>> メダロットライズ にもどる

RSSフィード リレー小説 メダロットRise
   

日時: 2012/10/29 01:08
名前: 凍零

※お知らせ
・今まで使っていた「リレー小説 メダロット ライズ」は都合上、凍結することになりました。
 これからはこちらで話を進めていきたいと思います。
 ご迷惑をおかけしますが、今後ともよろしくお願い致します。
・メンバーに雪の城さんを追加しました。



リレー小説をやるにあたって
■順番(略敬称)
1:凍零
2:ゼブラー
(3:鎌兎)
(4:土竜)
5:カヲトリス
6:地
7:雪の城


一周したらまた最初に戻ります。
()がついている間、その人の順番は抜かしてください。

■この小説について
今まで「リレー小説 メダロット ライズ」で投稿していた話を再構成し、設定等も一部変更しています。
なので、上記の小説とは全くの別物と思ってくださって構いません。

■注意事項
・次の方が投稿するのは、前の方が投稿し終えて3日経ってから。3日経ってからの1週間以内が基本的の原則です
※修正期間中は10日間ルールは無しで、書いた人の次に書く人も、同じ日に投稿してくださって構いません。
ただし、一日一周のみです。

細かい事等に関しては「リレー小説 メダロット ライズ」を参考にしてください。



Re: リレー小説 メダロットRise ( No.87 )
   
日時: 2013/04/05 01:19
名前: ゼブラー

第五十五話 「MAGLL」



 ―――戦国大陸

「なんということでしょう」

 戦国大陸に到着した一歩、惣葉、心火、ウィネ。ギルティ、べリアル、バロンはそれぞれメダロッチの中に入っている
 結社側が手配した船で大陸に渡ったものの、そこにはライズやエデンとはとても同じ世界とは思えない光景が広がっていた



「まるっきり世紀末だなこの土地・・・荒れ果ててるってのは本当だったのか」
 乾いた大地にそこら中に刀、槍、剣などの武器が転がっている他にも、メダロットの残骸が点々とあった
「この大陸はやはりひどいな。俺だってここにFFナンバー4がいなければ来たくなかったものだ」
「必ずやなんばー4を撃写するですゥ!!」
「心火・・こらからどうする?」



「この土地のメダロット達は人間は全部敵と思ってる危険な連中だ。それに加え数が多くて軍隊を組織してるときた。完璧だなおい。
 どこにナンバー4がいるかもしれないが、やみくもに探すのは危険だし、メダ達に見つかると面倒だ。ああ、本当に面倒だ。
 とにかく、俺達の味方になる連中に協力してもらうしかない。俺は気が進まんがな・・結社の知り合いがいる。志和が言ってたろ」

「しわ?・・・」
 一歩が『誰だっけ?』って顔してるので心火がため息ついでに言った
「リーゼント」
「ああ!!」
 納得

「結社の知り合いと言っても、俺はあまり関わりたくないのが本音だ。かなり『キテる』連中だと思っておけ」

 「・・・あのー・・惣葉も心火も結社の一員だからいいだろうけどさ、俺何にも知らないんですけど?何なんだその連中って」



「この大陸でメダロットどもと土地の奪い合いをしてる人間達の軍、『MAGLL』(マグル)。そいつらに協力してもらう」



Maity Avenging Guardians of Liberation League 略してMAGLL。
戦国大陸ではメダロット同士の軍勢の覇権争いが行われているが、人間達の軍隊もある。それがマグル。
メダロット達は剣や刀などの近接武器を主に扱うのに対し、マグルは銃火器を扱い、メダロット達を殲滅するために戦う軍である。
解放軍と銘打ってメダロット達に大陸の土地を奪われないために戦っているが、その思想は偏っており、人類至上主義の塊であった





 ―MAGLL陣営―
戦争の前線基地のような駐屯地がマグルの陣営。テントやプレハブのような建物が多くあり、見張り台も所々にある
駐屯地は思っている以上に物資が豊富であり、売店やシャワーなど、生活に不足がない程度の設備はある程度揃っている
一歩の想像してた基地はもっと簡素なものだったが、この駐屯地というものはまるで集落のようだった

「これが戦争の前線基地とはなー・・・想像と違ったぜ」

「お前達はそこに入ってここのお偉いさんと話をつけろ。それとウィネ、お前は俺のメダロッチに入れ」
「ふおあ!?何故ですゥ!!?」
「お前は・・・何か色々しゃべりそうで不安だ。俺と一緒にいろ。俺達はその辺で情報収集だ」
 ウィネを心火のメダロッチ内(バロンと同室)にし、周囲のテントに情報を集めに行く心火
 心火が示した場所は大きめなテント。見るからに大将のいる場所って感じだ

「・・・おい惣葉、あの心火っつーツルテンは何であんなにここを嫌がってたんだ?ずいぶんしっかりしてそうじゃないか。
 俺はてっきりもっと世紀末でワイルドな場所だと思ってたぞこの基地」

「さあ・・俺もここに来たことはないから・・・」

 二人は首をかしげつつも、そのテントに足を踏み入れた



 大きな机に通信機器、地図やらなんやらがたくさんあるテント内。そこに数名の軍人らがいたが、ボスは一目で判断できた
 見た目的な判断ではあるが、一人だけやたらガタイがでかい男。それに色々指示してるのでその男がボスであろう

「あの~・・・こんちはー」
 一歩が誰もいない家に入る時に一声かける時みたいに軍人たちに声をかけた

「・・・うん?おお!!君達か!!志和から連絡は聞いている。向こう側の大陸の者だな」
 そのボスらしき男は一歩と惣葉を見るなり笑顔で答えた

(なんだかいい人そうだな)



「私はMAGLLの長官を務める『フランク・バーンシュタイン』。ここの指揮をとっている。君達には全面的に協力しよう。
 何せ我々は同じ人類。手をとりあっていかねばならんからな」

「ど・・どうもです長官」

「ははは、長官は軍人達の呼び方だ。君達にとってはフランクおじさんってとこだな」

「じゃあフランクおじさん、聞きたいことが――」

「長官だ」

 一歩の言葉を遮って訂正するフランク

「・・でもあんたさっき――」

「で、君達は何故この大陸に来たのだ?それを聞いてなかった。観光だなんてことじゃあないだろう?」

 惣葉と一歩は顔を見合わせる。一歩は不満そうだったので惣葉が口を開いた

「我々は・・FFを探してここに来たんです長官。何か情報はありませんか?」



「・・・ふぉーみゅらー・ふれーむ?・・・なんだそれはメガネか?聞いたことないな」

「FFってのは――」

 「ちょっとまて」

一歩が説明しようとしたらまたフランクが遮った。一歩が『またか・・・』といったリアクションをとる

 「なんすか」

「君達のその腕につけているのは・・・もしや」

 フランクは一歩と惣葉のメダロッチを見て言った

「?・・メダロッチがなんすか?」

「貴様ら・・あの鉄屑どもの味方か!?」

「え!!?」

「それはあの機械どもを操作するための道具だろ!?おい!!ふざけるなよ!!ここにあのガラクタどもを持って入るなど!!」

 それまで穏やかだったフランクが、急に鬼の形相になった

「ちょ!!ちょっと待ってください!!」

《鉄屑だと!!?》

《GRRRR!!なんて言い草だ!!》

 メダロッチ内のギルティとべリアルが声をあげる

「やはりか!!いますぐそれを渡せ!!ぶち壊す!!」

 『ジャカッ!!』とフランクが腰のホルスターに入れていた銃を構えた

「おいおいおい!!ちょっとタンマタンマ!!やめろ!!銃を向けんな!!」

「すぐにそれを渡せ!!」

「待ってください長官!!これは確かにメダロットに関係するものですが敵ではありません!!我々の味方です!!
 長官らの敵はこの大陸のメダロット達で、こいつらはこの大陸のメダロットじゃない!!」

「変わらん!!機械どもは全滅せねばならん!!人類の敵だ!!」

《何ィ!!》
 「・・・機械・・・敵・・・」
 フランクのその言葉に一歩は返す言葉がなかった。というより、その言葉に自分の心の内のマイナス部分をあおられた
 ギルティは自分にとって・・・



「落ち着いて!!銃をおろしてください!!敵じゃないです!!」

「・・・」

 フランクは銃をおろした。ひと時も惣葉と一歩から目をそらさずにゆっくりと

「・・・いいだろう。今は見逃そう。だがいずれその機械どもは全て破壊する」

 (・・・心火が嫌がってたのはこれか・・・)

人間至上主義。メダロットは全て敵と思い込んでる過激派。
戦国大陸において惣葉や一歩においては味方だが、べリアルやギルティにとってはそうではない
フランク達マグルにとってべリアルやギルティも敵なのだ



「・・・で・・・君達の目的はなんだったかな?・・FF?そうだったな。FFとは何だ?」

 惣葉はすぐに脳内整理した。マグルのボスはFFのことを知らない。必要以上のことは話さないべきだと
 それに『FFはメダロット』などと説明すれば面倒なことになる

「いえ・・知らないのなら・・・ですが何かそういった・・・不思議なものの情報とかないでしょうか?」

「不思議なものと言われてもな・・・」
 アゴに手をあてるフランク

「ドクターに聞いてみろ。奴は知識はあるからな。こっちだ」

 「ドクター?」

フランクに手引きされ、別のテントへと足を運ぶ2人





3人が入ったテント内には机の上に銃器の部品が山ほど置いてあり、その机にむかって銃器の整備をする男がいた
 所々白髪まじりで口ひげも白かったが、見た目的に老人というほどではなかった。ダンディーってとこ

「おいドク」

 フランクがその男に声をかけるも、聞こえてないかのように無視して整備を続けている

「・・ドク」

 二度目の声も無視するその男。フランクは呆れながらも、声に力をこめてまた言った

「ドクターホリデー!!!」

「うん!?なんだ?フランク?どうした」

 やっと反応したその男は耳からイヤホンを外して顔を上げた。本当に聞こえてなかったのだ

「言ってるだろ。イヤホンをつけて音楽を聞くなら、ボリュームを下げろと。それと私のことは長官と呼べと言ってるだろう」

「何をいう。ハードロックをボリュームさげて聞くなんてトンカツにソースかけないで食べるみたいなものだ・・・
 うん?そっちの二人は?」



「おお、この二人は向こう側から来た・・・あれ?名前を聞いてなかったな」

 「(今更かよ・・・)俺は月島一歩」
 「雨月惣葉です」

「惣葉君、一歩君、この男は我が軍随一の知識人『Dr,ホリデー』だ。銃火器の整備や負傷者の治療を主に行っている。
 昔、向こう側のライズという都市で『休日だけ開院する診療所』をやっていた医者らしくてな。だからドクターホリデーだ」
「どういう医者だよ・・・」

「私もそう思うが、これで医者としての腕は一流だからおかしなもんだ。それに銃器整備などでもかなり優秀だ」

「そうだおいフランク!!」
 「長官」
「お前どうせつれてくるなら整備できる兵士か衛生兵をつれてこい!!ただでさえ人員不足なんだ!!まともに整備技術覚えられる奴!!」



 (おい惣葉、こいつらホントにアテになるのか?)ヒソヒソ
 (そういわれても・・この大陸じゃマグルしか味方にならないから)ヒソヒソ

「じゃあ惣葉君、一歩君、聞きたいことはドクに聞いてくれ。私は作戦指揮に戻るのでな」

 フランクがそのテントから出ていく。出口付近で置いてあった銃を手にとって、一旦構えてからまた置き、出ていった

「・・・それで?」
 ドクターホリデー、通称ドクが整備していた銃を机の上に置いて、椅子にもたれかかって聞く

「えー・・・とりあえずこのマグルってどういう感じなの?」

「まあ・・・正直かなりおかしい組織だな。トンプソン銃でメダロットをハチの巣にする人間集団だ。かなり過激だよ。
 この戦国大陸に人間の軍てのはマグルだけだ。他はメダロットの軍勢だらけ」
「待った、メダロットに対して機関銃とか使ってたら楽勝じゃないのか?」

「そうでもない。その辺のザコなら楽だが、それなりに強い奴なら銃弾にも耐える。けっこう強い奴ならそんなに効果がない。
 中には銃弾なんぞ全く気にしないような奴もいる。だから集中砲火で一気に叩くしかないんだが、これも上手くいかなくてな。
 つまりは、そう簡単にこの大陸の連中を黙らせられないってこったな」

  ドクがたばこに火をつけてしゃべる

「で、そんな危険なとこに何で来た?観光だなんて言うな。冥土の土産しかないぞ」

「あの・・FFを探しに来たんです」



 ドクがぴたっと止まる。
 それから前のめりになって真顔で聞いた

「どこでそれを?」

「知ってるんですか?」

「・・・質問を質問で返すな」

「あ・・えっとー」
 惣葉は腕のメダロッチを見せる

「・・・まさか、それにFFが?」

《そうだ!!》

 中のべリアルが声を出す

「・・・・・ふ~・・・」
 ドクは髪をかきむしりながら椅子にもたれる

「FFの持ち主がFFを探してるのか・・・だがここにはないぞ。どー考えてもな」

「でも戦国大陸にいるって・・」

「それ本当か?俺もマグルに参加して長いことなるが、そんな話は聞いたことない。それに情報ってのは重要なもんだぞ。
 嘘の情報ってのはかなり面倒なもんだぞ。それにだな、こーんなとこに本当にFFがあったとしても、とっくに壊されてる」

「!!」

 そうだった。こんなとこにFFがあったとしたらどこぞのメダロット達に捕まるか、敵として壊される
 これは・・・すぐに行動すべきだ



つづく

▼戦国編!!まずは人間軍の説明を!!と思いまして
 とりあえず長官は過激派、ドクはそうでもない常識人って感じですかね。
 それではッ!!

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.88 )
   
日時: 2013/04/06 22:31
名前: カヲトリス


「ここも、随分荒れちまったなぁ」
「ああ」

エデン国の中枢、N・G・ライトの城。
そこにある貴重なパーツなどを収めた倉庫の中に、この国の統治者であるN・G・ライトと元闇軍団の幹部が一体、シュラはいた。

「プラダに攻撃されてからここ片づけてねーのかよ。棚は倒れてるし物は落ちまくり……ひゃー!! ちゃんとお掃除しろ! ホラ、箒とちりとり持って!」
「……ここは研究途中のパーツが多いからな。信頼していない訳ではないが、あまり一般の兵に片付けさせるわけにもいかぬ」

数分前。
未だ崩壊の爪痕が痛々しく残るエデンの街中で瓦礫を撤去するなどの復興活動に手を貸していたシュラは、唐突にN・G・ライトの元に行くようエデンの兵から言われた。
そうして城に辿り着いた彼は、N・G・ライトに連れられこの部屋に来たのである。

「……それじゃあ、何で俺ッ様を呼んだんだ? 自慢じゃないが俺ッ様は名高いパーツを見たら取らざるを負えない性質なんだぜ!!」
「そんな事を堂々と言うな……エデンの復興も段々と完了している中、パーツに詳しいお前に一つ見てほしい物があってな」
「エクスカリバーか!? ライトブリンガーか!?」
「違う……確かこの辺りだった筈だ。探すぞ」
「探す探す! ……うひょー! お宝が俺を待ってるぜー!」

白き神をモチーフにしたメダロットと、六本腕のメダロットが落下しすぎて床にこんもりと積もった箱の山を掘り始めた。

「しっかし、アンタは神とか何とか言われてるから、こういう肉体労働とか探し物はしないと思ってたぜ。側近の炎出すねーちゃん? にやらせたらいいじゃねーか」
「今回は特別だ……お前に見てもらいたいパーツは、それだけの価値がある」
「マジで!? 何そのパーツ、何でお前そんなの持ってんだよ!?」
「……地下から」
「あ?」

ダンボールやら何やらの箱類の中身を確認、そして除けるという作業を繰り返し行いながらN・G・ライトは言う。

「エデン国が出来上がって間もない頃、地下に埋まっていたと思われるパーツなのだ……私もしばらく研究していたが、何故地下に埋まっていたかの理由は未だに分かっていない」
「? 単純に誰かが埋めたんじゃね? 俺もよく家の庭にパーツ埋めたりしてるし」
「……そうではないと言える理由がある。」

箱の山々は二体のメダロットの手によって、段々とその高さを失っていく。
しかし、そのパーツとやらが入った箱はまだ見つからない。どうやら山の奥底に眠ってしまっているらしい。

「……パーツについていた土を計測してみた所埋められたのは何億年も昔、我々が住んでいるこの星が誕生してから間もない頃との事だ」
「えぇ!? どんだけ昔のパーツなんだよ!?」
「しかもそのパーツは……誰にも装備が出来ないのだ。まるでパーツが装着する人間を選ぶかのように、な」
「うへぇ……俺ッ様でも知ってるか分かんねーぞ、そんなパーツ……で、見つかったか?」
「少し待て……あった。この箱だな」

言いながら彼は、一つの箱を取り出した。
その箱は周りの箱には無い、独特の装飾がつけられている。
神聖さを感じさせる飾り付けがなされたその箱を見て、人はこういうかもしれない――まるで、聖櫃のようであると。

「神との契約が結ばれし石板が入れられた箱、聖櫃か……もしかするとこれは……」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何でもない。開けるぞ」

重々しそうな箱の蓋をゆっくりと開けると、中には――。

「…………」
「…………」
「…………」
「……何も無くね?」

――何も、無かった。

「おいおっちゃん! ここまで焦らしといて、『ありませんでしたー』とかどんなドッキリ仕込んでんだよ! 手が込みすぎなんだよコラァ!!」
「盗まれた、か」
「あ?」
「エデンの戦争中に、何人かの兵士達がここの前をうろついているのは知っていたが……まさかこのパーツが狙いだったとは」
「え、それお前裏切られてんじゃん」
「……少し、違うだろうな」

N・G・ライトは箱の中身を一度覗き込んだ後身を翻し、倉庫の出入口へと向かいはじめた。
それを見て、慌ててその背後をついていくシュラ。

「その兵士達は最初からこのパーツが目当てで軍に入ったのだろう……そして機会を窺いつづけた。この国がいつか戦火に巻き込まれ倉庫の管理が手薄になる、その時をな」
「お、おいおい……それはちぃーっとばかし疑い過ぎじゃねぇか? ただ単に『魔が差しちゃいましたてへりんこ』って事もあるだろ」
「……箱の中身に、盗まれる前には無かった文章が刻まれていた。何だと思う?」

白い神は橙色の六本腕のその疑問には答えず、逆にそう問いかけた。

「えーっと、『このパーツは頂きます。怪盗ルパン』みたいな?」
「それならばまだ話は早いのだがな……


……『歌姫は我らと共にあり』か。あのパーツは、一体……」


第五十六話「歌姫は我らと共にあり」


――独特のジェット音が止まり、衝撃がシートベルト越しに自分の体を揺らした。

「……着きましたか……」

河内が元々属していた『組織』の幹部である男、カミュラは小さい飛行機の座席からするりと立ち上がった。
甲子園での爆破作戦はデスティニー一体の命と引き換えに失敗に終わってしまったが、彼自身はあまり悔やんではいない。悔やむ時間があるなら、より多く行動を行うべきだと彼は思っているからだ。
……という訳で、今日も今日とて彼は暗躍する為に動き出す。
作戦に最初に必要なのは下準備。彼はそれをここ、『空中帝国アルデヴァラン』で行うつもりだった。


……
…………


アルデヴァランでは人間の存在はある一種のタブーである為、狭い隠し通路を彼はひたすらに行く。
闇軍団のメダロットしか知らないその通路を出た先に――彼らの軍本部はある。
カミュラは闇軍団の兵士達の冷たい視線を浴びながら、へらへらと笑って建物内を通過していく。

「(この視線の洗礼も、何回目になるのでしょうね……)」

いい加減慣れてくれませんかね……と心の中で苦笑しながら、彼は一つの扉の前に辿り着いた。
周りにある他の扉とは、少しだけ豪華さが違う扉。その扉を彼が何回かノックすると――

「――何かなぁ?」

――相手の方から勝手に顔を出してくれた。
大きな爪を、カミュラの眼前に突き出しながら。

「どうも、連絡をしていたカミュラという者ですが……」
「……ああ、何か気持ちの悪いケナガザルが一人こっちに来るって連絡があったね……今不機嫌なんだけど、後にしてくんない?」
「いえいえ、そういう訳にはいきませんよ、流石に」

相手がこういう捻くれて上がり下がりの激しい性格だと知っていれば、対処は楽な物である。
引く所はひたすらに引いて、押す所はきっちりと押す。
それさえ心がければ、このメダロットの相手は簡単だろう……がまぁ、性格上あまり手助けは望めないかもしれない――とカミュラは思っていた。

「じゃあこうしよう。僕が今不機嫌な理由を、当ててくれたら話を聞くよ」
「……おそらく、闇軍団の幹部の内プラダ様は行方不明になられ」
「やめてよ、あんな美しくない奴に『様』なんて。気持ち悪い」
「……失礼しました。シュラ様はエデンに投降し」
「アイツあんな事程度で裏切るなら、なんで中途半端に幹部になんかなったんだろうね……馬鹿みたい。後『様』はやめてってば」
「……二体の幹部がいなくなった事により、仕事が増えソレが貴方様の負担となっている。違いますか?」

目の前にいるメダロットはカミュラの最後の言葉に黙りこくった。
こういう変な質問は『答えられない』が一番機嫌を損ねるものだ。本当でなくてもいいから、適当な答えを言うに限る。

「……チッ、まぁ大体そんな感じ。入りなよ、話ぐらいは聞いてあげようじゃないか」


……
…………


「……ふーん、話は分かったよ。僕達の邪魔をする人達を燃やして来いって事でしょ?」
「はい、もし宜しければ貴方様の部下を何体かお貸し頂ければ、と」

カミュラと話している相手の名前を、ネリスという。
見た目こそ市販のSZK(朱雀)型メダロット、スフィンクだが闇軍団での立場はギガコマンダー。つまり彼? もまた、闇軍団では幹部にあたる存在なのだ。
今日カミュラはネリスに『自分の事を狙う河内達を抹殺する作戦』を提案しにきたのであった。

最後の出会いであれだけ彼らを挑発し、あまつさえデスティニーが犠牲になったのだ。当然相手は『組織』を――というか自分を狙いにくるだろう。
今この時点でカミュラは危険な状態にあったが……逆に考えれば自分の存在さえちらつかせておけば相手の考えが読める、という事でもある。
そして自分ならそういった事ができる、という自信をカミュラは持っていた。

……とはいえ戦力がなくては相手の考えが読めても反撃は出来ない。その為彼はこうして闇軍団の幹部が一体、ネリスに協力を依頼しているのだが――。

「嫌」
「……は?」
「僕の部下を貸せって話なら断るよ。相手は強いんでしょ? あんな雑魚共にどうにかできる訳ないよ」
「は、はぁ……」

意外な答えが返ってきて、思わずカミュラは戸惑ってしまった。まさか自分の部下が雑魚だからという理由で、断られるとは思ってもいなかったのだ。

「そ、それではどうすれば……」
「そんなの簡単だよ……僕とその部下達、全員で攻めるだけの事だよ」
「ぜ、全員ですか?」

彼は再び驚いた。まさかこの作戦にそれ程の人数を使ってくれるとは。

「まぁ雑魚でも盾にはなるからね。精々美しい僕の盾になってくれたらいいよ。正直何体死のうがどうでもいいし……話を聞いた限りでは二手に分かれたみたいだし、とりあえず片方を潰そうか。おいそこの雑魚!」
「はッ!!」

カミュラ達がいる部屋でSPのつもりなのか直立不動になっているの闇軍団の兵士――部屋の主が過激な事を言うのには慣れきっているのか、動揺した様子はない――に、ネリスは声を掛けた。

「今、アルデヴァランはどこの上空にいるの?」
「はッ!! 只今我が国はエデンからライズ国へ、北西に向かって移動中でありますッ!!」
「何だ、まだエデンから出てなかったのか……トッロいなぁ……」

空中帝国アルデヴァランは、国としての役目と共に移動する要塞としての一面も持っている。
太陽の影になって地上の人間に見つかる危険性を減少させるのと、地上で苦しむメダロット達をより効率的に回収する為であるが――エデンを一度襲撃した今、また別の理由でこの機能は使われる事になるのだろう、とカミュラは思った。

「まぁいいや。それならエデン側にいる方を先に潰そう。プラダの馬鹿が勝手に先走った所為で出来なかったけど、久しぶりの戦争だ……偶には汚い血で身を清めるのも悪くないよね……おい雑魚! お前の美しくない雑魚仲間共に連絡しろ! 『至急輸送艦に集合、来ない奴はキャンプファイアーの焚き木にする、後ギアスの馬鹿には言わなくていい』はい復唱!」
「『至急輸送艦に集合、来ない奴はキャンプファイアーの焚き木にする、後ギアスの馬鹿には言わなくていい』!!」
「よし行ってこい!」
「ラーサ!!」

驚いた様子も脅えた様子もない兵士が部屋の外へ出た後、ネリスはカミュラに向かってギラリと光る爪を突きつけた。

「さぁて、君にも手伝ってもらわなくちゃ。折角の『餌』なんだから、しっかり釣ってもらわれないと。ホラ、何してるの? 早く動いてよ」
「はぁ」

その爪と爪の間から小さな炎が漏れ出すのを見て、カミュラは自分の考えが少し間違っていた事を悟った。

「さぁ、久しぶりのショータイムだ。全ての証明が、全ての物語が、全ての登場人物が全てが僕を中心にする時がようやく……く、くくくく……」

このメダロットの相手は簡単では無かった。だが、しかし。

「(このメダロット、ネリスは――使える)」

これならチェス盤をひっくり返されるような事がない限り、間違いなく潰せるだろう。何せ調べたところによれば、エデンに向かっている中に莫大な力を持つFFはいないのだから。
カミュラが『組織』に所属してから、最も大きなチャンスが今訪れようとしていた。





「……ていうかさぁ、何でエデンに行くことになってんの?」
「言うと思った……流石の話聞いてない率だな、お前」
「え今何か言った?」
「こんぐらいは聞いとけよ! 馬鹿かお前は!」
「えっ? えっえっ?」
「死ねボケ!!」

エデンに向かう組、のそのさらに船組。
最早ここまで来ると引き返せないというぐらいの位置になってようやく、ヒロキがそう船を運転しているマサキに問いかけた。

「いいか、エデンには誰がいる!?」
「逃げてきた俺達を燃やそうとするF・G・シャイン」
「それもいるけど!! いるけどね!?」

マサキが船を器用に運転しながら言葉を続ける。

「エデンにはあのシュラっていうのがいるだろうが!」
「誰だっけ」
「六本腕の熱い奴!」
「ああ」
「アイツは闇軍団の元幹部だから、そのツテと河内さんのツテを合わせてカミュラの奴を見つけてブン殴る! 見つけて、すぐさま、ブン殴る! ……それに、エデンの科学力ならロケットとか飛行機とかでアルデヴァランにも行けるかもしれねぇしな」
「ふーん」
「何でそんな興味無さげなんだよ!!」

聞いてきたのに異様に冷めた引き方をするヒロキの次に、『啓示者』である由愛 宗夜が声をあげた。

「……しっかしマサキさん船運転できるなんて凄いなぁ。他に何運転できるの?」
「ん? まぁ車は基本としてバイク、電車、飛行機、重機……」
「うお、本当に凄かった……」
「まぁ殆ど無免許か免停されてるんだけどな」
「へん! 俺なんてアレに乗れるぜ! あの……あの……デパートの屋上にある……パンダの……」
「言えねーなら無理すんなよ!」
《……アレの名前は、バッテリカーだ……》
「「おおー」」

まさかの名称を知っている者がいるとは思わず、ヒロキとマサキの両名は賞賛の声をあげながらじっと答えを言った人物――宗夜のメダロッチ内にいる死神、フェイトに目を向けた。

「なぁ、フェイト。お前また機嫌悪くなってないか?」
《……別に。お前が覚悟を決めたのなら、もう俺から言う事は何も無い》
「ふーん……」

宗夜はフェイトはおそらくかつて相棒であったデスティニーの事に責任を感じているはずだと思い、深く追求はしなかった。
『俺から何も言う事は何も無い』は流石に嘘だとは思ったが。

「……ところで、ヒロキさんマサキさん達はコレが終わったらどうするんだ?」
「ん、コレってどれだ?」
「ホラ、『組織』への復讐? が終わって、FF関係の騒ぎも全部終わったその後だよ」
「そうだなぁ……またいつも通りに戻るだろ、多分。いつも通り好き勝手する毎日が、俺達を待ってるぜ」

マサキがそう言うのを聞いて、宗夜はふぅんと呟いた。

「……いつも通り、ね」

皆そうなのだろうか、と宗夜は思った。
皆この全てが終われば、いつも通りの日常に戻るのだろうか。

――もしそれならば。

それならば自分は一体どうするのだろうか。
セフィロトと共に存在する事が使命だと教えられてきた、『啓示者』としての自分の『いつも通り』。
そこに帰還する事はもうない。何故なら、自分は今からその使命を教えてきた『組織』と戦うのだから。

「……あー」
《どうした、ソウヤ》
「フェイトー。もしこの戦いが終わったらさぁ」
《うん》
「裸でソーラン節を」
《やらない》
「そっかー……」

――まずいな。全く思いつかない。
なんかやりたい事やりたい事――と思っていると、彼はふとその視界にもう一体のメダロットを捉えた。

「あ、ヨシノはどうなんだ?」
「……ん?」

青竜型メダロット、ロンガンのヨシノ。
彼は志和達と別々のルートに行き始めてから、何故か異様に寡黙になりだしていた。
そんな様子になってしまった理由に関して、宗夜はさっぱり思い当たる節が無かった。

「悪い、質問を聞いていなかった。もう一度頼む」
「ヨシノは、その、全部終わったら……あ、す、すまん忘れてた。お前は……」
「ああ……」

そう言えば、と宗夜は思いだし謝った。時雨達から聞いていた話によると、彼とコトヒラはここではない別の世界から来たらしかったのだった。
これは失言である。全部終わったらそりゃ元の世界に帰るだろう――そう思い、宗夜はついでにもう一度謝る事にした。

「す、すまん! ごめん! えっと、ソーリー!」
《謝りすぎだ……》
「いや、いいんだ別に。気にするな」

宗夜の謝罪を優しく返したヨシノだったが、その言葉の調子は相変わらず暗い。
しかしその言う声の中には先程とは少し違い、未来への何かしらの思いが感じられるような気がした。

「なぁ……もし、俺が……」
「ん?」
「……いや、何でもない」
「うんにゃ、何でもねーって事はねーだろ!」

馬鹿な癖に人一倍人の心の動きには過敏な男、ヒロキがヨシノと宗夜の会話に割り込む。

「何か思う所あったら言った方がいいって! 俺達を信頼しろよ、こういう時なんだから!」
「そう、だな……そうかもしれない」
「よし来い! 俺は実はメンタルカウンセラーの免許も持ってるんやで!」
「嘘つけ」
「嘘やで!」

何故関西弁なんだ……というツッコミは誰もせず、全員が只ひたすらにヨシノの言葉を待った。
馬鹿で変な奴らだが、忍耐だけはあるのだ。

「……いや、やっぱり止めておくよ。今の俺の事情をどう言葉にしたらいいか分からないんだ」
「おいおい……」
「でも大丈夫だ。いつか、いつか絶対に言うから……その、大切な仲間、だからな」
「…………」
「…………」
「…………」
《…………》

「な、何か言えよ……」

じっと見つめられたヨシノが恥ずかしそうに言うのと同時に、視線が全てへらりと笑った。

「ヒネデレってのはこういう事だったのかもなぁ、へへへ」
「うるせえ、馬鹿」

ヨシノを含めた一同はその恥ずかしそうな罵倒も相まってへらへらと笑ったが――そんな時、唐突に運転手のバンダナサングラス男ことマサキが驚いた声で言った。

「……? 何だありゃ?」
「ふぁい?」
「え?」
《どうした?》
「何?」

見ると、マサキが運転しながら窓越しに外の景色を不思議な顔で見ていた。
その方向は斜め上。丁度太陽が昇っている方向である。

「え、何々太陽の方向に何が……ってまぶしっ! 目が焼ける焼ける焼ける!」

同じ方向を見て(太陽を直視して)転がるヒロキを無視して、メダロットであるヨシノがじっと太陽を見つめた。

「何だアレ……影……?」
「UFO?」
「いや、アレは…………」

長い沈黙の後、ヨシノが静かに言う。
その言葉に先程までの暗さはないが、代わりに明らかな焦りの色があった。

「……輸送艦だ。それも二隻いる」




■続き行きます

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.89 )
   
日時: 2013/04/06 22:32
名前: カヲトリス



「うわ、何じゃありゃあ……」
「闇軍団の輸送艦だな。前のエデン襲撃騒ぎでも見たことがある」

――徐々に近づいてくるその戦艦の姿は、観光バスで向かっている河内達の方が鮮明に見えていた。
というか、ほぼ真上を通過しようとしていた。

「まさかこっちの行動が完全に見透かされていたのか!?」
「充分ありえる可能性だろ、そんなの」

不安によるざわめきがバス内で大きくなる中、窓から外を覗きこんだ葉奈の同じく不安そうな言葉にリーゼント男こと志和が答える。

「こっちには元『組織』の人間だった河内のおっさんと重要人物だった『啓示者』の由愛宗夜とフェイトがいるんだ、居場所を伝える何ぞやかが体に埋め込まれててもおかしかねーよ」
「まぁ、カミュラならやりかねねぇな……」

ぴょっこぴょこ動くリーゼントの隣で、苛められる可哀想なおっさんこと河内も同意する。

「ちょ、分かってたんなら何で普通にバス乗って来てんだよ!?」
「そりゃあ、他に移動手段が無かったからな」
「レンタカーとかは!?」
「レンタカーじゃ駄目なんだよ……」
「何で?」

葉奈の質問に、河内ではなくコトヒラが答えた。

「アレ、最初に免許証出さなきゃいけないんだ。後住所も」
「河内のおっさんの書けばいいじゃん」
「裏切り者が住所残すわけにはいかないだろ」
「むむむ……じゃあそこのリーゼントは!?」
「住所があるかも怪しいだろ……それに敵対組織の人間なんだから、書く訳にはいかないと思うけど」
「くそう!」

口論に負けた葉奈は最後に腹立たしそうな顔をしながら、負け惜しみのように「じゃあこの状況はどうすんだ!?」とコトヒラに問いかけた。

「どうするのか? 決まってるだろ……早く逃げよう。俺達の甘かったところは『追跡があったと見抜けなかった事』じゃない。『相手がこんなに数を用意してくると予想できなかった事』だろ」
「ああ、途中で追手が来たら当然バスから飛び降りてでも逃げるつもりでいたが、まさかこんな数で来るとはな……」

そう言いながらも、彼らはどんどんと準備を終了させてすっくと立ち上がる。

「まさか艦一つまるまる来るとはな。エデンの連中、今頃大慌てだぞ……失礼、運転手さん」
「は、はい!?」

すっかり緊張している可愛そうなバスの運転手に向かって、志和が何気ない調子で声を掛けた。

「こんな状況でエデンに行く訳にはいかねぇだろ。全員降ろした方がいいと思うぜ?」
「え、で、ですが仕事が……」
「仕事も何も死んだらそこでお終いだろ? 運転手さん、俺ぁまだ死にたくないぜ? ホレ、ブレーキブレーキ」
「…………」

志和に言われて、運転手は怯えながらも静かにブレーキを踏んだ。
真っ直ぐに進んでいたバスが、ゆっくりと速度を落としていく。

「ホイ、それじゃー次はドア開けようぜ。そこのボタンだっけか」
「は、はい……」

最早混乱状態で正常な判断が出来ないのか、運転手は言われた通りボタンを押した。
ぷしゅり、と音を立てバスのドアが両方とも開く。

「よし、行くぞ!」
《捕まらないようにしなさいね》
「随分勢いのない逃亡劇だな……」
「全くですね……(……しかしどうやって輸送艦なんて持ってこれたんだ? ……まさか見た目だけのこけおどしって訳じゃないだろうな……)」
「ちょ、ちょっと待て!!」

今だ動揺が引かない他の客よりも先に、扉へと向かう一同。
そのまま先頭をリーゼントは勢いよく外へ飛び出し――



「――はァッ!!!!」
「!!!!」

外気を感じると同時に、彼の頭頂部の髪の毛がブチンという音と共に『削り取られた』。
何が起こったか分からないような、ぽかんとした表情を浮かべたまま――志和の削り取られた髪の毛が地面に落ちながら燃える。

「……あれ、何だ。折角顔の皮膚を削り取ったと思ったのに、変な髪の毛の所為で邪魔されちゃったよ」
「……な、何……?」

全く状況を理解していないまま声の方へ眼を向けると、そこには静かに落下してくる大量の飛行メダロットの軍団と――赤い朱雀を模ったメダロットが一体、彼らの目の前を飛んでいた。
背景に大量の部下と思われるメダロットを従えたその姿は、まるで空の支配者のよう。
そんな空の支配者は、志和達に向かって宣言する。

「チッ、事故死を装えると思ったのに……まぁいいや。じゃあ普通に拉致らせてもらおうかな……僕の名前はネリス。君達を輸送艦まで運んで拷問したり人質にする為にここまで来た、闇軍団の幹部だよ。宜しく」
「(プラダがあんなんだと思ってたら、今度の幹部格はストレートな外道か!!)」

絶対的な宣言、命令。
この場の支配者が一体誰であるかを――。


「お、お、俺の髪がァァァァーッッッ!!!! 俺の髪が、リーゼントの断面図が見えてやがるぅぅぅぅぅーッ!!!!」
《少し落ち着きなさいよ……》





初めに言葉があった。

言葉は神と共にあった。

言葉は神であった。

この言葉は、初めに神と共にあった。

万物は言葉によって成った。

成ったもので言葉によらずに成ったものは

ひとつもなかった。

言葉のうちに命があった。

命は人間を照らす光であった。

光は暗闇の中で輝いている。

暗闇は、光を理解しなかった。

(ヨハネ福音書 1:1~1:5 )


――歌が、聞こえた。
その歌は『彼ら』の信奉する姫の物にしては酷く小さく、か細かった。
しかしどんなに小さくても、か細くとも『彼ら』はその歌が自らの信仰する者の声であると理解した。
だから走った。歌の聞こえる方へ。

『彼ら』はやがて、一つの場所に集まった。
そこは港であった。たくさんの船が係留されており、カモメが飛び交う普通の港。
ある程度の人数が集まったと見るや、『彼ら』の内の一体がとあるパーツを持ってくる。
圧倒的な神性と母性を感じさせるそのパーツをまるで真夜中の蛍のように静かに輝きながら歌を発するのを見て、『彼ら』の内の一体が別の『彼ら』に問いかける。

――歌はここから出ていたのか……姫が歌っていたのではないのか?

――らしいな。どうやら、姫に手を出す愚か者が現れたらしい。

――どこにいるのか、場所は分かるのか?

――船上だ。この装具が教えてくれたそうだ。

大量の数で構成されている筈の『彼ら』が交わした質疑応答は、たったこれだけだった。
しかもそれは群衆の中から群衆へと質問しているような形で、まるで質問の形すらも整っていない曖昧な物だったが――しかし、それだけ済ますと『彼ら』は迅速に行動を始めた。

何組かに分かれて手近にあった船に――その種類はクルーザーであったり貨物船であったり漁船であったり、まるで統一性がなかった――乗り込み、誰のとも分からないソレを急発進させた。
その動きには迷いはない。何故なら、彼らには信仰があったからだ。
エンジンの始動と共に、『彼ら』は静かに呟く。
祈りの言葉を、信仰の言葉を、『彼ら』の思いを。

――『歌姫は、我らと共にあり』。


……
…………


『いやぁ、しかし流石の私も驚きましたよ。まさか輸送艦一個にギガコマンダー、さらにその部下全員で私の作戦に乗ってくれると言うのですから』
「クッ……」

上空から飛来してきた大量の飛行メダロット達が、その圧倒的な数の暴力でヒロキ達の船を制圧してから数分後。
闇軍団のメダロット達に捕まり、体を船の甲板に押し付けられた彼らはモニタ越しに因縁の男ことカミュラと会話をしていた。

「ええい、てめー! こんな数用意すんのはどう考えてもずっこいぞ!!」
『ハッハッハ、そうですか。流石に伝説の男達といえども数の暴力には勝てない、と。成程、また学ばせて頂きました』
「アホかー! 死ね、死ねー!!」

どのような罵倒を言われても、相手はただただ高笑いをしているだけだった。どうやら今回の作戦が、相当気に入ったらしい。

『ああ、申し訳ありません。私こういった圧倒的物理的優位に立って戦う経験があまりないものでして……ついつい調子に乗ってしまいました』
「……それで、何が望みなんだ?」
『はい?』

この場では『組織』にとって最も大事であろう『啓示者』、由愛 宗夜が闇軍団に捕まりながら言う。

「どうせ今回も俺狙いなんだろ? 大人しくするから、この人達は見逃してくれよ」
『……』
「……分かった分かった。俺の事を監禁でもなんでもしてくれていいから。おい、聞いてるのか?」
『……失礼ですが。貴方は、何かこの状況を勘違いなされていませんか?』
「え?」

モニタ越しから宗夜をじっと見つめる男。
先程までとは違い、その目は決して笑ってなどいなかった。

『私がこの数の優位で、貴方の要求をホイホイと呑むとでも? 貴方は変な人だ……自分の真の価値も分からないで、それを脅しの材料に使う事なんてできる訳がないでしょう? ……貴方は辛かったかもしれない。他人に自分のレッテル貼りをされて、ロクに外を動けず……しかし同時に楽だったでしょう?』
「!?」
『楽だった筈だ……あなたは何も選択しなかったから。時々まるでおふざけみたいに私達に反抗すれば、それで皆が過剰に心配してくれる。フェイトという友もいた』
「ふ、ふざけんな……この屑野郎……!」
『? 誰がです? まさか私がですか?』
「お前らだ!! カミュラ! お前も含めた組織の人間共!!」
『……ヒヒッ』

顔面蒼白になりながらそう叫んだ宗夜の言葉に――モニタに映るカミュラの口端がにたりと吊り上った。
それは先程までの愉快さを含んだ物ではない。そこにあった感情は嘲笑――そして怒り。

『貴方の衣服を用意した私達が、ですか?』
「……? どういう事だ……」
『貴方の食事を用意した私達が? 貴方に住める場所を用意した私達が? 貴方が危険に遭わないように護衛をつけていた私達が?』
「な、何を……」
『無論これはあなたの啓示者としての価値を計っての事かもしれない、しかし私達が貴方にしてきた今までの事――無論貴方が逃げ出すまでにしてきた事ですがね!!――は普通の親が子どもにするような事です。衣食住を整え、安全を心配し!!』
「…………」
『数年前、孤児だった貴方を! 全く関係のない赤の他人である貴方を! 育ててやったのは、生かしてやったのは誰か!? 私達です!! 親がやるような事を、私達は貴方にやってきたのです! それなのに、それなのに――

――親 に な ん て 言 い ぐ さ で し ょ う か 、 貴 方 は !!』

満面の笑顔を浮かべたその表情から、漏れ出すは矛盾し歪み切った論理。
しかしそれでも――カミュラ達が、自身の目の前にいる少年に物質的な豊かさを与えてきたのは事実なのである。
そしてソレが、ともすれば親と子の関係に限りなく近い事も。

「へ、屁理屈じゃねーか……お前だけが俺を育ててきた訳じゃねーだろ!」
『無論ですよ……だから私達と先程から言ってるじゃないですか……まぁ、そんな事はどうでもいいです。貴方がその関係を破棄するというのなら、私達にも考えはありますからね――精々、これからは啓示者という重要人物ではなく奴隷として扱わせて頂きましょう。あ、他の人はもういいので消しましょう。別に価値もありませんので』
「なっ……」
『そういう訳で闇軍団の皆様。そこの男以外は海にでも放りこんでおきましょう。無論そのメダロットはメダルを取ってですよ』

それだけ言い残して、モニタはぷつんと音を立てて切れた。
残ったのは大量の闇軍団のメダロットと、それに囲まれた男達。

「もしかしてこの状況、万事休す……だったりする?」
「しちゃうしちゃう」
「やっぱかー……」

二人の男は、地味に絶望的な状況下で能天気にこそこそとそう話し合った。

《…………》

死神は只ひたすらに黙している。メダロッチの電源ボタンという大きな大きな壁が彼を殺し、親友を窮地から救うのを妨げていた。
そして、残った一人と一体は。

「おい、由愛」
「……俺は、俺は……」
「由愛!」
「!? な、何だよ」
「どうしたんだよ……さっきまでは俺を散々励ましてた癖に。しっかりしろ!」
「しっかりしろって言ったって……クソッ!」

捕まったままの宗夜とヨシノの会話を、闇軍団のメダロットは止めようとはしない。それは勝者の余裕か、それともヨシノがメダロットである事に対する憐憫か。
そんな事を疑問にする気もなさそうに、ヨシノが落ち込みだした宗夜に静かな口調で言う。

「……さっきの『親がうんたら』ってのを気にしてるのか?」
「…………俺は……」
「お前は馬鹿か!」
「……え?」

沈黙を肯定と受け取った彼が、今度は強い口調で宗夜に言った。

「あんなのは親でもなんでもない……親っていうのは、ただの世話をしてくれる人じゃないんだ! 物じゃない……自分の事を信頼してくれているっていう、心なんだよ!」
「こ、心……」
「そう、心だ!」
「……そんな、メダロットのお前に……」

何が分かるんだ――と言いかけたその口が、ピタリと止まる。

「分かる」

ヨシノの、中性的な印象を持たせるその声は真剣だった。
そして、また同時に自分の心に何一つとして疑いを持ってもいなかった。

「……」
「……フッ」

しばらく見つめ合った後に、ヨシノは何故か笑ってしまった。
その笑い声はカミュラがしていた物とはまた違う。その声に込められた感情は愉快でも嘲笑でもなく、覚悟。
そう。笑い声にも関わらず何故かソレには、覚悟の色が感じられたのだ。

「……もしそんなに疑うのなら、教えてやるよ。親の力ってのは――ピンチの時に来るもんなんだ」

その言葉と共に――船ががうん、と揺れた。

「何だ、今のは!?」
「ハッ、報告致します! この船の周りに、多数の船舶が接近中! 航空部隊を撃墜し、急激な勢いで包囲されつつあります!!」
「何!? 数は!?」
「ハッ! ……目視出来た限りでは七十余りかと……」
「!? 馬鹿な……乗っているのは!?」
「船舶の大小はありますが確認できた限りでは全てメダロットであります……そして、その……」
「何だ」
「……確認した限りでは何体か我が軍からの出奔兵もいる、との事で……」
「そ、そんな訳が……チッ、地上の人間の命令に従って仲間同士で殺し合うなど出来るか! 退け、退けェ!」

闇軍団間での騒ぎが徐々に大きくなり、やがて船を制圧していたメダロットが飛び去る。 そしてその後に残ったのは――自分達を囲む大量の船の存在だった。

「おお! 船船船……ここは海の博物館か!」
「何言ってんだお前?」
「な、何だ……何がどうなってんだ……?」

いきなりの撤退に困惑する人間達三人。
それに対しヨシノは全てを悟ったかのような態度で静かにその場に立ち上がって、船首へと移動する。
その歩き方や態度は先程とは違い雑な物ではない。節々から溢れる優雅さと機敏さ、人間で言うならば淑女にあたるであろうソレ。
その雰囲気を醸し出しながら彼女は大きく船の戦闘で手を広げ、そして言った。

「皆さん……私の為にお集まり頂き、ありがとうございます」

その声を聞き、周りを囲んでいた船舶からメダロット達が姿を現す。
その中に人間の姿は無かったが――しかし彼らは本来、様々な場所で普通の生活をするメダロット達である。
男性型がいる。女性型がいる。ライズ国で普通の人間の家族の元で暮らす者がいる。エデン国で生計を立てる者がいる。闇軍団の元兵士もいる。
様々なメダロット達が、今ここに集合しているのだ。
何の為にか――只ひたすらに、信仰の為に。

「姫様、これを……」

メダロットの内の一組が、船を接舷させパーツを手渡す。
ヨシノは頭を軽く下げながらそれを受けとり、そして装着し始める。
かちゃかちゃと音を立てるその光景は傍から見れば、一体のメダロットのパーツ装着が360度全方位から見つめられているという何とも変な物だったが――しかし、その場にいた者達は誰も目を逸らさない。
いや――逸らす事が出来ないのかもしれない。ヒロキやマサキ、宗夜もそれは同じ。
まるでそれはかつて処刑された神が、再誕する時と同じ。
ヨシノというメダロットが、この場における奇跡のようで。

「…………」

……やがて、姫を模ったパーツを装着したヨシノはくるりと宗夜達の方を振り返った。

「……」
「……」

たくさん聞きたいことはある筈なのに、宗夜は言葉を発する事ができない。
あまりにも神聖すぎたのだ。自分が声を掛ける対象としては、不相応なのではないかと錯覚してしまう程に。
だが――『今まで声を掛けてきた仲だ』という事実が彼の背中を後押し、どうにか口を開かせる。

「な、何者だったんだ、ヨシノ……お前、って……」
「……」

その言葉に姫はしばらく黙っていたが、やがて静かに言った。


「……私は『ウタヒメ』。かつて、マザーより生み出されし子、です――」



■あとがき

・凍零さんに対する嫌がらせ
・志和の頭部に対する嫌がらせ
・雪の城さんに対する嫌がらせ
・そして続きを書きにくいオチにする事によって次エデン編を書く方への嫌がらせ


「メダしらの設定本編とは違うだろうが、その辺どうすんの?」という疑問については個人的に答えを持ってますが多分雪の城さんが考えてくれますよねうへへへへ。
闇軍団の輸送船も登場させたことですし、空中帝国へ行く方法はよりどりみどりにはしました……え? 過程が適当?
また、今回の組織復讐編ではコトヒラヨシノ、宗夜辺りを主役枠に入れれるように頑張って調整しました。嘘です。調整なんかしてません完全に行き当たりばったりです。

いきなりこんなに飛ばして申し訳ないです……それでは次の方おながいします。

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.90 )
   
日時: 2013/04/08 23:35
名前:

第57話 「エアーモアが倒せない」
 
 
 
 
―戦国大陸・東地区―{ヴァン城}
 
 
 

ヴァハムート・ヴァン・ヴォーマルハウトが治める軍、ヴァン軍。その軍の本拠地、ヴァン城

「な・・何者ですかそのちっこいのは?」

城内でヴァン軍の兵士が大声を上げていた。ヴァハムートの後をくっついて浮いているモアに対して疑問に思ったのだ。

「拾った」

ヴァハムートはその質問にめんどくさそうに答えた

「拾ったって・・・そんなどこのどいつかもわからないような者を!!敵のスパイかも知れないのですよ!!!」
 
「我が決めた」
 
『ギロッ』と兵を睨みつけるヴァハムート。
 
「!!!」

兵はその目に恐怖心を覚えた

「・・し・・・失礼しました」

「フン・・・下がれ」

「っは」

そう言うと兵はその場を去った

「しかしヴァハムート様、本当にその者を我が軍に?」

まだその場にいる兵士もいる。その兵士たちは『将軍』の階級を与えられている兵士達2,3名だった。

「実に興味深いのでな・・・して・・貴様なんといったか?」

「フォーミュラーフレームナンバー4モアです」

モアは淡々と言った。

「・・・ふぉーみゅらーふれーむとは何だ?」

「はい、ではご説明します――――――――――――――――――――」


―――そして、モアはフォーミュラーフレームについて知っていた知識を全て説明した。

「・・・・・」

それを聞きながらヴァハムートは手の上にアゴを乗せていた。なんとなく不機嫌そうだった。

「・・・・・わけのわからん単語が多い・」

戦国大陸にいるヴァハムートにとっては理解できないことが多かった。

「まァ特別なメダロットだということはなんとなくわかるがな。あっち側の考えることは理解できぬ。貴様も何か特別な能力を持っているのか?」

「私は基本形では味方機の援護が主です。ですが6つの形体に変形が可能です。状況に応じて変形します」

「ほゥ・・・実に興味深い・・・6つの姿を持つか・・・」

「お見せします」

「いや、待て」

ヴァハムートは手を『バッ』とやってモアを静止した。

「今貴様の全てを知ってしまっては面白みがなくなる。戦の中で見せろ。我が号令を出すまでは変形は禁止だ」

「・・・・・オモシロミ・・・ですか?」

「そうだ」

「・・・・・オモシロミ」

モアは感情を知らない。『面白い』という概念すら知らない。だが、ヴァハムートから少しずつ感情を覚えていくのだった

「決めた。モア、貴様は戦場で常に我につけ」

「!!な!!?ヴァハムート様!!正気ですか!!?」

ヴァハムートの発言に将軍兵が驚きの声を上げる。

「このような小娘をアナタのそばに置くなど!!小娘にも危険ですし、もしこやつがスパイならアナタ自身も危ういのですぞ!!」

「・・・臆するな。モアを我の側近にすることで常に援護させる。これ以上便利なものはない。数だけで役に立たぬ雑魚よりもよっぽど役立つわ」

「・・・しかし・・・・・」

「我につくな?モアよ」

「はい」

「フゥハハハハハ・・・実に・・・実に興味深いわ!!ふぉーみゅらーふれーむ!!そしてモア!!!全てが未知満ちている!!実に興味深いわ!!フゥハハハハハ!!!」

 
 
 
―――――――――――――――――――――――――――
  
 

―空中帝国アルデヴァラン―
 
 
アルデヴァランにてギアスは佇んでいた。

「…………」

プラダとは連絡がとれず、シュラは裏切った。
そして、残ったネリスは自分の命令を聞きたがらない。
とは言え、彼女だけに仕事が集中している現状を考えると彼女の苛立ちも分からなくはない。
今、彼女は人間と一緒になって啓示者を捕獲したとの事。
勝手な行動ではあるが、これはギアスにとっても都合のいい行動だった。
しかし、いつネリスの不満が頂点に達するか分からない。
 
ギアスは早急に、あらたなる〝ギガコマンダー〟候補を見つけなくてはならなかった。
いや、〝見つける〟事自体は既に完了している。
先日訪れた男、アルバート・ゼーバッハがご丁寧に現在のFFの居場所を教えてくれた。
そして、その中でも、〝モア〟と呼ばれるものだけは感情が無く、操りやすいという説明までした。
 
あとは勧誘するだけだ。しかしそれが難しい。
 
ギアスがギガコマンダーとして、闇軍団の戦力に加えたい彼女は今……。
戦国大陸最強の男、ヴァハムートの下にいるのだから。
 
「…………システム・SHADOW、3体を戦国大陸の……ヴァン軍の城へ派遣しろ」

 
ギアスは近くにいた部下にそう言い付けると、腕を組みを地上を見下ろした。
 
 

―――――――――――――――――――――――――――
 
 

「「ヴァハムート様!! 敵襲です!!」」

 こちらはヴァハムート・ヴァン・ヴォーマルハウト率いるヴァン軍の居城。
何やら城全体があわただしい空気に包まれていた。

「……敵の数は?」

しかし、大将たるヴァハムートはその空気に飲まれることなく冷静に聞き返した。

「「そ、それが……たったの3体です!」」

兵士達があわてるのも無理もない。
戦国大陸最強の武将といわれているヴァハムートの居城にたったの3体で攻め込んだのだ。

更に兵士の報告は続き、その3体は不気味なほどに強く、すでに城門を破り門番の兵士達と戦闘中。
援軍の兵士達も駆け付けるがいまだにその勢いを止めることができないのだという。

その報告を聞き、ヴァハムートは目をギラつかせて邪悪な笑みを浮かべた。

「モア、出るぞ」

「仰せのままに」

ヴァハムートは立ち上がると城門に向けて威風堂々と歩きだした。
その後ろをプカプカと浮かびながらモアは静かについて行く。


ヴァハムート達が城門に付くころには、最初の援軍はほぼ全滅し、次の援軍が駆け付けようとしていた。

「下がれ」

ヴァハムートがそう言うと全兵士がすぐに戦いやめ、敵から遠ざかり、ヴァハムートの為に道をあけた。
戦国最強の武将は味方の兵士にすら恐れられているらしく、兵士達はおびえた目つきでヴァハムートをじっと見た。

敵は報告通り3体。
いずれもボディが黒くなっており、その目からは生気を感じない。

「ギ、ギギギィィ!!」

3体の内の一体がヴァハムートに飛びかかった。

「ふん」

ヴァハムートは2本の円錐状の剣を両手に持ちをその攻撃を防ぐ。
そうする事によって彼は、敵の強さを測っていた。
敵の攻撃力は速く、そして重かった。
なるほど、これでは自分の部下たちではかなわないだろうと納得すると、ヴァハムートは右手に持っていた方の剣を突き出す。
敵は素早く反応して、これを回避した。

しかし、次の瞬間には敵はヴァハムートが放った2撃目、左手の剣に貫かれ機能を停止した。

「この程度の実力では我はおとせぬわ。モア、残りの2体は貴様がやれ。我に実力を見せてみろ」

「仰せのままに」

 ヴァハムートがゆっくりと後ろに下がり、モアが前にでる。
モアは敵2体を、何の感情もこもっていない目で見つめた。

「索敵、敵の動きをサーチ。補助チャージ、自身の移動スピード強化」

小さな声でブツブツとつぶやいてモアは補助効果のあるパーツを使用した。
モアはメダチェンジにより様々な状況に対応できるが、もっとも得意な行動は味方のサポートである。
そのサポート技を今は自分自身にかけているのだ。

「シャギャアアァァァァ!!」

その内に敵の内の1体が射撃攻撃をモアに対して行った。
しかし、補助チャージによりスピードアップしたモアはこれを難なくかわす。

「〝敵には感情が無いと断定……〟」

また小さな声で呟くと、モアはメダチャンジを行った。

「多脚形体、アニモア」

普段、モアの回りに浮いている無数の粒子達が集まり、鎧のようにモアを包み込む。
そして、次の瞬間、モアの姿は先ほどとはまったく別のものになっていた。
浮遊型だったはずのモアに4本の足ができ、両腕と頭にもいくつか装飾が増えている。

「〝私にも感情は無い……〟」

モアは多脚型のメダロットへと変貌すると、敵の周りをグルグルと回り始めた。
敵達はモアに向けて攻撃をしたが、先ほどの補助効果によって強化されたモアにはヒットしなかった。

モアが敵に対して何もしないまま数十秒が経過した頃、突然敵の動きが止まった。

「シャギャ!?」

「トラップ成功」

モアはただグルグル回っていただけでなく、あちらこちらにトラップを仕掛けながらかく乱し、敵がかかるのを待っていたのだ。
敵はその策略どおり、トラップにかかり身動きの取れない状況になっている。

「〝私に感情は必要ない。ただ命令に従っていればいい。そう陛下がおっしゃったから……〟」

モアは自分の勝利が見えた事に対する喜びはいっさい見せず、相変わらずの無表情だった。

「飛行形体、エアーモア」

再びモアはメダチェンジを行った。
今度も先ほどとはずいぶん違う形で、飛行機のような脚部パーツになった。

「ドライブAエアーソード充填」

空へと飛びあがるとモアは急に横に回転を始めた。
徐々に回転のスピートが上がり、モアは一つの巨大な竜巻と化した。

「〝だから私には感情など存在しない、はずだった……〟」

そして、その巨大な竜巻はついに敵2体に牙をむく。
先ほどとは比べ物にならない速さでまっすぐに敵に向けた突進する。
その風圧のあまり、味方の兵士も数人よろめいていた。

「〝しかし、一つだけ感情が芽生えてしまった……〟」

竜巻が通り過ぎると、そこにはずたずたに切り裂かれた敵のすがたが。

「ギ、ガガガ!」

しかし、よほど頑丈に出来ているらしく、まだ動ける様子だった。
更に今の衝撃でトラップが外れ自由に動けるようになっている。

「索敵で敵の動きはすで把握済み。この竜巻は何回やってもよけれない」

モアは再び竜巻と化した。
それに対し、敵2体はモアに向かって攻撃を仕掛けた。

「「ギ、ギギギギィアアアアア!!!」」

「竜巻相手じゃ意味がない」

そう呟いた次の瞬間、竜巻は敵の攻撃をかき消しながら突進。
とうとう敵は完全に沈黙した。

「〝それは勇気でも喜び怒りでも憎しみでも悲しみでもない。その感情の名はヴァハムート・ヴァン・ヴォーマルハウト……〟」


パチ…パチ…パチ…

完全に機能を失った敵を踏みつけながら、ヴァハムートはモアに拍手を送った。

「なかなかの見世物だったぞ、モア」

「ありがとうございます」

その時、完全無表情だったモアの顔に、かすかに、ほんのわずかに、光が射したように見えた。
 
 
 
 


第57話 完


―――――――――――――――――――――――――――
スーパーコピペ祭り!!
ちゃっちゃと次に回したかったので……。
うん、あとモアの事もちょいちょい書きたくて。
あと、ぶっちゃけ他のところ伏線とかわけわかめで全然触れんくって。
うん、ごめんなさい

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.91 )
   
日時: 2013/04/10 21:26
名前: 雪の城


歌姫?

ヨシノからそう告げられた三人は歌って踊る女の歌手を思い浮かべる余裕もなかった。当然あのヒロキすらそんな余裕も発想もすることができず『歌姫』と名乗った元ロンガン――現愛らしい桃色のパーツを身に付けたヨシノを見る。
ヨシノの後ろには様々なパーツのメダロットが控え、遠方に居る闇軍団へ敵意を飛ばしている。

「マザーより生み出されし子ってどういう意味だ?」
「ミュウの遺伝子を受け継いだミューツーみたいなやつってことじゃね?」
「ヨシノメダロットだろ。遺伝子ねぇよ」

再び宗夜が尋ねれば小声でヒロキが言う。それにマサキが冷静に突っ込めばヒロキは口を閉ざした。ヨシノはそれを見て小さく息をつけば橋を見上げてから、後ろに居る部下へと体ごと向ける。

「突然で非常に申し訳ありませんが、お願いがあります」
「姫様の願いであればどんなものでもお請け致します!」
「ありがとうございます」

ヨシノはそれを受けてふんわりとほほ笑めば、エデンの上空を指してからその場にいるメダロット全てを見渡す。

「私は今から、闇軍団、空中要塞アルデヴァランへ攻撃をしかけます。相手国は今私達がいるエデンとも対立し、戦争を起こした大国です。苦しい戦いになることでしょう。ですが、今ここで倒さねば、無駄な争いを増やすだけになってしまいます!」
「姫様」
「私はこの世界に来て、人間とメダロットが手を取り合っている状態の国を知り、とても嬉しく思いました。その世界が私達同士によって壊されてしまうのはとても悲しいのです!皆様、力をお貸しください!」

切々と訴える言葉に跪いていたメダロット達は一斉に立ち上がれば、ヨシノの前で恭しく頭を下げる。

「姫様のお言葉、ありがたく頂戴いたしました」
「・・・っありがとうございます」

それにヨシノは一瞬体を停止させてから、勢いよくお辞儀をし、わずかに高い声で礼を言う。まるで自分の話に乗ってくれたこと自体が奇跡のように。それから頭をあげ、再び橋の方を見れば少し表情を歪め、落ち着いた声で全員に伝わるようにはっきりと話す。

「それでは、まずは橋の上の人間や同志を保護いたしましょう。すでに数名向かっているようですが、ここからでは戦況が解りかねます。仲間が傷ついているかもしれません。早急にお願いします。
あと、ここに居る人間の方々は私の仲間です。少し内内の話がしたいのですが」
「それでしたら姫様、あちらのクルーザーをお遣いくださいませ。せまくて申し訳ありませんが船内に部屋がございます」

ヨシノとの距離が一番近いメダロット――ラグナ6が、後方の大型ハウスクルーザーに向かって合わせた掌の先を向けた。ロールスターが舵を取るその船は2階建てで大きさも尋常ではない。
せまいか?とあまりの想定外に言葉を失っていると、ロールスターは船を横付けし、膝間付いて言う。

「ご安心ください。私の主の船でございますので、運転には慣れております」
「そ・・・そうですの。では、失礼させていただきます」



クルーザーに乗り込み、船の事は全てロールスターと数名の護衛に任せ、宗夜達は1階の室内に入った。
これってクルーザーだよね?と疑いたくなるような室内はまるでホテルだった。ベッドにキッチン、シャワー、洗面トイレが揃っていて何一つ不自由がない装いになっていて、全体を赤色でまとめた室内がさらに高級感をあげていた。
だが、それを見てもヒロキとマサキのテンションはあがらず、黙ってヨシノを見ている。

「とりあえず、あんたら座れよ」

さっきまでの威厳を全て捨て、依然と変わらない口調で言われれば三人はそれに従わず、立ったままヨシノに向かって怒鳴る。
だが、それは怒鳴ろうとしただけで、全員が言葉が出てこず、黙るしかなかった。

「うそじゃないぞ。おれとコトヒラがこの世界のメダロットじゃないっていうのは嘘じゃない」
「じゃあ、あいつらが勘違いしてるっていうのかよ」
「それも違う。とにかく座れって。特に宗夜。座って疲れを癒しとけよ。まだこれからなんだから」

宗夜はそれに言葉で返答はしなかったものの頷けばヨシノの言葉通り、壁際に置かれたソファに座った。ヨシノの視線でヒロキとマサキも促され、ソファの近くに椅子を持ってくればそこに座った。

「船に乗ってきたのは昔の仲間だ。この世界とは違う別の世界で一緒に戦った仲間とその同志だと思う」
「だと思うって」
「おれもこの世界に来てから知ったことだから、大体のことしか言えないのだけど。あ、ちょっと待ってろ、きっとあるはずだ」

そこまで言えばヨシノはふわふわと船内を移動し、反対側の壁にある机の本棚から一冊の本を取り出した。本にしては縦に長く、なめし革を使った装丁は美しく、気品を感じられた。だがヨシノが持ってきたその内容を見ると、三人は首を傾げタイトルを読みあげる。

「変革ノ書?」
「あれだよな。これってよ、宗教の経典だろ。国の4分の1ぐらいどっぷり浸かってる」
「恩は忘れちゃいけませんよー。とか、愛は偉大なんですよー。とか。そういった決まり文句をたらたらと書いてある偉い姫様の言葉を纏めた奴だろ」
「それがなんだっていうんだ?」

宗夜が尋ねればヨシノはその本を適当に開いてから相手へと向ける。

「ここに出てくる登場人物というか、この書の後半の主役がおれなんだ」
「は?」
「読めよ。そしたら解る。ちなみにそこに書いてあるものは少し盛ってる所はあるけれど、ほとんど全てがおれが体験してきたことだ。きっと昔の家臣が、過去の出来事を知らせたくて書いたんだろう」
「いやいやいやいや。少し盛ったぐらいで、ヨシノの言動が経典になるかよ!」
「神は常に優しいとは限らない。
と言いたい所だけど、この時のおれは寒気がするほど甘ったれた奴だったからな。道徳的観点から行けば、まさに聖女様クラスだったと思うぜ」

ヨシノが語れば再び場は静かになった。宗夜は俯き、マサキは変革ノ書を手に取ればぺらぺらとめくり内容を黙って読み始めた。
ヒロキが言う。

「けどよ。そんな自分が信仰している宗教の本の主役が出て来たからってここまで慕うか?そもそも助けにきてくれた時お前ロンガンだったじゃねーかよ」
「ああ、それが母の力なんだ。実際何も知らなかったおれは、コトヒラと一緒にメタビーのパーツで教会にも言った事があるけれど、誰にも気付かれなかった。
おれのパーツが解放されてから母がそのパーツ自体に力を与えて皆を集めたらしい。それからはこのパーツがおれへ案内役にもなったらしいな」
「なんだそりゃ。じゃあ、ヨシノのあの『ピンチの時に来るもんなんだ』っていう台詞ははったりかよ」
「まさか」

ヨシノはそこで宗夜の正面へ移動し、目の形を歪ませば笑い言う。

「母上はおれをここで死なせる方ではないという確信をおれが持っているからだ。
たとえ母であってもメダルが割られてしまっては手出しができないし、運良くただ海の中に放り投げてくれてたら母的にはラッキーなのだろうけれど、正体に気付かれて交渉の手段に使われたら母的には苦しい所だろうからな」
「なんでその確信を持てるんだ」
「決まっている。おれが母に匹敵するほど優秀だからだ」

宗夜は顔をあげた。眉間に皺を寄せ、険しい目つきでヨシノを睨みつけ低い声で問う。

「俺が優秀じゃないからこんなことになってると言いたそうだな」
「自分が優秀だと思っているのか、啓示者様」

すぐにヨシノに言い返されれば宗夜は続きの言葉を発しなかった。

「人間の一生は実に短いんだ。宗夜。奴隷にされない人生を歩める可能性が掴めただけでも、よかったと思うぜ。おれは」
「他人事を」
「自信の未熟さが招いた結果で多くの人を失うことにならなくてよかったと思え!!
おれの言葉に憤るなら、カミュラを見返してみろ!あんたという優秀な人材を奴隷として扱うと言った事を恥入るぐらいに立派な男になって見せろ!」

また嫌な沈黙が続いた。宗夜は再び視線を下に下げ何も言わず、ヒロキとマサキは黙って一人と一体を見守る。
だが、それを破る敵意に満ち溢れた声が船内に響いた。

《黙って聞いていれば!好き勝手に言いやがって!お前に宗夜の何が解るんだ》

だがそのフェイトの怒りもヨシノはさらりと流す。

「知るかよ。何も知らないな。人の過去を知る暇があるならば、今後の作戦に役立ちそうな指南書でも読んでたいぐらいなんだ。宗夜の過去を知ってそれを慮るのはフェイトの役目だろ」
《なら、逆に俺がコトヒラをぼろくそに罵ったとしても、お前は俺と同じことを言わないんだな》
「それ以前にコトヒラは宗夜とは環境が違うからな。ごくごく普通の人間だ。両親が居れば帰る先もある。ゆるやかに拘束される環境ではあったけれど、そこからきちんと旅立って自分で選んだ道を歩んで居る。宗夜とは違うさ」
《あのヘタれ野郎がか》
「コトヒラがヘタれだって?まさか!」



第58話 「ヒロインは守らないと!!」



志和達に続き最後尾に居た葉奈は突然振り返ったコトヒラにより、頭を掴まれた。そのまま床にたたきつけられるようにして伏せさせられれば、その横の空きスペースをつかって上を通り、自分を越えて運転手に銃口を突き付けた仲間を見て言葉をなくした。
ドアが閉まる。

「お前!!」

閉まるドアに驚きバスから飛び降りた河内が振り向きながらコトヒラに向かって怒鳴る。だが、コトヒラは運転手から身を離し、閉まるドアを黙って見る。
まさか、裏切ったのか。
葉奈はとっさに判断し、コトヒラに向かって掴みかかろうとするが、コトヒラは迷うことなく銃口を葉奈に向けた。

「葉奈さん、そのまま座席に座ってください」

運転席から一番近い空席を銃を持っていない手で指差す。淡々とした口調は感情を感じさせない。表情も崩れてはいない。どこにでもいそうな普通の青年だ。
――こういうやつに限って何をしでかすのかわかったもんじゃない。
葉奈は言われた通りその座席に座ればコトヒラは隣に居た男性に言う。

「そいつを逃がしたらオレはお前を撃つぜ」
「・・・」

帽子を深く被った男性は何も言う事はなかったが、葉奈の腕を掴んだ。
あの裏切り者何を考えているんだ。
葉奈は黙ってコトヒラを見ていたが、コトヒラは続いて全員に言う。

「カーテンを閉めろ!全てだ!照明は絶対につけるな」

銃を持っている相手の命令だ。全員が従い、室内が一気に暗くなる。葉奈が居る所からは外の様子が正面しか見えない。正面からは覗きこむようにして大量のメダロットが存在しているが、攻撃をしかけようとはしていない。

コトヒラは運転手に銃口を突き付けた。

「いいか。オレが降りたら、無理矢理バスを発進させろ。直線まっすぐだ」
「無っ無理だ!こんなにメダロットが居るのにバス発進できるはずが!!」
「できる!いいか絶対にアクセルから足を離すんじゃねぇぞ!少しでも遅くしてみろ、このバスにいるオレの仲間があの女をブチ殺した後に、乗客全員殺す!」
「できるなら」
「静かにした方が良い。ああいう頭の悪い男のせいで死ぬなんて真似はしたくないだろ」

葉奈がとっさに言い返そうとしたとき、葉奈の腕を掴んで居る男が小さな声で抑制する。

「いいな、少しでも遅らせるんじゃねぇぞ!」

コトヒラは出口の方へ顔を向ける。表情がわずかに歪んでいる所を見るに、シモツキの方が優勢なのだろうか。
コトヒラは運転手に銃口を向けたまま出口の方へ歩き、入口の所に立つと再び怒鳴った。

「開けろ!」

命令された通り運転手が開ければコトヒラはすぐに降り、運転手はドアを閉めればアクセルを踏み込んだ。それは全開だったのだろう。ブゥンと激しいエンジン音を吹かせたバスは驚くメダロット達を弾き飛ばし、メダロットの大群という名の障害物をものともしない何も見えない環境なのに異常な早さで先へと進んだ。


バスが止まったのはメダロットの大群が退却してからのことで、場所はビックブリッジの終着点。エデンへの入り口だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ネリス戦は他の方にお任せしたいのです!
そしてビックブリッジの終着点についているので、このまま葉奈は無事宗夜達に合流できる流れになるはずです。
葉奈たん、女の子だし、妹属性だし、あんまり危険な目にあわせたくないなぁーというアレです。葉奈たんはリレーのヒロイン!!なのに皆なんで守らないの?っていう考えもある。
ちなみにコトヒラが持ってた銃は河内さんの銃をぱくったっていうトンデモ設定のつもりです。
メダロットの体重は10kgぐらいとかほるま先生のブログで言ってたような気がしたので、きっと引きまくっても大丈夫なんだろうなぁという妄想。それにきっとネリスたん以外は弱いんだよ!という妄想。(タイヤ燃やされたらおしまいなんだぜ!)

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.92 )
   
日時: 2013/06/15 01:36
名前: ゼブラー




「てっきり裏切ったかと思ったぜ」

葉奈を乗せたバスがその場を過ぎて、周囲の闇軍団のメダ達を迎撃する河内、志和、シモツキと郷りゅうしたコトヒラ
「そうすか?」
「名演技だったな。ま、俺は気づいてたがな」
「めっちゃ怒鳴ってたじゃないですか」

「う・・うるさい!!あと銃いつとった」
「いやあ、周囲を警戒してる人って意外と目下のことに気づかないもんですね。
 あ、これ返します」

コトヒラは手に持っている銃を河内に返す



「もっとけよ。このメンツじゃお前が一番『まとも』だ。身を守る手段だ。もっとけ」

 「いや、おっかないんでいいっす」

「え」



「こんなの持ってちゃ気が気じゃないっすよ。できれば『まとも』なままでうちに帰りたいんで、ね」

「・・・」
 さっきまでの気迫はどこへやら、コトヒラは引き金を引く気なんてこれっぽっちもなかったのだ。葉奈の安全のためだったのだ
 それにしてもすごい気迫だった。正直河内はマジだと思ってたから



「お前・・・十分『まとも』じゃないな」
「やめてくださいよー」



「おいテメェら!!んなこと言ってる場合じゃねえぞ!!」
 リーゼントカットされて別人に見える志和が怒鳴る。シモツキ一機で闇軍団の兵達を相手にしているが、手を焼いている
「銃とかあんなら加勢しろ!!」
「へいへい、まあメダロットに銃器使うってのも気が進まないというか、なんというか」

 河内はコトヒラから返された銃を構え、シモツキと一緒に闇軍団を迎え撃つ






「・・・っくそ・・・なんだよアイツ・・・敵だったのかよ・・・」
 直進し続けるバスの中で葉奈は頭をかかえていた。コトヒラの裏切りにまんまとひっかかったと思っていたからだ
「あれ?・・でもなんで私だけバスに?・・そんなこと考えてる間はないか」

 バスが直進し続け、停止した。そこはビッグブリッジの終着点、エデンへの入り口だった

(ここまで来れば安全だ。エデンに入れば闇軍団も簡単に手出しできないはず・・・確かに今はだいぶボロボロだけど・・・
 NGライトやFGシャインがいるんだ。そうそうちょっかいは出せないだろう・・・)
 葉奈はエデンの入り口に来て安堵の息をつき、無茶させた運転手に声をかける

「どーも運転手さん。迷惑かけました」

「ほ・・本当ですよ!!こんなのドライバーになって初めてでしたよ!!(ちょっと楽しかったけど)」

「それから他のお客さんも、巻き込んでしまったけどもう大丈夫ですから」
 バスの乗客達にも声をかける。迷惑かけたと思い、何か言わなくてはと思ったからだ
 乗客達は安心したようにため息をついたり、隣の客と声をかけあったりしはじめた



葉奈もその様子を見て口元が緩んだ

「・・・じゃあ、私は行くかんね。もう観光ってできそうにもない感じだけどどうす―――」
 『ドガンッ!!!』



「!!?」

 葉奈の声を遮るかのようにバスに衝撃が走った
 大きな音とともに

「な!!?」



 『グオンッ!!!』とバスが浮いた
 そして、上下が逆さになって、地面に落ちる

乗客達は天井に叩きつけられる。シートベルトをしていた者は逆さまになった

「ッ!!・・・っが!!!」
葉奈も天井に全身を打ちつけた。思わず苦痛に声を上げる




(・・な・・・何が・・・)

 うっすらと目を開いた葉奈の目に映ったのは、フロントガラスの向こうにいる紅いメダロット

(・・・マジか・・・)



 『ドギャゴォンッ!!!』と、バスの床が真っ二つにされる。まるでDVDのケースのように、魚の開きのようにばっくりと開かれた
 すると周囲の状況が理解できた。周囲はすでに闇軍団の飛行型メダロットと、それを率いるネリスに包囲されていたのだ

「うん、その表情いいね。すごくびびってる。額縁に入れときたいよ。
 僕は君達を拉致るために来たって言ったな?一人だけ離脱するから何かあると思って君を狙うことにした。
 他の連中は雑魚共がなんとかするさ。まあ、君一人に僕だけでなくこんなに雑魚ひきつれてくるのもどうかと思うがね」



「・・ぐ・・・」

 悠々と話すネリスを前に葉奈は立ち上がろうとする。しかし全身に痛みが走る

「いや、無茶に動くなよ。骨とか折れてるかもしれないだろ。まあ、僕にとっちゃ知ったこっちゃないけど。
 でもさ、その顔すげームカつく。やめろ」



葉奈の『立ち向かおうとする目』を見てネリスが言う

「もう詰んでるんだよ。君。この状況。何ができる?君にメダロットはないだろ?こっちはメダロット何体いると思う?
 なのに何だその目。やめろ。僕の神経を逆なでするな」

 いくら言われても、葉奈はネリスをにらみ続けた
(確かに・・・今の私には何も手段はない・・・けど・・・なんとかなるはずだ!!・・・
 ・・・闇軍団に追われてる時に・・・あの二人が助けてくれたみたいに・・・なんとか・・・)

 葉奈に確信的な何かはなかった。それでも、きっとなんとかなる。その気持ちが葉奈を支えていた
 まるで、スーパーヒーローが来ると思っている子供のように



「・・・おいそこの雑魚」
 「はッ」
ネリスが部下の飛行型メダの一体に指示する

「お前の腕、ライフルだったよな?それであの女以外のどいつかを撃て」

 「!!!」

 『バァン!!』



「っがあ!!!」
ネリスの指示を即座に実行した部下のライフルが、バスの乗客に放たれた

「なッ!!?何を!!?」

「お前は動くな。動けば他のヤツの頭を撃つ。このまま他の人間が致命傷以外の痛みで上げる苦痛の声を聞いてろ。
 次」

 『バァン!!!』

「!!!」

「お前が『降参しました助けてください美しく偉大なネリス様どうか慈悲を』と言えばやめるのを考えてやる。
 ほら、次」

 『バァン!!』

「ぎあ!!!」

「!!!」

 次の乗客を撃つネリスの部下。葉奈以外の者を次々に撃っていく算段だ



その様子を見ながら、乗客の一人の帽子をかぶった男もどうすることもできない状況に憂いていた

(っく!!こんな時に限ってメダロッチを付けてこなかったなんて・・・『ロクショウ』がいれば何とかできるのに・・・)





「や!!やめろ!!わかった!!降参!!降参するから!!」

「次」

 『バァン!!!』

葉奈の声が聞こえないかのように指示をだすネリス

「やめろ!!やめてくれ!!え・・えーっと・・・美しく偉大なネリス様どうか慈悲を!!これでいいだろ!!」

「誠意が足りない。次」
 『バァン!!!』

「っが!!!」

「!!!やめッ!!!ああもう!!!美しく偉大なネリス様どうか慈悲を!!」

「次」
 『バァン!!」

「!!!どうか慈悲を!!!」

「次」
 『バァン!!!』

「どうか!!!」

「次」
 『バァン!!!』

「どうか慈悲をッ!!!」



「・・・うーん、やっと感情がこもったのが言えたな」

「!!!」





「でもダメだ。次」

 「!!?」
『バァン!!!』



(な・・・)

 葉奈の目から立ち向かおうとする光が消えた。どうすることもできない状況を憂いる目になっていた。
 涙があふれそうになる。自分が巻き込んでしまった人達が撃たれる様を見ていることしかできないこの状況に・・・
 さっきまでの自分は何だったんだ・・・きっとなんとかなる。誰かが助けに来る。そう思って『いられた』のに・・・
 スーパーヒーローが来るなんて、コミックの世界なのに・・・なにを考えていたんだ・・・

『バァン!!!』

 本当にヒーローがいたならば・・・きっとこの場にさっそうと現れて悪を退治してくれる・・・だけど・・・

『バァン!!!』

 ヒーローなんて・・・

『バァン!!!』





     ヒーローなんて、いない・・・






 『バサァッ』

その時だった。葉奈の眼の前に、黒い何かが現れた。
マフラーのような布のマントのようなものをなびかせるその何かの背中を見上げる葉奈の目に映ったそれは、まさしく『それ』だった
  一瞬、葉奈の頭に、ある言葉がよぎった






     第59話 「ヒーローは、いる」






 「・・・なんだ?お前・・・人間か?」

マントをなびかせる『それ』にネリスは疑問符を投げかける。
 『それ』はシルエットは人間そのもの。ぱっと見ると鍛えた大人の男性のようだが、しっかり見ると違う。
 顔も、肩も、腕も、胸も、腰も、脚も、メダロットの装甲のように機械で覆われている。サイボーグのようだった

口を聞かずに『それ』は左腕を上げ、闇軍団のメダロット達に向ける



 『ジャコンッ』

「!!」

 腕がまるでメダロットのパーツのように可動し、銃口が顔を出す
 その銃口から無数の弾丸が放たれる



『ガガガガガガガガガガ!!!』
 ネリスの部下のメダロット達を、ネリスが言っていた雑魚のように次々と破壊していく

「人間じゃないのか!!?」

 ネリスの部下達は散り散りになって迎撃しようとする
 しかし、その男は今度は右腕を上げ、また可動する。可動した部分から『バシュシュシュ!!!』とミサイルが無数に発射された
 散り散りになった闇軍団のメダロット達を追尾してミサイルは爆発する。一体につき一発。それで十分だった



「・・・すごい・・・」

 葉奈はその様子を呆然と見ていた。
 その光景は異様だった。人間がメダロットの武器を装備してメダロットを蹴散らしているようだったからだ
 それが人なのか、メダロットなのか、サイボーグなのか・・・葉奈には見当もつかなかった。
でもたぶんサイボーグが一番近いと思った 



気づけば、ネリス以外のメダロットは全機破壊されていた

「・・・やるじゃないか人間。大方自分の体を改造したんだろうが、中々のものじゃないか。僕の雑用係を片づけてくれて・・・
 それで?正義の味方のつもり?ヒーローのつもり?だっせえ。マンガの見過ぎだよ」

   「奴はどこだ」




 やっと、その男が言葉を発した

「・・・は?」



   「アルバート・ゼーバッハはどこにいる」



「・・・聞いたことのある名だが興味ない。それに僕にその口のきき方は感にさわるな。知ったこっちゃねえっての!!!」

 『グォッ!!!』
 ネリスは爪に炎を混じらせ、その男に迫りかかる



   「なら話すことはない」

 『ボアォッ!!!』

その男の全身がネリスの炎に包まれた

「僕に頭を垂れろッ!!!人間がァァァ!!!」

 『ズバァ!!!』

 炎に包まれた瞬間、爪で切り裂く




しかし、感触がなかった

(!!?)

 ネリスの炎が焼いたのは男がまとっていたマフラーのようなマントだった
 斬り裂いたのもマントだった



ネリスの側面に回ったその男は、腰に付けていたホルスターから、銃をとった

(普通の銃!!?)



 『ガァン!!!』

大口径の銃から放たれた弾丸はネリスの左目に大穴をあけた



 「ッギ!!?」

思わず普段出ないような声を上げるネリス

 「ッガァ!!?ァ!!?」



ネリスは油断していた。自分の機動力ならこの男の左腕のガトリング砲も、構えた瞬間に見定めて回避できるとふんでいた
右腕のミサイルは弾切れの可能性があったし、たとえ撃たれても回避しきる自身があった

 だが、まさか『今更』銃を取り出すとは想定外だった。しかも抜き打ちの速度がかなり速かった。
左目を撃ちぬかれたネリスは顔を押さえながら空中高く離脱した

「っこ!!!この僕の!!!僕の顔をッ!!!ッゥお!!!ゥおのれェ!!!僕の顔がァアァ!!!」

 ネリスは声を荒げながら猛スピードでその場を離れていった





「・・・なんとか・・なったのか・・・」

 葉奈はバスの乗客達の安否を気遣う。負傷者が多いが、皆意識ははっきりしていた

それから、謎の男の方へ目を向ける。
 一瞬、目が合った。その男も葉奈を見ていたのだった
その目は機械仕掛けの目で、メダロットのように発光していたが、葉奈はその目にどこか優しさを感じた



「あ・・・あの・・・」

葉奈が声をかけると男は振り返って目をそむけた

「ちょ!!ちょっと待って!!あんた何者なんだ!!その・・・ひ・・ヒーロー・・・なの?」

   「・・・・・」

 葉奈はそう言ってから、その言葉を取り消したくなった
 何をいっとるんだと自分でものすごく反省した。何でそんなことを言ったのかわからなかった
 だが・・・なぜかそう言わずにはいられなかった



その言葉に、男は答えた



   「ゴッサム。そう呼べ」





そう言い残し、謎の男ゴッサムは焼け焦げたマントを手に取り上げて羽織り、歩きだしてその場から去っていく

 その背中を見続ける葉奈は、思わず思った



(・・・ヒーローは・・・いる・・・)



つづく

◇超趣味全開回。ヒーローはいます。
ロクショウがいれば何とかできたけど、今回は何か事情があっていなかったんだよ
ネリスもまだ完全に倒してないから出番はあるぞ!!

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.93 )
   
日時: 2013/06/29 00:42
名前:

第60話 記憶を旅して ~trip to memories~


 
メダロット甲子園。
エデンでの悲惨な戦争の後に開催されたロボトル大会であったが、エデンの二の舞となる悲惨な結果を残した大会。
はたしてこの甲子園に意味はあったのか?
やる意義はあったのか?
多くの犠牲を払った代償として、少しでも救われた者はいたのか?
 
いない。
 
皆、少なからず精神に傷を負った。
嫌な記憶として永久に心に刻まれる事だろう。
しかし、その恐ろしい記憶が、メダロット甲子園を取り巻いた様々な悪意のお陰で、ある記憶を呼び起こした。 
 
 
雨月惣葉の記憶である。
 
 
それが幸せな事であるかどうかは分からないが、あの甲子園に何か意味があるとするならこれだろう。
 
 
――――雨月惣葉は心火らが言うとおり、フォーミュラー計画の研究員であった。

若くして、彼はメダロットに関する研究で賞を取り、この計画へ招待された。
というのも、ナンバー0エグゼリオの暴走によって足りなくなった研究員を補給するつもりで呼ばれたのだった。
当時の彼は他の研究者達と同様にひたすらに未知のエネルギー、フォーミュラーを研究していた。
 
いかにしてこの膨大なエネルギーを利用するか?
いかにしてエネルギーを安定させるのか?上手く制御するのか?
日夜数式と格闘を繰り広げていた彼は次第に食事を取らなくなり、部屋に篭りきりになった。
しかし、彼はそれを苦には思わなかった。
楽しかったのだ。
フォーミュラーを、そしてメダロットを研究する事が。知ることが。
 
しかし、彼の数式との格闘は意外な形で終わりを迎える。
 
「おい坊主、いい加減に休まないと風邪引くぞ?」
 
惣葉が部屋でフォーミュラーフレームナンバー3ベリアルのデータと自ら計算した数式とを見比べて唸っている時だった。
同じように白衣を着た中年の男が惣葉の机の上に丼いっぱいの白米を置く。
惣葉は別にいらない、と言おうと思ってブスっとした顔でその男の方を見る。
 
「おっと悪い、醤油かけんの忘れてたわ」
 
惣葉の不満そうな顔の解釈を間違った男は、そう言って白米に醤油をたらたらとかけ始めた。
やばいこの男、早く何とかしないと……と惣葉が頭を抱えているところに、背後から今度は女性の声が。
 
「あなた! 卵忘れてるわよ!」
 
振り返ると、その女性は生卵を格指の間に合計8つもって仁王立ちで立っていた。 
そして、どうしようもなくなって惣葉はその男女と卵かけご飯を食べるハメになった。
 
これが雨月惣葉が月島夫妻、『月島 歩』と『月島 桜』に出会った時であった。
 

2人はいつも1人で黙々と研究をしている惣葉を心配して話しかけてきたらしい。
惣葉はこのプロジェクトの中で最も若い研究者であったので、実家に残してきた息子達を思い出したらしい。 
月島夫妻と出会って以来、惣葉の研究室生活は一変した。

息子と重なるのか、月島夫妻は惣葉を息子のように可愛がった。
惣葉はそれを鬱陶しいと感じていたが、毎日のように話される息子や娘の話。
そしてどこか人をひきつけるような人柄に惣葉は次第に心を開き始めていた。
 
そんなある日である。
 
自我が不安定であったベリアルが言葉を発したのだ。
 
「ソウハ……オレノ…………マスター」
 
研究者達は驚いた。
ベリアルがマスターと言う言葉を使い、しかもこのプロジェクトで一番遅くに加わった惣葉を指名したのだ。
無論、惣葉も驚いた。しかし、それ以上に嬉しかった。
このプロジェクトで一番若くとも、一番努力してきたのは惣葉だ。
それは部屋に篭りきりで研究に没頭していたことからも分かるだろう。
それが今、ここで報われた。
「FFがマスターを求める」という研究成果、そしてそれに選ばれたという優越感があった。
 
惣葉はこれは月島夫妻のお陰だと思った。
今まで惣葉はメダロットと心を通わせたことなど無かった。
常に単なる研究対象としてしか見ていなかったからだ。
しかし、月島夫妻とのふれあいの中で惣葉はいつの間にか愛だとか友情だとかそういう数式に表せない感情を学んだ。
学んだのだと自ら分析した。
今まで不安定だったはずのベリアルが惣葉を選らんだのは、惣葉のベリアルに対する〝熱心さ〟に〝心〟が加わった結果だと思った。
 
以来、不安定だったベリアルの精神は見る見るうちに安定した。
フォーミュラープロジェクトは順調に進み、実用化の目途も立ち始めていた。
人工的なフォーミュラー、ウィネの開発もまた実用化の一歩であった。
 
しかし、悲劇は起こる。
アルバート・ゼーバッハによるフォーミュラーフレームの暴走事件だ。
 
その時、月島夫妻は惣葉の目の前で死んだ。
彼らを殺害したのはフォーミュラーフレームナンバー1ギルティ。
エグゼリオを覗く4体+1体のフォーミュラーの中でも格別精神が安定しており、よく科学者達とコミュニケーションもとっていた機体だった。
その圧倒的な力の前に、あっさりとその命を散らした月島夫妻、そして暴れまわるフォーミュラー達。
それを見て惣葉は思った。
 
このフォーミュラーの力の裏には何かとてつもない存在がある。
例えば、どこかの宗教で信じられているセフィロトのようなそんなとてつもない存在が……。
そう思った惣葉は月島夫妻の死に涙を流しながらも、他のフォーミュラー同様暴走したベリアルの下へ走った。
 
「ベリアル!!」
 
「GUUUU……」
 
惣葉の姿を見て、暴走したベリアルは少し怯んだ。
恐れずにベリアルの前に立ち、惣葉は怒ったような泣いたような声で叫ぶ。
 
「お前達は……何者だ!? どこから来た! 何が目的だ!! 真実を……フォーミュラーの真実とは何だ!!!!」
 
このとき、惣葉は心のそこからフォーミュラーを知りたいと思った。
その真実を知りたいと思った。
何故、月島夫妻が死ななくてはならなかったのか?
夫妻を殺したこの力の正体は何なのか?
惣葉の全神経はそれを知るためだけに稼動していた。
 
その瞬間……
 
 
 
 シ ュ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ … … ! ! ! ! ! 
 
 
空間が歪んだ。
何が起こったかもわからないうちに惣葉とベリアルは空間の歪みに飲み込まれ……そして記憶を失った。
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
惣葉は幼少の頃、暴走したメダロットに攻撃された。
惣葉の両親はその時そのメダロットに殺された。
惣葉の友達はメダロットの起こした事件で死んだ。
惣葉の恩師もまたメダロットに殺された。
メダロットは忌むべきものだ。
そうして惣葉はメダロットを避けて今までずっと生きてきた。
 
これもまた惣葉の記憶である。
その時の記憶を彼がよく覚えているし、目を瞑ればその情景が思い浮かび、手が震えそうになる。
  
しかし、これは嘘だ。
今の惣葉になら分かる。
 
メダロット甲子園で結社の人間とふれあい、そしてエグゼリオと会話し、取り戻した記憶と明らかに矛盾する。 
歪んだ空間に飲み込まれた後、何があったのか……実は惣葉もそこまでは覚えていない。
しかし、惣葉は思う。
何者かによって、この偽の記憶を刷り込まれてしまったのではないかと。
 
それが一体何者なのか?
エグゼリオの言うとおりセフィロトなのか?
だとするならば、惣葉はフォーミュラーを集めなければならない。
フォーミュラーの裏にいるセフィロトの真実を暴き、決着をつけなくてはならない。
 
そう考えていた惣葉にマグル職員の報告が耳に入る。
 
 
「ヴァン軍です!! ヴァン軍がこちらに向かって進軍を始めました!!!
 応戦していますが、〝次々と変形するメダロット〟に手も足も出ません!!!」
 
 
「次々と変形するメダロット!!?」
 
惣葉は大声を出して椅子から立ち上がった。
近くにいた心火も同様だ。
一歩が二人の反応を見て言う。
 
「ま、まさか……」 
 
「あぁそうだ……」
 
惣葉静かに、しかし力強く告げた。
 
 
「最後のフォーミュラーフレーム、ナンバー4モアだ……!」
 

 
 
 
  
60話 完


―――――――――――――――――――――――――――
記憶戻った癖に語られない惣葉君の記憶教える回。
というか、エデン組は「ウタヒメ」「ネリス戦」「ロクショウ忘れた人」「ヒーロー」と消化するイベントが多すぎてカオスなので手が付けられず……。
戦国だったらとりあえずヴァハ倒せばいいんじゃね?って事で触れてみました。
あとタイトル遊んだ。

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.94 )
   
日時: 2013/07/21 16:44
名前: 雪の城

「葉菜!!!」


明るい声が聞こえた。その声の方向を向けばヒロキ、マサキが走ってこちらへと向かっていた。その後ろからやや落ち込んだ表情の宗夜とそれを気遣うフェイト、あと見たことのない浮遊型の愛らしい姿のメダロットの後ろに何十体ものメダロットがいた。
フェイトまでは解るがヨシノが居ないのに(もしかしたら何十体のメダロットに埋まっているかもしれないが)いきなり数が増えたその一行に葉菜は一瞬思考が止まるも、すぐにヒロキへと駆け寄り早口で言う。


「ネリスって奴にやられた!あとコトヒラが裏切った!」
「コトヒラが?」


ヒロキが答えるより先に謎の可愛いメダロットが答える。だが誰も突っ込むことなく、全員の視線がそのメダロットに向かう。ヒロキが言う。


「どーいうことだよ」
「ヘタレじゃねぇのはわかったけどよ」
「・・・コトヒラは私の仲間です。裏切るはずがありません」


少しの間の後にそのメダロットが答える。
葉菜は首を横に振りそのメダロットへ掴みかかろうとするが、それより早くそのメダロットは後ろへと下がりそれを回避した。葉菜へ敵意を飛ばすメダロットを手だけで収め、言う。


「コトヒラは?」
「河内と志和と、シモツキも」


フェイトが続けて言えば葉菜は後ろを振り返りビックブリッジを見た。
大量のメダロットがいるそこを見てから視線を下げた。
あんな大量のメダロットがいるところから無事に逃げられるとは思えない。しかもコトヒラの裏切りだ。ヒーローはいた。でも、ヒーローはビックブリッジへは向かわなかった。助からないかもしれない。
首を横に振る。


だが暗い表情は葉菜だけで、船から来た組の表情は少しも陰ることはなく、謎のメダロットは他のメダロット達へと向く。


「お願いしてもいいですか?」
「姫の望みとあれば」
「ありがとうございます。あと、頭頂部に一本変な方向に出ている毛の黒髪の高校生ぐらいの男の人が居たら、ウタヒメが待っていると伝えてくれませんか?」
「かしこまりました。こちらへの配員は何体残しましょうか」
「フェイトが居ますし、私も戦えます。それに、あの賑やかな二人も頼りになるのですよ。あちらは大勢居ますからこちらは気にせず、全員であたってください」
「かしこまりました」


メダロット達は深く頭を下げれば一斉に橋へと向かった。葉菜はその様子を茫然と見ていたがメダロット達が移動すれば、眉間に皺を寄せ、謎のメダロットを睨みつけた。


「あんた誰だよ」
「ヨシノだよ」


謎のメダロットが答えるより先に宗夜が答える。先に言われた謎のメダロットことぶりっ子全開フルスロットル状態だったヨシノは舌打ちする。可愛い姿に舌打ちはなんていうアンバランスなんだとか考えるより先に、葉菜は首を横に振った。


「嘘だろ!」
「ほんとだよ」


今度はヨシノが答えた。さっきまでの高い少女的な声ではなく、いつものぶっきらぼうな少年の声で。だが、姿がアレだ。ロンガンで返事をすれば「ああ、ヨシノ」ってなるが、ピンク色の少女のような姿をした姫様で浮遊メダロットだ。
まさに誰?状態。
だが、ほかのメンバーは疑うことなく、葉菜へいう。


「おっさん達無視してコトヒラの心配しかしてねぇんだから、ヨシノだろ」
「おれは別にコトヒラの心配なんかしてない」
「それよりもこの現状は一体なんだ」


宗夜があたりを見回す。血を流して倒れている人にそれを救助する人。茶髪の人の良さそうな青年が帽子を目深く被った青年と何かを話しながら、指示を出している。葉菜は眉間に皺を寄せた。


「私を追ってネリスがきたんだ。それで、ほかの人たちが銃撃されて。たまたまバスの乗客に医者が居たからその人の指示で動ける人が応急処置にあたってる」
「なら、俺達も手伝わねぇと。医者さん指示くれ」


宗夜が向かえばフェイトもそこへ行こうとするが、宗夜はそれをとめてビックブリッジの内部を指差した。


「あそこから敵が流れてくるかもしれない。だから」
「ああ、わかったぜ。任せとけ」
「じゃあ、オレ達も見張りすっかな」
「あの医者も助けてる奴も数人イケメンで駆逐したくなるし」
「今医者かなり重要な局面なんだから駆逐すんなよ!」


マサキが言った言葉にヒロキが同意すれば、救護活動に戻った葉菜が勢いよく突っ込む。
ヨシノはそれを小さく息をついてから眺めれば、船へと残してきたメダロット達に救助者をライズ国に戻すように要請するため元の道へと戻った。


数十分後、止血処理やビックブリッジの内部から3人の人影とメダロットが見えた。
はっきりと姿が見れた男三人はそれぞれ怪我を負っているが、あの状況から逃げ出せただけでも奇跡というものだ。だが、裏切り者のコトヒラが志和に支えられているのが理解できない。
ヒロキとマサキ、ヨシノが四人に近づき、無事に戻ってきた彼らを迎える。


「おっさん達無事でよかったぜ」
「で、裏切り者らしいコトヒラはなんで、志和に背負われてんの?」
「あんたは馬鹿か?」


小声でヨシノが言えば、河内は苦々しく笑った。


「まさか、ヨシノとか言わないよな?」
「あれ、おっさん解るの?」
「大方はコトヒラから聞いてっからな」


志和がそれに答え、すぐ隣にいるコトヒラに視線を送る。それにコトヒラは頷くも、葉菜の姿を見てからバスの惨劇を見て表情を歪める。


「やっぱり俺は役には立たない」
「ツメが甘いんだ。だからこうなる」


それにヨシノが追い討ちをかければ、何もいえなくなったコトヒラは視線を下に下げたまま深い傷を負った足を見てため息をつく。


「すみません。葉菜さん」
「意味がわからない」


それに葉菜は即答すれば、志和は体を震わせて笑うも彼もどこか痛むのかすぐに止まった。


「お前を逃がそうとしたんだろ。気づいてやれよ」
「は?逆効果じゃん!」


葉菜のトドメにヒロキは腹を抱えた。マサキは口元を覆い俯く。成人男性二人はさらに小さくなったコトヒラへ肩を叩いて励まし、笑った。


「まぁ、そういうこともあるって」
「そういうこと」
「それで話をまとめようとするなよ」


帽子を深く被った男性が何かを言おうとするが、それよりも宗夜と共に救護活動にあたっていた黒髪の青年が立ち上がり、その場にいた全員を睨みつけいう。
整った顔立ちのその青年はコトヒラを睨みつける。


「すまない」
「お前がこの女を逃がしたせいで大勢の人が傷ついたんだ。それにお前だってそんな深い傷を負って、なにしているんだ、お前は一体!」
「ああ!?なんだてめー!」
「部外者は黙ってろ!つーかイケメンは黙ってろ!駆逐してやる!!」


襲いかかろうとするヒロキに青年は手首に巻いたメダロッチを起動させ、正面にマカイロドウスを転送する。突然現れたマカイロドウスにヒロキは驚くも構わず、青年へと特攻しようとする。それをマカイロドウスは取り押さえればマサキに向けてスラッシュバイトを向けた。
青年はコトヒラを睨みつけながら、腰に入れているシェルターから銃を抜きコトヒラの隣にいる志和へと向けようとした。だが、その青年へ帽子を被った青年が飛び込み、阻止した。


「お前は話をややこしくして、何をしようとしているんだ!」
「邪魔をしないでください!俺は櫻井に話があるんです!」
「穏便に話をしろ!」
「この環境でか!?明らかにあの一味は怪しいでしょうが!焼けたリーゼントに寂れた男性に、ヤンキー二人に、口の悪い女だ!唯一まともなのがあの男しかいない!その環境でまともに話せというんです!?俺だってお前みたいなまともそうな成人男性がいれば話そうと思ったが、あのメンバーは明らかに危ないでしょ!?」
「そういうお前も最初見たとき一緒にいるのがフードと医者な段階で浮いていたぞ!」


帽子の青年に言われ、銃を持った青年は抵抗を止め、銃をシェルターに戻した。それを黙って見ながら帽子の青年は呟く。


「親友の家に行ったら崩壊されたというし、探せばエデンにいるというし、エデンに向かえばトラブルに巻き込まれ・・・、散々だ」
「うわぁ、色々最低だなそりゃ」
「つーか家破壊とかありえねぇよな。そんなんしたらマジヤンキーじゃねぇか」
「確かにその通りだ。まだ何もしてない彼らを見た目だけでいうのはよくないと思うぞ」


ヒロキとマサキの言葉に帽子の青年は同意すれば、彼らに敵愾心を飛ばす青年へと呼びかけた。


「そうだな。だが、おれより先に人のことを見かけで呼んだのはあいつだ。けど、いきなり銃を突きつけたのは詫びる。すまなかった
おれの名前は梓李皇。ここの世界ではリオで通している。櫻井琴平の親友だ」


第61話「んなこといったって、お前誰だよ」


コトヒラの目が見開く。だが何もいわず、黙ってリオを見る。その反応を見た全員がリオに警戒を飛ばすもリオとマカイロドウスの様子は変わらず、コトヒラを見ていた。


「本当か?コトヒラ」
「いや、でも、確かに似ているし、俺の親友に梓李皇は居るけれど、肌の色も髪の色も目の色も違う」
「特殊な方法できているからな。疑うならお前の恥ずかしい内容を大声で言ってやってもいい」
「恥ずかしい内容?」


首をかしげ考えるコトヒラに対し、ヒロキとマサキのテンションが急上昇する。マカイロドウスを振り切り、リオへ詰め寄った。


「なんだよそれ!!」
「おしえろって!!」
「本人自覚していないようだから、言うが。
あいつは病的なシスコンだ。あいつは寮生活しているんだが、週4で妹と電話をし、毎日のようにメールを交わす。妹専用の着信メロディがなるといかなる状況であっても出るし、話している時の顔はありえないほどの幸せに満ちている。
一番近いものでいえば、俺とあいつは学校で花を育てているんだが、その花をフリーズドライ加工して妹へクール宅急便をお急ぎ便で送っていた」
「妹に!?」


葉菜の声が裏返る。ほかの面々は全力で引くがコトヒラの表情だけが変わらない。
彼女の質問にリオは即答した。


「妹に」


そのありえない話に河内は浮遊型なのに地面に脚部をつけ、手をついているヨシノへと問いかける。


「本当か!?ヨシノ!?」
「・・・残念ながら、リオは梓だって解るぐらい本当の話だ」
「いやいやいやいやいやいや!ネタだろ!ネタ!」
「何が面白いのか解らない。それぐらいしたっていいだろ」


コトヒラの真顔での返答に場の空気が凍りつく。リオは続けた。


「とにかくこいつはそういう奴だ。そしておれはそれを知っている。櫻井ももう俺を疑わないな?」
「ああ、それを知ってるのは家族と梓だけだ。梓とヨシノがほかの人に言うなって言ったから、誰にも言ってないしな」
「それで、櫻井。お前はそこでそんな目にあって、何をしようとしていたんだ?」


問われた琴平はヨシノを見てから首を横に振った。


「言えない。けど、もう、俺はみんなと一緒に行くのは無理だ。ここまで歩いてくるのも志和さんに手を貸してもらってなんとか行けた」
「懸命な判断だな」


それに志和と河内が頷く。志和がコトヒラを見ながら言う。


「後遺症にはならねぇだろうけど、深くやられちまってるからな。この状況でアルデヴァランに行くのは死ににいくようなもんだろ」
「あーあ、アルデヴァランに行くのに聖夜さんがいればなー。楽なのによ」
「確かにあの人なら立派な医者とか連れてヘリで行きそうなイメージあるよな」


小さく帽子を被った青年が反応した。だが何も言わずに黙って周りの状況を見る。


「あんたたちは大丈夫なのか?」


葉菜がコトヒラほどではないがボロボロの志和と河内を見て問う。河内は頷いた。


「ああ、問題ない。だが、少しいいか?」


河内は帽子の青年を見た。河内に釣られて全員が帽子の青年へ視線を向ける。


「色々助けてもらった後で悪いんだが、アルデヴァランについて何か知っているのか?」
「え?」
「さっき反応しているように見えたんだが」
「ああ、それは、親友と同じ名前を言っていたから」
「聖夜つっても、あれだぜ、金持ちの」
「ああ、親友もバカデカイ家に住んでいる超お金持ちだが・・・まさか」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

どうしたらいいのか迷った挙句、ロクショウがいない人を勝手に名前出すのは問題だよなぁと思ったので、引っ張りました。え?ほぼ名前出してるような状況?マッサカーー!!

この回でしたことはコトヒラ怪我したのでリストラします。元に戻る方法?リオがイケメンパワーでどうにかしてくれるよ。
だけなのに長くなった。

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.95 )
   
日時: 2013/08/31 22:10
名前: 凍零

「モアよ、貴様に新たな任務を伝える」
「はい、我が主。 なんなりと申し付けください」

 椅子に腰掛け、腕を組み厳しい目つきが目の前にいるモアを離そうとしない。モアもそれを知って知らずか一歩も動かず、主として仕える事となったヴァハムートの言葉を待つ。

「近頃下の方で何か企みをしている人間共を偵察兵が見かけたようでな」
「はい」
「人間など、我が軍にとっては赤子を捻るようなモノ。 しかし、知能に至っては……特に戦闘面は、時に我が軍を退く程の力量を持つのだ」

 立ち上がり、ヴァハムートはゆっくりとモアへと近付く。
 二人の間が瞬く間に狭くなる。周りにいる護衛兵達は何か何かと小さく騒ぎ立て始める。
 それでもモアは動じていなかった。周りは何を騒ぎ立てているのか、ヴァハムートは何故近付いてきているのか、モアには理由がわからない。ただ、ヴァハムートの次の言葉を待つ、それだけだった。

「そこでだ、モアよ。 肩慣らしのようなものだ、人間の軍、マグルと言ったな……そいつ等を捻じ伏せてくるのだ」
「了解しました」

 そう一言告げると、モアはすぐに行動を始める。余計な行動を取らない、というよりもモアにとってはそれが何のためであるかがわからないからだ。ただ確実に、与えられた任務を遂行する。
 それがモアが主に仕える喜びであるという感情であるということを、彼女はまだ知る由も無かった。



第62話


 
 その報告を聞いた時は、冗談にしては度が過ぎているものだった。
 一体のメダロットがマグルに攻めてきた、という報告だけは素直に受け止められた。
 しかし、その次の言葉から、マグルの長官であるフランクは耳を疑う。

「何だ、よく聞こえないぞ!? もう一度報告しろ!」
『で、ですから! 〝次々と変形するメダロット〟に手も足も出ません!!!』
「次々と変形する、メダロットだと……!?」

 いくらマグルといえど、メダロットの変形技能、メダチェンジについては熟知している。
 けれども一体のメダロットにつき一回の変形しか取れない。勿論例外としてはあるものの、それは実用化されず試作の段階で研究が凍結してしまい続けられなかったものだった。
 フランクはとにかく考えていく。ヴァン軍が作り出した新型という事も充分に有り得る。マグルは構成員が人間のみであるため、ヴァン軍にスパイを送れないという欠点があり、そうと確証を得る事が出来ない。
 他の可能性だってある。もしかしたら戦闘員たちが見た幻なのかもしれない、はたまた複数のメダロットが――あらゆる手段を思いついても、果たしてそれが本当なのか。

(まさか本当に、〝次々と変形するメダロット〟という報告が本当だとすれば……)

 強く握った拳が熱くなり、緊張と焦りから嫌な汗が掌に拡がっていく。
 そのメダロットだけで部隊が全滅される恐れがある。そうなれば抵抗手段を失い途端にヴァン軍が一斉攻撃を仕掛けられれば――マグルそのものが滅ぼされかねない。
 先程とは打って変わって打開策を出し始める。すぐに考えた打開策を部隊に知らせようと無線機に手を向け。

「失礼します」

 背後から音も無く声だけが聞こえた。それは聞き覚えのある声。
 振り返るとフランクは貴様か、というような一瞥を向ける。セミロングで戦国大陸を生き抜くには不慣れな服、そして利き腕にはマグルが最も忌み嫌うモノを取り付けている。

「何の用だ、貴様は。 今は忙しいんだ、後にしてくれ」
「その忙しい仕事を、こちらが引き受けてもいいでしょうか、という提案をしに来たのですが」
「なに?」

 予想もしてなかった発言にフランクは思わず動揺する。顔に動揺を見せないように目の前にいる者を、惣葉を睨みつける。
 対して惣葉はフランクの動揺を見抜いていた。このまま押し切れれば、意気を決して次の言葉を整えるように軽く呼吸をして。

「今マグルを襲っている〝変形するメダロット〟、貴方たちではとても仰り難いですが勝ことはできないでしょう」
「ふん……まどろっこしいことは言わなくてもいい。 それで、何が言いたい?」
「では、単刀直入に。 あのメダロットは、私達が対処します。 恐らくはあのメダロット、私達が探しているFFである可能性が高いからです。 そして、そのメダロットを相手にしている間にそちらの部隊を退避させてください、援軍は不要です」
「はっ! そういうことか。 だがどの道援軍など出す気は更々無い。 誰が忌み嫌う機械と手を組む輩と共同作戦など取れるか」

 忌み嫌う機械。その言葉にベリアルは怒りを露わにしようとしたところを寸でのところで惣葉がミュートボタンを押して難を逃れる。
 惣葉の表情が先程の言葉で少し曇る。記憶が飛んでいた時とはいえ、自信もフランクと似たような思考を持っていたことに苛立ち、そして後悔の念が押し寄せていた。
 だが今はそのような考えをする余裕はない。歯を噛み締めながらフランクと向き合う。

「では……この話は成立ということで」
「ああ、好きにするがいい。 部隊には私から言っておく……さっさと出て行け」

 言われた通りに惣葉は挨拶もせずに立ち去る。
 フランクしかいなくなったところでもう一度通信機と向き合い、無線機を取って荒々しい声で怒鳴り散らすように叫んだ。

「全軍に通達する! ただちに撤退、負傷者は一人残らず連れて帰るんだ!」



つづく


すみませんロクショウ忘れた人の方は他の方におまかせしておきます。

Re: リレー小説 メダロットRise ( No.96 )
   
日時: 2013/09/27 01:29
名前: ゼブラー

第63話 「狼 VS 機械」



マグル兵「撃てッ!!撃てェ!!」
 『ドダダダダ!!』と、人間の兵達が一体のメダロットめがけ銃を連射する。
 訓練された兵達の正確な姿勢からの銃撃。目標めがけ銃弾は確かに命中している『ハズだった』

モア「『エアーモア』。竜巻状態での行動」
 竜巻状態となったモアに銃弾など無意味だった

マグル兵「うおああああッ!!」
 『ドバォッ!!』とマグルの兵達を一掃するモア

マグル兵「おのれッ!!」
 『ドガガガガガガ!!』っと他の兵達が一斉射するも、モアは多脚タイプの『アニモア』へと変形し、地面を軽快に蹴り回避する

マグル兵「なんて変形速度だッ!!対応がおいつかん!!」
 『バッ!!』
マグル兵「!!?」
 兵の眼の前に、アニモアが影のように現れた次の瞬間、そのマグル兵の肩をモアのクモのような脚部が大きく引き裂いた
マグル兵「うぐああああッ!!」



たった一機のメダロットに、訓練された人間兵達が翻弄され、圧倒されている。
『感情』とは戦いにおいて非常に重要なものである。士気が下がると兵の力は大きく低下する。今まさに、マグル軍はその状態だった
対してモアには感情がない(たった一つを除いて)。戦においてモアのような者がどういう成果を出すか、ヴァハムートは見定めている



モア「・・・」

 『ザッ』

惣葉「・・・これはひどい・・・たった一機でこれを?・・・モア、君が一機でこれを?」
ベリアル「GRRRR・・・惣葉、気をつけろ・・・コイツ・・・『ヤバイ』」

 そこに惣葉とベリアルが到着した。周囲の負傷したマグル兵達を見て唖然とする
モア「・・・」
惣葉(・・・FFナンバーズの中でも特殊中の特殊・・・モア・・・ヘタに動くと返り討ちにされる・・・)

マグル兵「おい!!大丈夫か!?すぐに帰って手当してやるからな!!」

 まだ無事のマグル兵が負傷兵達を担ぎあげる。フランクからの『撤退命令』を聞いて、撤退を開始していた

モア「・・・追撃します」
 『ッ!!』とモアがマグル兵に襲いかかろうとする。しかし『ガッギィン!!』とベリアルがモアをくいとめた

ベリアル「っく・・・マグルとかいう連中は気にくわないが・・・見過ごせやしないんでね!!」

 『ギィ!!』とモアを突き放す

モア「・・・波長が来ている・・・あなたは『私と同じモノ』・・・でも、あのお方の命令を邪魔するのなら排除します」
 『ガッギャン!!』とモアが変形する。空中型のエアモアに変形し、とてつもない速度でベリアルを翻弄すr

ベリアル「!!・・・速い・・・『だが』!!こっちのスピードも折り紙つきだぞ!!」
 『ガオン!!』とベリアルが猛スピードでエアモアに対応する

両者の超スピード対決は、常人には目で追うコトはできなかった!!

惣葉「・・・・・ど、どうすれば・・・」





その頃・・・

一歩「えェ!?惣葉とベリアルが!?」
 惣葉とベリアルがマグル兵を救助に向かったという報を受けた一歩はびっくりぎょうてんアラホラサッサ

フランク「お前も行くのか?行くんなら装備はいるか?防弾ベストにグレネード弾に・・・」

一歩「いらねえってそんなの!!ギルド!!いく・・・・・」

 ギルティを見て一歩が声を止めた
ギルティ「・・・?・・・どうした一歩」

一歩「・・・ギルド・・・」



一歩は迷っていた。まだ自分の心にケジメがついていなかったからだ。ギルティの過去と、自分の親の過去のつながりを知って以来。
 ギルティに罪はない・・・そう思い込んでも『心のどこかでひっかかっている』

一歩「・・・お・・・俺は・・・」

ギルティ「どうした一歩!!早く行くぞ!!惣葉達を援護に!!」
 『グイ!!』とギルティが一歩の手を引っ張り、走り出す

一歩「!!・・・あ、ああ」

 機械の手に引っ張られた一歩の心は、まだ決まっていなかった





 『ギィンッ!!!』

ベリアル「っぐ!!」
 ベリアルとモアの戦いは拮抗していた・・・かに見えるが、『ベリアルが徐々に押されていた』

ベリアル(なんなんだコイツ!!・・・攻撃が・・・えらく正確だッ・・・まるで機械だ!!こいつは『機械そのものだ』!!)

 モアの攻撃は一撃一撃が精密動作で行われていた。
 ベリアルとモアの攻撃が交差する瞬間、ベリアルは『反射的に防御の体勢をとっている』。感情のある者なら当然の反応。
 眼の前に物が迫ってくると目をつぶってしまう。それと同じでベリアルは反射行動として『ほんの少しながらも防御していた』
 いくら自分が攻撃を振り切ろうと、防御などしないと考えても無意識に『歯をくいしばる』行動をしていた

だが、モアは一切それがなかった。『感情がないからだ』。『恐怖』という感情がないから反射行動をしない
ベリアルの攻撃とモアの攻撃にはそのほんの少しの『違い』があった。ミリレベルの、本当にほんの少しの違いである
その違いが、拮抗している勝負においてはその『あるかないかの少しの違い』が勝敗を決するものとなる



ベリアル「っぐ!!・・・っ・・・」
 ベリアルが蓄積されたダメージにめまいを感じはじめていた

モア「・・・私とここまで戦ったのはあなたがはじめてです」

ベリアル「そいつあどうも・・・ラァ!!」
 『ドガォン!!!』とベリアルが渾身の攻撃を繰り出す。モアはそれに完璧に対応してみせた

ベリアル(虚をついても無視かッ!!こいつ・・・精神的ゆさぶりは効果ナシか)

 互いが距離をとって構える。ベリアルは姿勢を低く構え、エアモアはまるでオブジェのように固まっていた

惣葉「・・・つ、強い・・・ベリアルですらギリギリ・・・」



ヴァハムート「遅いぞモア」

惣葉「ッ!!?」

 惣葉がやった目線の先に、戦国最強の男が立っていた。ヴァハムート・ヴァン・ヴォーマルハウト。
 なぜここに!?という考えと、ヤバイ!!という考えが同時に惣葉の脳内を駆けまわった

モア「ッ」
 『バッ!!』とヴァハムートに頭をさげるモア

ヴァハムート「頭を下げる暇があるなら、事情を説明してもらおうか。人間どもではなく、メダロットと戦っているのは何故だ?」

モア「・・・この男があなたの命令した任務の邪魔をしましたので、戦っておりました」

ヴァハムート「・・・フン・・・」

 『ザッ!!』

 ヴァハムートがモアを押しのけて前へ出た



ヴァハムート「構えろ狼。手を見せてみろ。その腕を差し出せ」



つづく

▼遅れましてすんまへん。どうするのか困ったあげく、展開考えずとりあえずこうなりました
 モアの機械的な部分は強いというイメージがあります。それではッ!!


投稿フォーム

※ 投稿時の注意

■まれに書き込みに失敗し、書き込み内容がすべて消えてしまうことがあります。
 そのため、投稿ボタンを押す前に、必ず文章をコピーしておくことをオススメします。

(※)のある項目は、必ず入力してください。

タイトル(※) スレッドをトップへソート
名前(※)
E-Mail
パスワード (あとで作品を修正する場合に必要)
作品文章(※)
投稿用キー(※) ※スパム対策を導入中です。投稿時は【かきこみ】のひらがな4文字を入力して下さい(コピペ可)

   クッキー保存 (学校や満喫等の共用パソコンの場合、チェックを外して下さい)