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RSSフィード Brain Game of Medarot(完結)

日時: 2014/04/06 19:50
名前: メダフィーミング・KR

 ――覚悟のない奴から脱落していく、それがこのゲームの掟だ。これはゲームであっても、遊びではない。
 ゲームをクリアする唯一の方法は、論理的推理によって事件を解決し、組織の内通者であるクロを指名すること。
 米澤穂信著『インシテミル』×『ダンガンロンパ』×『メダロット』、異色のメダロット推理小説、遂に公開――。


◇Story◇
 人類が生まれる遥か以前、太古の地球には超高度な文明が栄えていた。メダロ人たちによる超古代文明である。
 現代人類にそのように呼称されている文明は、メダロ人の末裔であり魂でもあるレアメダルに関する情報とともに、各国の政府高官や世界メダロット協会上層部などによって情報制限が掛けられるほどのトップシークレットの一つだった。
 しかしそのような情報制限も結果的に長くは続かなかった。
 2022年の世界大会決勝において、Dr.ヘベレケによって明らかにされた当該情報は人類に大きな衝撃を与えた。
 その後、人々がメダロットに対する認知を改めていくようになってからは、それは最早世界の常識となっていった。
 この物語は遥か太古の昔、独自の文明を築きながら明日を生き抜くために戦っていた、メダロ人たちの物語――。


◇Word◇
・メダロ人
 自らの意志で自らの身体を改造し、かつて地球上で最も著しい自律進化を遂げた高度な知的生命体の総称。
・フユーンストーン
 どんな願いでも一つだけ叶えられると噂されている幻の石。その存在や真偽は全てにおいて謎に包まれている。
・デスレスト
 メダロ人たちによって長きにわたり続けられている戦争を忌み嫌い、世界に安息を齎そうとしている謎の組織。
 "死"のみが世界に安息を齎すと考えており、そのため各界で優秀なメダロ人のメダルを盗んで破壊している。


◇Warning◇
 一.この物語は主にアニメダの世界観を踏襲しています。ゲーム及び漫画の設定とは多少異なると思われます。
 二.上記の設定に基づき、超古代のメダロ人たちによる戦時中が舞台となっているため、人間は登場しません。
 三.物語に登場するメダロットに関して、読者の皆様が抱いているイメージと大幅に異なる可能性があります。
 四.作者はメダロットかつ推理系小説を書くのはこれが初めてのことです。過度な期待はご遠慮くださいませ。


◇Contents◇
<第一部>
 登場キャラ >>1
 プロローグ >>2
 Day1 >>3-6
 Day2 >>7-12
 Day3 >>13-20
 Day4 >>21-27
 エピローグ >>28


<第二部>
 登場キャラ 2 >>29
 プロローグ >>30
 Piece1 >>31-34
 Piece2 >>35-40
 Piece3 >>41-47
 Piece4 >>48-52
 Piece5 >>53-55
 エピローグ >>56


 あとがき >>57-59


◇Last up date◇
 2014/4/6 全編完結
 2014/3/30 第二部完結
 2013/4/6 第一部完結
 事件のまとめ資料をアップ。(第一部 Scene16まで読まれた方向け、ネタバレ注意)

[1353238250-1.txt] [1353238250-2.txt]


Re: Brain Game of Medarot ( No.55 )
日時: 2014/03/30 00:12
名前: メダフィーミング・KR

◇Piece5――Scene25◇


 俺は一ヶ月以上を過ごした借家の室内を、最後にゆっくりと見回した。
 その残り香を嗅ぐように、そっと目を閉じ、クララと過ごした日々を回想する。
 クララは一足先に、三日前にこの借家を後にしていた。
 セシルに懇願され、旧デスレストのトップに迎え入れられることになったからだ。
 今後はクララとセシルのツートップ体制の下、組織の再建を図っていくらしい。
 別れ際のクララの表情が瞼の裏に甦る――。
 クララの物憂げな目、力なき微笑。
 それを思い出すと、何とも言い難い気分だ。
 それでも俺たちは、それぞれの道を歩き出す。


 チアも、リードも、ヴァンも、バイスも、ファルも、ディムも、レイも、竜も、シオンも、ナベシマも、ネリスも、ストレイツォも、セシルも、そしてエイスも――。
 皆が自分の道を見つけて、ゆっくりと歩き出している。
 その道は決して楽なものではないだろう。
 時には困難にぶつかり、時にはもがき苦しみ、時には酷い挫折も経験するだろう。
 何度となく出会いと別れを繰り返し、意味のない諍いに涙を流す時もあるだろう。
 それでも俺たちは、知っている。


 自分の弱さと向き合える強さを。
 手と手を取り合うことで得られる心の強さを。
 離れていても、この空の何処かで繋がっていることを。
 変わっていく景色の中で、唯一変わらないものがあるとしたら――。
 それは、俺たちの記憶だ。
 俺は彼らと過ごした日々を忘れない。
 悠久を生きるメダロ人として……忘れない。


「ラストさん……出発なさるんですね」
 不意に背後から声が掛かった。
 驚いて振り向くと、そこにクララが立っていた。
「クララ……どうして此処に?」
 俺が問い掛けると、クララはすっと視線を落としながらも、訥々と語り始める。
「お見送りに来ました。というより……本当は今でも迷っているんです。
 セシルと組織を再建し、世界平和を目指すことが私のしたいことなのかなって。
 本当はラストさんと一緒に旅を続けたい、それが私の本心なんじゃないかって」
 俯きがちなクララの瞳が大きく揺れる。
 それが彼女の心情を如実に表していた。
 俺は何を言うべきか迷いながらも、どうにか言葉を見つけて口にする。


「クララ……チアたちのメダルは取り戻した。
 エイスやセシルとも和解した。当初の目的は果たした。
 もう俺と君がともに過ごす理由は、ないんだ……」
 俺の言葉を聞いて、クララが顔を上げた。
 何度も見てきた彼女の強い瞳と目が合う。
「分かってます。分かってるけど……。
 私はラストさんと……一緒にいたいですっ!
 それは一緒に旅をする理由には、ともに過ごす理由には、なりませんか……?」
 彼女の真っ直ぐな視線に耐えられず、俺は目を逸らしてから答えた。


「すまない。俺は君を大切に思っている。
 それは嘘偽りのない本当の気持ちだ。
 だが俺はもっと、もっと世界を知りたい。
 世界の真実を、この目で確かめたい。
 俺のエゴに君を付き合わせるわけにはいかない。
 君を危険な目に遭わせたく、ないんだ」
 一息に言い切ってから、視線を戻す。
 案の定、クララは泣き笑いのような表情を浮かべていた。
「……そう、ですか。
 ラストさんが言いそうなこと、何となく分かってました。
 私の話を聞いてくれて、私と過ごしてくださって……。
 ありがとうございました」


「……いつか必ず帰って来る。
 だから、これは決して別れでも、最後でもない。
 BGMとデスレストという枷に嵌められた俺と君の物語は、此処から始まるんだ」
 俺が手を差し出すと、クララは一瞬迷ったようだが、すぐに俺の手を握り返した。
「いつの日かまたお会いできる日を楽しみにしています。
 ラストさん、どうかお元気で」
「君には感謝してもしきれない。
 いつか恩返ししたいと思っている。
 いつか必ず……また会おう」
 俺はクララの目を見て、最後にしっかりと握手を交わした。
 そして荷物を手に取ると、俺はクララに見送られて借家を後にした。


 ドアを閉めてすぐ、背後からクララのすすり泣く声が聞こえてきた。
 初めて聞くクララの泣き声だった。
 BGMで犠牲者が出た時も、セシルを止めようとした時も、決して見せなかった涙だ。
 会おうと思えば、またいつだって会える。
 それは誰に言われるまでもなく、俺もクララも理解している。
 それでも抑え切れない感情が、一粒の涙となって零れ落ちた。
 しばしの別れだ。
 俺たちは別れるために出会うんじゃない。
 再び出会うために、別れるんだ。
 クララ、君を忘れない。
 心からの感謝の言葉を。ありがとう――。