>> メダロットライズ にもどる
このスレッドはロックされています。記事の閲覧のみとなります。

RSSフィード 『マンホールに二次元世界』

日時: 2015/12/24 13:16
名前: 通りすがりのコンビニ店員


 絶 賛 更 新 停 止 中 。(再開の見込みなし)



 私たちのいる世界から、メダロットの世界へ。
 
 高校生主人公、兎想月ウサギちゃん(うそつき うさぎ)がおくるコメディ系小説です。


 ~世界観~


 メダロット(アニメ)の設定(メダロットはメダロ人が自らを機械に改造した姿)を引き継いだ、
 天領イッキ&ジャンアントメタビー VS Dr・ヘベレケ&マイケル&プリミティーベビー の決着から1000年後のお話です。


 ぶっちゃけ前半は設定どうのこうの関係ないのでノリで読んで欲しいです。
 長編はアニメを見てない方には少し優しくないです。
 できるだけわかりやすいよう心掛けていますが、不愉快に感じた方はごめんなさい。


 ~主要な登場人物~

 
 ●兎想月ウサギ(うそつき うさぎ)
  元不良で番長。可愛い系大人美人の18歳。髪の毛はくるくるロング。強気な瞳の持ち主。彼女の笑みは何者も屈服させる力がある。なんでもそつなくこなす。隠れた努力家。

 ●菊之内(菊くん、ソゾル)
  メダロット。スミロドナッド。常識があり基本的にクールな、頼りになるメダ。何だかんだで面倒見がよく、貧乏くじを引くことが多い。運も悪い。周りからのスルーされ率は異常。趣味はネット。


 ――16話以降に登場――


 ●ビィービ
  メダロット。プリミティベビー。赤ちゃんだけどじっちゃん喋り。一人称は「ワシ」。尾語は「~のぅ」。メダロットのくせにボケている(ちょっとした事情あり?)。よく迷子っている。

 ●デスト
  メダロット。ゴットエンペラー。ぽや~としている、草花を愛でるのが趣味の神帝。乙女チック。お人好し。
  ただし彼の慈しんでる花壇を荒らすと「ワガ マエニ タチフサガルトハ オロカナ……」という声が聞こえてくるぞ。
  地獄を見たくない方は、緑に優しくあることをお勧めする。
 ●ロイ
  メダロット。ビーストマスター。マンガ・アニメに精通している。考えるより行動派。要するに熱いオタク。
  「1+1=4」と即答する素晴らしい思考回路の持ち主。日本育ちなのに日本語も少々あやしい。要するにバカ。



*о○●*もくじ*●○о*


 >>1-3    ウサギちゃんと菊くんの出会い!マンホール編。

 >>3-15   友メダを救出せよ!VSリリコ嬢編。

 >>16-17   一息ついて昔の仲間の下へ。バカメダ三機合流編。

 >>18-20  『狩り』をめぐる問題!INホテル編。

 >>21-23  『家』を賭けた戦い!VS大家のおばちゃん編。

 >>24-30   作者完全フリーダム!カラオケ編。


 長編スタート!

 >>31-35   死にたがりのメダロット!ウォーバニッド編。

 >>36-    『メダ連』VSウサギ一家。メダ連編。(現在更新中)



Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.40 )
日時: 2012/06/08 13:47
名前: 通りすがりのコンビニ店員

 偽物の恋人ごっこを終えて遊園地から家に帰ってくると。
 待っているはずの四機は居ず、代わりに土下座する菊くんとデストと、机のうえに置手紙。
 二機が大いに目を逸らしながら手渡してくれた手紙には、


『プリミティベビーとビーストマスターは預かった。返して欲しければ本部まで来い――メダ連会長・ブラックメイル』


 と汚い字で書かれていた。
「えっと……あのさぁ」
 私はビクつく菊くんとデストの首根っこを掴みあげ(締め上げ)、


「これってどういうこと?」


 万が一にも聴き間違えないように、優しく丁寧に尋ねてあげた。





第三十七話『出陣』





「――つまり、私のデートを菊くんとデストがストーカーしている間にアパートを襲われて、バカ二人が攫われたってわけね?」
「「おっしゃる通りです……」」
 さんざん容赦なく踏みつけられ、顔面を床に食い込ませた二機が間髪入れずに返答する。
 私は隠すことなく舌打ちした。
「まったくもぉ。なんで私がメダロッチごと置いて行ったと思ってんの?」
「マ、マスターはアパートが狙われるってわかっていたんですか?」
「仕掛けるなら少し調べれば場所が割れるここ(アパート)だって考えるのは当然でしょう?
 だから万が一に襲われても大丈夫なように全員おいていったのに……私が遊園地にいるのがブロッソメイルにバレてたのも、絶対バカ2人がゲロったからね。あの時点でアパートは押さえられてたわけだ……ふふっ…ふふふふふっ」
 なんて甘さだ。
 少し考えればわかることなのに……どうやらちょっと、本気で平和ボケしてるな私っ。
「マ、マスター……?」
 握りしめた手を戦慄かせて暗い笑みを浮かべる私に、デストが若干後ずさる。
「で。どうする気だ? 手紙通り取り返しに乗り込むのか?」
 慣れてきたのか菊くんはドン引くことなく話を進めてきた。


「当然。乗り込むよ」
「――ぇえっ?!」
「よしきた。救出劇の開幕だな」
「えっ、ちょっ菊さんっ?! 何ニヤリと笑んで答えてるんですっ?! 三人で『メダ連』を相手にするなんて正気じゃない――」
 デストの言葉を、私は一枚のメダルを突き付けて遮る。


「これなぁ~んだぁ?」
「なっ――ブロッソメイルのメダルっ?!?!」
「その通り。捕えた敵をあっさり放してやるほど私もバカじゃないし」
「敵じゃなくてもあっさりじゃないだろ……売り払ってんだか――ぐはぁっ!!」
 菊くんの顔面が、気持ちのいい爆音と共に再び床にめり込んだ。


 私はふんっと鼻をならし、家に置いて行っていた白いメダロッチを腕に巻く。
「人質がいるのはお互い同じ条件――乗り込んでこいって言うなら、乗り込んでやろうじゃないッ!!」
 

 菊くんとデストの前で挑戦的に吐き捨てる私は、しかしすでに笑えるほどの余裕はなくて。
 握りしめている手の震えは実はまだおさまっていなくて。


「行くわよ。菊くん。デスト」


 『メダ連』本部に向かうべく103号室の扉を開けながら、私は心底――怒っていた。




 第三十八話に続く。




 ――――――――――――――――――――
 前話(ホワイトメイル)からの急な場面転換して、すみません。


 わかりくいので要約すると
 時間軸を一気に戻して、『メダ連』VSウサギちゃん一家の図に入っています。

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.41 )
日時: 2013/03/07 01:07
名前: 通りすがりのコンビニ店員


 正義のために戦う謎の男子高校生と、そのパートナー。




 第三十八話『ウサギと焼きとり』




 炭火エンヤ(すみび えんや) こと俺は、思わず息を呑んだ。


「天使だ……天使がいる……」
 美しい少女が町を歩いている。
 息を呑むほどの美少女だ。くるくるの茶色の長い髪を少し上の方でおだんごにし、余った髪を肩よりすこし下まで流している。黒い瞳はぱっちりと大きく愛らしく、しかし自信に満ちて揺るぎない。少し気の強そうな少女。
 その少女は気にしていないが、彼女は近くにいる男たちの目を釘付けにしている。もちろん俺も釘付けにされた一人だ。
「おい、エンヤ。缶コーヒーこぼしてるぞ」
 愛機のシーザ(クワガタムシ型メダロット・ヘッドシザース)が何か言ったが、俺はそれどころじゃなかった。
 遠ざかっていく彼女を少しでも見ようと目で追うのに必死だ。
 とりあえず、おざなりに返事をかえす。
「あぁ……」
「おい、エンヤ。ジーンズにかかってるぞ」
「あぁ……」
「そのジーンズ、確か万単位で買ったヤツじゃないか?」
「あぁ……」
「エンヤ。後でパーツ買ってくれ。昨日コンビニで高いって却下されたヤツ」
「あぁ……」
「犬のウンコ踏んでるぞ」
「あぁ……」
「がむしゃらハンマー!」
「ぐはっ! ちょっ……何すんだよっ?!」
「うるせぇ。犬のウンコ踏んでるぞ」
「ゲッ。この靴気にってたのに!」
「ジーンズにコーヒーかかってる」
「グゲッ! このジーンズ高かったのに……! なんで言ってくれなかったんだよっ?!」
「言ったわ。ボケが」
「くそぉ……しかもコーヒー空になってるし」
「全部こぼしたのか……お前ホント、トロいな。もう死ねよ」
「お前が死ね。あーあ……あの子も見失っちゃったし、帰るか」
「それだけ気になるなら声かければよかっただろ」
「あっ」
「お前ホント、ダメだな」
「ぐっ……うっ、うるせーな。とにかく帰るぞ」
「ボケが。気になることがあるから来てくれってメイデンに呼ばれて『メダ連』に向かってる途中だろ。お前が喉渇いたって言うから、わざわざ寄り道してだな――」
「あぁ、もう見惚れてた俺が悪かったって! さっさと『メダ連』行こうぜ」
「――っち。しゃーねーなぁ。んじゃ行くか」
 えっらそうにシーザが溜息をつき、歩き出した俺の隣に並ぶ。


「あ、そう言えばな。さっきの美少女だけどよ」
 とてとてと歩いてると、シーザが思いついたように話を振ってきた。こいつが他人に興味を持つなんて珍しい。明日は雨だな。
「くるくるロンゲの彼女がどうした?」
「あの美少女、二機のメダロットつれてただろ――顔に似合わず、超エグい機体」
 確かに美少女は二機のメダロットを左右後ろにつれて歩いていた。一機は誰しもが知るメダロットの破壊の皇帝ゴットエンペラー……、そしてもう一機は、強力だったためバランスブレイカーとして絶版になった初期型のスミロドナッド。この組み合わせは、ちょっとお目にかかれないコンビかもしれない。つーか、あまりお目にかかりたくない。心臓によろしくないコンビだ。
「あの二機がどうかしたのか?」
「二機というかスミロドナッドの方だけどよ――かなり、強い。あの女ただもんじゃねーぞ」
「ただもんじゃないって……たまたま見かけた可愛い子の機体が強そうだからって、話が飛躍しすぎじゃねぇか?」
 まるで悪の手先のような言い方に むっ とする。
 あんな可愛い子に何て言い草だ。
「エンヤは見惚れてみてなったけどよ。あの三人組、通りすがりのメダロット捕まえてデスレーザーで脅してたぞ?」
「あっ、確かになんか声かけてたな……」
 野良メダロットらしき自動車型メダロット・ランドモーターに、にこやかに近づいていた。
 彼女にあんな笑顔を向けられて羨ましいとか思っていたが、そういえばゴッドエンペラーとランドモーターの距離がやたら近かった気がする。そしてランドモーターがやたら怯えてた気がする。


「見てたなら気づけよ。ボケ」
「彼女以外目に入らなかったんだ。ポンコツ」
「色ボケ男」
「おさげメダロット」
「次、同じこと言ったら殺すぞ」
「…………お前のリミッター外すんじゃなかったな。大会にも出れなくなっちまったし」
 昔は良かったなぁ。
 嫌がるシーザの角をおさげ風に垂れさせて、写メとって遊んだりして、楽しかった。
 リミッター外した今じゃあ命懸けだ。
「その話は片がついただろ。蒸し返すな」
「へいへい……ところでだ。シーザ」
 何気なく時計を確認して、俺は少し真顔になった。
「話は変わるが、俺たちはこうして『メダ連』に向かって歩いてるわけだが――待ち合わせの時間まで、もう数分しかない。そして一応言っておくが、ここから『メダ連』まで後3・4キロはある……」
「……メダタクシーでも拾うか」
「そうすっか」
 まっ、タクシーを拾ったところで遅刻は確定的だが、大幅に遅れるよりはマシだろう。
 友人感覚で半日も待たしちまった結果、シールドのおっちゃんに盾で殴られたのは今でも思い出したくない記憶だ。


 俺は右手を上げて、一台の車両タイプのメダロットを停める。
 すでにメダチェンジした状態のメダロットの側面には黄色のレッテルが貼られている。これがタクシー業をしているメダロット『メダタクシー』の証だ。


「……」
「……」
「お客さん。どうした? 乗らないのか?」
「……」
「……」


 少し話は脱線するが、この町にはマッドタクシーとあだ名されるメダタクシーが存在する。
 元々はレーサーとして活躍していが、競技中に大事故を起こしクラッシュしてしまったのキッカケに引退し、タクシー業に転職したメダロットだ。ちなみに普通のメダタクシーは、自動車型のランドモーターや機関車型メダロット・ヴェイパーレールだが、こいつはザリガニ型メダロットのくせにミニハンドルを装着(機体改造によって)していると言う曲者なので、話でしか聞いたことがない俺でも、見ればそいつがマッドタクシーだと一発でわかる。わかってしまう。


「……まっいっか。腕は一流だって話しだし。乗るぞ、シーザ」
「 マ ジ か ! 」
「よっしゃ、お客さん。どちらまで?」
「『メダ連』まで頼みます」
 嫌がるシーザを無理やり真っ赤な座席に押し込む。メダタクシーは基本的にひと一人が余裕を持って座れる程度の座席になっているが、このザリガニ型メダロット・ディストスターはそんな所まで改造したのが、人間の俺とシーザが乗れるほどの広さがあった。それでもやっぱり、無理やり詰め込んで乗れる、程度だが。


「エンヤ。持病のディストスターには乗ってはいけない病が――」
「おっと、メダロッチには戻さないからな。メダロッターとメダロットは恐怖を分かち合ってこそだろ」
「なっ――ふざけんな! 俺は降りるっ!!」
「させるかっ!!」


 カッコつけのくせにジェットコースター類の乗り物が大の苦手のシーザ。


「へんっ。さっき俺のことハンマーで殴ったお返しだ」
「いやだ降ろせぇぇぇえええええええ!」
「ディストスタータクシー、発車する」
「止めろぉおおおおおぉおおおおおおおおおおおおお!」
「ざまぁああああっはっはっは!」


 車内でもつれ合って暴れだす俺たちを乗せて、マッドタクシーは『メダ連』に向けて走りだした。






 第三十九話に続く。

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.42 )
日時: 2012/06/08 13:59
名前: 通りすがりのコンビニ店員

 




 ――私は、私から奪おうとする人を絶対に許さない。








 第三十九話『突撃』




「ん……?」
「なんだ?」


 もくもくと上がる砂埃。
 こっちにそれが向かってきるのを確認し、『メダ連』の本部ビルの出入り口を警備している二機のメダロットは注意深く目視する――


「もっとスピードだしな!!!!」


 ――彼らの前に姿を現したのは、時速90キロを超える暴走車。
 そして自動車型メダロット・ランドモーターに乗り、ノーブレーキでこちらに突っ込んでくる少女だ。


「うぉおおおおお?!」
「ちょっ、ヤバ――――っ?!」


 明らかにこちらを轢き殺す気できていることを感じ取った警備のメダロットたちは、大口を開けて絶叫しその場から飛び退いた。


 ガッシャーンッ


 ということで暴走車を止めるものは皆無であり、そのまま女が乗ったランドモーターはガラス製の自動ドアを大いに叩き割って、本部ビル1F・受付けカウンターの前で綺麗に停車する。


「なっ……なんなんだいったい?!」


 飛び退いた警備員のメダロットが動揺を漏らす。
 ビル唯一の出入り口の警備担当にあたってかれこれ五年程になるが、天下の『メダ連』にミニハンドルで突っ込んでくるバカがいるなど思ってもみなかった。
「なにって敵の奇襲に決まってんだろ!」
「あいてっ」
「さっさと起きろ。捕まえるぞ」
 すでに戦闘態勢にそなえて身構えている相方に足蹴りされ、飛び退いた状態で寝そべっていたメダロットも臨戦態勢に入る。


 殺気を感じて、ランドモーターに乗っている女はすぐさまメダロッチに触れた。
「はいはいメダロット――転送っ!」
 白いメダロッチからスミロドナッドとゴットエンペラーが呼び出される。
「菊くん、二体相手だけど時間稼いで。デストはメダフォ溜めて一斉射撃で片を付ける。あとは……ここまで送ってくれたランドモーター君だっけ? ありがとー。もう帰っていいよ」
「あぁぁぁあぁぁ……まさか『メダ連』に突っ込むなんて……お前らなんか二度と乗せん!! 次は脅されたって二度と乗せんからなっ!!」
「またよろしくねー」
「乗せんってつってんだろぉぉおっ?!」
 悲鳴近い抗議を叫びつつ、ランドモーターは全速力で壊れた『メダ連』の自動ドアから飛び出していった。


「ウサギ」
「マスター」


「ん?」


 ランドモーターが逃げ去っていくのを見送っていた女は、自分のメダロットに呼ばれて振り返る。


「片付いたぜ」
「片付きました」


「よろしい」


 振り返った女は、瞬殺された警備員のメダロットたちを見て満足げに頷き、目の前にいる受付けの可愛い女型メダ――アイドル型メダロット・ディアアイドルに歩み寄った。そしてドスのきいた声で告げる。


「黒ヤギさんから素敵な挑戦状(おてがみ)頂いたんだけど――呼び出してもらえるかな?」


 静かだが明らかに怒りが込められている言葉。
 受付けのディアアイドルは、少女の後ろでゴットエンペラーとスミロドナッドが武器を構えているの確認して、ニッコリと微笑む。たとえ脅されていても笑顔を崩してはいけない。それが受付嬢の仕事だ。


「かしこまりました。それでは奥の部屋でしばらくお待ちくださいませ」


 そして微笑む受付嬢は、こんな状況に陥った原因であるふざけた黒ヤギに文句を言うべく、カウンターの電話に手をのばした。







 第四十話に続く。

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.43 )
日時: 2012/06/11 00:54
名前: 通りすがりのコンビニ店員

 第四十話『勝利の庇護』




 ――『メダ連』本部ビル・47階(最上階)にて――



「会長。受付嬢のディアアイドルから電話で報告が入ってます」
 メイデンの報告に、机に座って書類に目を通していた『メダ連』会長、ブラックメイルが顔を上げる。
「ディアアイドルちゃんから? もしかしてデートのお誘いかな?」
「いえ。一発殴らせろと」
「…………お前らはオレを何だと思ってるんだよ」
 メイデンといい、ディアアイドルといい、なぜこうも『メダ連』の女メダロットは自分を攻撃したがるのか? ブラックメイルは納得がいかない。
「ディアアイドルの話では、美少女が『黒ヤギからお手紙をもらった』と言って本部にミニハンドルで突っ込んで来たらしいです……会長、私も一発殴らせてください」
 言いながらメイデンは、背中に差した槍を抜き放つ。
「『なぐる』ってそっちの『なぐる』かよっ?! お前ら本当にオレを何だと思ってんの?! 会長だよ、会長!! サンドバッグじゃないんだよっ?!」
「当然です。サンドバックは敵に挑戦状おくるようなアホな行動とったりしません!」
「あっ、それか! それを怒ってるのか。まってまって、オレにも一応考えが――ぎゃぁあああああ!!」
 メイデンが投げ放った氷の槍が、会長座席を串刺しにし、凍りつかせた。
 間一髪で床に逃れたブラックメイルは顎を外す。


「ちっ。殺り損ねましたか……」
「うそだぁああ?! 本当に刺しやがったっ!! っていうか今『殺る』って言わなかった!? 殺す気だったのっ?!?!」
「安心してください。次は外しませんから」
「にっこり微笑まれても困る!! シールドがいないからって、やりたい放題すぎだって!! たまにはオレの話も聞いて!」
「では三十字以内で簡潔に述べなさい」
「命令っ!?」
 直属の部下に槍で脅されながら命令されるって何かおかしい。やはり納得のいかないブラックメイルだが、ここで挽回しなければ、串刺しとなったイスの二の舞になること受けあいだ。なんとしても三十字で説明しなければ。


「えー。ベビーと獣王とお茶飲んだ結果、なんか大丈夫って話になった」


 ザシュッ


 メイデンの槍が再びブラックメイルを襲った。


「うっお。危なっ!! オレちゃんと答えたのにっ!!」
「言っている意味がわかりません。答えるならもっと、詳しくわかりやすく答えてください」
「メイデンが三十字以内って無茶振りしだんだよっ?!」
「知りません。さっさと答えないと本当に刺し殺しますよ」


ブラックメイル(んな我儘なっ……)


 言いかけた呟きをブラックメイルは呑み込んだ。まだ死にたくはない。


「だからさ。実際に人質にしてるプリミティベビーとビーストマスターに会ったんだよ。あいつら面白いよなー。監禁されてるくせに高級オイル飲みながらババ抜きしてんの。オレも雑じって盛り上がっちゃったよ」
「ついて来たら高級オイル飲めますよ、って言ったら見事について来た連中ですから。バ会長と同類なんでしょう」
「………………。とにかく、あの二機の様子からして『組織』との繋がりは皆無。メダロッターも仲間を放り出すようなヤツじゃないみたいだし、置手紙だけ残すよう言って、アパートに張り込ませてた連中は引き上げさせた」
「そのまま出かけていた兎想月ウサギが帰ってきたところを、襲わせれば良かったんです」
「ダメだ。それじゃあ『メダ連』の敗北を認めたことになる。真っ向から勝負して、『勝った』と証明しなければ意味がないだろ――舐められたら終わりなんだよ。俺たち(野良メダ)は」



 『メダ連』の上級仕官がぱっと出のメダロッターに破られた事実は、急速にメダロッターたちの間で広がっている。
 野良メダは〝力〟がなくては生きてはいけない。
 悪質な『狩り』を抑えている『メダ連』が揺らげば――……かつての弱者が虐げられる時代がよみがえる。




 どんなに叫んでも、
 どんなに戦っても、
 誰も助けてくれず、
 人知れず狩られて壊れていく。


 野良メダには、そんな時代があったのだ。




 力でもって力で制す――『メダ連』が出来たのは偶然ではない。必要とされたからだ。
 その力を必要としている者がいるから成り立っているのだ。



「『メダ連』に負けは許されない。そうだろ?」


 だからこそもう一度戦って実力を――『勝利』を証明する必要がある。






 メイデンはしばらく熟考したのち、笑みを浮かべるブラックメイルに、疑いの目を向けた。


「……とか言いつつ、美人のメダロッターが見たいだけでしょう?」


 ギクッ


「更に、あわよくばご自分でロボトルする気でしょう?」


 ギクギクッ


「いっ…いいじゃん!! デスクワークもう嫌だ!! オレだってメダロットなんだから偶にはロボトルしたい!」
「時と相手を選んでください」
「厳選した結果じゃん! これ以上の相手はなかなか居ないって!」
「う……まぁ、ある意味そうですけど」
 なんせ相手はバランスブレイカーのスミロドナッドと、破壊の皇帝ゴットエンペラー。
「でしょっ?! あっちから来てくれたんだし、やっぱここはオレが出ないと」


メイデン(さては、それを狙ってあちらから出向いてくるよう置手紙を残させましたね……)


 メイデンは呆れつつも、仕方ないと溜息をつく。
「わかりました。その書類が全て片付いたら、戦ってもいいですよ」
「全てって……これどう見ても今日中に終わる量じゃn――」
「終わらないなら私が相手をして来ますので。お構いなく」
「――終わらせる! ブラックメイル会長に不可能の二文字はない!」
「………………『不可能』は三文字です」




 なんでこの人が会長なんだろう。
 一日に一回はそう思うメイデンなのであった。












「あっ、伝え忘れがひとつ。会長」
「なになに?」
「今日はエンヤさんがいらっしゃるはずなので、さっさとロボトル終わらせて下さいね」
「どうせ遅刻だろ」
「大丈夫です。それを見越して早めにいらっしゃるよう時刻を伝えましたので」
「メイデン……エンヤさんをなめるなよ。更にそれを見越して遅れて来るはずだ」
「うわっ。最悪のタイプですね。絶対お付き合いしたくない系です」
「オレはそーゆーとこ嫌いじゃないけど。キクノウチ思い出すからかなー」
「…………会長のダメさはマスター譲りですか」
「や、キクノウチに比べれば、オレやエンヤさんはまだ真っ当」
「っ?!?!?!?!?!?!?!」
「あいつは本当に弱っちいからなー」





 どこで何してんだよキクノウチ……。


 迎えに来ると言ったきり迎えに来ないマスターを思い、ブラックメイルは小さく呟いた。






 第四十一話に続く。



 あとがき
―――――――――――――――――――――――――
 最近、小説にぎわってますね!
 なにかのお祭りですか? ……もしかして『メダロット7』発売決定祝い?
 とりあえず読み放題でウハウハです。
 幸せー!

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.44 )
日時: 2013/03/02 00:06
名前: 通りすがりのコンビニ店員





 第四十一話『宣戦布告』






 〝大切なものを大切にするのは、ひどく難しい〟





 そう言ったのは誰だったっけ……あぁ、そうだ。アイツだ。
 弱っちくて逃げ出すくせに、逃げ切れなくて厄介ごとに捕まる――天パの、アイツ。


 まったくもって、こーゆー時には思いだすのはアイツの言葉ばっかり。
 しかも的を射てるから気に食わない。
 今度のことだって、そう。
 大切に出来てなかったから、私はこうして仲間を奪われてる。
 もう二度と失わないって決めたはずなのに。


 ……けど、このままじゃ終わらせない。
 奪われた私に責任があるように、奪ったヤツにも責任がある――果たしてもらいましょうか、その責任。


 そいつが一番大切にしているもので。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





「やっと出てきたわね――随分と出てくるのが遅かったじゃない? ブラックメイル会長?」


 菊くん、デスト、そして私が奥の部屋に通さること五時間。
 私たちを呼びつけた黒ヤギと、その秘書らしきメダは、姿を現した……ただし、ブラックメイルの方は何故か疲労困憊した様子で。


「遅かった……? や、自己最高記録を更新したぞ。この速さは。……オレ、頑張った。ホント頑張った。超疲れた」
「会長。疲れたのなら下がってくださっても構いませんよ?」
「メイデン。何のためにオレが頑張ったと……頼むから、この期に及んで精神的にイジめんのは止めてくんない?」
「ヘロヘロのくせに……負けないで下さいよ」
「努力する」
「勝ちなさい」
「………………………はぁい」

 おそらく『メイデン』と呼ばれたギャラントレディは、ブラックメイルの部下なんだろうけど、何か…凄く高圧的に勝利を命令していたような……?
 まっ、今はそれはどうでもいいことか。


「本題に入らせてもらうわ――」


 ガンッ と私は右の手のひらで、『メダ連』と『私たち』を挟む机を叩きつける。
 愉快な会話を聴くために五時間も待ったわけじゃない。


「――ブロッソメイルのメダルを壊されたくなかったら、私の仲間を返しなさい」


 もっとも、向こうが「わかりました」なんて言うはずがないのはわかりきってるし、私も穏やかに済ます気なんて一切ない。
 つまり――これは、宣戦布告。
 私たちは戦うために来たのだから。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 メイデンは、目の前にいる少女をじっくりと観察する。


 くるくるの茶色の長い髪を少し上の方でおだんごに結い上げ、余った髪を肩よりすこし下まで流している。黒い瞳はぱっちりと大きく、したたかな自信に満ちていて。これは――戦うことに慣れている眼だ。失うことも、奪うことも、すでに知っている眼。まだ17・18の少女には不釣り合いな眼で、しかし、だからこそ――人を惹きつける不思議な魅力を灯している。


(強い……ですね)


 嫌な予感がする。


 兎想月ウサギが連れているのはディアアイドルの報告にあがった、スミロドナッドとゴットエンペラーだけ。
 ブロッソメイル戦――遊園地で襲った時に使われたウォーバニッドは、遊園地でそのまま別れたと確認が取れている。しかも……ウォーバニッドの機体は、今朝方、『メダ連』によって回収され済みだ。


(ウォーバニッドの機体が遊園地に放置されていたことは不可解ですが……)


 メダルを抜き取られ、ボロボロの状態で回収されたウォーバニッド。後をつけさせていた手練れは、何者かに襲われ機能停止させられており、あの遊園地で何があったのか――三十年前の王者が、なぜ惨めな姿で取り残されていたのかは不明である。


 一番にあがるのはウォーバニッドを捕えていたとされる〝組織〟の存在。
 しかし、この事についてメイデンは納得できていない。〝組織〟にしては、やり方が「おざなり」すぎる。


 〝組織〟が信条にしているのは自らの情報の隠ぺい――存在しない、想像の域を出ない、「架空の組織」であること。
 あらゆる犯罪の糸を引いていながら、表舞台には立たず、派手な行動を起こさないからこそ、実態を掴めていない――日本政府。警察。セレクト隊。……そして『メダ連』でさえ。
 八年前に起こった〝組織〟の内部分裂のおかげで、少しだけ明るみにでたが、それすらなければ今も「実在」が疑われていたはずだ。
 それほど慎重深い〝組織〟。わざわざ遊園地という場所に彼らに深く関わった人物が姿を現すとは……メイデンには考えにくかった。


 それに、そもそも、なぜ今更ウォーバニッドなのかも疑問である。


 ウォーバニッドは世界王者として知られている。
 その機体をわざわざ人目に晒したうえ、あまつさえ『メダ連』の上級士官と戦わせる――〝組織〟を表沙汰にしかねない行為。〝組織〟が望んでやるとはとても思えない。



 考えられるとすれば、捕らえていたウォーバニッドが逃走したか――
           どうしても『ウォーバニッド』と『メダ連』を戦わせなければならない理由があったか――
           もしくは「存在していない」を信条にしている〝組織〟そのものが変わってきているのか――


 ――結局のところ、何もわかっていないのだ。


 なぜ〝組織〟に捕らわれていたウォーバニッドが姿を現したのか。
 ウォーバニッドが『メダ連』と戦ったのは、必要性があってのことのなのか。
 そしてウォーバニッドを誰が潰し、そのメダルを持っていったのか。その目的はなんなのか。


 わかっていない。
 それでも、もしわかっていることがあるとすれば――


(――この少女が、〝組織〟と無関係だったことぐらいですね)


 兎想月ウサギは〝組織〟と無関係である。
 捕らえた敵と話し合い意気投合した結果「あいつらのマスターなら大丈夫だろ!」と言ったバカはともかく、確かに尾行させていた優秀な部下からも『〝組織〟と繋がっている線は極めて低い。……つーか、ただのバカップルがデートしてるだけにしか見えなかった。リア充爆ぜろ!! 爆死しろぉおおおお!』と報告がきている。上官に対して後半部分の報告の仕方は頂けないが、あの優秀な部下が言うのだから、報告内容は信じていいものだ。


 だから一番の脅威であるウォーバニッドは、兎想月ウサギの手元におらず。
 スミロドナッドとゴットエンペラーだけなら、多少の苦戦をせども、あのロボトル馬鹿の会長が負けるわけがない。
 その強さは『最強』と呼ばれた前会長にさえ、上回っているのだから。




 なのに、メイデンは嫌な予感が拭えずにいる。
 大切な〝何か〟を見落としている……兎想月ウサギという少女の瞳を見ているとそんな気がしてならない。


(答えは目の前にある気がするのに……それがいったい何なのかがわからない……)




 もしかしたら会長ならわかってるかもしれない……。


 バカだからこそ誰にも出来ない視点を持っている会長になら――メイデンは少女から視線を外し、大切な〝何か〟の答えを求めて、右隣に座っているブラックメイルをそっと見た。いつになく真剣な表情で兎想月ウサギを見つめるブラックメイルは、傍にいるメイデンが聴こえるか聴こえないかの声で何かを呟いている。
 もしや……。と期待してメイデンは側耳をたてる。聴こえてきた呟きの内容は――




「うぉぉぉぉぉおお噂通りめっちゃ美人んんんんんんんんんっ……!」




(――ダっ、ダメだこいつ……早くどうにかしないと…………)




 そう思いつつも、食い入るように目の前の美少女に見入っているブラックメイルに、
 あぁ、そういえば手遅れでしたっけ――ひしひしとメイデンはなにかを感じて諦めた。








 第四十二話に続く。
 




 ――――――――――――――
 次回ですが、ウサギちゃんはキレたら怖いだろうな……っと思って書いてましたら予想以上の怖さに。
 よって、ウサギちゃんはダーク化するので、ちょっと引くかもしれません。

全力でごめんなさい ( No.45 )
日時: 2012/09/30 12:16
名前: 通りすがりのコンビニ店員



※注意!


 今まで『マンガっぽい小説』を目指して主にキャラ目線主軸で書いてきましたが
 作者が自らの力量に限界を感じた(つまり挫折した)ため、
 ここから急に第三者目線の書き方に変わっています。


Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.46 )
日時: 2012/10/12 15:55
名前: 通りすがりのコンビニ店員




 第四十二話『ダークラビット(1)』




「おかしくないか?」
 サーベルタイガー型のメダロット――スミロドナッド。菊之内という名の黄色いメダロットは、ことの成り行きに、至極まっとうな疑念を呈した。というのも先ほど交わされた兎想月ウサギ――自らのマスター――と、『メダ連』会長、ブラックメイル――との、やり取りの事である。


 仲間を返せと言ったウサギの言葉を、当然ブラックメイルは却下した。
 代わりに、ウサギがブロッソを解放し、二度と ロボトルしないと誓うなら返す と提案してきた。
 ウサギはこれを却下した。
 二人間での話はこじれにこじれ、最終的にやはりというか何というか、戦って決着をつけることになったのだが……ここまでは、菊之内も予想通りだった。相容れないものが戦力を互いに保持している場合、どうなるかは大抵決まっている。『メダ連』側にしても、本気であんな茶番が通るとは思っていないはずだ。
 否、『メダ連』側のほうが戦いを望んでいる。
 名に泥をつけられたのを放っておくほど、『メダ連』は甘い組織ではない。
 ウサギが万が一ブラックメイルの提案を呑んでいたとしても、難癖つけて戦いになっていたはずだ。
 挑まれたら最後。野良メダたちの希望を背負っている『メダ連』は、常に勝利を示し続けなければならないのだから。


「だけどな。おかしいだろ」
 どう考えても、どう結論を出しても、おかしかった。
 『メダ連』と戦うことになるのはわかっていたが……
「どうして人間のお前(ウサギ)が! ブラックメイルとリアルファイトする流れに落ち着くんだよっ?!」
 菊之内がいるのは、バスケットコート4つ分ぐらいの広さの部屋。目の前には六角形の盛り上がったステージが設置されている。普段このステージは『メダ連』で働いている兵士たちのロボトルの練習場所らしいが、これから行われるのは、人間とメダロットによるリアルファイトだ。
 ウサギは、叫ぶ菊之内など素知らぬ顔で着々と戦うための準備をしている。
 服装は、どこかの高校の制服。緑のチェックのミニスカートに、半そでの白いシャツ。今は十二月なので、季節を無視しているが、制服が自分にとっては戦いなれた戦闘服なのだとウサギは言い張り着用している。菊之内にはよくわからなかったが、こだわりがあるらしい(だからと言ってわざわざ持ってきて着替える程の必要性があるかは疑問だが)。両腕には、にの腕まである特殊素材の黒手袋(どっからか仕入れた)をはめ、ポケットには黒い塊(なぞの危険物)をつっこんでいる。
「ありえない! おかしい! 誰か説明してくれぇえええ!!」
「菊くん うるさい」
「わめきたくもなる! 普通ここはロボトルだろっ?! デストも何か言ってやれ!!」
「マスター。頑張って下さいね!」
「うわぁああああああああそうだったコイツも馬鹿だったっ!! 忘れてた!」
 常識人に見えてどこか抜けている神帝デストくん。
「応援よろしくねー」
 ウサギは明るく声援に応える。慌てたのは菊之内だ。
「待てウサギ。止めろウサギ。止めてくれウサギ! お前が怒ってるのは知ってる。そこらの男より強いのも知ってる。だがブラックメイルはメダロットだ。俺らみたいにリミッターがついてるなら問題ないが、相手は外してる。人間のお前が勝てるわけない。つーか、勝つ負ける以前に、死ぬぞ」
 相手はブラックメイル。
 しかも初期型。
 メダロットでもただでは済まされない――いわんや、人間ならまして。
「そうね」
 あっさりとウサギは頷いた。
 生死に関わる警告を平然と認めるウサギに、菊之内は唖然とする。
「そうねって……ウサギ。どういう――「あのね、菊くん」
 ウサギは菊之内の言葉を無理やり遮った。
 これ以上、不満を言わす気はない。
「私とリアルファイトになって困ってるのは、『メダ連』の方よ」
「は? なんで――」
「『メダ連』は〝力〟で成り立っている組織。人間なんぞに挑まれて、逃げ出すわけにはいかない――けどね、それは間違いなく弱点なの」
「…………???」
「そして可哀相だけど。私は絶対に許さない――私から奪おうとするヤツを」
 ゾッ と、冷たいものが這い上がってくる感覚が菊之内を襲う。
 ウサギが笑っていた。
 今まで菊之内が目にしてきた少し偉そうな笑みでも、明るい笑みでもなく、
 戦いへの喜びを含んだ、至極イジワルな微笑み。
「ウサギ………?」
 強者によって狩られるはずの弱者が、獰猛な笑みをたたえていた。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「っち」
 ウサギたちがいるリングの反対側で、ギャラントレディ――メイデンは、舌打ちを隠せずにいた。
(まさかリアルファイトで挑んでくるなんて……会長はどうする気で……)
 やられた――と思った。嫌な予感の正体はこれだ。始めからあのふざけた名前の女はリアルファイトを狙ってきていたのだ。


 メイデンはちらりとブラックメイルに視線をやる。
 それに気づいたブラックメイルが「あぁ」と真剣な表情で頷く。
「メイデン…………ヤベェな。あのミニスカでハイキックとか繰りだされたら確実に見えるぞ……っ!」
 なにか甚大に間違った心配をブラックメイルはしていた。
「…………会長、女子にはスパッツという心強い味方がいるんですよ」
「バカやろう! あれは悪の手先だぞ。今すぐ脱ぎ捨てるように言って――ぎゃぁあああああああ!! メイデンまって! 戦う前にフリーズは勘弁して!!」
 慌てるブラックメイル。何も考えていなさそうな姿に、メイデンは立ちくらみを覚えた。
「会長。いい加減にしてください。私たち今、瀬戸際なんですよ?」
 メイデンは、能天気なブラックメイルに非難の目で責める。
 ブラックメイルはまばたきを繰り返しながら「んー」と唸った。
「まぁ確かにヤベーよな。『メダ連』トップのオレが負ければ、組織そのものが揺らいじまって『狩り』への牽制とか言ってる場合じゃなくなるし。だからって人間相手に、本気を出したら殺しちまうからなぁ」
 もしウサギとの戦いが殺し合いであれば、勝つのは間違いなくブラックメイルだろう。
 しかし、これは殺し合いではない。あくまで『試合』だ。
 万が一でも、『人間』のウサギを、『メダロット』であるブラックメイルが殺してしまってはいけない――『メダ連』会長が人殺しなど犯してしまえば、メダロットそのものの信用を失うことになる。世間、そして政府からの。
 そうなれば政府からもぎ取った 弾圧への抵抗の権利は剥奪され、下手すれば『メダ連』そのものを瓦解させられる。
 何があっても その最悪の事態だけは回避しなければならない。


(どうすっかなぁー………)
 ブラックメルはまばたきを繰り返す。
 そもそも、だ。
 法律上に置いて、メダロットの立場はひどく弱かった。
 例えば、メダロットが人間を殺せば罪になるが、人間がメダロットのメダルを割っても罪には問われない。
 メダルを割る行為が、悪意や故意的なものであっても、メダロットは文句を言うことすら許されていない。
 要するに、『道具』扱いのままなのだ。
 千年を経て、世間にメダロットが〝生きている〟と認識されるようになっても、法律上でメダロットは『道具』のまま。


 しかし同時にそれは、仕方のないものでもあった。
 メダロットの力は人間にとって強すぎ、間違えば一瞬で〝暴力〟に変わる。
 更に、どこぞの馬鹿な科学者がリミッターの解除方法を確立させ、世の中にそれが広まってしまったせいで、国の法律でメダロットを保護するのは、ほとんど不可能になってしまった。
 なぜなら――
 リミッターを外したばかりのメダロットが、子供の頭を撫でた。それだけで子供の首がパキリと折れてしまった。
 ――実際にそんな事件が起こるぐらい簡単に、リミッターが外れたメダロットは人の命を奪える。
 メダロットは危険な存在だ。
 紛れもなく、その気になれば大量の人間を瞬時に殺せる存在だ。
 そんな危険な存在を相手に、法を緩めるわけにいかない。
 むしろ三原則が外れやすくなったぶん、法律でメダロットの力を縛る必要がある。
 『メダロット』が『人間』を傷つけることが出来ないように――


「――やっぱり、代わりましょうか? 会長」
 メイデンは、言葉を切ったまま口を閉ざしてしまったブラックメイルに申し出る。
 ほとんどのメダロットがリミッターを外している『メダ連』に置いて、メイデンは数少ない三原則の保持者だ。
 人間を傷つけることは出来ないが、だからこそ、危害を加えずに相手を戦闘不能に落ちらせることが出来るかも知れない。
「いんや。カワイコちゃんの御指名はオレだぞ? 逃げるわけにはいかないだろ」


 繰り返されていたブラックメイルのまばたきが、止まった。
「それに方法がないわけでもない」
「会長……?」
「あっちも人間であることを逆手に取るような汚い手で来てることだし、こっちも邪道でいくか」
「あの、会長? 話が見えないんですが……?」
「メダロットとしては非難されそうだけどなぁ。別にロボトルじゃないし。武器の所持はありだって話になってるし」
 さすがにメダロット相手に素手で挑め、ということは出来ないので、武器の所持は許されている。
 と いっても真剣や銃を相手がもっているわけもないので。
 武器といっても鉄パイプやそこらのものになるのだろうが――


「会長ッ!!」
「うっお。なんだよー? メイデン」
「『なんだよ』じゃありませんッ!! いいかげん私にも説明してください!!」
「説明は必要ねぇよ。見てればわかるし。それより用意して欲しいものがあるんだけど」
「用意して欲しいもの……ですか……?」
「 『麻酔銃』 」
 用意するよう言い渡された物の名前に、メイデンはぴたりと停止して、ブラックメイルを見つめた。
「たぶん。決着は一瞬でつくだろーな。かなりセコイ手かも知んないけど」
 動かないメイデンの視線の先で、苦々しげにブラックメイルは笑った。




 第四十三話に続く。

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.47 )
日時: 2012/10/01 16:17
名前: 通りすがりのコンビニ店員




 第四十三話『ダークラビット(2)』



 互いに準備が終わり、ブラックメイルとウサギは向かい合っていた。
 メダロットたちの戦いが繰り広げられるリングの上で、人間とメダロットが対峙している様は、どこかひっかかりを感じさせる奇妙な光景で――しかし交わされる鋭い視線は、戦いの場に相応しいもの。


ブラックメイル(……アレ……?)


 違和感がした。
 目の前に立っている美少女に別段おかしな点はない。あえて挙げるならば、十二月なのに半袖を身に着けていることと、腕まであるぴっちりした黒い手袋が目につくぐらいだ。


ブラックメイル(ん…………黒い…手袋……?)


 違和感が強くなった。
 ブラックメイルはウサギの手の部分を注視する。…と言っても、美少女は両手をスカートのポケットに突っこんで立っているため、手首から先は見えないのだが――


ブラックメイル(――あっ、これだ。違和感の正体。このカワイコちゃん……武器を持ってねーのな)


 鉄パイプか何か持っていると思ったのに、ウサギはなにも持っていなかった。
 いや、おそらく持って入るのだろう。
 制服のポケットの中に……。




 ブラックメイルがその事実に気づいたのは試合が開始される直前だった。
 ゆえに彼は深く考察することはできず、気づけなかった。
 あきらかに普通の手袋でない黒いそれに、ポケットに隠された武器。







 静まり返ったリング場で、審判役であるメイデンが静かに右手を上げ、
 ――振り下ろした。
「レディ ファイト!」
 人間とメダロットの戦いが始まる。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆







 ――――――――― 決着は一瞬でついた。






 ウサギという人間が突っ込んできたのを受け止めた瞬間、ブラックメイルの視界が暗転した。
 幸いにも暗転したのは秒にも満たず、すぐに覚醒する。わけがわからないブラックメイルは、跳躍して後ろに下がろうとし――


「逃がすか!」


 ブラックメイルの背中に何かが叩きつけられ、脳に激痛が走る。
「なっ、なにが……げはっ――!?」
 焦げ付いた匂い。襲い続けてくる激痛に全身が焼かれている。
「わからない? わからないの? なら教えてあげる」
 組み伏したブラックメイルの背中に馬乗りになった美少女が、刺していたそれを引っこ抜いて、黒ヤギの目の前に晒した。


                       ・・・・・
 小型で、手にすっぽりと納まるその黒い塊は――スタンガンだ。


「ふざけんなっ! そんなもんで――」
「――メダロットにダメージを与えられるわけがないって? 笑わせないで。精密機械が」
「……っ!!」
「機械ってのはね。悲しいかな。より高度に、精密になるほど壊れやすくなるの。――面白い話してあげよっか?」
「…なんだよ?」
「リミッターを外したメダロットが二機いた。その二機はロボトルをし、戦いは白熱した。ようやく決着がついた頃には両機とも満身創痍。そして、直後に雨が降った――」
「その話の続きなら、知ってるぞ」


 二機のメダロットは過激なロボトルでパーツを破損していた。
 その破損箇所に雨水が入り込み、運悪く電気経路に浸水。メダルへの伝達回線がショートし、二機のメダロットはメダルに直で感電してしまい、気が狂った。そして元には戻らなかった。
 リミッターの解除が一般でも行われるようになって、この手の『事故』は多発している。
 メダロットに課せられている三原則(リミッター)。第一条、『わざと人間を傷つけてはならない』。第二条、『人間に危険が降りかかるのを見過ごしてはならない』。そして第三条、『第1条と第2条を破らない範囲で己を守り、他のメダロットに致命傷を与えてはならない』――これによって守れていたはずのメダロットの〝弱さ〟が、浮き彫りにされつつあった。


ブラックメイル(くそっ。このカワイコちゃん、メダロットについてよく調べてんな……っ!)


 『事故』が多発するようになりメダロットの弱さが浮き彫りになりつつある。それでも世間の認識はまだまだ甘いのが現状だ。
 たった一箇所の傷でメダロットが壊れてしまうなど、誰も思っていない。メダロット自身でさえ、ほとんどの者は自らの脆さに気づいていない――気づいているとすれば、メダロットのことを本気で考えて、調べ、その〝弱さ〟にたどり着いたメダロッターぐらい。
ブラックメイル(ヤッベェ……オレ、負けるかも)
 戦ってわかることがある。
 目の前の美少女は間違いなくメダロットのことを大切にしている。
 『メダ連』に対して激怒し、危険をかえりみず自ら戦っているのも、たったそれだけの理由だ――
 ――だからこそ、ブラックメイルにとって最悪の敵だった。
 メダロットを大切にしているメダロッターほど、メダロットに熟知している者はいない。
 そんな敵を相手にして、手加減して戦える力はブラックメイルにはない。
 予想していたシナリオの中で、一番嫌なパターンだった。


「――精密機械は壊れやすい。会長サマはどれぐらい耐えられるのかなぁ?」


 ウサギが笑って、再びブラックメイルの背中に黒い塊をぶっ刺した。
美しく優しげに見えるのに、ひどく残酷な笑み。悪魔の微笑み――というヤツかもしれない。
 ブラックメイルは絶叫をあげた。


「痛い痛い痛ぁああああああああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


「このスタンガンはね。特別製。先端がティンペットと同じM合金で出来てるナイフで、そこから電流が流れる仕組みになってるの。まったくもってこの世界は凄いね。ナイフとスタンガンで、こんなオモチャが出来るんだから。あっ、もちろん使用してるスタンガンは人間用のじゃなく、パソコンとか機械の回線焼き切るようなヤツだけど」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁああああああああああああああああ――――――――――!」


「聞いてないかも知んないけど、私けっこう感謝してるんだ。おかげで思い出したから――弱ければ、奪われる。壊される。長いこと平和ボケしてたから、こっちのスイッチ入れるなんて久しぶりだけど――いや、ブロッソの時も入れかかってたかな? あの時は先手取られて危なかったけど――教えこんでやる。お前が誰にケンカを売ったのか」


「あぁ……ぁ……あ…ぁ」


「奪われた私に責任があるように、奪ったお前にも責任がある。けど――命乞いをしなさい。そうしたら、許してあげる」


 ウサギは、ブラックメイルが気絶する直前で、刺している電流ナイフを抜いた。仰向けになるよう、足蹴りして転がす。


「ぅあっ……」


「私の仲間を返しなさい。自分の負けだって宣言しなさい。全て許してあげるから」


 痛めつけてくるウサギの、始終絶えることのない微笑み。
 悪魔の――もしくは、蹂躙する支配者の笑み。優しげで、残酷な、全ての者を屈服させる凶悪な笑顔。
 真下から見上げていたブラックメイルは、恐怖に息を呑んだ。
 従わなければ殺される。
 逆に 従えば全てを許される。
 逃れられない激痛から解放される。
 強烈な誘惑が、ブラックメイルを襲った。
「ぅぅうっ………」
 同時に恥の気持ちがこみ上げる。『メダ連』会長でありながら何て様だ。人間1人に縋るなんて――そう、いっそのこと本気を出してしまえば。メダロットの力を振るってしまえば――勝てる。勝てるんだ。
 勝利。
 それこそが、『メダ連』にもっとも必要なもの。
「くそったれ!!」
 ブラックメイルは吐き捨てて、にぎり拳をつくり――その右腕を振り下ろした。


 第四十四話に続く。


Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.48 )
日時: 2013/03/05 15:29
名前: 通りすがりのコンビニ店員





 第四十四話『フィール ロンリー ラビット?』



 ――ウサギちゃん視点―――



 マンホールに落ちて私はこの世界にやって来た。
 『セレクト隊』なる白ヘルメットのお兄さんに捕まって、二階から飛び降りて、飛び降りたところを、見ず知らずのメダロット――菊くんに、抱きとめられて。
 生まれて初めてのお姫様抱っこに感動しちゃって。
 浮かれあがったノリで「連れて逃げて!」なんて言ったら、菊くんは本当に連れ出してくれて。

 まるで少女マンガみたいなハチャメチャな展開のなかで、私は一瞬だけど思ったんだ。
 運命ってあるのかもしれないって。
 絶対にいないと思っていた。こんな私を助けだしてくれる人が、もしかしたら居て――今やっとその時が来たのかも知れない、って。

 『この世界』が、私がいた世界じゃないって知ってからは尚更。
 メダロットと呼ばれる、菊くんたちのようなありえないものが普通に存在する『この世界』なら――……と、私は自分でも無自覚に、幼稚な子供のような期待を胸に抱いていた。
 私がそんな期待を抱いてしまったのには、『この世界』を夢の中だと思っていたせいもある。
 夢の中でぐらいなら、そんな幸せな世界が。幸せになれる世界が。あってもいいじゃない――結局、ここが夢の中でないことはカラオケに言ったときに証明されてしまい。『狩り』や『胡桃沢』の話を聴いているうちに、『この世界』も私がいた世界と同じ……不条理で、どうにかしたくても、どうにもならない出来ないことがある〝現実〟なんだと理解したけど。
 ううん。ちゃんと理解できていなかったかな。
 本当にわかってたら、私はちゃんと守ってたはずだもん……それを『この世界』なら大丈夫じゃないかって楽観して行動して、後悔してる。バッカみたい。弱ければ奪われて失うなんて、嫌でも知っていたはずなのに。
 ……結局のところ。
 立ちあがる強さが、守るための強さが、失わないための強さが、――必要なんだ。
 どこにいても。どんな場所でも。
 この世界でも。

 私は強くなくちゃいけないっ……っ!








 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






 ――デスト(ゴットエンペラー)目線――



 兎想月ウサギ――マスターが強いことは、だいぶ前からわかっていました。
 ロボトルで出される的確な指示は、まるで自らがその場に立ったことがあるかのようで。
 また、遊園地で十数機のメダを怯むことなく迎撃しようとしたのも、かなりの修羅場をくぐりぬけ、『力』に相当の自信を持っているからだと見て取れていました(無茶には変わりありませんが)。
 しかし、これは……余りにも、信じられない光景で。
 信じたくない光景で。


「つ、強い……ッ!」


 一方的にブラックメイルを虐げるマスターに戦慄し呟く私が感じたのは、
 紛れもない――





















 ―――――――恐怖でした。














 第四十五話に続く。

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.49 )
日時: 2013/03/06 00:46
名前: 通りすがりのコンビニ店員





 第四十五話『戦いは何が起こるかわからない』




 強くあらねばならないと感情に支配されながら、しかし兎想月ウサギの思考は冷めていた。
 ブラックメイルの右腕は振り下ろされるのをその目で認識しながら思う。
(腐っても『メダ連』のトップってことかな……)
 ブラックメイルが腕を振り下ろした先は、地面だ。
 足元を砕かれたことでウサギは否応なしに態勢を崩す。
 その一瞬をついてブラックメイルはウサギの拘束から抜け出し、後ろに距離をとった。
 距離を取られ、しかもフィールドに亀裂が入り生身では移動しづらい状況にされ、ウサギは目を細める。
(……攻撃してくると思ったのに。賭けは負けちゃったか)
 彼女は自らの内で密かに賭けをしていた。
 相手が考えなしのただのクズだったなら、挑発に乗ってその身の暴力を行使し、自分を殺してしまっていただろう。
 そうなればブラックメイル自身はもちろん。『メダ連』にも明日はない。――ヤツが大切にしていたものすべてを道連れに出来る。




奪うヤツは許さない――代償はそいつが大切にしているもので支払わせてやる。




 目を細めたまま、ウサギは自然体でスタンガンを構えた。


 ……自分の命すらチップ代わりにしておきながら、しかしウサギは自覚していない。
 思考こそ正常だが、感情は明らかに暴走していて、自分がやっていることが滅茶苦茶であることに。
 否。誰も気づいていない。
 戦いを見守っているデストも菊之内も、ウサギが『メダ連』を道連れに死ぬことを企んでいたなど……拐われたロイやビィービを助けるために戦っていると信じている彼らには、思いもよらなくて当然だろう。
 無論ウサギだってロイやビィービを助けたいと思っている。
 ただ 彼女は正常に見えて、怒り狂っていた。
 奪われたという事実。
 そして奪われて始めて、愚かな幻想にすがっていた自分を自覚して
 弱くても許されるのではないかと思ってしまっていた自分が、
 彼女は許せず、暴走している。


 あるいはそれは許せないからではなく、認められないからかも知れない。
 認めるわけにはいかないからかも知れない。
 なぜなら彼女は――








 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 とっさの判断から九死に一生を得たブラックメイルは、少女との間を取りつつ驚愕していた。
 相手がまさか最悪の――手加減できない相手だったこともだが。
 それよりも問題は先ほどの言葉の応酬……挑発の真意。
 誰も気づいてないなかで、彼女と直接向かい合い戦っているブラックメイルだけは、ウサギの目的に気づき、
 振り下ろしそうになった拳を全力で地面へと逸らした。


(さっきオレが攻撃していたら間違いなくカワイコちゃんは死んでた……しかも本人はそれを狙ってやがったっよな?!?!)


 体勢を立て直し自然体でスタンガンを構える少女は、どこか不満そうだ。
 つまらない。
 なんて言いたげに、こっちを見ている。明らかに…それを狙ってたとわかる態度。
 この可愛らしい少女は――自分を破滅させる気で戦っている。


 ぞくり と


 彼女の悪意とその手段を理解してしまったがために、ブッラクメイルの感覚は呑まれる。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 この少女の前で間違ってはいけない。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 この少女の嘘に騙されてはいけない。


 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・
 間違った瞬間。騙された瞬間。自分は全てを失う。




(……ありえないだろ)
 恐ろしい敵だ。
 弱さを逆手に取る機転。自らの命を平然と張ってくる精神。予想以上に戦い慣れた動作。そして挑発と…罠。
 果たして目の前の少女は、本当に少女なのか疑いたくなってきた。
(それに、だいたい何でここまで……?)
 メダロットを大切にしているのだろう。
 それは戦い方を見ればわかる。
 けれど、それだけではここまで……こんな無茶は普通はしない。
 いったい何が彼女をそうさせているのか――ブラックメイルは瞬き(まばたき)モードに入りかけるが、我に返る。
 今は戦闘中だ。そんな事よりも、考えるべきは勝つための手段。そのための行動。




 ――敵は恐ろしいが。
 『メダ連』会長として絶対に倒さなければならない!




 ブラックメイルは、亀裂が入った瓦礫の向こうに佇む少女に向き合う。
 それを見て少女は笑った。
「今度はそっちから来てくれるんだ?」
 ブラックメイルは ニヤリと笑って答える。



「いいや? 行かねーぜ」




 そう言ってブラックメイルが取り出したのは黒い塗装のL字型の物体。
 少女は目を見開く。
「なッ?! メダロットのくせに銃って、ひ、ひど――」
「近寄ってスタンガン喰らうわけにはいかねーからな。――おやすみだ、カワイコちゃん」
 ブラックメイルは咄嗟に避けようと動いた少女に狙いを定めて、引き金を絞る。
 的確な射撃。
 これは外れない――






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





(やられた……!)
 ウサギは悔しさに顔を歪めた。
 接近戦タイプのメダロットだったため、仕掛けてきてもスタンガンで応戦できると思っていた。銃(殺しは避けてくるはずだからおそらく麻酔銃)が出てきた場合など想定していない。足場が悪いから移動もロクに出来ず、これでは遠距離からやられる一方……というか、この弾丸はどう見ても躱せない。
(どうすればいい?!)
 それでもウサギは勝つための手段を模索する。
 相手の位置。迫り来る弾丸。自分の体勢。武器。残された時間。刹那に現状の情報を洗い出して考える。
 ――だが、何ひとつ手はなかった。
「くッ……」
 ウサギの顔がさらに歪んだ




    その時!






 ブゴッゴォゴォォァァ ッ 


 凄まじい破壊音と衝撃が部屋を振動し、壁の一面がぶっ壊されて変形したディストスターが突っ込んできた。
 本来のディストスターよりサイズのでかい そのディストスターは、まるでアクション映画のように華麗に空中を跳びながら突っ込んできて。見事なまでに綺麗にリングの上――ブラックメイルとウサギの間に着地し、停車する。
 一拍のち 部屋に叫び声が木霊した。


「うぉぉおおおお何か知らんが弾丸で我の前ガラスにヒビがぁああああああああああああああああ」
 ディストスターの叫びだった。
「ど…どうなってんだ――って、エンヤさん?!?!」
 狼狽えるブラックメイル。赤い車から這いずって出てきたコーヒー臭のする男性の人物に、さらに狼狽する。
(…………!)
 ウサギはその隙を見逃しはしなかった。
 間にあるディストスターを死角に、亀裂の入った地面を即座に移動してゆく。
 対象に近づくことに成功した。
「エンヤさん何でマッドタクシーなんかに……ってか大丈夫か? 顔白が――ぐはぁああああああ!」
 確かに……その戦いの







 ――――――――― 決着は一瞬でついた。








 ……謎のディストスターが盛大に突っ込んできてくれたおかげで。






 第四十六話に続く。