突くようにして月形の襟を離した。
 そしていよいよ、戦いの時は来た。
 フィールドの中心に集まる久我と月形及び、そのメダロット達。
お互いが睨みあうようにして、目を逸らさない。
そんな二人の険悪な様子にも関わらず、審判はそそくさと準備を進める。

「えーと、11番の久我二郎君。
 12番の月形一徳君で間違いないね?」

「はい」

「ではこれより、第1回戦の試合を始めます。
 フィールドは草原。
 試合時間は8分、延長は無し。
 じゃあ、お互い握手をして」

「(いけない、いけない。
 僕は恵まれない全端役のために戦っているんじゃないか。
 久我君もその一人だ。
 反省して、彼自身を受け止めないと)」

 握手を命令され、少し間を置く両者。
 その間に、自分の本来の役割を思い出し、さきほどの行動を深く反省する月形。
自分を戒める意味も込め、手を差し出そうとすると、以外にも先に手を出してきたのは久我。
それにつられて月形も手を差し伸べるが。

「痛っ!」

「こ、こら、君っ!」

 差し出してきた月形の手を、強くはたいて、握手を拒絶する久我。
そして背を向けてメダロッターポジションへと勝手に歩き始めてしまう。
 まだ唖然と久我の後ろ姿を見つめる月形に対し、久我は一度歩みを止め、
顔を月形に向け喋り出す。

「ミンチにしてやるよ、オマエのプライドも」

 台詞を吐き、満足げに足音鳴らしながら歩いて行ってしまう久我。
まだ痺れ残る手を見つめながら、月形は険しい表情をして
考え込む。

「(これが僕の戦う、生きる理由なのか?
 彼の名誉を守ることが、僕の使命なのか?
 こんな一時の風に吹かれちゃ、やってられないのは分かるけど・・・!)」

 自分が守ろうとした者でさえ拒絶されてしまう月形。
一体何を目的にここまできたのか、練習をしてきたのか、努力してきたのか。
だが、そんな卑屈になるようなことを考えていても仕方ないと、
両手で顔を叩き、一喝入れて、自分のメダロッターポジションへと向かう月形。
ただ今は戦って、勝つことのみが求められる。ただそれだけを考えるように、切り替える。
 果たして生涯初となったこのロボトル大会、月形はこの初戦の相手、久我二郎を
前にして勝利を掴みとることはできるのだろうか。

第11話「対 久我二郎」 ( No.11 )
   
日時: 2013/02/24 17:30
名前: ランド


「それでは、第一回戦。
 ロボトルファイト!」

 ついに口火が切られた月形対久我のロボトル。始まると同時に、
ようやくロボトルが見えるポジションを見つけたイセキとユキ。
少々、遠目ながらも、そのロボトルを見守る。

「ついに始まっちゃった。
 大丈夫かしら、ツッキー」

「相手のメダロットはフライイーグルか、悪くねーな。
 基本性能の対決だとツッキーに分が悪そうだな」

「えっ。
 だ、大丈夫なんですか、イセキさん」

「まっ、ロボトルはやってみねーと分からないさ。
 高みの見物といこうぜ、ユッキー」

 久我のメダロットはEGL型のフライイーグル。
イセキはその型も名前も一瞬で見抜くことができたが、当然のごとく、
初心者の月形はまるで分からないであろう。
両手を合わせ、祈るように月形を見つめるユキの願いは果たして届くのであろうか。
 一方、実際に戦う身となっている月形。
初めてのロボトルということで、さすがに緊張し、そして命令に戸惑っていた。

「(相手のメダロットがよく分からない。
 分かっていることが飛行タイプというくらいか。
 でも、僕は初心者だ。
 とにかく今は、当たって砕けてみるしかない!)
 行くぞトラ、相手メダロットにコテツザンゲキだっ!」

「合点ですがな、旦那!」

 このままウジウジとして、相手のペースに持っていかれたくなかった月形は
とにかく先制攻撃を目指した。
素早い動きでフライイーグルまで接近し、右腕のコテツザンゲキをセットして
攻撃を仕掛けるトラ。
 それに対して相手のメダロッター、久我は。

「ありゃ改訂版か?
 まぁどうでも良い。
 イーグル、後方に移動して回避だっ!」

 フライイーグルをめがけて振り下ろしたコテツザンゲキを、いとも簡単に
後ろに下がることによって回避してみせた。
 コテツザンゲキはフライイーグルを捕らえることなく、地面に叩きつけられる。

「速いのか、いや、うまいのかっ。
 ひるむな、トラ!
 コテツザンゲキでそのまま追撃だっ!」

「っぐ」

「?
 ど、どうした、トラ!」

 月形は不思議に思った。どうしてトラは後方に回避したフライイーグルに追い打ちを
仕掛けないのかと。それどころか、右腕のコテツザンゲキの刀をまた鍔内部に
戻してしまったではないか。

「だ、旦那、放熱中でっせ」

「?
 ほ、ほう、ねつ?」

 この時、月形は『放熱』という概念が分かっていなかった。いや、言葉自体は
聞いたことがあるかもしれないが、その内容を理解していなかった。
メダロットには攻撃を仕掛ける準備時間の『充填』及び、攻撃を仕掛けたパーツを
一時的に冷ます『放熱』のラグがあるのだ。
 モタモタとしている月形を見逃さない久我。

「放熱中にボーッと突っ立ってるなんて白痴かよ!
 イーグル!
 リークバンドル、ミサイルだっ!」

 攻撃後に全く指示を出さない月形に対して、バカにしたようにフライイーグルに
ミサイルの攻撃指示をする久我。
 その様子を見た月形はただただ慌てるしかなかった。

「ミ、ミサイル!?
 たしか、えーと、あれは、必ず当たるはず。
 ト、トラ!!
 ・・・その、あ、いや、だから」

「ど、どうすればいいん、旦那」

「ぼ、ぼ、防御、防御だ、トラ!」

「せやかて、ど、何処をどう防御したら良いん?」

「!?」

 初めてのロボトルからか、全く的確な命令をすることができない月形。
ようやく伝えた命令も、ロボトルの経験が浅いトラにとってはまったく
理解することができなかった。
ミサイルの軌道を読んで、どのパーツに着弾しそうなのかという予測もできない。
 仕方なく、がむしゃらに両腕で頭部パーツを覆うトラ。
フライイーグルの右腕から発射された小型の4つのミサイルがトラに命中し、
爆音と土煙りを巻きあげる。

「ト、トラぁあっ!!!」

『 シンセイバー、脚部ダンダラフット ダメージポイント35。
  左腕レップウシャウ ダメージポイント15、発射口に異常、レップウシャウト使用不能。
  右腕コテツザンゲキ ダメージポイント10』

 トラはやはりうまく防御ができていなかった。
想像以上のダメージがトラに襲いかかる。この絶望的な状況に対し、
月形はパニック状態に陥っていた。

「レップウシャウト、発射口に異常?
 もう使用することができないってことなのか?
 ど、どうすれば良いんだ、攻撃パーツはあと一つしか残っていない」

「だん、な」

「トラ・・・。
 あっ、っぐ・・・と、とにかく、右にある大きな石に身を隠せ、トラ!」

「了、解」

 分からない、何が起こっているのか全く分からない月形。
そんな月形の様子を傍から見守るイセキとユキは気が気ではなかった。
 苛立ったように、手に持っているパンフレットをクシャクシャに
握りつぶすイセキ。そして、さきほどよりもつよく両手を握りしめ祈るユキ。

「何してんだ、ツッキーの野郎!
 防戦一方ってレベルじゃねーぞ!」

「(お願い。
 ツッキーをどうにか勝たせて下さい)」

 一方で、試合を完全に掌握した久我は、余裕の表情で戦況を見守る。
メダロッチをじっと眺めながら、フライイーグルの充填が完了するのを待つ。

「マスター、充填が完了しました」

「良し、あのバカに隠れても無駄だってことをおしえてやるか」

 草原フィールドにポツポツと設置してある岩陰に身を潜めるトラ。
放熱、充填は完了しているが、この先の展開をまったくつかめない月形。
 メダロッチを構えたまま、口を開くことができなかった。

「(どうする、どうする、どうする?
 このまま隠れていてもどうすることもできない。
 くそ、くそ、くそ、くそ、くそっ!
 考え方が甘かった!
 こんなに、こんなに僕はどうすることもできなかったのか!
 一体僕は、何をしてきたんだ・・・!)」

「旦那!!」

「!?」

 ロボトル中にも関わらず、自分の心の中で押し問答を繰り返す月形。
すると、メダロッチからトラの悲鳴にも似た声が聞こえてくる。
 すぐさま目線をトラに向けると。

「ハハハハハハハッ!
 こっちは飛行タイプだぜ、岩に隠れようが丸見えなんだよ!」

「しまった上か!」

 フライイーグルはトラの上空に位置していた。
これこそが飛行タイプのメリットともいえる。
不意を突かれ、防御をすることも忘れしまうトラ。
 この状況をどう切り抜ければいいか全くビジョンが浮かんでこない月形の、
遮二無二突き出した答えとは。

「ト、トラ、攻撃、攻撃だっ!!
 右腕のコテツザンゲキだっ!」

「了解!」

 無謀としか思えない攻撃。だが、トラ自身も何が何だか分からない状態。
ただ月形の命令に従って、コテツザンゲキをセットさせて、空中漂うフライイーグルに
向けて攻撃を仕掛ける。
 だが。

ガキィッ

「ト、トラの刀が、折れた!?」

 パニック状態のトラが振り回したコテツザンゲキが、近くの岩に当たって砕け散る。
 こうして、トラは攻撃の術を全て失った。
後はただなぶり殺されるだけ。

「ダ、ダメだ・・・。
 逃げろ、逃げろ、逃げてくれ、トラ!」

「できへんのよ、旦那。
 さっきの足のダメージで、うまく、走れないよ」

 ダメージの蓄積にも慣れていないせいか、うまく脚部を操作できないトラ。
 そんなトラの体に、大きな影が映し出される。
その影は鷲、フライイーグル。

「つまらねぇ。
 弾数の消費だけかよ、得るものはよ」

「逃げろ、逃げるんだ、トラぁ!」

「トドメは一撃で決めてやる」

 無情にも、月形のメダロッチに放熱及び、充填が完了した合図が出る。
 だが、どうしようもできない。
月形は逃げる指示しかすることはできない、考えられない。
 そして、ついに。

「決めるぞ、イーグル!
 リークヘッド、ミサイルで蹴散らせっ!!」

 フライイーグルで最大の威力を誇るリークヘッドで、全てを決めにきた久我。
ミサイルが発射されるその刹那。月形のメダロッターポジションの近くに
急いで駆け付けたイセキが、怒声を響かせる。

「頭を使え、バカ野郎ぉおーーーーっ!!!」

 イセキの声に月形が反応した。
何かを思い出したかのように、メダロッチに向けて指示を出す。

「ト、トラ!!
 ミブウルフ、反撃だっ!」

 とっさの月形の声に反応して、頭部パーツの反撃、ミブウルフを使用するトラ。
 その次の瞬間であった。空中に凄まじい爆発が起きたのは。
そして、爆風と共に、地上に堕ちてきたのはフライイーグル。
頭部パーツのミサイルを反撃されたのが運のつきであった。

「フライイーグル、戦闘不能。
 勝者、月形一徳っ!」

第12話「咆哮する平時」 ( No.12 )
   
日時: 2013/02/25 09:37
名前: ランド


「勝者、月形一徳、トラ。
 勝った者はこの紙を大会本部の記録員に渡して下さい」

 第1回戦のロボトルが終わり、それまでの記録を記した紙を手渡される月形。
月形は勝利したのだ。あれほど苦しく、絶望的な状況から。
 だか、その当の本人の月形の顔に笑みは全く無かった。
 一方で、圧倒的に有利な状況からまさかド素人に敗北してしまった久我。
ショックからか、いまだにメダロッターポジションから一歩も動くことができなかった。

「俺が、全国プレイヤーの俺が、
 あんな、あんな奴に・・・!」

 久我は手首につけたメダロッチを力の限りはぎ取り、そして、地面に強く叩きつけようとした。
だが、叩きつけようと振り上げた腕は、冷静を装う感情と対決し、振り下ろす
ことはできなかった。
 そのころ、試合を観戦し終わったイセキとユキは、月形の帰りを待つべく
応援席に急いで戻る。

「あのイセキさん。
 一つ質問があるんですけど、よろしいですか」

「何だよ、ユッキー」

「どうしてあの対戦相手の方はトラちゃんの反撃パーツが残っているのに
 わざわざ頭部パーツで攻撃を仕掛けたんですか?
 経験者みたいだったし、シンセイバーはそれなりの人気機種、
 パーツが分からないことはなさそうなんですけど」

「たぶん、二つの理由があるだろうよ。
 初期型のシンセイバーは一般メダロットにしては強すぎて、
 今の改良型になったって経緯があるんだ。
 その初期型の頭部パーツがホールド攻撃。
 たぶん、アイツは禁止パーツ使用不可じゃない今大会ならば
 当然勝つために初期型のシンセイバーを使ってくると思ったんだろうぜ」

「なるほど」

「それに、頭部パーツの反撃はそれなりに
 メダルのレベルを上げておかないと成功しないんだ。
 まっ、その点に関してはアタシもよく分からねーけどさ。
 だけど、今はそれより・・・」

 なぜ月形が勝てたのか、その原因を細かく分析しているイセキ。
そんなイセキの姿をまるで惚れ惚れとしているように聞き入るユキ。
 だが、そんな終わったことはどうでも良いのだとイセキは感じていた。
 問題はこの先。イセキは前々から悪い予感がしていたのだ。
応援席に戻ると、そこにはすでに月形とトラが待っていた。
傷ついたトラをシートに寝かせて、どうしようもなく不安気な顔で見つめる月形。

「ツッキー!」

「ユ、ユキりん、イセキさん」

「おめでとう、ツッキー!
 ちょっとドキドキしちゃったけど、初ロボトル初勝利だね」

「おいおい、ユッキー。
 今はんな悠長なこと言ってられる時じゃねーぞ。
 分かってるよな、ツッキー?」

「は、い」

 祝福の言葉をかけるユキだが、月形の表情はあまりにも重苦しい。
まるで負けたかのような雰囲気すら漂う。
 イセキはシートで休んでいるトラの損傷状況をつぶさに確認する。
 その様子をただ呆然と眺めているしかない月形。
そして、しだいに両腕拳を強く握りしめ、震えだす。
その異変に気付いたユキ。

「僕が甘かった・・・!」

「ツッキー」

「何も、何も分かってはいなかった。
 トラを見殺しにしてしまうところだった。
 あまりにも、僕が馬鹿過ぎた・・・!」

 さきほど行った散々のロボトルを思い出し、くやしさに怒り震える月形。
まともな指示を一切できず、ただトラをなぶり殺しにされる所だった。
唯一まともに指示ができた最後の場面でさえも、それは単なるイセキの助言のおかげ。
月形自身は終始、あたふたすることしかできなかった。
 何と言葉をかけてやればいいか分からないユキ。
 しばらくして、パーツの状況を確認したイセキが、深刻そうに顔を持ち上げる。

「キッツイな。
 脚部はそれなりの時間がありゃ回復するだろうが、
 左腕はもう使えねぇ。
 右腕も刀が折れちまってる、死に体だ。
 まともに動くのは脚部と頭部ってところだな」

「だ、だが、あと20分後に次のロボトルがあるんだ、
 イセキさん!」

「さっきもふと思ったんだが、ツッキー。
 おまえ、トラのスペアパーツ持ってるのか?」

「えっ」

「パーツだけじゃねぇ、ガトリングの弾丸、コテツザンゲキの刀、
 それらの補充パーツもちゃんと持ってるのか?」

「い、いや」

 イセキがさきほど感じた違和感はこれだったのだ。
月形はメダロットのスペアパーツの必要性を全く理解、いや知らなかった。
動揺を隠しきれない月形に、言い聞かせるように語るイセキ。

「ただロボトルを続けられるだけなら誰も苦労しねーんだ。
 こういうトラブルがあるからこそ、ロボトルなんだ。
 ゲームやアニメとは違う、分かってんのか、ツッキー?」

「・・・」

「今は叱っててもしょうがねぇ。
 とにかくアタシはショップの方に戻ってスペアパーツがあるかどうか
 見てくるぜ!」

 落ち着いた口調でも、その内容は確実に月形の失態を責めていた。
もし月形が主人公であれば、久我戦が終わったのを区切りとして、
今回の話では初勝利に仲間と共に賑わい、次の対戦相手、ライバルを気にしていたハズ。
弾丸も、スペアパーツも、自動的に全て元通りになっているに違いない。
だが、モブである月形にはそんな特別は起こらない。
誰もが興味を削がれ、面倒と思うことを排除した、都合の良いことなど起こらない。
 仕方なくイセキはスペアパーツを持ってくるために、急いで
働いているメダショップへと向かおうとする。
 だが、そんなイセキを引き留めるユキ。

「で、でもイセキさん!
 ここから私達の働いているメダショップは・・・」

「やってみなきゃわかんねーさ。
 後15分、止まってられないよ。
 とにかくツッキー、オマエは10分前になったらフィールドの方に向かってろ!
 何とか間に合わせる!」

 そう言うと、イセキは全力でメダショップの方向へと人ごみかきわけ走り去っていく。
ユキは恐る恐る、月形の表情を確認した。
月形はただくやしそうに、ボロボロになり、言葉もまともに発せないトラを見つめていた。

「ツッキー・・・」

「・・・」

 ユキも月形も、何も言葉を発することはできなかった。
あまりにも認識が低かったという後悔を、この時二人は身を持って思い知らされた。

 そして時は過ぎ、月形は第2回戦のフィールドまできていた。
開始まで残り5分。ユキはイセキが間に合うのを目をつぶって願うしかなかった。

「お願い、お願い、お願いします。
 間に合ってください、イセキさん」

 だが、無情にも審判は第2回戦のフィールド中央へと、月形を誘う。
ほとんど歩けるだけの状態のトラを連れて、月形はその指示に従った。
 ゆっくりとした歩調のトラに合わせ、心配そうに見つめる月形。

「9番のアマアシさん、12番の月形君で間違いないね?」

「ハイだにゃー!」

「は、はい」

 ついに始まってしまう第2回戦。
始まってしまえば、もう待ったをすることはできない。
着々と進行させる審判に、思わず遅延を願いたくなる月形。
 だがし、しかし。

「ではこれより、第2回戦の試合を始めます。
 フィールドは草原。
 試合時間は8分、延長は無し。
 じゃあ、お互い握手をして」

「よろしくだにゃー」

「よ、よろしくお願いします」

 1回戦に当たった久我とは打って変わって、友好的に握手をするコスプレ風の少女、アマアシ。
始まる、絶望的な第2回戦が。
勝ち目が無いと断言できるほどの、負けるだけの戦いが。

 それから5分後であった、イセキがスペアパーツを持って会場に到着したのは。
汗にまみれて、ユキを見つけ出すイセキ。

「ユ、ユッキー!!
 ツッキーは・・・!?」

「・・・」

 両手で顔を覆い、しゃがみこむユキ。
イセキが視線をフィールドに向けると、そこにはゴミクズとなったトラの姿が。
メダロッターポジションで、膝を落としてうなだれている月形の姿が。
 対照的に飛び跳ねて大喜びするアマアシの姿がより一層、
月形とトラを惨めにさせた。

第13話「月を行きて候」 ( No.13 )
   
日時: 2013/02/25 10:29
名前: ランド


「だからだな、トラ。
 防御というのは頭部パーツを主に守るんだ」

「だったらダンゴムシみたいに丸まったら解決やないの、旦那」

「いや、それではな」

 初めて出場した町内ロボトル大会から2日後の夜。
夕飯の最中でも、月形とトラはいかにすればより良いロボトルができるかを議論していた。
 そんな二人の様子を微笑ましく見守るユキ。

「(本当に二人とも元気になって良かった。
 試合終わった日は凄く落ち込んでたけど、前より
 いっそう元気になっちゃったみたい)」

 自分の浅はかな知識のせいで、ボロ負けした町内ロボトル大会。
いかに前向きな月形でさえ、その日一日は後悔と苦悩を繰り返し、自分を恥じた。
 だがそれでも、月形は戻ってきた。再び戦いの場に。

「今度は2回戦突破を目指して頑張ってね、ツッキー」

「いや、ユキりん。
 僕はこの苦い経験を経て、反省した!
 その反省をきちんと生かしたと声高らかに言えるためにも、
 僕は次こそ優勝してみせるっ!!」

「さすがは旦那っ。
 よっ、威勢だけは一流メダロッター!」

「僕は前しか向かない、見えない、進まない!
 端役にはそんな暗いエピソードは必要ないんだ!」

 ただがむしゃらに前向きというわけはなく、きちんと反省も踏まえる月形。
しかし相変わらずの一直線な性格には、もはやあきれ果てるしかないか。
 そんな話をしながら夕飯を進めていると、ふとユキが何かを思い出し、月形にきりだす。

「あっ、そういえばね、ツッキー」

「どうした、ユキりん」

「私ね、明後日にこの家を出ようと思うの」

「へぇ、そうなのか。
 ・・・って、え、ええええぇえ!?」

 突如として飛び出したユキの衝撃の告白に、まるで事態を飲み込めない月形とトラ。
月形にいたっては、動揺のあまり箸で掴んでいたギョーザを落とし、
箸を食べだす始末。そしてすぐにイスから身を乗り出し、ユキに必死に訴えかける。

「ど、ど、ど、どうして!?
 また僕がユキりんを蔑ろにするようなことをしてしまったのか!?
 言ってくれ、ユキりん。
 僕が全て悪かった、すまなかった!」

「ち、違うのよ、ツッキー。
 これはね、ツッキーの、私達のためなの」

「?」

 まるで状況がつかめない月形。
そんな月形に対して、ゆっくりと、落ち着いて、優しく語りかけるユキ。

「前々から少し思っていたんだけど、一昨日の大会でハッキリ分かったの。
 私ね、ツッキー。
 情報という観点から、ツッキーを支えたいの」

「じょう、ほう?」

「イセキさんは何でも知ってて、とってもカッコ良かった。
 事実、今までイセキさんの知識があったから、私も、ツッキーもここまで来れた。
 私、そうなりたいの。
 ううん。
 イセキさんよりもっともっと情報を集めて、知って、見て、
 ツッキーを、トラちゃんを助けたい。
 私も情報戦というフィールドで、戦いたいの!」

 月形は、ユキの目がいままで一番輝いていることに気付いた。
そう、ユキもずっと月形と一緒に戦いたかったのだ。
自分の持った目的を果たす、役割を得たかった。
 それでも、いまだに納得ができない様子の月形。

「で、でも、別にこの家を離れる必要は」

「今度行くところはイセキさんが住み込み付きで紹介して下さったの。
 都会の方で、ここよりいっぱいロボトルも盛んだし、強い人もたくさんいる、
 役に立つ情報もいっぱいあると思うの」

「そんなの!!」

 ユキに反論しようとした月形の服をグイグイと引っ張るトラ。
厄介そうにトラの方に目を向けると、そこにはしょぼくれたトラの姿が。
そして、何処かもの悲しそうに、顔を左右、横に振った。
トラは月形の思いも分かっていた、だがそれ以上にユキの気持ちを理解し、月形を止めた。
 その様子を見て、唇を噛み締めて、いいかけた言葉をユキに言えなくなる月形。
 黙った月形を確認して、話を続けるユキ。

「本当に、いきなりこんなこと言ってごめんなさい。
 でも、私達には1年間しかないから。
 私とツッキー、ううん、たくさんいる端役さん達のためにも、
 何とかこの夢だけは叶えたいから」

「・・・でも。
 でも、でも、こんなのないよ。
 僕達で今までずっとやってきたのに・・・!」

「ごめんなさい、ツッキー」

「・・・。
 分かった、行ってくれよ、ユキりん!
 僕は一人で戦うっ!!
 仲間なんて、友達なんて僕にはいらないっ!」

 月形はイスを突き飛ばして、自分の寝室へと逃げ込んでしまう。
ユキは心配そうに、また悲しそうな表情して、去っていた月形を見つめる。
 月形とて、ユキの気持ちが分からないほど馬鹿ではない。
いや、むしろ何処か気持ちの奥では、笑顔で見送ってあげたいという考えもあった。
 だが、今までのユキとの苦労が、挫折が、喜びが、月形を愚かにさせた。

 次の日のメダショップ内。
倉庫で片づけをしている月形のもとへ、イセキがやってくる。

「ユッキーが悲しんでるぜ。
 男なら笑顔で送ってやるってのが筋じゃねーのか」

「なんでユキりんに他のバイト先を紹介したんですか」

「ユッキーが望んでたからだよ」

「イセキさんがユキりんに吹っ掛けたんじゃないんですか」

「おまえなぁっ!!!」

 月形のひねくれた言葉にキレたイセキが、月形の胸倉を力の限り掴む。
それでも月形は、いじけたように顔を横に向けて一切、イセキの顔を見ようとしない。
 しばらく沈黙が続く。すると、一つ溜息をついて、掴んでいた手をゆっくり離すイセキ。
今度はその手を広げて、優しく月形の頭にのせる。

「オメーの気持ちは分からないでもないが、
 ユッキーもずっとオマエと一緒に戦いたかったんだよ。
 おまえもユキと一緒に戦いたかったんだろ?」

「・・・」

「・・・。
 なぁ、ツッキー。
 おまえとユッキーの仲はさ、ちょっと距離が離れるだけでなくなるほど
 ヤワな仲だったのか?」

「!」

 イセキの言葉に、かすかに反応する月形。
そしてイセキはそっと、月形の手を広げて、一枚の紙を渡した。
 果たしてその中に書かれたものとは。


 そして、ユキが旅立つ日がきた。
ユキは確かにこの場所からは離れるが、端役として主人公クラスを倒すという
目的を放棄はしていないため、神によって厳罰を受けることはない。
 時は朝の6時30分。まだ世界が薄暗い中、始発の電車に乗る予定のユキ。
大きなリュックサックを担ぎ、すでに到着している電車の中に入る。
うまく個室の席に座れ、リュックサックを下ろし、落ち着くユキ。

「ふぅ、疲れちゃった。
 (結局、あれからほとんどツッキーと口をきけなかったけど、大丈夫かな。
 一人でちゃんとご飯食べれるかな。
 ツッキーってお肉が好きだから、栄養のバランスを考え無さそうで心配だわ。
 その他にも・・・。
 ううん、ツッキーなら一人で大丈夫よね。
 きっとそう、そう信じてる。
 だって・・・)」

 あの引っ越しの告白以来、ユキと月形はまともに会話をしていなかった。
故に、今日のいつ、どの駅で出発するなどおしえてもいない。
 それでも、なぜかユキは悲しいという気持ちは無かった。
逆に何かすがすがしくも感じていた。
これが、今日のこの勇気を踏み出した一歩が、自分にとってのスタートなのだと思い、
悲しんでなどいられなかった。

プルルルルルルッ

 電車が発射する合図が鳴る。
ユキはふと、横にあった窓を開けてみる。
人が点々とする、始発の駅のホームの風景。

「(この時間帯は人が本当にまばら。
 たぶん、ここにいる人達はみんなこの世界の端役なんだわ。
 影でみんなを支えている、頑張り屋さん達。
 いずれこの駅も、時が経てばその端役達が集まって、世界を作るために足を踏み出す。
 ・・・あぁ、なんて素晴らしいの。
 私だって、端役だってこんなに頑張ってる、みんなで力を合わせている。
 誰もかれも顔を知らない皆のために、知らないみんなを助けあってる。
 私の夢もまた知らない誰かを助けられるかな、ツッキー)」

 そして、電車は動き出す。
 ユキの、端役達の、知らない誰かを助けるための力を乗せて。
 まだ見ぬ今日の未来を守るために。
ユキはゆっくりと、窓を下ろした。


 そのころ、月形は自宅のベランダで空を眺めていた。
月形の近くには、クシャクシャになった紙が一枚置いてある。
その紙は、やがて風に吹かれてどこかへと消えていってしまう。
そんなことにも一切、気付かない月形。
それはイセキからもらった、ユキの出発地、出発時刻の書かれた紙。
 だが、月形はユキを見送りにはいかなかった。
すると、しょぼくれたように、トラがトボトボと歩み寄ってくる。

「いいんでっか、旦那。
 もう・・・」

「良いんだ、トラ。
 そんなことより、今日は放熱・充填についてもう一回勉強だ!
 このことを知らないために僕達は負けたと行っても過言じゃない!
 覚悟はできているか、トラ!」

「が、合点ですがな!」

「よーし、この月形一徳、今日こそ充填・放熱について
 マスターしてみせるっ!!」

 昇ってくる朝日を見つめながら、また今日の練習に意気込む月形。
その目に悲しみの色も、後悔の色も無かった。
 ただ晴れ晴れとした気持ちで、朝日を感じ取っていた。

「(大丈夫、ユキりんと離れていても。
 だって、だって僕達は・・・)」

 月形の目に映る朝日はまた、ユキの目にも映っていた。
自分の明るい未来を示すかのように、美しく輝く朝日を見つめ、ほほ笑むユキ。
 そして、心の中で、今日も練習に励む月形を想う。

「(そう、私は信じてる。
 だって私達は、親友だから)」

第14話「アフターフォロー」 ( No.14 )
   
日時: 2013/03/04 16:07
名前: ランド


「一徳君、MNブースターは右の棚だね。
 真ん中はMHだから、今度は間違えないようにね」

 店員の男が、棚に飾ってあった商品を手にして月形に注意を促す。
しまったという表情をしながら、何度も頭も男の店員に向かって下げる。
 謝られた男性店員は必至に謝罪する月形の姿を見て、執拗に責め立てるわけもなく、
月形の見えないところで笑顔になり、そして軽く励ましの言葉をかけて
その場を立ち去っていった。
 月形は顔を持ち上げて、何処かしこりが残る表情で、去っていく姿を見つめる。

「(小国先輩、また顔がやつれたなぁ)」

 月形は心配そうに彼の後ろ姿を見つめる。
 男性店員の名前は小国タケル。彼がこのメダショップにアルバイトとして
入ってきたのはちょうど月形が入るちょっと前の頃。
普段からそれほど親しくはないものの、当たり障りなく、接する程度の関係。
それは今も昔も変わらず。彼が激怒していることも、かといって喜んでいる姿さえ
月形はまだ見たことがなかった。
 そんな考え事をしていると、後ろから月形の頭めがけてチョップを仕掛けてくる
者が一人。

「痛っ。
 イ、イセキさん」

「作業の手を止めるほどおもしろいもんでもあったか?」

「いえ、また小国先輩に助けられてしまって。
 本当に小国先輩はメダロットについて詳しいんですね。
 やっぱりロボトルも強いのかな?」

「だから手を動かせって言ってるだろーがぁ!」

 意図的か故意か、そのまま立ち話に持ち込もうとする月形に向けて
雷を落とすイセキ。そしてようやく自分が今、アルバイトとして雇われ、
仕事をこなすのが役目だということを思いだし、慌てて品出しを再開するのであった。

 それから数時間後。時計の針も正午を指し、メダショップ内で働いていた
店員達も交代しながら昼食を取り始めていた。
 月形もまた、お手洗い場で軽く手を洗い、ハンカチを取りだして手を拭きながら
職員専用の休憩室へと向かっていた。
 すると、またもや後ろから月形を襲う人影あり。月形の首を腕で軽く絞めながら、
興奮気味に話しかけるは、やはりイセキ。

「ツッキーよぉ、今日は暇なんだろ?
 ニュージャパンメダレスがこの町に来てるんだ。
 おら、付き合えよ」

「あれって、メダロットのプロレスですよね。
 すみません、イセキさん。
 今日は一週間の買い物があるんで」

「何ぃ!?
 このやろー、ドラゴンスリーパーだぁ!」

「いでででででっ!!」

 イセキの繰り出すプロレス技に、か細い悲鳴を上げながら崩れ落ちていく月形。
 現在は衰退の一歩を辿っているが、通常格闘オンリーによるメダロットの
プロレス、略してメダレスなる競技が存在していた。
実際、人間では不可能な技が多彩であり、またロボトルとも差別化が図られており、
見ていておもしろいことは確かであった。
このメダレス、全盛期はそれなりの収入を得ていたのだが、実はこの競技に
出場するメダロットは一般機よりも倍近い痛覚に設定されており、
これが保護団体の反感を呼び、訴訟問題にまで発展した。
以後、メダレスはコアなファン以外は寄り付かないこととなった。
 じゃれあいながら二人が休憩室のドアを開けると、そこには
膝をつき、テーブルの上で頭をうずめている小国の姿があった。
物音に気付いて、まだ目の焦点が合わない様子にも関わらず、即座に
立ち上がる小国。

「い、一徳君、イセキさん。
 すみません、交代の時間ですよね」

「お、小国先輩、大丈夫ですか?
 何か苦し・・・」

 月形が言葉を言いかけると、イセキが軽く手を月形の前に出し制止させる。
そして、月形に何も言わせないように、自らが
小国に向かって喋りかける。

「あぁ、お疲れさん。
 早く行ってやりな、これから混み始めるぜ」

「はい、失礼します」

 軽く会釈をして、小国は休憩室から出ていってしまう。
 月形が不思議そうに、自分の言葉を制止したイセキの顔を眺める。
そこには、さっきとは打って変わって、重苦しそうな表情を浮かべるイセキがいた。
立ったまま、黙って買ってきたロングパンをちぎりながら食べるイセキ。
月形は一度イスに座り、買ってきたおにぎりのテープを剥がしながら、
言いにくそうに口を開く。

「小国先輩、どうかしたんでしょうか」

「そんなこと聞いてどうするよ」

「イセキさんだって気付いているハズだ。
 小国先輩、顔色が最近優れない。
 あんまり話さない人だけど、心配だ」

「・・・。
 ありゃ精神安定剤の副作用だ」

「せ、精神安定剤!?
 どうして・・・」

 重い口調から飛び出す、小国の衝撃の実態。
同じ職場でさきほどのような事態になった時、月形の余計な一言を
生み出さないように牽制することも兼ねてか、イセキはしぶしぶ真相を語り始める。

「小国は元花園学園の生徒。
 花園学園、そんで親父さんもプロのメダロッターってこともあって
 ロボトルの腕は抜群だった。
 まっ、将来期待のエリートって感じだな」

「それが何で、アルバイトなんか」

「知人の話なんだが。
 どっかの大会で、よく分からねぇガキに負けたらしい。
 しかもメダロットを持って間もない小学生に、な。
 それが転落の契機ってワケよ」

「(なるほど。
 多分負けたのは、このメダロットの世界のまた別の主人公なんだろうな。
 こういう過去が存在するという点で、恐らく小国先輩は
 端役じゃなく脇役だったのかな)」

「崩れると後は速くてよ。
 人目を避けるようにして、花園学園を去って、
 どういう経緯を辿ってか、行きついた先がこのアルバイトだ。
 未だに過去の栄光と誇りが、薬を強要させるんだろうよ」

「でも。
 一度負けたからって、やり直せば良いじゃないですか」

「ツッキー、それはアタシ達一般人の感覚だ。
 勝ち続けてきた、メンツを保ってきた奴にとって、
 一度大コケしたら精神がやられちまうんだ。
 自分によって、そして周りによって、な」

 小国という男は天領イッキが主人公ではない、何処かのメダロットの世界の
脇役であった。だが、脇役であるがために、彼の命運を尽きていた。
 月形は険しい表情をしながら、おいしくもないおにぎりを次々に
口の中へと放り込んだ。

 夕方。一週間の買い物のために商店街へと赴いていた月形。
一定の買い物を終え、後は家で掃除・洗濯をしているであろうトラのもとへ
帰るだけ。ただ、それだけだった。
 歩いていた月形の足がピタっと止まる。それはコンビニの手前。
月形はコンビニの中の何かを見つけると、すぐさま中に入って声をかけた。

「小国先輩!」

「!
 い、一徳君。
 どうしたんだい」

「それってプライズゲットですよね!
 何データ買ったんですか?」

 そこにいたのは小国であった。小国はコンビニにて、今流行っている
「プライズゲット」なるものの料金を支払っていた。
 これは1データ200円で手持ちのメダロッチに中身の分からないプライズ商品が転送される
といった、いわばメダロッチ版のくじ引きといった代物であった。
商品を実際に転送してみるまで中身は分からないことが、人気の秘訣。
 それから二人は夕日の下、近くの土手で腰を落としてその中身について
談笑をしていた。

「実は僕もお昼代を犠牲にして一回やったことがあるんですが、
 F賞のトランプゲーム機能追加しか当たらなくて・・・」

「フフッ、俺も9回は当たったよ。
 さて、一個しか買わなかったけど、何がでるのかな。
 データ転送」

 何が転送されるのか、という緊張よりも、月形にとっては何気ない
笑みを見せてくれている小国の姿を見れていることの方がうれしかった。
恵まれない脇役に同情しているのか、また本当に仲良くがなりたいために
そうしているのか、そんな難しい感情の処理は今の月形にはできなかった。
 小国がメダロッチの中央部のボタンを押す。
赤外線の糸が、ランダムで転送物を二人の前に召喚させる。
 果たして、その中身は。

「す、凄い、小国先輩!
 B賞の5分の1サイズ、ティレルビートルのフィギュアだ!」

「これはまだ当たったことが無いんだ!
 良かった、ようやく当たったよ」

「ついてますね、小国先輩!」

「うん。
 今日はダメかと思ってたけど、良かったよ。
 本当に、そう・・・うん。
 うん、・・・うん」

「?
 先輩?」

「うん・・・。
 ・・・違う、こんなハズじゃない」

 希少なB賞のティレルビートルを当てて、一時は一気に熱を帯びた
二人であったが、冷静を取り戻したのか、小国に変化が見え始める。
 当てたティレルビートルの腕がモギ取れるほどフュギュアを強く握りしめ、
顔をうずめて、震え始める。

「どうして、こんなことに。
 確かに俺がいけなかった。
 自尊心があった、油断もあった、でも、何で」

「せ、先輩」

「勝てたロボトルだった。
 いや、勝った、勝ったんだ。
 俺は勝った。
 なのに、なんで負けたんだ・・・。
 あの状況から、あの展開で、あの流れで・・・。
 おかしい、おかしいよ。
 理不尽すぎる、あんな負け方。
 こんなこと、現実にあって良いのか?
 八百長だよ、あんなの。
 俺は騙されたんだ、きっと、あれはそうだ、だってそうじゃなきゃ」

「(主人公の力に、負けたのか)」

「フフ、フフフフッ。
 今じゃ何かに見捨てられたように、ゴミみたいな生活を送っている。
 あの時、あの瞬間まで、俺の人生は順調だったのに。
 順調な人生を組み立てられていたハズなのに・・・。
 負けちゃったら、何処か手を放されたみたいに、浮浪して、暗黒に堕ちて。
 一徳君、一徳君」

「は、はい」

「君も、お願いしよう。
 そうすれば何とかなるハズだよ、きっと」

「?」

「どうか、
 どうかお許し下さい、神様・・・」

 涙を浮かべて、神に願う小国に、月形は恐怖を覚えた。
主人公に負けるまでは彼の脇役としての設定は、汚れることなく、完璧に
決まっていたのだろう。だが、脇役としての役目を終えると一転。
神に使い捨てられるように、ただ堕ちるだけ堕ちていくだけとなった。
 果ては、意味もなく、何かも分からない神に許しを願う小国。
脇役として気付けないが故に、小国の精神は完全に崩れていた。
 月形は家で待つトラのことすら忘れ、ただ狂える小国と共に夕日を見上げた。


 それから数日後。
 小国はショップに顔を出さなくなった。
その理由を月形はイセキに尋ねた。

「小国?
 あぁ、急に消えちまったらしいぜ。
 ・・・首、くくってなきゃいいが」

 小国は無断でこのメダショップを止めていったらしい。
イセキの苦しそうな表情を察し、月形はこれ以上詮索するのはよした。
 今日もまた、月形はお日様のもとで、チラシ配りに励んだ。
 そしてふと、空を見上げた。

「(小国先輩。
 新しい役目を担えたのかな、それとも・・・)」

 空を見上げていると、月形はあることが気になった。
 自分と戦った久我二郎という少年のことを。
 彼もまた、自分に負け、暗黒をさ迷っているのだろうか。
そう思うと、月形は握りしめたチラシすら落としてしまいそうであった。

第15話「ジャンキー」 ( No.15 )
   
日時: 2013/03/08 17:15
名前: ランド


 今日は4月1日。様々出会いと別れを迎える、人生の分岐点ともいえる月。
桜の開花に目を奪われることもなく、人々は自分の責務を全う
しようと今日もまた、散った桜を踏みつけて前へと進む。
 それはメダショップ内でアルバイトをしている月形一徳も同じこと。
 展示品メダロットのボディを綺麗に拭きながら、無意識に溜息をついてしまう今日この頃。
そんな様子を傍から見ていたイセキが、軽く月形の頭にゲンコツをする。

「こら。
 また気が入ってねーぞ」

「?
 そう、見られましたか。
 僕自身は特にいつもと変わらないんですが」

「おらっ、悩みなら何でも聞いてやるから言ってみな」

 人の悩みと感じると、イセキはうれしそうに月形を引っ張ってレジまで連れて行く。
 そしてイスを差し出して座らせ、自分もまたその隣に座る。

「まー確かに仕事でミスをしてるってワケじゃねぇ。
 でもなんか覇気がねぇーぞ、最近。
 こっちは今忙しくて新しいバイトも欲しいくらいなんだ。
 前みてーに暴れるくらいの気持ちで働いてもらった方が良いんだが?」

「うーむ。
 でも確かに何か熱くならないと思うことはあります。
 以前まではいつも感じていたような、何かが」

 月形自身も、ハッキリとしたものではないが、自分が熱中するほど毎日を
過ごしているわけではないと、ウスウス感じ取っていた。
それは第3者のイセキからも分かるほどに。
 腕組みをして考えるように、イセキは月形に問いかける。

「あの時のロボトルに頭をやられちまった、ってことかな」

「どういうことです?」

「ツッキーがロボトルに夢中になっちまったってことだよ。
 だから普段のこの生活に身が入らねぇってことさ。
 オメーもようやくメダロッターらしくなってきたな」

「メダロッター、か」

 あらためて、今の自分が一人のメダロッターだろいうことを自覚し、少し笑みをこぼす。
 しかしそれでも月形の心のモヤモヤは晴れなかった。

「でも、何かまだスッキリしないんです、イセキさん。
 トラと一緒に練習をしていても、ふと虚しくなったり、
 迷うことがあって」

「そりゃ簡単だろ」

「えっ」

「今のおまえには競う相手がいねーからさ。
 競り合う仲間も、ライバルもまともにいなきゃ、
 モチベーションも保てないだろ?」

「!」

 イセキの言葉が月形の胸に突き刺さる。
 しかし、イセキが指摘した言葉は半分正解で半分間違いではある。
主人公を倒すというモチベーションは、今も月形の根底に深く根付いている。
 だが、競い合う相手がいないというのがドンピシャだった。
自分一人で練習していても、果たしてこの方法で正しいのか、本当に成長しているのか、
誰に見せることも披露することもできず、不安を抱えていたのだ。
 イスを倒す勢いで立ち上がり、目をキラキラとさせてイセキを眺める。

「分かった、分かったよ、イセキさん!
 僕に足りなかったものがっ。
 だからイセキさん、僕の成長を影ながら見守るライバルになって下さい!」

「ふざけんな」

 あっさりと断られて再び意気消沈してしまう月形であった。
 その日の夕方、ようやく分かったモヤモヤの原因をどう解決すれば良いのか
分からず、足取り重くトラと共に帰路につく月形。

「やはりイセキさんに頼むのは無理があったな。
 だが、僕には他に身近な身よりがいない。
 どうしたものか」

「旦那、ここ、ここ!
 ワイがいますやん」

「?」

 話を全く理解していないトラに対し、頭を困惑させるしかない月形。
 答えを導けないまま、月形の足は異様に早く家に到着した。
玄関に入り、お茶の間を通って、洗面所に手を洗いにいこうとした月形の足が急に止まる。
異変を感じた。感じた先は、今通ったばかりのお茶の間。
恐る恐るお茶の間に戻ってみると、そのテーブルの真ん中にポツンと何かが置いてある。
それはまさしく。

「あ、あれは、招き猫。
 もしかして、か、神か・・・?」

 そこにいたのはまぎれもなく、自分が最初の頃に出会った招き猫、を媒体にした神。
いきなりの事態に驚きを隠せない月形。
 そして、膝を落とし、ゆっくりと招き猫のもとへと近づいて行く。

「久しぶりだったな、元気にしとるかな」

「!
 あなたは、やはり」

「やはりも何も見た目で分かるじゃろ」

 その正体はまぎれもなく、以前に出会った神であった。
招き猫の前で正座になり、何処か恐れおののくようにまねき猫に食い入る月形。

「なぜいきなり現れたんだ?
 もしや、僕のあの不甲斐ない一戦を見て、
 1年間という猶予を破棄しにきたのではっ!」

「そんなこと知らんよ。
 なに、ちょっとしたプレゼントを持ってきた」

「プレゼント?」

 自分が見限られたのかと心配する月形であったが、それは杞憂であったよう。
 招き猫は月形の想像とは真逆で、プレゼントをしだすと言うではないか。
少し照れたように頭をかきながら、その返答に困る月形。

「いや、悪いことをしてしまった。
 この月形一徳、コメ1年分でもトラのスペアパーツ1年分でも
 1億円でも何でも有難くもらおう」

「・・・。
 今から5分後、計3人が一人ずつドアを叩いてやってくる。
 彼らの面倒も一緒に見てやってくれ」

「へ?」

「共に生活し、共に戦い、共に学び、協力し合ってくれ。
 以上」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 あまりにも以外なプレゼントの内容に動揺を隠しきれない月形。
思わず招き猫を両手で取り上げて、激しく揺さぶりながら問う。

「それは一体、どういうことだ!?」

「彼らもまた君と同じ、本来の世界では叶えられない夢を持った3人だ。
 そう、少し扱いづらいが故に為されない夢のな」

「だが、僕のロボトル練習の支障にしかならないのでは!?」

「安心しろ。結びつく点は皆、同じになる。
 ではさらばだ」

 すると、招き猫は月形の両手からまるで瞬間移動でもしたかのように、
パッと消えてなくなってしまう。
 唖然とした立ちつくすことしかできない月形。
すると、そこにようやく外で水浴びをして体を洗ってきたトラが戻ってくる。

「どうしたん、旦那。
 地蔵もビックリするくらいの硬直具合ですぜ」

「(3人、知らない誰かが来る。
 果たして彼らは、本当に僕の友達に、なる、のか?)」


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