>> メダロットライズ にもどる

RSSフィード メダロットM(再起動)
   

日時: 2014/10/21 13:24
名前: 流離太   <leoobake@hotmail.com>

初めまして、流離太という者です。
以前から、こちらのサイト様のお噂は聞いております。
この度、原作者であるボマンさんの許可を頂き、新「メダロットM」を連載させていただくことになりました。
若輩者ですが、どうかよろしくお願いいたします。

Episode1「鷹栖斗的は静かに暮らしたい」  >>1-22
Episode2「二人揃ってツンデレンジャー」  >>23-43
Episode3「覗いてんじゃねーよクソカスがっ!」  >>44-67
Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!」  >>68-91
Episode5「真夏の夜のナイトメア」  >>92-107
Episode6「メダリンピックのススメ」  >>108-

☆☆登場人物☆☆

「鷹栖トマト(たかす・とまと)」
本編の主人公にしてヒロインな、花田学園高校1年生。
古代メダロッチをつけたせいで、どういうわけか男から女に性転換してしまった。
「自分よければ全てよし」がモットーの自己中心的な性格で、夢は「波風立たない平穏な人生を送ること」。
パートナーはカブトムシ型メダロットの「フォレス」、ナイト型メダロットの「ガマン」マーメイド型メダロットの「マイド」。

「フォレス(コーカスト)」
トマトのパートナーな♀カブトムシ。
精密な射撃を得意とするバランスのよい機体。
熱血漢で、トマトとは逆で困った人は必ず助けるというタイプ。
同じカブトムシ型メダロットの「ラスト」を宿敵として憎んでいる。

「ガマン(ナイトアーマー)」
トマトのパートナーなナイトメダロット。
堅実な守りを得意とする防御型だが、幻の左と呼ばれる「サムライセイバー」による格闘攻撃も強力。
トマトのボディーガードで、ご老体だがやる時はやる。

「マイド(ピュアマーメイド)」
トマトのパートナーな人魚メダロット。
回復を得意とする補助型で、トマトのお姉さん代わりとして家事もサポートする。
トマトが女の子になって、密かに喜んでいる。

「成城マトモ(せいじょう・まとも)」
花田学園高校1年生の男子高校生で、もう一人の主人公。
トマトを師匠と仰いでおり、現在ロボトル修行中。
この小説中唯一の良心で、なにかと気苦労が多い
パートナーは犬型メダロットの「シアック」。

「シアック(シアンドッグ)」
トマトのパートナーな犬メダロット。
射撃を得意としているが、ロボトルよりもギターを弾くことの方が好き。
なんだかんだいって、マトモのよき理解者。

「愛媛ミカン(えひめ・みかん)」
花田学園高校1年生の眼鏡っ子で、世界的な研究者「愛媛トウナス」の娘。
自身も機械オタクで、パートナーメダロットの「サラ」にも色々違法スレスレな改造をしている。
トマトとは真逆な「面白ければ全てよし」をモットーとしており、彼女の側にいるとトラブルが絶えない。
ある意味、この話の黒幕。

「サラ(セーラーマルチ)」
ミカンのパートナーな少女メダロット。
ティンペットに違法改造が施されており、男型パーツも女型パーツもつけられる特別仕様。
パートナーと同じくマニアックな知識に長けている。

「富良野ブドウ(ふらの・ぶどう)」
ロボトル世界チャンプの少年で、トマトと年は同じ。
性格はクールに見せかけて、天然。
パートナーはクワガタ型メダロットの「ルシファー」。

「青森リンゴ(あおもり・りんご)」
悪の集団「ロボロボ団」の幹部で、いつも黒いドレスを着ている少女。
ロボロボ団であることにプライドを持っており、それを傷つけたトマトを目の敵にしている。
パートナーは「マゼンタキャット」と「ヘルフェニックス」。
ロボトルスタイルは

「吹香川ザクロ(すいかがわ・ざくろ)」
悪の集団「ロボロボ団」の幹部で、いつも黒い服を着ている長身の少年。
いわゆる脳筋キャラだが、古代メダロッチで性転換するとキャピキャピ系女子へと変貌する。
パートナーは「ブラックメイル」だったが「ブロッソメイル」に進化した。

「怪盗ブルーベリー」
悪の集団「ロボロボ団」の幹部で、世界をまたにかける怪盗。
いつも仮面をつけておどけた口調で話し、その真意は誰にも計り知れない。

「メダルゴッド」
悪の集団「ロボロボ団」の首領で、その正体は謎に包まれている。

「愛媛トウナス(えひめ・とうなす)」
世界的に有名なメダロットの研究者で、ミカンの父親。
私生活もお腹周りも非常にだらしない。

「成城ニマメ(せいじょう・にまめ)」
メダロット社植物町支部支社長で、マトモの父親。
若くして出世したエリートだが、人を見下したような態度を時々とる。
シャイなため、常に顔にモザイクをかけている。

「郷野タケシ(ごうや・たけし)」
花田学園高校1年生の少年で、いわゆるいじめっ子。
生徒達からは「ジャイポン」の異称で恐れられている。
パートナーは「イエロータートル」と「メガファント」。

「晩夜ダイキ(ばんや・だいき)」
隣町に住む少年で、オリジナルメダロットブランド「スポロロボテック社」の御曹司。
卑怯な性格の持ち主で、ミカンから「陰険な策略家」と称される。
パートナーはザリガニ型メダロット「マルス(ロールスター)」。

「ラスト(ヘラクレイザー)」
異常進化を遂げた野良メダロット集団「テラーク」のリーダーで、人類を滅ぼそうとしている。
本体は♀カブトムシ型だが、スピリット体という人間形態を普段はとっている。
決して某BGMの主人公ではない。



Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(5)」 ( No.72 )
   
日時: 2013/03/18 10:13
名前: 流離太

 同時刻。とあるビルの屋上にて。

「あはは! ねぇ、早速一人行方不明になっちゃったよ? これから会場でアナウンスするのかな? 『ピンポンパンポーン! 会場へお越しの、愛媛蜜柑さ~ん。愛媛蜜柑さ~ん。お連れ様がお探しです』ってさぁ~」

 青空の下、嬉々とした声が響く。
 ロボロボ団四天王、「怪盗ブルー=ベリー」。広い縁がついた円錐の帽子に漆黒のマント、三日月のように目と口を細めた白い仮面という奇天烈な容姿は相も変わらず。

「くす、暢気よね。昨日まで命の危険に晒されていた子達とは思えないくらい」

 屋上の縁に腰を下ろし、ラストは足をぶらぶらさせながらブルーの言葉に応じる。

「……で、そろそろ聞かせてくれないかな?」

 ブルーはラストの耳元に口を寄せ、囁くような声で尋ねる。

「君を蘇らせたのが誰なのかを、さっ☆」

 ラストの表情は変わらない。相変わらず、人形のような笑みを湛えたまま。

「君が封印されていた時、確かメダルとボディーは別々に保管されていたはずなんだ♪ だから、自力で復活を遂げることはどう考えても不可能だ♪」
「くす。そのラストを復活させた誰かさんを探して、あなたはどうするつもり?」
「単なる好奇心、じゃ駄目かい?」

 張りついたような笑みを浮かべたラストと、文字通り笑顔の仮面をつけたブルー・ベリー。
 両者の間に、しばしの沈黙が流れる。

「……だんまりかい、冷たいなぁ」
「答える必要がないから答えなかっただけよ。おおよその見当はついてるんでしょ?」
「まぁね☆」

 悪戯っぽく肩をすくめるブルー・ベリーを横目に、ラストは下界に目を移す。
 せわしなく、蟻のように地面を這う人間達。
 なんてちっぽけで汚らわしく、愚かなのだろう。

「精精、今を楽しめばいいわ。間もなく、本当の宴が始まるのだから……くすくすくす」

 無邪気に、楽しげに、ラストは鈴を転がすような笑い声を発した。

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(6)」 ( No.73 )
   
日時: 2013/03/18 10:52
名前: 流離太

 一方、大雪アリーナにある会場内では。

「うぉー! こ、こ、これはっ……神型メダロット『N・G・ライト』ぉっ!」

 円筒型のガラスケースに入れられ展示されているメダロットを前に、蜜柑は歓喜の声を上げる。

「メダロット=神という信念の下、古代文明を滅ぼしたといわれる伝説のメダロットぉ~! あ~、欲しいな~。バラして研究してみたひ~」
「なぁにやってるんスか。蜜柑」

 ガラスケースに恍惚の表情で頬擦りする蜜柑の肩を、磨智が呆れ顔で叩く。
 振り向いた蜜柑は、にぱっとした笑みを口元に浮かべる。

「あ、磨智!」
「『あ、磨智!』じゃないっスよ。勝手に行動しちゃ、駄目じゃないっスか」

 口を尖らせながら、磨智は腕組みをする。
 しかし、蜜柑は全く意に介そうとしない。それどころか。

「んなことよりさぁ! 磨智もN・G・ライトここから引っ張り出すの手伝ってよ!」

 磨智の小言を「こんなこと」で済ませ、蜜柑はカラカラと笑いながら手招きする。

「あ~あ。駄目ジャンこりゃ」

 そう言ってガックリと肩を落とすシアックと知らん振りを決め込むサラの横で、磨智は大きな溜息を吐く。

 どうして蜜柑はこうも人の話を聞こうとしないのか。
 ひょっとして、自分の迫力不足に一因があるのでは、と磨智は考え始める。
 そういえば聞いたことがある。うまく叱らないと子どもは、ドンドンつけ上がっていくと。

「確かに僕ってチビだし、なめられやすいタイプだって師匠に言われたし……」

 なんてことを磨智が真剣に考え始めた、その時。

「おぅ! 蜜柑に磨智君じゃないか! 来てたのか!」

 突如、会場のざわめきを吹き飛ばしてしまうくらい大きな声が、磨智の背中に届く。
 振り向くと、すぐ後ろには、白衣を着た銀縁眼鏡の中年男が立っていた。水風船のような腹をタプンと突き出し、髪はグシャグシャの乱し放題。顔の下半分にビッシリと生やした針金のような髭と大柄な体型は、熊を連想させる。

「おお! 親父じゃーん! やっほー!」

 そう言って手を上げる蜜柑の頭を、男は節くれだった手でガシガシと撫でる。
 彼の名は「愛媛唐茄子(えひめ とうなす)」。苗字からわかるように蜜柑の父であり、メダロット社で働く研究員の一人だ。
 磨智は上半身を四十五度傾け、面接の手本になりそうな挨拶をする。

「お久しぶりっス、愛媛博士。元気そうでなによりっス」
「アッハッハ! 相変わらず礼儀正しいな、磨智君は! そういえば、今日は斗的君がいないようだが?」

 辺りをキョロキョロ見回す唐茄子に、蜜柑は事も無げに言う。

「さぁ? 迷子じゃないの?」
「「「いや、それはお前だろ」」」

 磨智、サラ、シアックの声が、見事にハモった。

「わっはっは! 相変わらずうちの蜜柑が迷惑をかけてるようですまないなぁ! ……どれ、ガムでも食べるかい?」
 唐茄子はゴソゴソとポケットを探り、板ガムの入った箱を取り出す。茶色い箱から推測するに、「コーヒー味」だろう。

「あ、すみません。それじゃあ、いただきまっス」

 そう言って、磨智が板ガムを一枚取ろうとすると、

 ―― ぱっちん

 バネ仕掛けの金属板が、ネズミ捕りのように磨智の指を挟みこむ。

「ダーッハッハッハッハ!! 引っかかった引っかかったぁっ!! ヒィーッヒッヒッヒ!!」

 途端に、唐茄子は笑い転げる。バシバシと、さもおかしげに床を叩きながら。
 そんな唐茄子を見て、磨智とシアックは、

「相変わらずだな、蜜柑の親父さん」
「うん。イタズラのレベルもパターンも変わってないね」
「それに引っ掛かるお前もお前だけどナ。いい加減に学習するジャン」
「うん。今度こそは本当のガムかもって、思ったんだ」

 非常に冷めた表情で、苦笑していた。
 そんな様子なんてお構いなく。唐茄子は両手を腰に当て、豪快に笑う。

「いや~、それにしても、さすがロボトルフェスタ! 珍しいメダロットがた~くさんあるよ! やっぱりメダロットは、保存用、観賞用、実用と三つ買うのが基本だな! わっはっは!」
「あの、蜜柑のお父さん? 仕事はいいんスか?」
「仕事……ああ、そうか。仕事に来たんだっけな、俺は」

 唐茄子は顎をポリポリと掻き、思い出すかのようにしみじみ呟いた。
 ご覧の通り、愛媛唐茄子は、とても子どもっぽい……というよりも、大人の自覚がない人物なのだ。その上、蜜柑に輪をかけたメダロット好きで、稼いだお金のほとんどを、メダロットに注ぎ込む。蜜柑の家が貧乏なのは、そのせいだったりする。
 しかし、そのような無駄遣いの犠牲を強いられている蜜柑はというと、

「おお! ボーカロイド型メダロット『ミックリーン』じゃん! 確か、両腕から溶解液を発射する攻撃『メルト』が強力なんだよねー!」
「わっはっは! 相方の『ルッカレーン』も勿論買ってあるぞ!」
「わーい! さすがはあたしの親父だよー!」

 貧乏なんてなんのその。唐茄子と抱き合い、一緒に楽しんでいる。
 まさに、この親にしてこの子あり。

「―― あ、そうだ!」

 蜜柑は両手をパチンと合わせ、声を上げる。

「ねぇ、親父? 実は、斗的のことで、ちょいと相談があるんだけど!」
「ん? なんだ相談って?」

 眼鏡をずり上げ、唐茄子は聞き返す。

「それがさぁ~」

 そう言いかけた時だった。

「愛媛博士ーっ! やぁっと見つけましたわよーっ!」

 よく通るキンキン声が、耳に飛び込んでくる。

「展示コーナーにもいないからどこに行ったのかと思いましたよぉ~」
「十一半時から甘酒新聞の取材だって、言いましたわよねっ!?」

 そう言って自分達の方に歩み寄ってくるのは、眼鏡をかけた二人の少女だった。
 一人はウェーブがかった赤茶色のロングヘアー、もう一方は紫色のツインテールという髪型。
 いずれも白衣を着ており、タイトスカートから伸びるしなやかな脚は薄く透き通ったストッキングに包まれている。

「いやー、すまんすまん! どうもお客さんの賑やかな声を聞いてると、体がジッとしていなくてな!」
「親父―、この人達はー?」
「あ、紹介するよ。こちら、研究員の『有森凛子(ありもり・りんこ)』君と『底寅黒亞(そことら・くろあ)』君だ。今日初めて会ったんだけど、若いながら優秀な研究をされているそうだ」
「へー、本当に若いね! あたしはてっきり、コスプレした女子高生かと思ったよー!」

 相変わらず蜜柑は「失礼」の二文字を知らない。
 そんな蜜柑を目にし、凛子は目が飛び出さんばかりに驚いた顔をする。

「あ、あなたは……っ!?」
「初めまして! 愛媛唐茄子の一人娘、愛媛蜜柑でっす! 好きなものはメダロット、嫌いなものは勉強! 以後、夜露死苦ぅ!」

 ビッと親指を上げ、蜜柑は自己紹介をする。

「えへへ、よろしくですよぉ♪ 黒亞ですぅ♪」

 ほんわか笑顔を返す黒亞に対し、凛子は目を逸らし、

「あ、ああ……愛媛博士の娘さんでしたのね……。元気があって、大変よろしいですわ……」

 なにやら気まずそうに顔を背ける。

 一体、どうしたというんだろう?
 初対面のはずなのに、なんだか、蜜柑のことを知っていたみたいな態度だ。

「それに……なんだろ? なんか凛子さんとは、初めて会った気がしないんスけど?」

 ギクリと肩を震わせる凛子。

「そ、そ、そんなことありませんわよっ! あなたのことなんて全然知りません!」
「そうそう♪ いわゆる、デジャヴってやつですぅ♪」
「と、とにかく!! 早く行きますわよ愛媛博士!! お客さん達がお待ちですわ!!」

 そう言って凛子は、唐茄子の襟を掴んでズンガズンガと歩き出す。

「わっはっは! ということで、俺はしばらく仕事から抜け出せそうもないや! 斗的君がどうしたかは知らないが、相談だったらロボトルフェスタが終わってから乗るぞー!」

 唐茄子はズリズリと引きずられながら、懸命に手を振る。

「うん、わかったよ親父ー! まったねー!」

 蜜柑はブンブンと手を振り、唐茄子を見送る。
 やがて、その姿が見えなくなると、

「……さーてとっ! もうすぐロボトルチャンプのトークショーが始まるし、ホールに行かないとね!」
「葡萄さんが出るんスよね? もうそんな時間っスか?」

 磨智があわててメダロッチを見ると、液晶画面は正午十五分前を告げていた。

「まさしく、光陰矢の如しだ罠~」
「なんだかものスゲェ無駄な時間を過ごした気がするジャン……」

 ホントにな。

「じゃあ、斗的とは、大雪ホール北入口前で合流ということで! らんらんる~!」
「あー、ちょっと待つっスよー!」

 鼻歌交じりに意気揚々と、蜜柑はホールに向かって突き進む。
 磨智は今度こそその姿を見失わないよう、しっかりとその手を握るのだった。

 この時、誰が予想しただろうか。
 まさか、あの凛子という研究員の正体が……あれ? もしかして、読者の皆様にはバレバレ?

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(7)」 ( No.74 )
   
日時: 2013/03/18 12:04
名前: 流離太

「ちっ。人騒がせなやつだな」

 蜜柑発見の報告を磨智の電話によって知った斗的は、呆れた表情で迷子センターのテントを顧みる。

「迷子センターにいたセレクト隊員、口では『ハハッ、それはよかったでありますね。まぁ、この人混みですので、気を付けてくださいであります』なんて言ってたけど、乾いた笑い浮かべてたな。あれ、絶対『高校生にもなって迷子になるか?』って思ってたぞ」

 斗的は帽子を深めに被って顔を隠す。
 恥ずかしいったらありゃしなかった。

「でも、よかったじゃな~い。結構早く見つかって~!」
「そうじゃそうじゃ。その上、斗的坊ちゃんの体のこと、蜜柑ちゃんのお父上に話してくれるようだしの」
「ん……まぁ、な」

 マイドとガマンの言葉を受け、斗的の顔つきが幾分か和らぐ。
 なにせ斗的は、男に戻れる方法を知るため、蜜柑の父親である唐茄子に会いたがっていたから。
 研究者であり、斗的のメダロッチを発掘した唐茄子なら、なにかわかるかもしれない。そのように考えた斗的は、蜜柑から唐茄子に話をつけてもらうよう頼んでおいたのだ。

「それで、斗的坊ちゃん。蜜柑ちゃんのお父上はどこにいらっしゃるんじゃ?」
「コピーメダルコーナーの解説担当だってさ。メダル関係の研究では第一人者らしいから。とりあえず、仕事終わったら会ってくれるらしいぞ」
「ふふ♪ 蜜柑ちゃんに感謝しないといけないわね~」

 ―― 元々あいつのせいで、こんな目に遭ってるんだけどな。

 斗的は、心の中で毒づく。
 しかし、今後機会があれば、お礼をしてやってもいいかもしれない。勿論、叶えられる範囲でだが。それ程、今は気分がいい。
 あくまでも、「戻れる『かも』?」という淡い可能性ではあるものの、斗的の足運びは自然と軽くなる。

「それで、どこで待ち合わせなの?」
「ああ、大雪ホール北入口前だってさ。なんか、葡萄の野郎がトークショーやるらしいから――」

 そこまで言うと、斗的は足を止める。

「どうしたんじゃ? 斗的坊ちゃん」
「いや、その……」

 斗的はバツが悪そうに口ごもる。

「もしかして斗的ちゃん、葡萄ちゃんに苦手意識持ってるんじゃなぁい? ほら、間違って斗的ちゃんの裸見ちゃったり、私のこと機能停止に追い込んだから~。気持ちはわかるけど、前者は過失だし、後者なんてロボトルに付き物だから、葡萄ちゃんのこと恨んだら駄目よぉ~?」

 さすがマイドだ。
 斗的の考えていることなんて、お見通しらしい。

「うん……わかってるよ」

 そうだ。
 マイドの言う通り。あの時はマイドが思ってもみないやられ方をしたせいでカッとなったが、ロボトルはスポーツ。味方メダロットが機能停止させられた云々で相手を恨むのは、筋違いもいいところ。

 ――まぁ、風呂を覗かれた恨みは、いつか晴らしてやるつもりだけど。

 けど、微妙に違う。
 確かに葡萄のことを考えてはいたが、そんなことじゃない。
 自分の頭に浮かんでいたのは、ロボロボ団のメダロットを一掃した、ロボトルチャンプとしての姿。

 『……弱いな。俺を追跡してきた時の度胸は、どこへいったものやら』
 『どうする? どうしても今、鷹栖斗的と戦いたいなら、代わりに俺が相手してもいいんだぞ?』

 ロボトルフェスタの雰囲気のせいで忘れかけてた思いが、水に墨をたらしたかのように、じわり、じわりと広がっていく。驚き、悔しさ。そのいずれにも勝っていた感情が、戦慄だった。
 昨日ほど、力の差というものを感じた日は、なかった。運よく、葡萄は、自分の生活を脅かす「敵」ではなかったが、同じ、もしくはそれ以上の力を持った「敵」が現れないとは限らない。
 そして、今挙げた条件に当てはまりそうな候補といえば、

「……ラスト」

 フォレスの話によれば、やつの目的は「人間を滅ぼすこと」だという。
 そんな物騒な相手とはなるべく、いや、絶対に出くわしたくなんてない。
 しかし、もし、戦うことになったとしたら?
 果たして斗的は、大切なものを守りきることができるのだろうか?
 もともと喧嘩が弱い上に、性転換し、さらに非力になった自分に。

 目を開けるのが辛くなるほど明るい太陽の下。
 黒雲が、斗的の心をゆっくりと包んでいった。

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(8)」 ( No.75 )
   
日時: 2013/03/18 13:50
名前: 流離太

 ロボトルフェスタ会場である「大雪アリーナ」の中央に位置する、ホール。そこは、集まった観客から発せられる熱気が、蒸し風呂のように篭っていた。
 それもそのはず。黒いカーテンで窓を覆っている上に、まるで押し寿司のように人が詰め込まれている。いくら冷房がかかっているとはいえ、これではてんで意味がない。

「うわぁあああああんんっ!! やだやだぁあああああっっ!! ミストラル買ってよぉおおおおっっ!!」
「駄目だってばっ!! こないだもメダロット買ったばかりでしょっ!? 第一、あんな高いもの買えないわよっ!!」
「やだぁああっ!! ここと宇宙ステーションのクラスターでしか売ってないんだから、買って買って買ってよぉおおおおおっっ!!!」

 スキンヘッドで髭面の男がダンダンと飛び跳ね、妻らしき女性に駄々をこねている。
 やがて、その声が聞こえなくなった頃、ホールの扉が閉め切られ、会場は真っ暗になる。ザワザワとしたどよめきも消え、観客達は闇の中で一体となる。

「みなさーん! おまたせしましたー!」

 可愛らしい少女の声がシンとしたホールいっぱいに響き、白々としたスポットライトが真ん中にあるステージへ灯る。
 その華やかな灯りの中心にいるのは、マイクをちっちゃな両手で支えている一体のメダロットだ。全長は一メートルほど。真っ白なエプロンドレスを着た天使のような女の子を髣髴とさせるデザインで、頭の上にチョコンと付いた猫耳がなんとも愛らしい。

「本日は、ようこそロボトルフェスタへー! 司会を務めちゃうのは、サイキョーのアイドルメダロット『こりり』でーす! ドジで未熟者なあたしですが、いっしょけんめーガンバリますので、よろしくお願いしまーす!」

 ペコリとおじぎをして、こりりは続ける。

「まずは、メダロット社植物町支社支社長さんから、会場のみなさんへご挨拶があるそうでーす! どうか、盛大でサイキョーの拍手を社長さんにプレゼントしてくださいでーす! それでは、『成城似豆(せいじょう にまめ)』さん、どうぞー!」

 ホールの西側にあるスタッフ用入口にライトが当てられ、雹が降り注いだような拍手が客席に溢れる。
 それに混じって、前の席に座っている男のひそひそ話が、斗的の耳に自然と入ってくる。

「植物町のメダロット社で一番偉い人、かぁ。会ったことないけど、どんな人なんだろうな?」
「なにせ、この町一番の稼ぎ頭だもんな! ほら、植物商店街からちょっと離れた所にでっかい屋敷があるだろ? あそこが支社長の家らしいぞ?」
「えー!? あの城みたいな赤レンガ造りの!? 俺はてっきり、なんかの公共施設かと……」

 ―― 金持ち、ねぇ。

 話を聞きながら、斗的は欠伸をひとつする。

 正直、メダロット社のお偉いさんがどんな人物であろうと、斗的には関係ない。
 したがって、まったく興味も沸かない。

 そんなことを考えていると、入口の扉を開け、一人の中年男が入ってくる。
 臙脂色のスーツに身を包み、双葉のような髪形をした噂の男「成城似豆」。二メートル近くある身長と筋肉質な体の持ち主で、その顔には―― モザイクがかかっていた。

「―― って、なんで顔隠してるんだよ!?」

 いの一番に斗的はツッコむ。勿論、目立たないよう、極力抑えた声で。
「あ~、それはね――」

 蜜柑が説明をしようとした声を遮り、似豆の野太い挨拶が会場に木霊する。

「え~、みなみなさま! よくぞ、ロボトルフェスタ二○××へ来ていただきました! ……えー、皆様には失礼だと思いますが、私はとてもシャイなもので、こうしてモザイクをかけさせてもらっている次第で」

 シャイにもほどがあるわ。

「よっぽどマズイ顔なのか?」
「んなことないっスよ。そこら辺にいる普通のおじさんって感じっス」
「うんうん! ああいう顔の人がそこらへん歩いてるかどうかはともかくとして、作者の一京倍はかっちょいいよ!」

 蜜柑は磨智に同意し、作者の悪口を平然とのたまう(覚えてろよ?)。

「あれ? お前ら、ここの支社長の顔見たこと――」

 斗的は「あるの?」と言いかけ、ピタリと言葉を止める。

 待てよ?
 確か、似豆の苗字は「成城」だった。
 んでもって、磨智の苗字も「成城」。
 と、いうことは――

「あのさぁ、磨智。もしかして、お前とあそこで喋ってる支社長って……?」

 磨智ははにかんだようにうつむき、答える。

「はい……―― 親子っス」
「ッ!?」

 あまりの衝撃的事実に、斗的は言葉も出ない。

「あれ、言ってなかったっけ? 磨智はここの支社長の一人息子で、金持ちのボンボンなんだよー?」

 いや。初耳なんだけど。

「まぁ、斗的の旦那が知らないのも無理ねェジャン。磨智、このことあんまり話したがらねェから」

 シアックが補足するのを聞き、斗的は腕組みする。

 まさか、あの地味な磨智が金持ちの息子だったなんて。
 人は見かけによらないとは、よく言ったもの。

 やがて挨拶は終わり、似豆はステージから退く。
 挨拶の内容はいたって普通で、意外と常識人なのかもしれない。顔にモザイクがかかっている以外は。

「それではみなさんお待ちかね! いよいよ、今回の主役が入場です!」

 こりりの声で、会場は一斉に沸き立つ。
 そりゃそうだ。この会場に集まったほとんどの人が、「やつ」の登場を、今か今かと心待ちにしていたのだから。

「いくつもの世界大会を制してきた、ディフェンディングチャンピオン!! 『富良野葡萄さん』でーす!!」

 サバイバーの「アイオブザタイガー」をBGMに、ステージの一角にスポットライトが灯る。

 瞬間。
 会場からは、先程以上に高らかな声が上がる。
 歓喜の声ではない。そう、言うならば……悲鳴。

「み、見ちゃ駄目ぇっ! 特に蜜柑ちゃんはぁっ!」
「え、なになに? なにがどしたの?」

 マイドは咄嗟に蜜柑の両目を覆う。
 蜜柑はなにが起きたのかわからず、頭をしきりに動かそうとしている。
 そんなやり取りが繰り広げられている横で、磨智は目を皿のようにし、顎がはずれるんじゃないかってくらい、口を開け放っている。それは、斗的も同じ。

「なにやってんだ、あの馬鹿……」

 突然のことで一瞬わけがわからなかったが、次第に理解する。
 スポットライトに照らし出されていたのは、悠然と立つ葡萄だった。その涼しげな瞳、頭に巻いた紫のヘアバンド、耳にかかる程の黒髪は、いつもとなんら変わらない。ただ一つ、

 ―― パンツ一丁なところを除けば。

「ちょっ、ちょっと葡萄さんッ!? なにやってるんですかッ!!」

 急ぎ、河童のような顔をしたスタッフ達がステージ上に駆け上がる。
 葡萄は眉一つ動かさず、すまし顔で答える。

「すまんな。さっきまでトイレに行っていたから、服を着る暇がなかった」
「いやっ、なんでトイレで服脱ぐんですか!? ついでに体でも洗ってるのッ!?」
「昔から全部脱がないと用を足せないのだ。……まぁ、心配するな。大した問題ではない。大をしてきただけにな」

 不適な表情で、葡萄は言ってのける。その表情は、なにかをやり終えた漢の顔だった。

「うまいこと言わなくていいからっ!! とりあえずさっさと服を着てくださいよ頼むからッ!!」

 スタッフの必死な声がステージに木霊し、舞台は暗転する。辺りには、突然のことで沸き立っている観客のざわめきだけが、響いている。
 唖然としている斗的一同の口火を切ったのは、苦笑を含んだシアックだった。

「……葡萄の旦那、またやらかしたな」

 斗的は腕組みし、げんなりした表情で頷く。

「ああ。あいつ、ただの覗き野郎じゃなかったな。露出出歯亀野郎だ」
「ぶ、葡萄さんはそんな人じゃっ!! ……ないと思いたいっス」

 葡萄を擁護しようとする磨智の言葉もどこか弱々しく。

「ねぇ、なにがあったの? ねぇ~、暗くてなんも見えないよう!」

 ただ蜜柑だけが、場違いなくらい明るい声を発していた。

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(9)」 ( No.76 )
   
日時: 2013/03/18 16:16
名前: 流離太

 皆が様々なリアクションを見せる中、一人だけこの状況についていけない者がいた。

「一体なにを騒いでいるんだ?」

 古の眠りから目覚めた「ザ・世間知らず」ことフォレスだ。

「くす。正直、場違いだと思ってるでしょ?」
「ああ。この集まりが未だになにを目的にしているのかわからな」

 フォレスは、そこで言葉を止める。
 いや、詰まらせたと言った方が正しいか。

「ええ、その通り。あなたはこの時代には、似つかわしくない存在……異分子なのよ」

 フォレスの隣に座っている少女は、落ち着き払った様子で微笑を浮かべていた。

 腰まである黒髪を彩る、メダル型の髪飾り。
 袖の部分にフリルがあしらわれた、袖の広いブラウス。
 袴を思わせる、ブリーツ状のスカート。

 忘れもしない、仇敵。

「―― ラストぉおおおおッ!!」

 フォレスはありったけの弾丸をラストに向かって放つ。
 が、ラストは髪をかき上げる仕草と共に、弾丸を払いのける。
 逸れた弾丸は、近くのシートや床を抉った。

「許さんッ!! 貴様だけは絶対にッ!!」

 周囲にいた客達から悲鳴と絶叫が次々に上がり、我先にと出口へと殺到する。

「おまっ!? なにやってんだよ馬鹿フォレス!?」

 慌ててガマンとシアックがフォレスを羽交い締めにするが、我を忘れ、なおも銃を乱射しようとする。

「くっ、離せ! そこにラストがいるんだ! あいつを逃がすわけには」
「ちぇすとぉ!」

 蜜柑は手刀を繰り出し、見事に頭パーツへとヒットさせる。

「あ」

 フォレスはぐらりと倒れる。
 ダメージポイントは百パーセント。蜜柑の一撃は、十分機能停止する威力だった模様。

「とりあえず静かにさせてみたよ!」
「お前、本当に人間?」

 自慢の手刀を嬉々として自慢する蜜柑と、引いたような目線を送る斗的。

「くすくす」

 そのすぐ背後で、ラストは嘲るように笑っていた。スカートを黒い花弁のように広げ、逃げ惑う観客と共に会場を出て行く。

「待、て……」

 手を伸ばそうとするが、フォレスはそこで力尽きた。カメラアイのランプが消灯し、機能停止する。
 あとには、喧騒に包まれた会場があるだけ。

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(10)」 ( No.77 )
   
日時: 2013/03/18 16:18
名前: 流離太

 その後、誰もいなくなったホールにて。

「「すんまっせんっ!! 本当にすみませんでしたっ!!」」

 ぺこぺこと頭を下げ、斗的と磨智は平謝りする。

「まったく。幸い怪我人が出てなかったからいいものの」
「いや、本当に仰る通りで」

 謝りながら、斗的はフォレスの肩をぐいっと自分の側へ引き寄せる。

「ほら、フォレス!! お前も謝るんだよ!!」
「し、しかし……」

 ――あの時は、ラストが。

「しかしもカカシもないっての!!」
「と、斗的ちゃん……あんまり怒ったら、フォレスちゃんが可哀相よ」
「悪いけど、今回ばかりは譲れないな。人に迷惑をかけたら謝るのが、鷹栖家のルールだ」

 ――……迷惑、か。

「……すまなかった」
「よーしよし、よくできたな」

 頭部に突き出た砲門を撫でる斗的と、うつむくフォレス。
 その二人を一瞥し、似豆は溜息を吐いた。

「磨智。私も忙しくて、父親らしいことはなにもできなかったが、これだけは言っておく……友人は選べよ?」
「……はい」

 決まりが悪そうにうつむき、磨智は返事をする。

「君らももう高校生なんだから、常識を持って行動してほしいな。常識を」
「はい、もう仰る通りで」
「そんな存在自体が十八禁みたいな面したあんたに常識を説かれたくは――もがっ!?」
「はーっはっは! いやいやまったく、似豆社長の仰る通りで!」

 珍しくマトモなツッコミを繰り出す蜜柑の口を塞ぎ、斗的は誤魔化すように高笑いする。
 その姿をじっと見つめるフォレスの頭の中には、先程ラストに言われた台詞が渦巻いていた。

 ――この時代には似つかわしくない存在。
 ――ただ迷惑なだけの異分子。

 ようやく理解した。
 フォレスと斗的がパートナーになったのは、間違いであったことを。

『俺は平穏に生きるんだ』

 鷹栖斗的が度々口にしていた、平穏な生活。
 ラストとの戦いに身を投じるフォレスとは、縁遠い世界。
 今までにそこから生じる価値観の差によって、随分と振り回されてきたが、

「どうやら……振り回していたのは、私の方だったようだ」

 未だ騒いでいる斗的らに、そっと背を向けるフォレス。
 こうして、一度交わった斗的とフォレスの道は、再び二つに分かれた。

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(11)」 ( No.78 )
   
日時: 2014/10/21 11:28
名前: 流離太

 一方その頃、凛子と黒亞に連れられた唐茄子は。

「あれ? こんなところで取材するの?」

 そこは、アリーナの端にある倉庫であった。窓がないため薄暗く、無造作に積み上げられたダンボール群は埃をかぶって薄灰色に染まっている。

「で、取材の人は? 大分待たせてるから、怒ってるだろうなぁ~」

 のんびりとした様子で、ボリボリとシャツからはみ出した出っ腹をかく唐茄子。
 その耳に、

「いねぇよ、そんなやつ」

 若い男の声が飛び込んできた。

「ひょ?」

 次の瞬間。

 ――殴り飛ばされる、唐茄子の巨体。

「べほいみッ!!?」

 ドンガラガッシャーンという音と共に、ダンボールの山の中に突っ込む唐茄子。まるで、ストライクを出したボーリング玉のよう。

「なっ、なっ、なっ!?」

 割れた眼鏡の奥で、唐茄子は目を白黒させる。
 コンクリートの床にぶつけたためか、頭がくらくらする。
 一体、なにが起きたというのか。

「ヒッヒッヒ」

 入り口の前に、逆光を受けた二つの影が立っている。
 一人は凛子で、もう一人は少年。年は高校生くらいだろうか。ひょろりと背が高く、上から下まで黒ずくめにサングラスといった格好はチンピラのよう。

「な、なんだ君は!? り、凛子君、これは一体どういうことだ!?」
「あれれェ~? ひょっとして、まーだこの状況が読めてないのかァ~?」

 少年は転がっている唐茄子の胸倉を掴み、ぐぐいっと持ち上げた。

「ぐっ、がっ……」
「ロボロボ団四天王が一人、石榴様がお前を攫いに来てやったぜェ! 感謝するんだなァ!」
「えっ、攫いにって……俺をお嫁に貰いに?」
「んなわけねェだろィ!! 頬を染めんじゃねーよッ、ばーかばーか!!」
「あいたたたっ。痛いっ、肉と服が挟まって痛い痛いっ」
「石榴……ほどほどにしてくださいまし」

 少年――石榴の後ろで、呆れ顔の凛子は白衣を脱ぎ捨て、漆黒のドレスを身に纏う。二つに束ねられた赤毛は、くるくるのツインドリルになる。
 対し、石榴は白い歯を見せ、不敵に笑う。

「……おっと、そうだったなァ! 危うくこいつを再起不能にしちまって、首領に大目玉食らうところだったぜェ!」

 まぁ、所詮唐茄子など、前菜にすぎないのだが。
 この作戦のメインディッシュは、林檎をコケにしたメダロッター……鷹栖斗的。
 唐茄子は、それを誘い出すための餌。

「―― さぁ、楽しい楽しいゲームのスタートだァ! ヒャーッハッハッハッハァ!」

 人気のない倉庫に、石榴の狂気に満ちた高笑いが響き渡った。

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(12)」 ( No.79 )
   
日時: 2013/05/31 00:24
名前: 流離太

「あれ? フォレスのやつ、どこ行った?」

 辺りを見回す斗的。
 ポップコーンや紙コップが散乱した広いアリーナの中、真紅のボディーを輝かせたフォレスの姿は、どこにも見当たらなかった。

「トイレかしらぁ?」
「んなわけないだろ」

 恐らく、迷子になってしまったのだろう。

「まったく、迷子とか勘弁してほしいかな~! 探す方の身にもなってよ!」
「うん、さっき迷子になったお前が言うな」

 けれども蜜柑の言う通り。
 まったく人騒がせなやつだと、斗的は内心毒づく。

「仕方ねぇ……探しにいくか」
「そういうことなら俺も協力しよう」
「うぉ!?」

 いつの間に生えてきたのか、斗的のすぐ隣には葡萄が立っていた。きちんと、トレードマークの黒いコートも着ている。

「え、いいんスか? 葡萄さん、多忙なんじゃ?」
「大したことはない。お前らのお陰で俺がやるはずだった模擬ロボトルが中止になって、今日一日フリーになった」
「す、すみませんでした……」
「なに、お前らのせいだが気にするな。お前らのせいだがな」

 すまし顔で斗的らの心を抉る葡萄であった。ザクザクと、斗的の精神が耕されていく。

「じゃ、じゃあ、二手に分かれて探しましょう! 葡萄さんと僕チーム、そして、蜜柑と師匠チームって感じに!」
「えっ!? 俺が蜜柑とぉ!?」

 なんという嫌すぎる配役。
 まさか、面倒な蜜柑のお守りを押し付けられるとは。

「磨智……なんて自分勝手なやつなんだっ」
「違うジャン、斗的の旦那」

 シアックが、そっと斗的に耳打ちする。

「磨智のやつは、旦那が葡萄の旦那と組まないよう配慮したジャン」
「それなら、葡萄と蜜柑を組ませりゃ」

 そこまで言いかけ、斗的は理解する。

「……なるほど、そういうことか」

 葡萄と蜜柑という地雷コンビを組ませて探索なんかやらせたら、どんな迷惑を引き起こすかわからない。この二人を共に行動させることは、まさに二つの核爆弾を同時発射する行為に等しいだろう。

「蜜柑は引き受けた。ということで、葡萄はそっちに任せたぞ」
「合点承知ジャン」

 話はまとまった。
 かくして、フォレス捜索隊が結成されるのであった。

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(13)」 ( No.80 )
   
日時: 2014/10/21 11:31
名前: 流離太

 一方、当のフォレスはというと。

「……どこだここは」

 飛び出したはいいものの、どこに行けばいいのかわからず、途方に暮れていた。
 やはり、考え無しの行動は失敗の元である。

「ん?」

 そんな時だった。
 行きかう人々の喧騒に混じり、声が聞こえた。

「や、やらぁ……ひ、ひぅぅ」

 それは低い、擦れたような声。
 ふと開いた、バラック小屋のような倉庫の隙間から漏れ出ている。

「ほらほらぁ、いい声でなきやがれよォ! ヒャーッハッハッハ!」

 また聞こえた。今度は、少年の笑い声。
 僅かに開いたアルミ製の扉に手をかけ、中を覗き見る。

「ッ!?」

 そこにいたのは、

 ―― 全裸で柱に縛られ、腋を羽根でこちょこちょされている唐茄子だった。

「あ、らめぇ、これ以上はらめぇええ!!」
「叫べ叫べェ! お前の悲鳴が、この宴に華を添えるんだァ!」
「なんだかなぁ……」

 唐茄子は肉づきのいい腹をぶるんぶるん震わせ、いやいやと首を振る。その毛深い肌からは汗がにじみ、身体を這うように、ぬったりと落ちていく
 その様を前に、高笑いと共にテンションを上げる長身の少年。
 げんなりとした表情を浮かべている赤いドレスの少女。
 倉庫内は、息が詰まるような臭いで満ち満ちていた。

「そこまでだッ!!」
「ひょ?」

 こんな光景が目の前で繰り広げられれば、正義感の塊であるフォレスが黙っているはずない。
 フォレスは颯爽と飛び出し、両拳を握り締めて屹立している。

「ヒヒッ。蜜におびき出されてクソ虫がやって来た」
「けれど、鷹栖斗的がいませんわよ?」

 二人の言葉に、フォレスの指がぴくりと震える。
 しかし。

「必要ない」

 薄闇の中、燦然と輝くエメラルドグリーンの双眸。

「二人まとめてかかってこい」

 その真っ直ぐな光こそ、フォレスの意志。
 一人で戦うと決めた、フォレスの決意。

「クックック……いい度胸だ」

 少年は広げた手の平で目頭を押さえ、口元に溢れんばかりの笑みをたたえる。
 その醜悪な笑顔の裏にあるのは、歓喜。獲物をいたぶり弄ぶ、残忍な狩人が浮かべる色。

「遊んでやるよォ!! このロボロボ団四天王が一人、吹香川柘榴様がなァ!!」

Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!(14)」 ( No.81 )
   
日時: 2013/05/30 23:53
名前: 流離太

「ねえねえ、あれって富良野葡萄じゃない?」
「ほんとだー! 暑苦しそうなコート!」

 ロボトルフェスタ南会場を探索していた磨智と葡萄は、周囲の注目を集めていた。
 チキンハートを持つ小市民の磨智はやり辛そうにうつむき、苦笑いを浮かべる。

「い、いやぁ……これだけ視線を浴びるというのも大変っスねぇ」

 気を紛らわすため、葡萄に話しかける磨智。
 しかし、葡萄はそっけない。

「別に」

 クールに、眉一つ動かさず答弁する。

「いや~、さすがは富良野葡萄さん。最強メダロッターともなると、こんな状況には慣れっこスか」
「別に」
「そういえば、葡萄さんが一番好きなメダロットの型式ってなんスか? やっぱりクワガタ型?」
「別に」
「なんか葡萄さんって一人っ子ぽいっスよね~」
「兄弟どころか、両親もいないがな」

 駄目だ、会話が弾まない。まるで、どこかの高慢ちきな女優と話しているようだ。
 葡萄と一緒に歩いているという緊張状態が続いている上、このような会話の一方通行はかなり精神に来る。
 でも。

「やっぱりかっこいいっスよね。葡萄さんって」

 我が道を行くというか、何もかもが眼中にないというこの態度が。
 まるで、強者の証のようなその雰囲気が。

「僕、メダロットが大好きなんスよ。だから、斗的師匠に弟子入りして、強くなろうと……」

 けれど、昨日の斗的や葡萄の戦いを見ていると、自信がなくなってくる。
 他の追随を許さない、孤高の実力。
 彼らとは、まるで次元が違いすぎる。

「だけど、少しでも知りたいって……少しでも、葡萄さんに追いつきた」
「見つけたぞ、富良野葡萄!!」
「って、誰っスか!? 人の話をさえぎるのは!?」

 突如二人の前に立ちふさがったのは、サングラスをかけた磨智と同い年くらいの少年だった。胸元が開いたネイビーブルーの学ランは、隣町にある「銀嶺高校」の指定制服だ。

「僕の名前は『山川大樹(やまかわ・だいき)』!!」
「や、山川大樹だって!?」

 磨智の叫び声を封切に、周囲からどよめきが起こる。
 山川大樹とは、最近巷を騒がせているメダロッターの名前だ。なんでも、道行く上級メダロッターへ突然ロボトルを吹っかけてくる、通り魔のようなやつだとか。

「こうしてお前と接触できる機会を、虎視眈々と伺っていた。富良野葡萄を倒せば、僕の名前は更に知れ渡るからな」
「つまり、挑戦者ってことっスか!?」
「Exactry!!(その通りでございます)」

 なんて肝の太いやつだろう。まさか、白昼堂々、よりにもよって世界チャンピオンである富良野葡萄に挑戦状を叩きつけてくるとは。
 態度こそ自信満々だが、果たしてその実力は。

「少年よ」

 しかし、大樹などアウトオブ眼中といった様子で、葡萄はおもむろに口を開く。
 切れ長の、黒水晶のような瞳。そこに映っていたのは、

「へ? 僕っスか?」

 突然視線を向けられた磨智は、目をぱちくりさせる。
 今まで磨智が話しかけたことはあっても、葡萄から話しかけてくることはなかったので、面食らってしまう。

「先程強くなりたいと言っていたが、強さとはなんだと思う?」
「え」

 そんな、急に聞かれても……困ってしまう。
 葡萄はそんな磨智など意に介さず、言葉を続ける。

「ただ一つの理想を貫くための刃。決して誰にも至ることのできない孤高の力。俺が求める強さは、実にシンプルだ」
「ごちゃごちゃうるさいんだよ。ロボトルじゃなくて、口喧嘩でもしたいのかい?」

 ぺっと地面に唾を吐き、大樹は三体のメダロットを転送する。
 そのうち二体は、オレンジ色をしたカブトムシ型メダロットと、スカイブルーのクワガタ型メダロット。同じモチーフを扱っていることでフォレスやルシファーに似通ったデザインだが、なぜかその顔には――鼻の穴が二つ空いていた。

「なんだあのメダロットは!?」
「見たことがないぞ!!」

 周囲からのどよめきに、大樹はドヤ顔で答える。

「知らないのも無理はないさ。ビートとセルヴォの二体は、一般人には手が出せない超高級ブランド『スポロロボテック社』で作られたメダロットだからね」

 スポロロボテック社なんて、聞いたことがない。
 だが、それ以上に磨智の視界に入ったのは、三体目のメダロット。赤いゴーグル状の複眼に、針のように突き出した口吻。昆虫でいう腹部は、赤い液体を並々と湛えたビーカーのようなパーツとなっている。

「蚊型メダロット……ブラッドストック」

 相手の速度を吸収して鈍足にする、妨害型メダロットだ。
 よく見れば、他二体のメダロットのパーツも、相手のスピードを落とすことに特化したものに換装されている。
 葡萄のチームは、ルシファーの脚力を要としている。最大の武器を封じられてしまっては、いかに世界チャンプといえども厳しいだろう。
 徹底的に対策が組まれた、アンチ葡萄とも言えるパーティー。先程から大樹が浮かべている笑みは、その自信の表れだろう。

「フン、面白い」

 だが、葡萄は涼しい顔でメダロットを転送する。
 クワガタ型メダロット「ルシファー」を筆頭に、メダロットが二体。
 攻撃役はルシファーくらいで、あとは補助型。これで大樹を相手にするのは、少し心許ないのではないか。

「超速のメダロッター、富良野葡萄よ。今日こそ、君の伝説が塗り替えられる日だ」

 ビッと親指を下に向け、サムズダウンを決める大樹。
 果たして、どのような激闘が繰り広げられるのか。


☆富良野チーム☆
・ルシファー:富良野葡萄
・さくらちゃんZ:富良野葡萄
・ナビ・コミュン:富良野葡萄

☆山川チーム☆
・ビート:山川大樹(左腕:パペットワイヤー)
・セルヴォ:山川大樹(左腕:ネット)
・ブラッドストック:山川大樹

 ロボトルファイト!!


 ガシュッという鈍い音が、辺りに響き渡った。
 切断された首のケーブルからバチバチと火花を迸らせ、ビートは地面に倒れ伏す。
 刀剣に付着したオイルを拭い去るルシファー。
 あまりの光景に絶句する観客達。
 ショックのあまり、かけていたサングラスが粉々に砕け散る大樹。
 誰もが理解に、しばしの時間を要した。

「勝った……葡萄さんが」

 それも、息を吐いたか吐かないかの一瞬で。
 あまりにも次元が違いすぎる。
 そう、まさに速度を超えた速度。超速のメダロッターの名に恥じない実力。

「―― なんだこの騒ぎは?」

 背後から聞こえてきた声で、ハッと我に返る磨智。
 振り向くと、そこには斗的の姿があった。


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