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RSSフィード メダロットM(再起動)
   

日時: 2014/10/21 13:24
名前: 流離太   <leoobake@hotmail.com>

初めまして、流離太という者です。
以前から、こちらのサイト様のお噂は聞いております。
この度、原作者であるボマンさんの許可を頂き、新「メダロットM」を連載させていただくことになりました。
若輩者ですが、どうかよろしくお願いいたします。

Episode1「鷹栖斗的は静かに暮らしたい」  >>1-22
Episode2「二人揃ってツンデレンジャー」  >>23-43
Episode3「覗いてんじゃねーよクソカスがっ!」  >>44-67
Episode4「今回はサービス回! 脱ぎます!」  >>68-91
Episode5「真夏の夜のナイトメア」  >>92-107
Episode6「メダリンピックのススメ」  >>108-

☆☆登場人物☆☆

「鷹栖トマト(たかす・とまと)」
本編の主人公にしてヒロインな、花田学園高校1年生。
古代メダロッチをつけたせいで、どういうわけか男から女に性転換してしまった。
「自分よければ全てよし」がモットーの自己中心的な性格で、夢は「波風立たない平穏な人生を送ること」。
パートナーはカブトムシ型メダロットの「フォレス」、ナイト型メダロットの「ガマン」マーメイド型メダロットの「マイド」。

「フォレス(コーカスト)」
トマトのパートナーな♀カブトムシ。
精密な射撃を得意とするバランスのよい機体。
熱血漢で、トマトとは逆で困った人は必ず助けるというタイプ。
同じカブトムシ型メダロットの「ラスト」を宿敵として憎んでいる。

「ガマン(ナイトアーマー)」
トマトのパートナーなナイトメダロット。
堅実な守りを得意とする防御型だが、幻の左と呼ばれる「サムライセイバー」による格闘攻撃も強力。
トマトのボディーガードで、ご老体だがやる時はやる。

「マイド(ピュアマーメイド)」
トマトのパートナーな人魚メダロット。
回復を得意とする補助型で、トマトのお姉さん代わりとして家事もサポートする。
トマトが女の子になって、密かに喜んでいる。

「成城マトモ(せいじょう・まとも)」
花田学園高校1年生の男子高校生で、もう一人の主人公。
トマトを師匠と仰いでおり、現在ロボトル修行中。
この小説中唯一の良心で、なにかと気苦労が多い
パートナーは犬型メダロットの「シアック」。

「シアック(シアンドッグ)」
トマトのパートナーな犬メダロット。
射撃を得意としているが、ロボトルよりもギターを弾くことの方が好き。
なんだかんだいって、マトモのよき理解者。

「愛媛ミカン(えひめ・みかん)」
花田学園高校1年生の眼鏡っ子で、世界的な研究者「愛媛トウナス」の娘。
自身も機械オタクで、パートナーメダロットの「サラ」にも色々違法スレスレな改造をしている。
トマトとは真逆な「面白ければ全てよし」をモットーとしており、彼女の側にいるとトラブルが絶えない。
ある意味、この話の黒幕。

「サラ(セーラーマルチ)」
ミカンのパートナーな少女メダロット。
ティンペットに違法改造が施されており、男型パーツも女型パーツもつけられる特別仕様。
パートナーと同じくマニアックな知識に長けている。

「富良野ブドウ(ふらの・ぶどう)」
ロボトル世界チャンプの少年で、トマトと年は同じ。
性格はクールに見せかけて、天然。
パートナーはクワガタ型メダロットの「ルシファー」。

「青森リンゴ(あおもり・りんご)」
悪の集団「ロボロボ団」の幹部で、いつも黒いドレスを着ている少女。
ロボロボ団であることにプライドを持っており、それを傷つけたトマトを目の敵にしている。
パートナーは「マゼンタキャット」と「ヘルフェニックス」。
ロボトルスタイルは

「吹香川ザクロ(すいかがわ・ざくろ)」
悪の集団「ロボロボ団」の幹部で、いつも黒い服を着ている長身の少年。
いわゆる脳筋キャラだが、古代メダロッチで性転換するとキャピキャピ系女子へと変貌する。
パートナーは「ブラックメイル」だったが「ブロッソメイル」に進化した。

「怪盗ブルーベリー」
悪の集団「ロボロボ団」の幹部で、世界をまたにかける怪盗。
いつも仮面をつけておどけた口調で話し、その真意は誰にも計り知れない。

「メダルゴッド」
悪の集団「ロボロボ団」の首領で、その正体は謎に包まれている。

「愛媛トウナス(えひめ・とうなす)」
世界的に有名なメダロットの研究者で、ミカンの父親。
私生活もお腹周りも非常にだらしない。

「成城ニマメ(せいじょう・にまめ)」
メダロット社植物町支部支社長で、マトモの父親。
若くして出世したエリートだが、人を見下したような態度を時々とる。
シャイなため、常に顔にモザイクをかけている。

「郷野タケシ(ごうや・たけし)」
花田学園高校1年生の少年で、いわゆるいじめっ子。
生徒達からは「ジャイポン」の異称で恐れられている。
パートナーは「イエロータートル」と「メガファント」。

「晩夜ダイキ(ばんや・だいき)」
隣町に住む少年で、オリジナルメダロットブランド「スポロロボテック社」の御曹司。
卑怯な性格の持ち主で、ミカンから「陰険な策略家」と称される。
パートナーはザリガニ型メダロット「マルス(ロールスター)」。

「ラスト(ヘラクレイザー)」
異常進化を遂げた野良メダロット集団「テラーク」のリーダーで、人類を滅ぼそうとしている。
本体は♀カブトムシ型だが、スピリット体という人間形態を普段はとっている。
決して某BGMの主人公ではない。



Episode5「真夏の夜のナイトメア(11) ( No.102 )
   
日時: 2013/08/27 23:20
名前: 流離太

「総力戦っつーなら、全メダロットを出してもいいんだよな!? メガファント一号!! 『トランプル』で粉砕しろ!!」

 タケシが操る象型メダロット「メガファント」が、鼻先についた鉄球を、ラスト目掛けて振り下ろす。
 が、ラストは紙一重に回避。
 重々しい鉄塊が、地面を思い切り抉る。

「へぇ? ノーマルのメダロットにしては、中々の威力ね?」
「当然だ!! 俺様のメダロットは高威力と重装甲を売りにしているからな!!」

 単純な力押しだが、シンプルゆえに破られにくい。マトモもかつて、この戦法の前に沈められた。

「オラァ!! もう一発食らえや!!」

 鞭のようにしなる、鎖つき鉄球。今度こそラストの頭上に、思い切り振り下ろされ。

「―― ボウガン、発射」

 ラストの右腕がクロスボウ状に変形し、光の矢が射出される。矢は鉄球を貫き、まるでガラス玉のように粉々にしてしまう。

「なっ!?」
「キャハ!! 今度はこっちからいくわよ!!」

 続けて頭部の角から、ナパーム弾が発射される。その行き先は、もっとも装甲値の薄いメダロットへ。
 そう、

 ―― マゼンタキャットの所へ。

「マゼンタ!! 八時の方向に回避ですわ!!」
「了解ニャ!!」

 指示を受け、マゼンタは飛び上がってナパームを避ける。

「こんなノロイ弾、なんてことないですわっ!! 最強のテラークが聞いて呆れますわね!!」
「油断するな、リンゴ殿!! それは標的の熱を感知して自動追尾する弾丸『反応弾』だ!!」
「なんですって!?」

 果たして、フォレスの言ったとおりだった。
 回避したはずのナパームは急旋回し、無防備になったマゼンタの背中へ。

「くっ、これではっ!?」

 ―― 近すぎて避けられない。

「させねえさ!! メガファント二号!! 『ライトガード』で防御!!」
「合点承知!!」

 ナパームとマゼンタキャットの間に割り込む二号。ニューギニアのお面を思わせる右手の盾で、一撃を受け止める。鉄球と同じく、木の板のように砕け散る盾。

「すみません、タケシ!! けれどもナイスですわ!!」
「ガッハッハ、いいってことよ!! 姉御のためならえんやこーらさってなぁ!!」

 強がるように、タケシは胸を反らして笑う。しかしその声色は、わずかながらうわずっていた。
 フォレスと同じカブトムシ型だけあって、どうやらラストも射撃攻撃を得意としているよう。でも、その威力は桁違いと言ってもいいくらい。

「けれども、活路が見えましたわ。このメガファントは、鷹栖トマトのナイトアーマー(ガマン)に並ぶ装甲の持ち主。いくらラストの攻撃力が高くても、さすがに盾ひとつ壊すのが限界みたいですわ」

 そうだ。確かに一回の攻撃で盾を一つ壊されても、こちらにはメガファントは二体いる。残る盾は三枚。つまり、あと三回はやつの攻撃を防げる。

「その間他のメダロットはメガファントの後ろから、ラストに集中砲火を浴びせればいいのですわ。フルボッコというのは、少々不本意ですけどね」

 マトモは、リンゴの作戦にうなずく。今のところそれ以外、活路はないだろう。
 だがしかし、

「駄目だ、一箇所にまとまるのは。あまりにも危険すぎる」

 フォレスだけが、それに異を唱える。
 直後。

 ―― ダーツの的のような丸い模様が、メガファント二号の胸部に出現する。

「な、なんですの……これ?」

 ハッと、カメラアイを見開くフォレス。

「散開しろ!! このままでは全滅するぞ!!」

 けれども、フォレスの必死の声も虚しく。

「標的に設置完了。……連鎖攻撃、クロスファイア」

 ―― 無情の矢が、ラストの右腕から放たれた。

「散らばれぇッッ!!!」

 再び、ひと際大きな声でフォレスは叫ぶ。
 反射的に、二体のメガファント以外のメダロットは、矢から距離をとる。

「キャハハ!! 砕け散りなさい!!」

 ―― その時マトモは、思い出した。

 初めて校庭でラストと遭遇した時、やつはその場にいたメダロットを全滅させ、にこやかに微笑んでいた。そこには確か、重装甲を誇るトマトの愛機「ガマン」も確かいたはず。
 今、まさに目の前で、ガマンに匹敵する装甲を持つメガファントが。
 そう、二体のメガファントが。

 ―― 周囲に装甲を撒き散らし、機能停止した。
 ―― ラストが放った、たった一発によって。

「う、そ……」

 あのリンゴも、それしか発することができなかった。
 マトモなんて、声すら出ない。

「連鎖攻撃……クロスファイア」

 ただ、フォレスだけが、眼前の状況を冷静に受け止めていた。

「ターゲットに照準をセットし、相手を高威力の矢で貫く、ラストの必殺技だ。この攻撃には、私も幾度も苦しめられたよ」

 静かに語るフォレスの横で、マトモはそれを、呆然とした表情で聞いていた。

「そんな……違う」

 あまりにも、レベルが違いすぎる。
 こんなの、太刀打ちできるわけない。
 しかも、頼みの綱のトマトもいない。

「無理だ……無理、だよ……」

 全身の筋肉という筋肉がこわばり、体の心から震えが起きる。額からとめどなく流れる冷や汗が、首筋を伝う。

『情けないよねー、あそこまでやられて何も言わないなんて』
『ロボトルの約束守って、律儀にヘコヘコしちゃってさ』
『あの時は勇ましく担架切ってロボトル挑んだくせに』
『プライドないんじゃない?』

 過去、クラスメイトに言われた言葉が、頭をフラッシュバックする。
 改めて思い知らされた。やはり、負け犬は負け犬でしかない。この場にいても、マトモにできることなんて何ひとつない。

 ―― ならば。

「うっ……うわぁあっっ!!」
「おい、マトモ殿!?」
「どこ行くんだよ、マトモ!?」

 マトモは大きく叫び、草だらけの地面を蹴り、転がるように走り出した。その表情は涙にまみれ、二目と見られない。
 間もなくその姿は、祭りの煌びやかな灯りの中に、消えていった。



「……キャハ、逃げちゃったね」

 その様子を見ていたラストは、愉快げに笑みをこぼした。

「あんな人間を守ろうだなんて……キャハ! フォレスって、ほんと物好き!」
「黙れ貴様。マトモ殿のことを悪く言うな」

 しかし、ラストは全く意に介さない様子で、言葉を続ける。

「で、どうする? リンゴにタケシ、だっけ? あなた達も逃げていいんだよ?」
「へ、へへ。じゃあ遠慮なく」

 苦笑いを浮かべ、タケシはこそこそと逃げようとする
 けれどもリンゴは。

「人をナメくさるのも大概にしてほしいですわね?」

 毅然とした態度で、リンゴはラストを睨む。

「先程も申し上げた通り、あなたには借りを返さなければいけないので。敵いそうにないから『はい、そうですか』と引き下がるなんて、絶対にできませんわ」
「やれやれ。ロボロボ団にしておくには惜しい心の持ち主だな」

 その横に、フォレスが並び立つ。

「マトモ殿が戻ってくるまで、指示を頼む」
「ええ。構いませんけど……あの少年、戻ってくると思います?」
「きっと戻ってくるさ」

 フォレスは力強くうなずく。

「なにを根拠にしてるのかわかりませんけど……まぁいいですわ。いきますわよ、タケシ!! 残る三体で、あのクソ生意気な甲虫類を撃破しましょう!!」
「え!? 俺様も戦うの!?」

 そんな彼女らを前に、ラストは金色に輝くカメラアイを、三日月状に歪める。

「キャハ。逃げなかったこと、きっと後悔するよ?」
「ええ、後悔するでしょうね」
「ただし、お前がな」

 やる気に燃える二人と、嫌々ながら付き合う一人。
 マトモを欠いてなお、深緑での戦いは続く。

Episode5「真夏の夜のナイトメア(12 ( No.103 )
   
日時: 2014/01/08 00:32
名前: 流離太

 その頃、ミカンのお守り役であるシアックとサラは。

「さすがはミカンだお……」
「ああ、遊ぶことにかけては右に出る者がいないジャン……」

 シアックとサラは、半ば引いた様子で立ち尽くしていた。
 目の前には、山と積み上げられた金魚にスーパーボール。そう、全てミカンが獲得した景品だ。

「よっしゃー! このまま、全露天制覇行くよー!」
「もう、勘弁してくれぉ……」

 トホホと肩を落とすサラ。先程からミカンに連れまわされ、すっかりグロッキー。エネルギー切れ寸前といったところ。

「まったく、あの体のどこにそんなエネルギーがあるのやら」

 シアックは呆れたように肩をすくめる。
 その時。

「……うん?」

 その目に、一人の少年の姿が止まった。並み居る雑踏の中にいるのでよくわからないが、その姿は。

「マトモ?」

 シアックのパートナーである少年は、声をかけられ立ち止まる。その目は、昏く、虚ろであった。

「なにか、あったジャン?」

 その質問に、マトモは答えない。ただ、貝のように口をつぐみ、目を伏せている。


「―― 代わりに俺が話してやろうか? お前が無様にも逃げ帰ってきた話をな」


 突如、第三者の声が響く。

「「ッ!?」」

 反射的に、一人と一体は、声がした方向に顔を向ける。
 そして、息を呑む。そこにいたのは、とても見知った人物であった。
 その姿とは、

 ―― はっぴを着た、スキンヘッドのひげ面男であった。

「俺の名前は『綺羅マコト』。通称、マスコットキャラだ」
「いや……知ってるジャン。いつもモブ役やってるおっちゃんだろ?」
「ああ、そうだ。だが、悠長にモブをやってる暇もなさそうなんでな」

 いや、世界観が崩壊するから、モブの人はモブの仕事をしてくださいお願いします。
 けれどもマスコットキャラは、作者の俺を無視して話し始める。

「そいつはな、テラークに襲われているトマトを見捨てて逃げてきたんだよ。負けるのが怖くて、必死にな」
「えっ!?」

 シアックは、信じられないといった声を上げ、マトモの顔を覗き見る。
 マトモは唇を噛み、視線をそらそうとする。

「逃げるんじゃない!! 敵からも、自分からも!!」

 マスコットキャラは、雷のような声を轟かせ、一喝する。
 ビクッと、マトモは体を震わせる。

「に、逃げるなって、言われても……。どうせあのまま戦ったって、結果は見えてるじゃないっスか。僕にできることなんて、なにも……」
「なぁ、マトモ」

 柔らかな口調で、語りかけるように、シアックはマトモの言葉を遮る。

「確かに、お前とトマトの旦那を比べたら、天と地ほど実力差があるジャン。技術も、頭の回転も。真っ向から勝負したら、絶対勝てないだろうさ」

 チクチクと、シアックの言葉がマトモの胸に刺さる。
 今更言われなくても、そんなこと、マトモは重々承知している。

「けどな。けど、イコールなにもできないってわけじゃないだろ。お前だって、トマトの旦那が持ってないものをいっぱい持ってるぜ」
「そんな気休め……いらないよ」

 トマトにいつも言われていた。
 お前は強い、おまえは筋がある、と。
 でも、結果はこのザマ。
 信じられない、自分を評価する全ての言葉が。
 信じられない、自分の実力が。

「なら、俺っちを信じろ!! お前のことを一番間近で見てきた、俺っちをな!!」

 ハッと、マトモは顔を上げる。
 目の前には、手を差し伸べているシアックが。

「見せつけてやろうぜ、俺達の実力を!! そして、思い知らせてやるのさ!! 成城マトモを敵に回した恐ろしさをな!! ……これって、かなり痛快ジャン?」

 キシシと、悪戯っぽくシアックは笑う。

「シアック……」

 情けない姿を曝してしまった自分に呆れず、見捨てないでいてくれたパートナー。
 そんな相棒の期待に応えたい。
 こんな自分でもできることがあるなら。

「なぁ、マトモ君よぉ」

 いつの間にか煙草を手にし、マスコットキャラは再び話に加わってくる。

「立ち向かう勇気ってのは、がんばればなんでもできるってことじゃないと思うぜ。お前自身のベストを尽くして、悔いのない生き様を見せろってことなんじゃないのか?」

 その言葉を聞き終わらないうちに。
 気づいたら、マトモは走り出していた。爪先を、己の戦場へ向けて。

「……やれやれ。世話の焼けるやつだぜ」

 お祭りを楽しむ観客の中、マスコットキャラはニヒルな笑みを浮かべるのであった。

Episode5「真夏の夜のナイトメア(13) ( No.104 )
   
日時: 2014/01/08 00:33
名前: 流離太

「キャハハハ! どう? ひとりぼっちになった気分はどう? フォレスぅううう??」

 嘲笑するラスト。
 眼前には、オイルを関節から滴らせ、足を棒のようにするフォレスが立っている。足元には、やられた仲間達のパーツが散らばっている。
 あまりにも圧倒的過ぎるその実力に、リンゴは悔し涙を浮かべ、固く固く拳を握り締めている。

「長い追いかけっこだったわね……それも、今日で終わり。これが、マザーメダロットたる私と、キッズでしかないあなたとの差よ」

 懸命にラストへと眼光を向けるフォレス。
 その頭部に、ラストは銃口を突きつける。

「こういう状況を、なんて言うか知ってる?」
「聞きたく、ないが……なんだ?」
「絶体絶命、って言うのよ? ばいばい、フォレス」

 連鎖攻撃をセットし、クロスファイアを発動しようと。

「―― シアック!! 撃てぇ!!」

 ラストの頭パーツをかすめる弾丸。

「!? マトモ殿か!?」
「……へぇ。戻ってきたんだ」

 射撃によって傷ついた装甲に手を当てるラスト。フォレスに銃口を向けたまま、辺りを見回す。
 しかし、一面の夜闇が広がるばかりで、マトモとシアックの姿は見えない。

「どうやら隠蔽を使っているようね」

 隠蔽。保護色を使い、周囲の景色と同化する補助技。

「だとしたら、反応弾で片付けられるわね。くすくす、小賢しい猿知恵ね」

 ラストは余裕をかまし、頭部からナパーム弾を発射する準備をする。
 そう、これで全てが片付く。辺りに立ち込める霧も、今のラストを祝福しているよう。

 ―― 霧!?

 ラストは慌てて、発射を思いとどまる。
 これは、罠。射撃に反応し、暴発させる粉塵「射撃トラップ」だ。
 反応弾を撃っていたら、きっと手痛いダメージを受けていただろう。

「やるじゃない……人間」

 ラストはフォレスに向けていた銃を下ろす。トラップが設置されているこの状況、全身を射撃パーツで固めたフォレスも迂闊に反撃できないはず。
 武器を制限され、敵の姿を確認できない状況に陥ってしまった。人間にしては、中々やるではないか。

「―― けどね、詰めが甘いわ」

 ミルクのような白い霧が立ち込める中、ラストは赤いレーザーポインタで照準を合わせる。そして。

「連鎖攻撃、発射」

 光の矢が、ボウガンを思わせるラストの右腕から射出される。

「―― ガッ!?」

 それは正確に。
 そう、まるで的を射るように、隠蔽で姿を隠していたシアックの胸部を、確かに貫いていた。

「どう……して?」

 ドサリと倒れるシアックの後ろに立っていたマトモは呆然と立ち尽くしてしている。信じられない、なぜ見つかったのかわからない、といった表情だ。

「くす、馬鹿ねぇ? 霧の中にいたら、いくら隠蔽パーツを使っていても、動きの軌跡でいる場所がばれちゃうじゃない?」
「そ……」
「そんなことを言っているんじゃないって? なぜ、射撃トラップが設置されているこの状況で、私がクロスファイアを撃てたかって?」

 まるで、マトモの心を見透かすように、ラストは言葉を続ける。

「答えは簡単。私のクロスファイアの攻撃属性が『設置』だからよ」
「なっ!? あれだけの攻撃力を持った攻撃が、設置!?」

 メダロットの行動には、それぞれ属性がある。
 命中率を上げる索敵や、逆に味方の回避率を上げる隠蔽で仲間をサポートする「応援」。
 ミサイルやナパーム、ライフル等、遠距離の攻撃を狙撃する「射撃」。
 ハンマーやソード等、近接戦闘を行う「格闘」。
 そして、先程の射撃トラップ等が属する「設置」。

「当然、射撃トラップは設置に対しては反応しない。残念だったわね?」

 くすくすと笑い、ラストは銃口をマトモの頭に突きつける。

「脆弱な人間にしてはがんばったけど、所詮付け焼刃。私の攻撃を封じたところで、決定力に欠けるあなたに私を倒すのは無理よ」

 銃を突きつけられたまま、マトモはうなだれる。

「……そうっス。あなたと僕とは実力が違いすぎる。僕の弾丸はあなたに届かない……そんなこと、最初からわかりきっていたっス」
「へぇ? じゃあ、負けるってわかって私に挑んできたの? 馬鹿なの? 死ぬのぉ?」

 からかうように、ラストはマトモに顔を近づける。
 そして、驚愕する。
 マトモの瞳が、

 ―― 未だ光を失っていないことに気づき。

「そう、僕は僕の精一杯をやることに決めたんス。あなたに弾丸が届かないなら、別の的を狙うだけ」

 別の的?
 なんのことを言っているのだ?

「はっ!?」

 ―― シアックが機能停止し、射撃トラップの霧が晴れる。
 ―― 直後、ラストは理解する。
 ―― 機能停止した味方のユートピアンと、自分を囲むメダロット達を目にし。

「――そうっス!! 狙いの的は、ユートピアンっス!!」
「そして、霧が立ち込めている間、漏れらがおまいを包囲するってわけ」
「リンゴちゃんやタケシちゃんのメダロットも、ばっちり回復しておいたわー♪」

 なんてことだ。
 あっという間に、状況は一対六。
 その上、ユートピアンまでやられてしまった。
 ということは。
 ということは。

「……随分俺に恥ずかしい真似をさせてくれたなぁ、オイ?」

 なよなよした女の子座りから起き上がり、浴衣についた土を掃う少女。その頭には、トレードマークの、髑髏マークがついたキャップ。
 そう、鷹栖トマト―― 完全復活。

「こういう状況を、なんていうか知ってるか?」

 じりじりと距離を詰められ、焦りを見せるラストに向けて、トマトは言い放つ。

「形勢逆転、って言うんだよ」

 今、黒い悪魔が最期の時を迎える……――かと思われた。



「そこまでにしてもらおう」

 いつの間にか現れたのか、ラストの傍に立つ、一人の少年。

「お前は……!?」

 誰もが、そのありえない姿に息を呑む。
 夜の闇を思わせる、漆黒のコート。
 紫色のヘアバンド。
 鋭い刃物を思わせる、切れ長の目。
 そして、側に控えるのは、白銀のクワガタ型メダロット「ルシファー」。

「富良野……ブドウ」
「と、愉快なザクロちゃんでーす☆」

 ブドウの後ろから、きゃぴっとウインクするザクロ(女の子ver)。
 なぜだ? なぜ、ブドウがここに?

「困るんだよ、ここでこいつを倒されてはな。せっかく入念に立てた計画に支障が出てしまう」
「計画? おい、変態黒コート? 一体、なんのことだ?」
「鷹栖トマト、お前が知る必要のないことだ。どうしても邪魔をするというなら」
「ロボロボ団四天王の名にかけ、あなたを排除する……とのことでございます」

 ルシファーは刃を光らせ、トマトらを威圧する。
 トマトは冷や汗で頬を濡らし、笑顔を引きつらせる。

「おいおい、冗談きついぞ。世界チャンピオンのお前がロボロボ団とかよぉ……」

 本当に冗談じゃない。ラストでさえ手一杯だったのに、これ以上の強敵はありえないっていうほど最悪だ。

「ブドウ!! ラストを保護しろって、首領から命令されたんですの!?」

 しかし、ブドウはリンゴの質問に答えない。
 代わりに、ラストを見下ろすように見据える。「行け」。確かにブドウの目はそう言っていた。

「くすくす。借りは返さないよ?」
「最初から期待などしていない」

 ラストは人間形態に戻ると、鼻を鳴らし、その場を後にする。

「行くぞ、リンゴ。命令違反は首領に報告しないでやる」
「リンゴちゃーん! かえりましょー!」

 コートを翻し、背を向けるブドウ。手招きするザクロ。
 リンゴはおろおろと、トマトとブドウを見比べると、軽く頭を下げてその場を去っていく。
 あとには、目の前の超展開に乗り切れないトマト達が残されていた。

Episode5「真夏の夜のナイトメア(14) ( No.105 )
   
日時: 2014/01/08 00:34
名前: 流離太

「はぁ~……今日は疲れたぁ~」

 煌々と空を輝く満月の下。月明かりに照らされ、マトモはてくてくと夜道を歩いていた。
 背中に、浴衣姿のトマトを背負って。慣れない下駄を長時間履いていたせいで、足が痛くなってしまったのだ。
 ちなみにメダロット達は、また行方不明になったミカンを捜索中。

「マトモ、いいな? 今日のことは忘れろよ? あれは真夏の夜が見せた悪夢だ、悪夢……そう、悪夢なんだ」

 マトモの背中に顔をうずめ、トマトはぶつぶつと今日の出来事を必死に頭から追い出そうとしている。
 そんなトマトの姿にくすりと口元を緩ませてしまうマトモ。なんだか、とっても微笑ましく思えてくる。

「……まぁ、今日のお前の雄姿は忘れないでおいてやるよ。かっこよかったぞ」

 思わぬねぎらいの言葉に、マトモは頬をパッと上気させる。

「ありがとうございます、師匠。僕も、今日の師匠はとても可愛かったと」
「あ? なんか言ったかコラ?」
「い、いえ、なんでもないっス……」

 せっかく褒められたのに、トマトの不機嫌を買ってしまうマトモ。そそくさと、気まずそうに歩みを早める。
 ドーンとひとつ、空に花火が咲いた。

Episode5「真夏の夜のナイトメア(15) ( No.106 )
   
日時: 2014/01/08 00:39
名前: 流離太

 そう。
 この時僕らは、戦いは激しくなるものの、こんな平穏な日常がこれからも続くと思い込んでいた。
 メダロットと人間が、これからもよき仲間、よきパートナーでいられるものだと信じていた。
 そんな保障なんて、どこにもないのにね。

 その後、世界は変貌することとなる。
 「黒き太陽」を名乗る悪魔が引き起こした、戦争によって。



メダロットM ―完―

この続きは、劇場版メダロットMで。

「メダロット登場キャラ名鑑」 ( No.107 )
   
日時: 2014/01/08 00:43
名前: 流離太

「メダロット登場キャラ名鑑」
●名前:ラスト
●機種:ヘラクレイザー ●メダル:Bカブト
●タイプ:KBT(カブトムシ)型 ●性別:♀
●一人称:私
●パートナー:なし
●頭部:アトミック(ナパーム) ●右腕:ボウガン(CFライフル) ●左腕:サジタリウス(CFガトリング) ●脚部:ハーキュリーズ(二脚)
●破壊力:S ●スピード:B ●耐久力:B ●命中率:A ●射程距離:A
●体長:100cm
●好きなもの:よくできましたオイルコーヒーゼリー味、お昼寝
●嫌いなもの:フォレス
●趣味:アニメ「がんばれAPG君」を鑑賞すること
●イメージカラー:漆黒
●イメージボイス:沢城みゆき
●テーマソング:最恐の力(仮面ライダーフォーゼ・サントラ2)
●容姿:
●履歴:
 最凶最悪のテラーク。
 頭部に備え付けられた絶対ヒット武器「反応弾」の威力もさることながら、真に恐ろしいのは両腕の「連鎖攻撃」である。まずは右腕でターゲットへのロックオンを行い、左腕から放つ光の矢「クロスファイア」で敵を仕留める。攻撃に移るまでは若干のタイムラグがあるが、これを受けた相手はほぼ一撃で沈む。
 また、常時攻撃力を極限まで上昇させるメダフォース「バーサーク」を発動しており、まさに攻撃のエキスパートと言える。
 多数のテラークを率いて、人間を滅ぼそうと画策している。古代の因縁からか、フォレスを激しく恨んでおり、その憎しみの目はトマトにまで向いている。
 彼女が語る「マザー」「キッズ」とは一体なんなのだろうか?
●作者から一言:
 モデルは、ダークサイドKBT「ブラックビートル」と仮面ライダーフォーゼのラスボス「サジタリウス・ゾディアーツ」。

Episode6「メダリンピックのススメ(1)」 ( No.108 )
   
日時: 2014/10/21 11:23
名前: 流離太

 とあるチャットルームにて。

お知らせ :T2ヴァルゴさんが入室しました。

T2ヴァルゴ > やはり……私は耐えられない。

シア・ヴァレン > どうしたの? お腹でも壊した?(笑)

T2ヴァルゴ > やはり鷹栖トマトに、この件は荷が重いのでは。

T2ヴァルゴ > いくらフォースの使い手とはいえ、彼は普通の高校生です。

T2ヴァルゴ > 当初の予定通り、この計画は私達だけで進めるべきだと思います。

シア・ヴァレン > そんなに鷹栖トマトが信じられないならさ、試してみたら?

T2ヴァルゴ > 試す?

シア・ヴァレン > そう、彼……いや、今は彼女が本当に計画の要となり得るかをね?

シア・ヴァレン > その方がここで余計な気を揉むより、よっぽど建設的だと思うよ?

T2ヴァルゴ > ……。

シア・ヴァレン > まぁ、最終的な判断はそっちに任せるわ。

シア・ヴァレン > こっちは、楽しい方に転ぶことを祈ってるよ。

シア・ヴァレン > じゃあ、バイバイ。

お知らせ :シア・ヴァレンさんが退室しました。

Episode6「メダリンピックのススメ(2)」 ( No.109 )
   
日時: 2014/10/21 11:29
名前: 流離太

 前回のあらすじ。
 最終回にしようと思ってたけど、せめてラストとの決着が着くまでがんばってみることにしました。



 植物町のはずれにあるセレクト防衛隊第七師団会議室にて。
 隊長である「瀬戸内ショウタ(せとうち・しょうた)」は苦虫を噛み潰したような表情で、禁煙パイポをガチガチ噛んでいた。三十路過ぎの目付きが悪い男が椅子の上でふんぞり返っている姿は、市民を守る優しい隊長さんとはほど遠く、チンピラのような威圧感を放っている。

「どうしたんですか、瀬戸内さん? いつものニコチン中毒ですか?」

 隣に鎮座している副隊長「渡辺ハルカ(わたなべ・はるか)」がコソリと耳打ちすると、瀬戸内は小さく舌打ちする。

「どうもこうもねえよ。俺ら所轄のシマに、本土の連中が出張ってくるのが気に入らねえ」
「ああ、そのことですか。仕方ないですよ。最近植物町の一部野良メダロットに危険な動きが見られるようになってきたんですから。応援を要請するのは当然の判断です」
「しかも、そのうちの一人が、年端のいかないガキだってのが気に入らねえ」
「それも仕方ないですよ。『あの子』の実力は瀬戸内さんも知っているでしょう?」
「そして、一番気に入らないのは」

 瀬戸内は勢いよく両手を長机に叩きつけ、立ち上がる。

「もう三時間経つってのにそいつらがまだ来ないってのはどういうことだコラア!? 遅刻っても限度があるぞ!?」
「お、抑えてください!! し、仕方ないですよ!! 隊長さんと副隊長さんが行方不明なんですから!! 只今、隊員達が捜索中です!!」
「観光か!? 北海道観光でもしてんのか!? 俺達道産子をナメるのも大概にしろやぁああああ!!」

 吠える瀬戸内。
 それを必死になだめる春花。
 その不毛なやり取りは、丸一日続いたという。

Episode6「メダリンピックのススメ(3)」 ( No.110 )
   
日時: 2014/10/21 11:30
名前: 流離太

 一方、我らが主人公「鷹栖トマト」はそんなプチ事件が起きているとは露知らず、今日ものんべんだらりと学校で机に突っ伏していた。

「やっほー、トマトー! さっきから机にかじりついちゃって、そんなんじゃ根暗だって思われちゃうぞー!」

 トマトの平穏な生活を脅かす悪魔「愛媛ミカン」が降臨したのは、そんな時であった。

「うっせーよ。オレが自分の昼休みをどう使おうが、お前には関係ないだろ」
「くふふ、恥ずかしがることないのにねー? 女子が女子用の制服を着ることは、なぁんにも不自然じゃないよー?」

 途端にトマトは「むぐっ」と言葉に詰まり、机に額をくっつける。
 そう、今のトマトは、そのスレンダーな体型をセーラー服で包んでいた。灰色のスカートから伸びた脚線美が眩しく、胸元にはせめてもの抵抗と女子用のリボンではなくトマトが男子だった頃から愛用していたドクロマークが入ったネクタイが結ばれている。

「だって仕方ないじゃーん仕方ないじゃーん。洗脳されてたオレが男物の服を全部処分しちゃったんだしー処分しちゃったんだしー」

 ぶつぶつとどんより落ち込んだ声を垂れ流すトマトは、着たくもないセーラー服を着て登校する羽目になり、この上なく絶望していた。できることなら、昨日の自分を殺したいと思うほどに。

「まあまあ、そぉんなトマトのために朗報を持ってきたから!これ見て元気出してちょ!」
「はは。お前が持ってくる朗報なんて、どうせ悲報の間違いだろ?」

 そう言いながらもトマトは、ミカンが持っている雑誌の記事に吸い寄せられるように目をやる。
 そこに書いていたのは。

「記者『卜部アキ(うらべ・あき)』は見た。国民的アイドル『セレクトスリー』の一人『戦極レモン(せんごく・れもん)』が衝撃の枕営業……?」
「あー、違う違う! 見てほしいのはこっち!」

 そう言ってミカンが指差した記事には「メダリンピック、ついに開幕! 優勝はやはり、天才メダロッター富良野ブドウか?」という見出しで長々と記事が書かれていた。

「いやー、すごいよね! 今年はメダリンピックがこの北海道で開催なんだってさ!」
「ふーん」

 熱を帯びた口調のミカンとは対照的に、トマトは興味無さ気に相槌を打つ。
 ここで、メダリンピックがなんであるかを読者のみなさんに説明しよう。
 メダリンピック……それは、四年に一度メダロット先進国の日本で開かれる大規模なロボトル大会のことである。誰でも参加は自由で、必ず三人以上でチームを作らなければならない。世界中からすご腕のメダロッターが集まりロボトルの腕を競いあう、まさにビッグイベント。

「というわけで、出場しようよトマト!! それで、一緒に優勝しよ!!」
「だが断る」

 キッパリハッキリと、トマトは自分の意思を口にする。
 平穏な生活を望むトマトにとってロボトルは自分を守るための手段に過ぎず、他人と腕を競ったり大会で優勝するなどということはなんの価値も無い。
 しかも、大会には「あの」ブドウも出ているというではないか。先刻、ロボロボ団の一員であることを明かしたあのブドウが。ただでさえ目をつけられているこの状況、できることならなるべくやつとは距離をとりたい。

「えー、残念だなー? 優勝者にはあの幻のメダロット『サーガ』のレプリカモデルがプレゼントされるんだけどなー?」
「へー」
「しかも、賞金も結構な額が貰えるらしいよ!」
「ほー」
「さらにさらにっ、優勝者は国民的アイドル『天道イチゴ(てんどう・いちご)』ちゃんと一日デートする権利が!」

 ピクン。
 トマトの耳が、まるで高感度センサーのように「天道イチゴ」という単語を拾い上げた。

「なん……だと?」

 ピシャーンゴロゴロと心中に雷鳴を轟かせ、ゴクリと生唾を飲み込む我らが主人公トマト。
 そう、これは前回の話でわかったことだが、トマトは今をときめくアイドル天道イチゴの大ファンなのだ。団扇やポスターなどのアイテムは勿論、サイン入りTシャツや抱き枕まで完備という筋金入りのオタクっぷり。

「サーガのレプリカはあたしが貰うとして~、デート権の方はトマトが好きにしていいよ!」
「ミカンっ……今までお前のこと、悪魔だの厄病神だのオレの運命に立ち塞がる大魔王だの思ってたけど、今はお前が女神に見えてくるぜ!!」
「ふぁっはっはっはっは!」

 高笑いするミカンと、感激のあまりその手をとるトマト。
 その光景を見たクラスメイト達は「ああ、またミカンに言いように操られ照る……」と、同情の目線を向けるのであった。
 とにもかくにも、トマトとミカンは、こうしてメダリンピックに出場することに相成った。

Episode6「メダリンピックのススメ(4)」 ( No.111 )
   
日時: 2015/11/25 21:59
名前: 流離太

 そして、放課後。
 トマトとミカンは近所の公園にて、メダリンピックの練習をすることにした。

「まずはメダロードレースの練習よ! 脚力を限界まで鍛えあげるの!」
「うぉおおお!!」

 グランド整備用のコンダラを引き、トマトは土煙を巻き上げながら公園を走り抜ける。

「がんばってー、トマトちゃーん!」
「はぁ、はぁ……ぜぇぜぇ」

 しかし、普段運動なんかしないモヤシっ子トマトのこと。何周もしないで、すぐにバテてしまう。
 終わる頃には、生まれたての小鹿のように足をがくがくと震わせていた。

「お次はメダコンテスト! 美しく着飾って、審査員を魅了するの!」
「うぅ……もう少しマシな衣装は無かったのか?」
「いや~、ぴっちりとしたバニースーツに包まれたスレンダーながらも豊満なボディ……たまらないお」

 バニーガール姿で公園のど真ん中にて立ち尽くすトマトは、今は無き股間を押さえながら羞恥に頬を染めるのであった。スラリと伸びたおみ足をこすり合わせるたび、ストッキング特有のすべすべした感触が伝わってくる。

「お次はメダバード! どこまでも高く飛び、あの小島にうまく着地した方が勝者よ!」

 そう言ってミカンは、池の中央にぷっかり浮かぶ小島を指差す。飛距離はざっと、五メートルくらいだろうか。

「いやいやいや。あそこまでジャンプするのは流石に……」
「女は度胸よ、ト・マ・ト! 」

 ミカンはそう言いながら、

「……えいっ」

 トマトの背中を「ドンッ」と押し。

「やっだっばぁああああ!!」

 哀れトマトは、池の中にドボンと落下するのであった。

「うーん、やっぱ駄目だったかー」
「はぁ、はぁ……当たり前だろ? オレがこのまま水面すれすれを滑空して島までたどり着けるとでも思ったのかよ」

 池から這い上がったトマトは、息も絶え絶えにミカンへ抗議する。

「……とまぁ、ここまで頑張ってもらったけど。これってメダロットが参加する競技だから、トマトが練習する必要って皆無なんだよねー」
「そういうことは先に言えっ!!」


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