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RSSフィード SS書こうぜ!
   

日時: 2008/03/22 01:57
名前: 鎌兎

どうも。鎌兎です。
今回は気分転換にSSを書きましたので投稿させていただきます。

息抜きとして、皆様もSS書いてみませんか?
書いてみたいでしょう? そうでしょう?
ん・・・別にいいや?
そんなこといわずにさぁ!さぁ!さぁ!
思い切って書いてみましょうよ!



Re: SS書こうぜ! ( No.7 )
   
日時: 2009/05/13 23:23
名前: 凍零

ここには初めて書きましたが……こんな感じでよろしいんでしょうかね?

…はい、私もどうやら息抜きがしたかったようです。
リハビリというべきなのか単なる思い付きで書いたようなものですので、特に深い理由はないです、多分。

私が言うのもアレですが…他の皆さんもひっそり書いてくれると面白そうですね。色々な意味でお待ちしてます……これ私が言うべきことなのか(

雨の色 ( No.8 )
   
日時: 2009/05/20 11:30
名前: ARIS

 …………………雨が降っている………
 ざ、ざざっざ
 ザ、ザザッザ
 …………………ノイズの走ったラジオのように………
 ザザッ、ザ、
 ………頭のなかで誰かが騒いでる。助けを求めてる。

 ねえあんた そこに突っ立ってないで 手を貸してよ
 ねえ 見てるだけじゃなくてさ お願いだから
 どうしてそんな冷たい目で見るの 怪我してるんだよ 死にそうなんだよ
 苦しいんだよ なのにどうしてそんな
 ちくしょう 悪魔 あんたなんて人間じゃない どっか行け 死んじまえ
 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね

 誰かが僕を呪ってる。

 ああ、でもそれはなんて―――――いとおしいのだろうか。


 呪詛を放ちながら死体へと移行しつつあるその女(ひと)を僕は静かに見やる。
 告げる言葉はただひとつ。

 愛してる。

 想いを伝えるのに無駄な装飾はいらないのだから。
 その女(ひと)の動きが一瞬、止まる。
 そして僕は、この華奢な首に手をかけて、力いっぱい捻った。


 …………………雨が降っている………
 ざ、ざざっざ
 ザ、ザザッザ
 …………………ノイズの走ったラジオのように………
 ザザッ、ザ
 ………頭のなかで誰かが騒いでる。助けを求めてる。

 ・斬りつけられる女性
              盛大に何かが舞っている

 ・何かは 真紅 深紅 きれいないろ

 ・おかげで透明なはずの雨が
                  薄汚くなっている

 僕は―――助けを求める人へと駆けていった。

 ………助けは僕に向けられていない。
 ………今、僕は、刃物を持って彼女を追っている。
 そして僕は………

 ・斬りつけられる女性
              盛大に何かが舞っている

 ・何かはおそらくは 臓腑 紅く散っている

 ・それでも彼女は
           逃れようと必死に走る

 助けを求める人は、転んで動かなくなった。
 僕はその女(ひと)へと歩いていく。
 …………………刃物が手からすべり落ちる………
 僕はその女(ひと)へと歩いていく。
 …………………落ちた音は、雨音に呑まれる………
 僕は、彼女のわきにしゃがんだ。
 彼女の身体を起こして、そっと抱きしめた。


 …………………雨が降っている………
 ざ、ざざっざ
 ザ、ザザッザ
 …………………ノイズの走ったラジオのように………
 ザザッ、ザ
 ………頭のなかで誰かが騒いでる。助けを求めてる。

 助けて おねがい 誰か
 誰でもいいから おねがい 助けに来て
 殺されそうなの ねえ 聞こえてるんでしょ 誰か

 彼女が追われている。僕ではない。それこそ誰かに。
 僕は助けを求めるその女(ひと)へと駆けていく。
 彼女を傷つけている男。僕を見て舌打ちしたらしかった。
 でも、すぐに表情が、笑いのようなものに変わる。
 ターゲットを変えたのだろう。今や狩られる兎は僕だ。
 ―――男が刃物を振りかざす。
 ―――僕は、それを紙一重のところでやり過ごすと、その腹に蹴りを入れた。
 うずくまり動かなくなる男。
 僕はそいつを無視すると彼女に駆け寄る。
 とん、と糸の切れた人形のように。僕の胸に倒れ込む。
 死んでいた。あたたかさも何も感じない。ただ重いゴムのような感じ。
 透明なはずの雨が、薄汚くなっている。


 ……………………雨が降っている………
 ざ、ざざっざ
 ザ、ザザッザ
 ……………………ノイズの走ったラジオのように………
 ザザッ、ザ
 ………頭のなかで誰かが騒いでる。助けを求めてる。

 ねえ 今日は楽しかったね
 ほら あの名前は忘れちゃったけど最後に乗ったアトラクション よかったよね
 なんかさ それだけで長い時間ならんだ甲斐があったってものだよね
 一緒にならばされた僕の立場を考えろって あはは でも楽しかったんだからいいじゃない
 ねえ
 また来ようか ふたりで いいでしょ もう素直じゃないんだから
 じゃあ決まりね 約束 はい

 ザザッ、ザ

 ……………………雨が降ってくる………

 ザ、ザザッザ

 ……………………ノイズの走ったラジオのように………ザ、
 ザザッ、ザ

 ザ――――――――――――――――――――――――目のまえに、ひとりの男。

 なに あの人 なんか変だよ
 いやだ こっちに近づいてくるよ どうしよう
 逃げたほうがいいんじゃないかな

 ああ、と僕は頷いた。
 彼女の手を引いて逃げだす――ザッ――男が追ってく――ザザ――すぐに追いつかれてしまう。
 男が刃物で突いてくる。それは目標に違わず僕の腹部に刺さって
 抜けた
 僕の身体から力が抜けた。でも、それは一瞬。僕は、彼女を守るために。
 そいつが抜いた刃物を両手でつかみ、そいつの腹部に突き刺した。
 抜けなかった、でも、そいつはもがきくるしんでいて戦意を失っている。
 僕は仰向けに倒れる。
 彼女はわきにしゃがむこともなければ、近寄ってもせず、ただ泣いていた。

 ごめんなさい わたしのせいでこんな あなたを巻き込んでしまって

 涙は、ひょっとしたら雨かもしれない。雨はとめどなく彼女の頬を伝い落ちていく。
 薄れていく意識のなかで、僕は微笑んで、彼女に想いを告げた。
 ……………………言葉は、雨に呑まれて消える………
 ザ――――――――――――――――――――――――


 ……………………雨が降っている………
 ざ、ざざっざ
 ザ、ザザッザ
 ……………………ノイズの走ったラジオのように………
 ザザッ、ザ
 ………頭のなかで誰かが騒いでる。助けを求めてる。
 
 ねえあんた そこに突っ立ってないで 手を貸してよ
 ねえ 見てるだけじゃなくてさ お願いだから
 どうしてそんな冷たい目で見るの 怪我してるんだよ 死にそうなんだよ

 僕は答えない。他に誰もいない。
 僕は、その女(ひと)を救ってあげられなかった。
 透明なはずの雨が薄汚くなっている。
 死にゆく彼女が助かる術はない。
 僕は、ただ突っ立っているだけで。

 ちくしょう 悪魔 あんたなんて人間じゃない どっか行け 死んじまえ
 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね

 呪われても、なにも言い返せない。
 ああ、でもそれはなんて―――――かなしいのだろうか。

 呪詛を放ちながら死体へと移行しつつあるその女(ひと)を僕は静かに見やる。
 あなたを助けることはできそうにない。
 ごめんなさい、だから僕は―――この華奢な首に手をかける。
 まだあたたかく、こんなにも生きているというのに。しばらくすれば死んでしまう。
 苦しみながら。
 だから僕は――――

 愛してる。

 ――――せめて、楽に逝かせてあげられるように。
 首を、捻った。

 ……………………雨が降っている………
 僕の目のまえには、女性の骸がひとつ。
 ……………………ノイズの走ったラジオのように………
 僕の瞳から何かが流れ出る。
 ――――それは、雨に呑まれる――――
 ――――嗚咽さえも――――――


 ……………………肉を断つ感触………
 僕の持つ刃物が彼女の身体を貫いている。

 ・何かは 真紅 深紅 きれいないろ

 たぶん、これは終わることのないユメなのだろう。
 彼女を救えなかった僕は、その罪を背負って生きている。


 雨が、降っていた。
 ノイズの走ったラジオのように。
 呪詛を放ちながら死体へと移行しつつあるその女(ひと)を僕は静かに見やる。
 告げる言葉はただひとつ。

 愛してる。

 想いを伝えるのに無駄な装飾はいらないのだから。
 その女(ひと)の動きが一瞬、止まる。
 そして、その口から言葉が洩れる。


 あなた誰………?






あとがき
 とりあえず即興で書いてみました。いろいろとベタで申し訳ありませんが。
 要するに主人公の妄想の物語です。
 何が現実で何が虚構なのか、それは読んだ人それぞれの解釈にまかせます。
 夢と現の区別が判然としないのは僕らの見ている世界も同様で、つまりはそんな感じのテーマです。たぶん。
 そういえば主人公は形を変える悲劇を夢だと言っていますが、じゃあ彼の現実の身体は今どこに居るのでしょうかね。考えても無意味だとは思いますが。

ターゲット ( No.9 )
   
日時: 2009/06/20 01:10
名前: 鎌兎
参照: http://book.geocities.jp/rento_sky/

 人を殺してみたい。
 それが、十五年の人生で、僕に湧き上がった感情だった。
 僕は異常者だ。
 それはもう、ずっと前から自覚している。
 ネットではグロテスクな映像や画像集めにいそしんだり、自慰に使うオカズは大抵陵辱(りょうじょく)ものだった。
 だから、殺したいという感情が芽生えたとき、特に驚きはなかった。ああ、やっぱりな、その程度だ。
 どす黒い感情が腹の底に渦巻いて以来、僕はずっと考えていた。
 どうやって人を殺すか。
 これは、なかなか重要なポイントだ。僕が一番楽しめる方法でなくちゃ意味がない。
 そして、殺したあと、僕はどうするか。
 これは、さほど重要ではない。ついでに自分も殺してしまえばいいだけの話だ。人を殺したら、僕はもう未練などなにもない。あるとすれば、未だ筆下ろしだということだけだが、それは殺す対象を女性にすればいいだけだ。
 さて、実際に殺すとなると、いくつかの過程と準備が必要になる。誰にも邪魔されずに、確実に殺さなくてはならない。とにかく、綿密な計画が必要だ。勢いに任せて殺すのでは、なにも面白くはない。一瞬の隙もないような計画を立て、その通りに殺したほうが、僕の趣味にはあっている。
 まずは、準備から入ろう。
 そう思い、つむっていた目を開く。目の前には、こうこうと光るパソコンがある。薄暗い部屋で、唯一の光源だった。それの電源を落としてから、のろりと立ち上がり、ベッドに倒れこむ。すっと、引き込まれるようにして、僕は眠りに落ちた。


 準備その一。
 まずは、ターゲットを決めよう。
 これは、かなり重要だ。それによって、難易度や殺害方法が変わるからだ。
 僕の理想としては、あまり力は強くないほうがいい。力が僕より劣っていること。これは大前提だ。
 ひ弱な僕は、当然力が弱い。だとすれば、妥当なのはやはり女性だ。僕もそっちのほうがいい。
 そしてもう一つ。あまり目立たないような、おとなしい人間のほうがいい。
 僕は、外界へと意識を戻す。瞬間、どっと耳に騒音が押し寄せてきた。思わず耳をふさいで、辺りを見回す。僕がいる場所は、学校だった。そして今は昼休み。みな思い思いに過ごしている。
 おとなしそうな女子生徒を探す。
 一人で席に座っている子。
 集団の中で控えめにしている子。
 このクラスでおとなしい女子といえば、二、三人だ。とはいっても、僕は当然女子と話したことなんかないから、見た感じで決めるしかない。でもまあ、なにもこのクラスに限定しなくてもいい。僕は席を立ち上がって、廊下へと踏み出した。
 おとなしい女子生徒のくる場所、か。
 僕の知る限りでは、あそこが一番きやすい場所なんじゃないだろうか。自然と僕の足は、ある場所へとむかっていた。

 図書室には、まばらに生徒がいた。
 本を読む生徒や、自習をしている生徒がいる。音のない、静かな空間だった。
 あまりきょろきょろとしているのも不審がられるので、僕は本を探す振りをして、手ごろな女子生徒の姿を探した。何人かいたが、あまり僕の好みのタイプではなかった。どうせやるのであれば、かわいいと思えるほうがいい。そのほうが興奮するし。
 図書室を出て、教室へと戻る。
 僕の頭にふと浮かんだのは、一人のクラスメイトの姿だった。
 山科(やましな)春香(はるか)という女の子だ。
 彼女は、華奢(きゃしゃ)で運動ができるタイプでもなく、あまり目立たない、おとなしい子だ。顔もそんなには悪くないが、男と話している姿を僕は見たことがなかった。
 ターゲットは決まった。
 次の準備にとりかかろう。


 準備その二。
 ターゲットの観察。
 その人物がどういう人柄で、本当にこの計画を実行するのにふさわしいか見極め、同時に人物の行動パターンを特定する。それは、計画を完遂するために、やっておかなければならない。
 僕はその日から、彼女の観察を開始した。授業中はばれない程度に彼女に視線を送る。彼女はいたって真面目に授業を受けている。それもそうか。もうそろそろ、僕たちは受験だ。こんなときに、こんなことを考えている僕はかなりおかしいんだろうな。まあ、受験なんて、もう僕には関係がないけれど。
 授業が終わり、下校となる。僕は、彼女を尾行する。
 彼女は、どうやら一人で帰っているようだ。僕の家とは反対方向に住んでいるらしく、普段僕がくることもないような道を進んでいく。
 学校から離れるほど、人通りが少なくなっていく。これは、犯行するにはもってこいの状況ではないだろうか。
 その日、僕は彼女が家に着くまで尾行し、その後帰宅した。家に着くころには、足が棒のようだったが、これも計画のためだと割り切る。
 夕食を終え、入浴も済ませて、部屋に閉じこもり考えることは一つだ。
 どうやって人を殺すか。
 絞殺、刺殺、撲殺。
 学生の僕に、選択肢は少ない。
 その中から、確実に殺せて、かつ僕が一番快楽を得られる方法でなくてはならない。
 その後、いろいろ考えたが、あまりいい答えは見つからず、僕はベッドに横たわって寝ることにした。

 翌日、僕は定刻に登校する。
 朝の教室は、割りと静かだ。クラスの中心人物がきていないためだ。
 僕は自分の席につき、辺りを見回す。
 ターゲットはすでに登校してきていた。
 僕は、メモ帳に記す。これからは、逐一メモをとることにした。これは計画の確実性を増すためには欠かせない。ただ、メモ帳を見られたらすべてが水疱に帰してしまう。用心が必要だ。
 僕は鞄の中にしっかりとしまい、観察を開始した。
 彼女は誰とも喋ることなく、席に座っていた。どうやら、読書にふけっているらしい。
 ぼんやりと眺めていると、ふいに肩をたたかれた。
「よっ。なんだ、なに見てるんだ?」
 驚いて振り向くと、そこに一人の男子生徒がいた。名前は……なんだったっけ。覚えていない。ただ、このクラス、いやこの学校で唯一僕に話しかけてくる人間だ。まったく、物好きもいたものだと苦笑する。だが、僕にとってはどうでもいい人間であり、さほど深い付き合いもないので、顔しか覚えていない。名前が思い浮かばなかった。
「ん? おまえ、山科に興味あるのか?」
 さきほどの僕の視線から察したのだろうか。なかなかの観察力をもっている。僕は、彼に対する認識を少しだけ改めた。
 僕は一応、彼の問いに対する答えとして首を横に振っておく。
「ふうん。まあ、いいけど。結構お似合いなんじゃね、おまえら。日陰者同士でな」
 彼は軽口を叩いてから、だんだんと賑やかになってきたクラスの中心へと戻っていく。
 嘆息を一つついてから、僕は彼女へと視線を投げた。

 今日最後の授業が終わり、放課後となるや否や、すぐさま教室を飛び出していく生徒が半分、教室に残りなにかしらやっているのが半数。その後者のほうに、ターゲットである彼女はいた。
 僕は、彼女が動きを見せるまで、じっと席に座っていた。彼女は荷物を片付け終えると席を立ち、帰る素振りを見せた。
 僕は彼女が廊下に出るのを確認してから、同じように廊下に出る。
 少女の姿を数メートル先に捉えつつ、メモ帳にペンをはしらせる。時計を確認し、記入する。彼女が帰る時間を覚えておくためだ。
 この日も、彼女は昨日と同じ道をたどっていく。やはり、人通りは少なかった。少女が家に入るのを見送ってから、僕は自分の家へと引き返す。
 途中、ふと足を止めた。
 そこは、公園だった。遊具も何もない、寂れた公園。中央に広場とベンチがあり、林がそれを囲っている。周辺に民家がちらほらと見受けられたが、密集している様子はない。ほとんどが空き地だ。
 ここは――。
 自然と、口元がほころびる。
 うってつけの場所じゃないか。
 人通りも少なく、公園に立ち寄るものもいない。
 ただ、心配なのは、こういう人気のない公園には、少なからずそういうことをしにくるカップルがいるかもしれないということだ。ここで犯行を行う場合は、そういう点も考慮しなくてはならないだろう。だが、それはなんとかしてみせる。
 僕は笑みを浮かべたまま、帰途についた。

 それから数日、僕は山科春香の観察を続けた。
 彼女は目立たず、おとなしい人間で、友人も少ないようだ。
 帰る道も、帰る時間もだいたい一緒。
 メモ帳には、びっしりと彼女についての情報が書き込まれていた。
 口元を吊り上げる。
 これで、僕の計画は次の段階へと進むことができる。


 準備その三。
 これは、もっとも重要な準備だ。
 どういう流れで犯行に及ぶか。
 綿密に、繊細に。
 失敗は許されない。
 殺し方も決めた。獲物は包丁やナイフなどの刃物を使うことにする。なぜなら、それが一番、抵抗された場合に、相手に恐怖を与えやすいからだ。切っ先を突きつけてしまえば、こちらのものだ。鈍器や素手などは振りかぶったりしなければならないが、刃物であれば少ない動作で攻撃に転じることができる。そういう利点を考えて、僕は刃物を選んだ。
 犯行場所は、あの公園だ。いろいろ調べてみたが、僕の予定している犯行時間には、そういうことは一度も行われていない。だが、これについては最後まで警戒が必要になるだろう。
 流れは、こうだ。
 下校途中、あの公園付近で、彼女を後ろから羽交い絞めにする。刃物をつきつけ、脅す。そして公園の林の中へ連れ込み、犯す。行為が済み次第、喉を掻っ切って殺す。いや、実際には痛めつけてから殺すかもしれない。とりあえず、止めの差し方は、それに決定だ。その後、死体をどうするかは決めていない。放置するか、埋めるか。いずれにせよ、僕も彼女の後を追って死ぬつもりだ。
 その後、何時間も計画を見直し、ミスがないかどうかを確認する。そして、予定実行日を決定した。
 決行は明後日――。
 その日、僕はなかなか寝付けなかった。


 まぶたが重い。
 僕は気だるい体を引きずって登校する。
 朝の空気は鬱々(うつうつ)としたもので、空はなんの色も映していなかった。まるで、僕がこれからやろうとしていること、その先に待っている未来を表しているかのようだ。
 僕は視線を戻し、学校へと足を向ける。
 今日、決行する。
 そのために、不審な行動は避けなければならない。いつも通りの僕でいなければならない。
 そう肝に銘じて、僕は静かに席へと着いた。


ターゲット(2) ( No.10 )
   
日時: 2009/06/20 01:12
名前: 鎌兎
参照: http://book.geocities.jp/rento_sky/



 放課後。
 山科が席を立つまで、僕は犯行手順が記された手帳をばれないように見る。
 席を立ち上がった彼女を確認してから追う。
「ねえ、関谷って最近、山科のことばっか見てない」
「あっ、あたしも思った、それ」
 教室を出る僕の背後から、女子たちの会話が聞こえてきたが、僕はあえて耳をふさぐことにした。
 山科春香は、ゆったりと階段を下っていた。僕は彼女に気づかれないような位置をとって、その背後をつけていった。
 夕暮れの中、つかず離れず尾行する。その時間は、僕にとって永遠に等しかった。嫌な汗が、額に滲んでいる。それを拭いつつ、足音を殺して歩く。
 気が狂いそうなほど、緊張していた。頭ががんがんして、正常な思考が保てない。もう、僕は僕ではないようだ。バッグに入っている凶器を取り出そうと、手を伸ばす。バッグは、開いたままだった。いつから開いていたのだろうか。でも、今の僕にはそれを考えるほどの理性は残されていなかった。その中にあるものを引っ張り出す。新聞紙に包装された包丁。これが、僕が選んだ凶器だった。
 僕は、これから、この包丁で、彼女を、刺し殺す。
 ぐらりと地面が揺れた。
 極度の緊張で、足元がおぼつかない。
 こんなのでは、ダメだ。
 僕は、二度三度深呼吸をする。
 すると、早鐘を打っていた心臓が、少しだけ収まる。
 めまいもしないし、立ちくらみもない。思考も正常に戻った。
 そして、そろそろ行動を起こす場所がやってきた。
 公園。
 辺りは既に薄暗くなっていて、視界が悪い。
 また、心臓が高鳴り始める。
 落ち着け、落ち着け僕――。
 そうやって気を静めようとするほど、心臓はその鼓動を大きく、間隔を短くしていく。
 いくんだ、いくしかない――。
 早くしないと彼女が通り過ぎてしまう。
 気持ちが急いて、まったく自分を落ち着けることができない。
 それでも、いくんだ――。
 気だけが先走って、つんのめってしまう。足がもつれて、地面に膝をついた。
 今日できなかったら、きっと明日も明後日もできやしない。
 そんな予感が頭をめぐって、僕は膝で進んでいく。当然、地面はコンクリートだ。膝がすりむけるが、痛みをまったく感じなかった。
 やっとのことで立ち上がり、バッグから包丁を取り出す。
 決意を固め、路地から飛び出した。


 ゆったりと、いつもの道をいつもの歩調で進む。
 日は西に傾き、まもなく沈んでしまうだろう。私は、夕暮れの、この時間になると、無性に悲しくなる。なんでかわからない。夕空に、哀惜や哀愁が漂っているからだろうか。それとも、まったく別のなにかだろうか。
 ともかく、薄暗くなった道を、私はゆったりと歩いていた。
 公園の近くを通りかかる。
 ここはいつきても不気味だ。人の気配がまったくしない。大声で叫んでも、悲鳴を上げても、誰も来ないんじゃないかと錯覚するほど、人気(ひとけ)がなかった。
 寒気を覚えて、早く立ち去ろうと、いくらか足早に歩く。
 この薄暗い不気味な場所からもう少しで抜け出せる――そう思ったのも束の間、なにかにぶつかり、尻餅をついてしまう。
「あっ、すいません」
 とっさに謝って、ぶつかった人を見る。
「あ、いや……こっちこそ」
 同じように尻餅をついた人物を見て、驚き、同時に安堵した。
 目の前にいる人は、クラスメイトの関谷くんだった。
「あ、関谷くん」
 よかった、と心底安心する。もしも、怖い人だったらと思うと、寒気がした。
「ご、ごめん」
 ぼそっと呟くと、彼は立ち上がって手を差し伸べてくれた。私はお礼をいってから、その手を掴んで立ち上がる。
 優しいんだな、関谷くんって。感心しつつ、
「ごめんね、関谷くん」
 もう一度謝罪して、私はまた歩き出す。
 一番怖い区域を抜けて、安心しきっていた私に、それは唐突にやってきた。
 一瞬のことだった。後ろから羽交い絞めにされ、口を布か何かでふさがれる。
「んっ……んぐっ!?」
 なんで、こんなことになっているのか、混乱する頭ではまったく理解できなかった。
「静かにしろ」
 背後の人間は、底冷えするような声音で、呟く。ふと、どこかで聞いたような気がする。しかし、そんな疑問も、次の瞬間には吹っ飛んでいた。
「んんっ!?」
「静かにしろ、といっている」
 私の首元に鋭利な刃物が突きつけられていたのである。
 私は、声もでなかった。背後の人間は、首元に刃物を突きつけたまま、私に命令をする。
「静かにしろ。騒いだら殺す」
 無言で何度も頷く。
 こんなことをして、なにをしようというのだろうか。
「よし、歩け」
 刃物を首元から背中へと移動させたのを感じる。逆らえば、殺される。危険だ、逃げろと警鐘が鳴るが、死の恐怖にさらされて、従うほかなかった。
 恐怖で足が竦み、うまく歩けなかった。ぐいと引っ張られ、強引に公園の中へと引きずりこまれ、林の中へと押し倒される。そこで私は、初めて私を押さえ込んでいる人間の顔を見る。
 目を疑った。
 そこにいたのは、さきほど尻餅をついていた私を助け起こしてくれた、関谷くんその人だった。
 え――?
 わけがわからなかった。
 なんで、私を押し倒し、刃物を突きつけているのだろうか。
 いったい、なんのために?
「――っ!?」
 突如、彼は私の制服を破いた。
 お世辞にもふくらみを感じるとはいえない、スポーツブラに包まれた胸部があらわになる。
 これからされる行為が、彼の目的が、私の頭にひらめく。同時に、本能的に抵抗していた。手足をばたつかせ、逃げようとする。しかし、彼はがっちりと私を押さえ込んでいて、まるで歯が立たない。力では、どうあがいても敵わなかった。
「んーっ! んーっ」
 必死に抵抗する。
 しかし、彼は意にも介さず、これからしようとしている行為の準備を進めていく。まず、私をうつ伏せにさせると、後ろ手に両手を縛った。なおも逃れようとするが、
「暴れるな。暴れると、うっかり刺してしまいかねないぞ」
 ナイフの背を私のふとももにはわせる。鉄の冷たい感触に、一瞬どきりとする。見れば、今にも切れてしまいそうなほど鋭利だ。ぞくりと背筋が凍る。もし、関谷くんが刀身を返し、刃のほうにしていたならば、私のふとももはすでに切断されている。血が吹きだし、肉ははがれ、白い骨が垣間見える。それを想像したが最後、私に残っていた、微かな理性は失われた。
 本能的に暴れた。たぶん、そう。なにを、どういうことをしたか、まるで覚えていない。次に気がついたのは――。
「んんんんっ」
 ちくりとした痛みで、目が覚めた。
 ふとももに、一本の赤い筋が通っていた。
 それを認識した瞬間、顔面から血の気は引いていくのがはっきりとわかった。
「んんんんんっ!?」
「暴れるな、といったはずだ」
 彼の声が聞こえる。口調は冷然としているが、息が上がっていた。
 ふとももの傷は深くはなかったが、さらなる恐怖を私に植え付けるには十分だった。
「んんんんんっ!」
「あまりいうことを聞かないようだと、もっとひどい目にあうぞ」
 私には、わかっていた。彼の目は本気だ。本気で私を犯そうとしている。そして、本気で私を、殺そうとしていた。
 このまま、抵抗しないでいても、どちらにせよ、いいようにされて殺される。
「んんんんんっ」
「この……っ、いい加減にしろっ」
 彼の語気が強まる。薄闇の中、月に照らされた白銀の刃が振り下ろされた。


 予想外だった。完全に。まるで、予期していなかった。今もまだ、にわかには信じがたい。だが、目の前の光景は、まさしく現実だ。そう、さっきまで、僕自身がやろうとしていたこと、そのままだった。
「なんてことだ……」
 僕は木の陰に隠れて、前方をうかがっていた。そこでは、茂みの中へ連れ込まれた少女――山科春香と男がもみ合っていた。山科のほうは、衣服を破かれ、地面へ下敷きにされている。
 ああ、この光景だ。僕が計画を立ててからずっと、頭の中に思い描いていたイメージは。
 どうしたらいいんだ。
 僕は、かつてなく動揺していた。誰か、助けを呼んだほうがいいのだろうか。
 辺りを見回す。
 しかし、通りがかる人はいない。それどころか、灯りすらほとんど存在していなかった。そうだ。僕はこの状況を望んで、決行場所をここにしたんだ。僕の選択は、まるで間違ってはいなかった。
ああ、間違ってはいない。だけど、今に限っては、そんなこともいっていられない。どうしたらいい。あそこで少女を襲っているのは、僕じゃない。あの男は、いったい誰だ。
 こんな偶然があってもいいのだろうか。男二人が、同じ少女をターゲットに、同じ場所で、同じ方法で犯行に及ぶなどとは。
 はっと気づく。
 まさか――。
 バッグの中を調べる。
「……ない」
 バッグの中に、目当てのものはなかった。
 僕のこの計画が、事細かに記されたあの手帳が。
 いつ、落としたんだろうか。
 いや、包丁を取り出だしたとき、すでにバッグは開けっ放しになっていた。
「教室、か」
 それしか、考えられない。
 あの手帳を誰かが拾って、読んだ。そして、僕が犯行に及ぶ前に先回りし、僕よりも先に犯行を決行したんだ。
 一度考えてしまうと、そうとしか考えられなかった。いや、そんなことはどうでもいいのだ。なぜ、ではない。誰が知ろうが、僕には関係ないことだった。さっきまでは。だが、今は違う。あの手帳には、僕の指紋がたっぷりとついているはずだ。それを、犯行現場に落としていく。そうすれば、自然と警察の目は僕へいく。冤罪。そして、あの男だけがいい思いをする。そんなの、我慢ならない。だけど、飛び出してどうする。僕で、あの男に敵うのか。相手も、刃物を持っている。同じ条件下で、僕が勝てるとは到底思えない。ではどうするか。不意打ちの一撃で、確実に殺すしかない。殺せるか。無理だろう。興奮状態で、的確に急所が狙えるはずがない。運よく、などとは絶対にいかない。じゃあ、どうしたらいい。あの男を、殺す方法は――。
「やるしかない、か」
 僕は、最悪の手段を選ぶ。
 それしか、残されていない。
 こんな方法、本当は嫌だ。けど、あの男を確実に殺せる。抹消できるんだ。やろう。刺し違えてでも、絶対に殺す。
 意を決し、僕は木陰から飛び出した。


ターゲット(3) ( No.11 )
   
日時: 2009/06/20 01:15
名前: 鎌兎
参照: http://book.geocities.jp/rento_sky/

 予期した痛みは、いつまで経っても襲ってこなかった。痛みを感じる間もなく、死んだのかな、などと暢気なことを考えていた。
 ゆっくりとまぶたを開く。
 そこでは、私の予想だにしない展開が待ち受けていた。
 真っ赤な液体が、地面へと垂れる。それは黒く大きな染みを作った。ぽたりぽたりと絶えずに赤い水滴は落ち続ける。その度、染みは大きくなり、土が滲んでいく。
 水滴の出所を、目で追う。そこで、私は今度こそ驚愕した。
 さっきまで私を襲っていた男の手に、深々と刃物が突き刺さっていた。
 そこから血が吹き出し、地を黒く染めていた。
 私は、声が出なかった。
「ぐ、あああああああっ」
 男――関谷くんが、初めて悲鳴を上げた。
 やっと、痛みと、自分の状況に気がついたのだろう。
 そして、彼の体が大きく揺れた。いや、倒れたのだ。私の横に突っ伏し、痛みにのたまう。
「うあああっ」
 そのとき、私の目に別の人間が映った。
 一瞬で理解した。
 この人が、私を助けてくれるのだ、と。
 私は立とうともがくが、両手を縛られていて上手くバランスがとれずに寝転んでしまう。なおも立ち上がろうとするが、膝が震えて立つことができない。
「やはりきたか……っ」
 私の横で、狂気に満ちた声が発せられた。
 関谷くんが、自分を転ばせた人物に向かって、言葉を投げかけたのだ。
 その彼の口調は、まるで闇の向こうにいる、顔もわからない人間の正体を知っていうかのようだった。
「ああ、おまえを殺しにきたんだ」
 声は、男のようだった。
 そしてまた、彼も関谷くんのことを知っているようだった。
「殺しにきたなんて物騒だな」
 関谷くんは立ち上がる。けれど、その足元はふらついていて、気力だけで立っているような感じだ。
「刃物を振るって、女子を犯そうとしているやつにいわれたくはない」
「まったくだ。だがな、最初はおまえがやろうとしていたことだ。だから、おまえにそんなことをいわれるなんて、心外だな」
 私は耳を疑った。関谷くんと話しているこの男も、私を犯そうとしていた? 最初はこの男が、私にこんなことをしようとしたいた?
 わけがわからない。
 私は今、どんな状況下にいるのだろうか。
「ああ、だからこそ、おまえを殺すんだよ、関谷」
「よく俺だとわかったな」
「ここからなら、薄っすらだけど顔が見える」
「それだけじゃないだろう、理由は」
「教室で、偶然女子の会話を聞いた。おまえが、山科に興味があるんじゃないかってな。そして、僕はあの手帳を落とした。これも偶然だ。あの手帳を誰かが拾ったとして、内容を読んですぐさま実行に移そうとは思わないはずだ。だけど、そうじゃないやつもいる。僕にこの前、話しかけてきたのは君だ。『おまえ、山科に興味あるのか』って。これは、不安からの行動の表れだ。女子がいっていた内容も考えれば、合点がいく。そして、手帳を読んだおまえは焦った。僕に、山科を殺されてしまう、そう考えたおまえは、僕よりも早く計画を実行しようと、先回りした。そして、僕の計画通り、犯行に及んだ。僕の計画を使ったのは、それが一番確実だったからだろう。そして、自分も快楽におぼれたかったからだ。僕から彼女を守ることだって、なんなくできたはずだ」
 私は、彼のいっている内容の半分しか理解できなかった。もう、なにかを考える余力は残っていなかった。
「ははっ……」関谷くんが乾いた笑いを漏らす。「ほとんど正解だよ。でも、ちょっと違うところがある。俺は、手帳を見ておまえの計画の内容を細かく知った。でも、それ以前から、おまえがなにかしようとしているのは知っていたんだ。おまえが、ずっと山科のことを観察しているのも、放課後、山科を尾行しているのも、俺は知っていた。なにかあるな、とは思っていたんだ。そして、今日のおまえは、どこか気を張っていた。だから俺は、おまえがなにをしようとしているのか、知らなければならないと思ったんだ。狙いは、手帳だった。おまえが、以前から大事そうにしているのを、なんども見ている。なんどもなんども読み返しているのも。今日、帰り際にまで見ているのも。その手帳に、なにかがあると、俺は確信していた。絶対見なければならないと思った。そして、それは成功した。おまえが、席を立ち、トイレにいっている隙に、見ておいたんだ。おまえは必ず、一日に一回トイレにいくだろう」
「なるほど、うかつだったな。トイレにまで手帳を持っていっては、逆に怪しまれるだろうと思って置いておいたんだけどな」
 完全に、私の存在は忘れられているようだった。今なら、この場所から逃げられるんじゃないか。そう思って、ちょっとずつ後退し始める。音を出さないように、静かに這う。
「さて、話は終わりだ。僕はこれから、君を殺す」
 陰で見えない男が、じりじりと関谷くんに迫る。そして、一歩大きく前進し、一気に詰め寄る。白刃がきらめき、関谷くんを襲う。彼は間一髪でこれをかわすと、襲ってきた男の背後へ回り込んだ。しかし、反撃には転じない。腕の痛みで、それどころではなかったのかもしれない。けれど、腕に刺さっていた刃物を抜き、無傷の腕のほうで、それを構えなおした。関谷くんも、臨戦態勢だった。
「山科さん」
 私の目の前にきていた男がいう。その声音には、さきほどまでの威圧感はこもっていなかった。
「これにちょっと触って」
「え……?」
 目の前には、刃物の柄があった。どうしてだろうか。まるで意味はわからない。だけど、手を伸ばしてそれを握った。
「ありがとう。さ、早く逃げて」
 うなずいて、私は両足にしっかと力を入れて踏ん張る。不思議と、膝の震えは収まっていて、すんなりと立つことができた。
 ただ、それでも両手を後ろで縛られているため、走ることはできない。早足で歩こうにも、さっきまで恐怖で笑っていた足は、思うようには動いてはくれなかった。
「待てっ」
 背後から関谷くんの怒鳴り声が聞こえる。私は、それに構わず、公園の外へ出ようと必死に足を動かした。
「さあ、あとは……」
 私の背後で、地を蹴る音がした。


 白刃が街灯に照らされ、きらめく。
 とっさに身を引くと、さっきまでいた場所に刃物が突き刺された。
「くっ……」
 数歩、間合いを取る。刺された腕を見る。傷はだいぶ深い。血がとめどなく溢れてくる。ただ、アドレナリンが大量に放出されているせいか、ほとんど痛みを感じることがないのが幸いだった。
「このっ」
 薄闇の向こうの人影を目掛けて、無傷の腕で刃物を振るう。薄闇の中、刃先を濡らしている俺の血液が飛び散った。感触はない。刃物は空を切った。
 闇の中、きらりと光るものを見て、一歩、二歩と後退する。目の前を、鋭利な刃が通り過ぎる。
 たらりと、生暖かいものが頬を伝う。手を伸ばし、触ってみると、それは血だった。額から垂れてきている。さきほど、かすったのだろうか。傷は浅いだろう。しかし、予想以上に流れ出ていた。額は、傷が浅くとも、地が多く出る箇所だ。
「ちっ」
 血を拭う。ひとまずは、それしかできなかった。
 正直、やつのことを甘く見ていた。いつも一人でぽつねんとしていて、見るからにひ弱そうなあいつだ。組み伏せてしまえば、簡単に勝負がつくと思っていた。しかし、あいつは動きを捉えさせないように動いている。刃物を取り上げようにも、この暗闇では難しい。
 足音が止まる。どうやら、動きを止めたようだった。俺とやつの荒い息が静寂に包まれた公園を支配する。
「おまえの負けだ」
 息を整えていると、暗闇の向こうから声がした。やつの声だ。
「どういうことだ」
 俺は、たまらず訊き返す。
「山科さんは、もう家に逃げ帰っているだろう。おまえは、もう終わりだ。山科さんが証言すれば、おまえは捕まるだろう。つまりおまえは、社会から死ぬことになる」
「おまえのいっていた〝殺す〟ってのは、そういう意味か」
「そうだ。おまえは、社会から完全に死ぬことになる。俺が、おまえを殺すんだ。出所したところで、世間はおまえに冷たい目を向ける。もう、まともには生きていけなくなるんだ、おまえは」
 嘲笑うかのような口調に、頭に血が上るのがわかる。
「このやろう……っ」
 地を蹴り、突進する。刃物を構え、突き刺すが、空を切ってしまう。しかし、相手の動いたほうに合わせて、立て続けに刃物を振るった。やつの後退にあわせて踏み込み、振るう。捉えた――そう確信する。次の瞬間、金属音が公園に響いた。刃物を、刃物で防がれたのだ。しかし、やつの刃物は、勢いに吹き飛ばされ、俺の背後へと飛ばされる。
 決まった。
 今度こそ確信して、刃物を振り上げた。そのとき、左目に額の血が流れ込む。
「うっ」
 思わず動きを止めてしまった。
 瞬間、どん、と腹に鈍い衝撃が走った。片方の手で、突き飛ばされたのだ。後方によろめき、背後から地面に落ちる。背中を打った衝撃で、刃物を手放してしまった。血のついた刃物は、やつの足元へと転がった。
 やばい。
 本能が急きたてる。慌てて身を起こし、後方へと落ちた刃物を探す。幸いにも、刀身が街灯を反射していて、すぐに見つけることができた。
 それを拾い、構えなおす。やつは襲ってこようとはせず、ただ息を整えているだけだった。
 なにかがおかしい。
 俺の中の冷静な部分が、頭を回転させる。
 やつは、なにを狙っている――?
 そして、はたと気づいた。
 俺は、完全に負けたわけではない。
 まだ、大丈夫だ。まだ、逃れられる術はある。
「ははっ……笑わせてくれる。俺を、殺すだと?」
「なにっ」
 相手がぴくりと反応したのを、暗闇を通して感じる。
「そこから、これが見えるか?」
 俺は、傷ついた自分の腕を上げた。
「この、傷ついた腕が」
「……っ」
 相手は息を飲む気配が伝わる。
「これは、誰がつけた傷だ?」
 つまり、俺の腕に傷がある以上、傷をつけた相手がいる、ということだ。
「これが、警察に見つかれば、おまえも一緒に終わりだ。お陀仏なんだよ」
 静寂。
 とたん、笑い声が聞こえた。
「なにがおかしい」
「いいや、自信たっぷりにいうから、いったいどんな策かと思ってななんのことはない、すでに想定済みだ」
「なんだと?」
 今度は、俺が眉を吊り上げる番だった。
「それは山科さんがおまえから刃物を奪って、正当防衛のためにつけた傷だと判断される」
「しかし、刃物には指紋がついているはずだ」
「ああ、そういえば、手帳の必需品欄に、〝軍手〟と記すのを忘れていた」
「――っ」
「俺は軍手をつけている。したがってその包丁には、君と山科さんの指紋しかついていない」
「待て、いつ彼女がこれに触った」
「逃げる直前に柄を握らせておいたんだ」
「なんてことだ」
 愕然とした。もう、打つ術はなかった。
 膝をついた俺を、やつは見下ろす。その構図が、やけに気に食わなかった。いつも、目立とうとはせず、誰とも話さず、俯いて座っているだけの、こいつに。みんなから、空気扱いされているこいつに。今、見下ろされている自分。ひどく、惨めで情けないかっこうだ。
 一矢、報いたい。
 そう、強く思った。
 このまま捕まるくらいなら、こいつを殺してからだ。
 その考えに、頭が一杯になる。次から次へと、憎しみの念が沸いて出てきた。
「さて、あとは……」
 やつはそういうとこちらに歩み寄ってきた。
 飛んで火にいる夏の虫だ。
 俺は、地面を見ながら、口元を吊り上げた。
 やつが、俺の目の前で止まる。同時に、強く刃物を握りなおした。
「さて、手帳を返してもらおうか」
 いまだ――起き上がりざま、刃物を突き刺す。
「うらああああああっ」
 深深と突き刺した感触があった。
 刃物は、やつの胸に、根元まで突き刺さっていた。
 地に落ち、瀕死の状態で、なおやつは口を開いた。
「手帳は……返して、もらえなかったか。まあ、いい。ほとんど、計画、どおり……だ」
 途切れ途切れに話す。
「計画どおりだと?」
「もとから、僕は……これ以上、生きていく気なんて、なかったんだ」
 息も絶え絶えに、今にも死にそうなのにも関わらず、それでも続けた。
「手帳さえ……返してもらえれば、完全に君を、犯人に、できたのに。でも、僕を、殺して、しまったんだから……君は、立派な犯罪者だ」
 そこまでいって、やつは力尽きた。
「そういうことかよ」
 俺は、唾を吐き捨てる。
 あいつは、もとから今日を命日に決めていた。そして、計画を実行した。いや、しようとした。そこで、俺という邪魔が入った。だから、計画を変更して、俺に自分を殺させようとした。そして、邪魔をした報復に、俺を殺そうとしたんだ。この人間社会から。
 そこまで考えて、おかしなことに気づいた。
「俺……手帳なんて持ってないぞ」
 あいつは、俺が手帳を持っているようなことを、正確にいえば拾ったようなことをいっていた。
「でも、俺は……〝手帳なんてはじめから拾ってなんていない〟」
 空を仰ぐ。しかし、星空は木々が邪魔をしていて見えなかった。
 そして、ある考えにいたったとき――突然、胸の辺りに痛みが広がった。そして、そのまま、俺の意識は遠のいていった。完全に意識がシャットダウンされる寸前、声が聞こえた。
「当たり前だよ。手帳は俺が持ってるんだし」
 どこかで聞いたような声だった。


「ふう、かなり大変なことになってんなあ」
 公園の茂み。道路からでは見えない位置に、今、死体が二つ、転がっている。
 すべては、放課後、教室で拾ったあの手帳からだった。
 手帳には、ある犯罪に関する詳細が事細かに書いてあった。
 正直、驚いた。
 腰を抜かしそうになったといってもいい。
 それは、あまりに完〓だったからだ。完〓すぎて、不測の事態さえも、計画通りになってしまった。つまり――転がっている死体は、二つ。計画どおりでは、製作者と女子の死体が。現在は、製作者と不測の事態の二つ。
 この計画は、俺にも十分に可能な内容だった。ただ、決行日が今日だったのには驚いた。というより、焦った。山科は、いつも教室の片隅で本を読んでいるようなおとなしい女子だったが、それなりに興味があったからだ。今、俺のポケットにあるこの手帳には、彼女の名が記載されていた。犯したいと思ってしまった。
 俺は、教室を飛び出した。家に帰り、手袋を用意する。いくら必需品欄に書かれていないからとっても、刃物を扱う以上は指紋には気をつけなければならないと思ったからだ。
 そこから、全速力で公園へと向かった。
 そこではすでに、行為が行われようとしていた。俺は茂みに隠れていた。飛び出そうかと迷っていると、別の男が現れ、山科は逃がした。俺にとっては逃げる山科よりも、この二人の生死のほうが重要だった。二人が死ねば、あとはやりやすくなる。山科を独り占めできるのだ。俺は、成り行きを見守ることにした。
 そして、あとから現れた男は死んだ。
 俺は、行動に移す。すでに死んだ男の近くに落ちていた刃物を握り締め、茫然自失状態の男にこっそりと近づき、手をやつの前に回し、心臓目がけて刃物をつきたてる。
 わざわざ前から突き刺したのは、自殺に見せかけるためだ。
 死んだ男のものを選んだのは、指紋がついているためだ。
 気づかれないか、かなり緊張したが、興奮状態にあった男は、俺に気づくことはなかった。
「これで、俺に注意が向く可能性は低くなったかな。まあ、すぐにばれさえしなきゃいいか」俺は、ほくそ笑んだ。「山科は明日、学校くるかな」


The end

Re: SS書こうぜ! ( No.12 )
   
日時: 2009/06/20 01:20
名前: 鎌兎
参照: http://book.geocities.jp/rento_sky/

いやー、かなり久々の投稿。
これ書くのに1ヶ月以上、2ヶ月くらいかかってしまいましたorz
ミスリードの練習のつもりだったんですが、かなり意味不明な内容に。。。
なにか指摘あればお願いします。


凍零さん、ARISさん、この場を借りてお礼申し上げます。
このスレを盛り上げてくれてありがとうございますw
そんな感じでばんばん投稿しちゃってください。

それではこの辺で。

Re: SS書こうぜ! ( No.13 )
   
日時: 2012/09/29 22:32
名前: 通りすがりのコンビニ店員



 ※恋愛系? 甘いのが苦手な方はダッシュでお逃げください



『滅びる世界と冷たいビール』


 ツダこと俺は、メダロットだ。
 どこぞの古時計よろしく、時廻くるり――マスターが生まれた日に、やってきた。
 以来、くるりと俺は、ずっと一緒だ。
 一緒に育ってきた。
 幼いくるりは可愛く、素直で、俺にべったり甘えてくれて、
「大きくなったら くるり、ツダのお嫁さんになるぅー!」とか可愛いこと言ってくれてたんだが、


 ……なぜこうなったのか、二十三年の月日を経た現在では――
 俺はちらりと、動かないパソコンを睨んだまま、舌打ちを繰り返す女に目をやる。
 ――あんなに可愛かったくるりは、気の短いダメ女に変貌をとげていた。


「あー、もうっ、くそッ! パソコン動かねぇええ!! しかもクソあちぃ」
 確かに今日は暑い。
 部屋の壁にかかってる気温計が40度にさしかかっている。
「あ゛ぁー…もういいやビールでも飲も。ツダぁ……取って」
「昼から酒か」
「いいのよ。人気作家は儲けてんだから」
「そんなこと言ってると足元すくわれるぞ」
「うーさぁい。あんたは母ちゃんかぁ……」
「似たようなもんだろ。掃除洗濯、料理。買い出しに風呂。全部めんどうみてやってんだからな」
「あはは……お手伝いロボットさんめぇ!」
 面倒みてやってるのに感謝もしない態度に、気は長い方だがさすがにカチンとくる。
「次言ったら見捨てるぞ だめマスター! だめ駄目メダロッターが! 月に一度ぐらい公園にロボトルしに行く甲斐性ぐらい見せやがれッ!!!!!」
「キ~れちゃった♪ キれちゃった♪ でもイヤぁようっ。ガキからパーツ巻き上げるなんてツマンナイ」
「なら遊びのロボトルでいいだろ」
「真剣じゃないと更にツマンナイ」
「くっそ。堂々巡りか……あぁ、それからビールは切れてるから、待っても出てこないぞ?」
「ゲッ!」
「自分で買いに行けよ。俺は行かないからな」
「えぇー。ツダぁ……買ってきてよぉ」
「偶には外出しろ。いい機会だろ。体動かせ」
「へーんだ。どうせ外に連れ出して、私にロボトルさせる気なんでしょう……ふん、悪いけど! 私は動かないから! この部屋から一歩たりとも動かない!!」
「なんだそれダメ女宣言か」
「どうとでもー? 女なんか捨ててやるわぁ」
「ビールはいいのかよ」
「諦めた。暑さは寝て誤魔化す………パソコン復活したら教えて」
 ふらふらベットに歩み寄ったくるりは、そのまま ぼすっと音をたてて倒れこむ。
「そのまま滅びちまえダメ女」
 寝に入っている我が主に、吐き捨てた。


「――滅びると言えばさぁ」
「ん?」
 予想外に。
 いつもならベットin三秒で安眠に浸かる女が、なぜか今日はまだ起きていて、俺の言葉を拾ってきた。
「アストラダム? ノストラダムだっけ? なんだかの予言でさぁ。世界が終わりを迎えるってのがあってさぁ」
「なんだそれ。次の小説のネタか?」
「イエス。いえーすぅ。『滅びる世界の中で』ってヤツで――あした世界が終わるって知って、主人公が最後に幸せになれる場所を探す話なの。書いてる途中なんだけ……パソコンが死んだ。もぉヤダァ」
「古いし買い替え時かもな」
「これ書き上げたらそうしよっかなぁ。……ちなみに、ツダはあした世界が滅ぶならどうする?」
「ロボトル」
「………………だっよねぇ」
「くるり はどうなんだよ?」
「そーね。あした世界が滅ぶなら――」
 くるりが、ベットからむくりと起き上がった。
 どこに向いているかわからない、とろんとした目を宙に浮かべている。


「――私は、ツダを整備するなぁ」
 ひとり言のような呟きだった。
「いつもは行かない買い物いって。ご無沙汰のメンテ用品ひっぱりだしてきて、ピカピカに磨きあげんの」
 なんでもないように くるりは次々と言葉を重ねてゆく。
「んでもって、めでたい日にしか買わないメダロット社の高級オイルと、私は……シャンパン、もいいけど、やっぱビールかなぁ。それで乾杯!」
「そうやってさぁ。いっしょに飲み交わしながらさぁ……お決まりの『お疲れ。あんがとな』がツダから聴けたら」
「きっと私は次の瞬間死んだとしても」


「幸せだぁ」


 宙に浮かべていた視線をおとし、俺をみつめる くるり。
 性格に似合わない……微笑に、息を呑む。
「ちょっとまて――それ、は……」


 それ は。


 ぼすっ、とダメ女が布団に落ちる音がした。
 ベットin三秒。
 すやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。
「……………」
 再び訪れた沈黙のなか、フリーズしたパソコンの動作音と寝息だけが響く。
 俺はゆっくり立ち上がり、


「…………………………ビールでも買ってくるか」
 二十三年たっても可愛いマスターのために、
 キンキンに冷えたヤツを用意しておいてやるのも、悪くない気がした。


 Fin


 *主人公の名前→時廻(ときまわり)くるり。


Re: SS書こうぜ! ( No.14 )
   
日時: 2012/09/29 22:43
名前: 通りすがりのコンビニ店員


 捨てられたメダロットと捨てられた赤ちゃんのお話。
 ほのぼのしたのを目指した……つもり、です。


 『赤ちゃんとメダロット』


 二機のメダロットが、町外れの森の中に住んでいました。
 細長のメダロットと、横長のメダロット。
 二機とも野良メダロットでした。
 人間が大嫌いでした。
 しかし、ある日。
 彼らは人間の赤ちゃんと出会ってしまうのでした。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 森の中にカゴが落ちていた。
 カゴの存在に気づいた横長のメダロットは、近づいてカゴの中を確認し――後悔する。
「捨て子じゃねーか……」
 カゴの中では、可愛らしい赤ちゃんがすやすやと寝息をたてていた。
「……人間ってやつは、つくづく最低だなぁ」
 横長のメダロットがいる『ここ』は、森の相当奥の場所。
 人間はめったに来ない。
 そして『めったに』来る人間は、人間嫌いの横長のメダロットが、イチバン嫌っている――メダロットをゴミのように捨てるヤツラだ。


 横長のメダロットは唸る。
 人間たちが最低なのは知っていたが、まさか『人間』であるはずの子どもまで、この森に捨てていくとは思っていなかった。
 これがメダロットだったなら、助けてやらないでもない……が、相手は人間。
 横長のメダロットが大嫌いな『人間』だ。
「どうすっかなー」
 見捨てて帰るか?
 連れて帰るか?
 横長のメダロットは考える。


 仮に連れて帰ったとして。
 赤子のあやし方など、自分は知らない。小屋に帰れば相方がいるが、あいつも同じだろう――
 横長のメダロットは、赤ちゃんを見捨てることにした。


「さぁ、帰ろう。すぐ帰ろう」
 くるり 横長のメダロットは赤ちゃんに背を向けて歩き出す。


 別に。
 捨てメダロットでも、助けない時だってある。
 生活に困っているときは、追いはぎヨロシクそいつ等からパーツを強奪することだってある。
 今さら人間の赤子を見捨てるぐらい何でもない――
 横長のメダロットは何度も自分に言い聞かせた。
 その度にすやすやと眠る赤ちゃんの顔が脳裏によぎったが、横長のメダロットは、それを気のせいということにした。


 横長のメダロットは、随分と歩いた。
 すでに赤子のカゴは見えなくなっており、自分の住みかである小屋は、もうすぐそこ。
 その時。
 聴こえた気がした。
 赤ちゃんの悲鳴のような声が。
 横長のメダロットの耳に、聴こえてきたような気がした。


 今一度。横長のメダロとの脳裏に、赤ちゃんの寝顔がよぎる。
 赤ちゃんの浮かべていた寝顔は、安心に満ちていた。
 つつけば割れる幸福の中、それが続くと信じて疑っていない寝顔だった。
 壊してはいけない気がした。
 あの安全で幸福なカゴの中の世界を。
 壊してしまっては、あの赤ちゃんも一緒に壊れてしまう。
 それを認めてしまっては、
 自分も、あの赤ちゃんを捨てた奴等と、自分を捨てた奴等と、同じになってしまう。


 気がつけば、横長のメダロットは赤ちゃんの入ったカゴの前にいた。
「はぁ…はぁっ…………あっ、…あれ……?」
 荒い息をなおしながらカゴの中を覗けば、赤ちゃんはまだ すやすやと眠ったままだった。
「はぁ~~~……………くっそ、ただの空耳かよっ」
 横長のメダロットは腰をどすっと下ろし、空を仰ぐ。
 今このまま帰っても、小屋に着く前にまた、空耳が聴こえてくる気がした。
「……………」
 というか、絶対的に聴こえてくる。
 間違いなく聴こえてくる。
 聴こえてくる気しかしなかった。
 目の前の赤ちゃんを連れて帰らない限りは。
「っち。しゃーねーな。お前も連れてってやるよ……」
 横長のメダロットは、赤ちゃんをカゴごと抱きかかえる。
 出来るだけ優しく、丁寧に……寝ている赤ちゃんを起こさないように。
 すぅすぅと続く吐息にほっと胸をなでおろしながら、横長のメダロットは、二度目の家路についた。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 その後、赤ちゃんを連れ帰ったことで横長のメダロットが、相方のメダロットに吹っ飛ばされることになるのは、それはまた、別のお話。




 あとがき
 続きも考えてるけど、たぶん続かないです。
 メダロットが親代わりに子育てする話が書きたかったんだけど……無念でした。

サムライメダルのアークビードル ( No.15 )
   
日時: 2012/10/18 22:40
名前: 雪の城


あいつの笑顔を見るたびにふと思う事がある。
痛みを誤魔化して笑うあいつ。謝れば面白いぐらい首を横に振るあいつ。夜な夜な訓練しては落ち込むあいつ。
間違っていたのは紛れもなく僕だとは理解していた。



アントンはロボトルで勝った事は一度もなかった。
アントンは好きなパーツを使って勝ちたかったし、それ以外のパートナーを選ぼうともしなかった。だが、そのパーツは射撃でパートナーのメダルは格闘メイン。
祐樹は典型的なおぼっちゃまで、ロボトルに負けてもすぐに代替え品のパーツはある。カモにはなりそうだが、すぐ近くには護衛かわりに雇われた付き人が出てきて追い払ってくれる。今まで生活で困った事はなければ、深く悩んだことはない。
アントンはそういう人物だった。
アントンのパートナーのサムライは赤色と顔の前に突き出た二本のツノが特徴的なアークビ―ドルを装備していた。日本の選手が使っていたアークビードルに心を奪われそのまま衝動買いをしてから、アントンは装備を変えていない。
戦った相手からメダルを見られ何度も「パーツを変えるべきだ」と指摘もうけた。だが、アントンはそれに耳を傾けずアークビードルを使い続けた。


「ロボトルしようよ!」


弱すぎるアントンをそう誘った友人は側から消え、アントンからそう誘っても誰も乗ることがなくなるのはもう必定だった。


「あああ、なんで皆僕とロボトルしてくれないんだ!別に僕と戦って僕がパーツを奪った事なんかないじゃないか!ただロボトルするだけでいいのに、なんて皆は心が狭いんだ!最悪だ!最低だ!」
「アントン殿」
「そうだよ!お前が弱いからだよ!もーすこし!お前が強ければ!」
「申し訳ござらぬ。私の落ち度で間違いはございませぬ、アントン殿」
「ならもっとがんばれよ!」


サムライは顔を下に下げた。付き人は一歩後ろで見ていたが、あまりの仕打ちに前に出ようとしたとき、サムライの腕が横に突き出された。


「アントン殿。一つお願いがございまする」


怒られたばかりでお願いをするなんて。
アントンは言葉に詰まるが、サムライの事は嫌いじゃなかった。友人に馬鹿にされる古風な話し方も、自分を完全に立ててくれるところも、大好きだった。


「なに?」
「私に暇をくださいませぬか」
「いとま?」
「辞めさせてくださいということだよ」


付き人のメダロットがぶっきらぼうに言い放つ。付き人が慌てて口を抑える(抑えた所でメダロットが黙るわけがない)が嘘ではないと解った。再びサムライをみれば真剣な表情で自分を見ている。
本気で言っている。
アントンはすぐに理解をすれば言葉が出てこなかった。負ける理由も、サムライが自分の為に夜な夜な射撃訓練をしていてくれた事も、自分を気遣ってくれていたことも解っていた。解っていただけに、裏切りが許せなかった。
ずっと側に居てくれるのだと思っていた。


「なんだって?」
「私を離せばアントン様にふさわしいメダロットが側につくことになるでしょう。私はアントン様が望んだ勝利を掴まれる所が見とうございます。このサムライの手で勝ちを導けなかったことは悔やまれまするが、アントン様の為ならば退く事もためらわぬ所存。どうか、ご決断を!」


嘘だとは思えない。アントン様に嘘をつくなど私にはできませぬ。以前そう言われた事がある。実際、嘘をつかれたことはない。実直で誠実なまさにサムライの魂を持ったメダロットだった。
アントンはメダロッチをサムライに向ける。


「パーツ、転送」

「え?」


以前付き人からもらったパーツをサムライにむける。サムライは光に包まれる。付き人の表情が明るくなる。


僕は、このメダロットに応えなくちゃいけない。
それが、僕がマスターである証だ。


「これは・・・」


サムライが新しいパーツを見て言葉をなくす。付き人とそのメダロットが抱き合って泣き始めた。
アントンは笑った。


「KBTのメタビーだよ」




――――
台無しにしてみました。
アントンに殺意を芽生えてくれたら作戦通り。スペースありがとございました。

ライズ学園ライズ組 ( No.16 )
   
日時: 2013/07/25 00:21
名前: 雪の城

内「学園祭近いからそろそろ内容決めるぞ。学級長任せた」
柚木「はい!先生!学園祭のステージ発表は白雪姫だが、私の白雪姫と竜の王女以外決定していない。他を決めよう」
ヒロキ「何勝手に決めてんだよ!」
ルク「私だってやりたいのあるんだから、公平に決めてよ!」
柚木「うぐぅ……ならば聞こう。何やりたい」
ヒロキ「スパイダーマン」
深也「絶対無理だろそれ!」
ヒロキ「そーいうオメーはやりたいのあんかよ」
深也「……シェークスピアとか」
時雨「はいはいロミジュリロミジュリ。リア充爆発しろ」
傑「時雨、今何かいったか?」
時雨「いや。何も」
ヒロキ「シェークスピアってなんだよ!新しい飲みもんかなんかかよ!」
コトヒラ「逆にそのボケすごいな。イングランドの劇作家だ。ロミオとジュリエットとか、マクベス、ハムレット、テンペストもその人が書いた話だから何か見たことあるだろ?」
ヒロキ「え……ねーよ」
斗的「そういえばハムレットってどういう話だっけ?李皇主演でオフィーリアよしのでやらね?」
李皇「やめろ!笑えない!」

ハムレットにはヒロイン(オフィーリア)のお兄ちゃん(レアティーズ)と主人公(ハムレット)が決闘するシーンがあるのです。

李皇「馬鹿言ってないで話を進めるぞ。深也はロミオとジュリエットがいんだな?」黒板カキカキ
深也「いや、そこまで言ってない」
柚木「じゃあナシで」
深也「なっなしとも」
柚木「揺らいでる意思なんか採用するはずない!ほら早く消す!」
李皇(あぁ、唯一高校生らしいものが……)けしけし
ルク「私は桃太郎がやりたい」
ウサギ「ヴァレンが桃太郎で?」
ルク「いや、私が桃太郎。ヴァレンは吉備団子でいいや」
ヴァレン「どういう事だそれは!?」
ルク「サルがディスト、犬がワンダ、雉がローラで」
全員(名作が台無しだ……!!!!!!)
傑「白雪姫、やろうよ」
時雨「さんせー」
ルク「じゃあ私、王子でいいよ」
ワンダ「ルクちゃんは裏方さんね」
ルク「えっなんで!?」
時雨「吉備団子よりはマシだろ」
ルク「何時も私の側にいて一番頼りになる存在だと思ったんだけどなー」
ヴァレン「っルク!!」
伊滓「素敵だと思います!」
斗的「騙されんなー。お前ら騙されんなよー」
柚木「ふふ、ふふふふはははははははは!ということは私が言った通り、白雪姫で私が白雪姫の竜が女王で良いわけだな!さぁ、次の役を決めるぞ」
ヒロキ「まてよ!まだ主人公決まったわけじゃ」
柚木「ならば誰がやる?候補はいるのか?私以上に白雪姫が似合う者がいるのか?」

クラスの男の大半(いおりん……)
深也(望……)
司馬(未来……)
ヴァレン(ルク……)
ディスト(ローラ……)
カヲス(コスモス……)
時雨(鈴……は向いてないな)

柚木「居ないだろう!居ないに決まってる!」
ディスト「勝手に決めるなよ!居るよちゃんと!」(ちらっ)
ローラ「?なんだディスト。斗的をチラチラ見たりして」
ディスト「へ!?」
ローラ「確かに斗的はスタイル良い美女だから向いているかもしれん」
ディスト「いや、ちが」
柚木「ふむ。たまにはそういう嗜好も」
斗的「やめろ。気持ちわりぃ。やるってんなら、晒しもんにしたディストが王子限定だからな」
ディスト「やだよ!それにいくら美女でも白雪姫は女のコがやらなきゃいやだよ!」
柚木「全くはっきりしてほしいものだ。他に異論はないなよし決定」(早口)
傑「もうお前が主人公なのは諦めたけど、竜さんが王女というのは勝手に決めたらまずいだろ」
竜「構いませんよ。これ以上何を言おうが会議は踊ります。私が王女という話は喜んでお受けしましょう。ただし」
柚木「ただし?」
竜「鏡はタインにしてください」

間があく。

望「世界で一番美しいのはの台詞の一番最初は、あなたですだったよね?」小声
伊滓「ということは…」小声
コスモス「竜さん、貴女……」小声
ワンダ「なんだか涙が出そうだよ」小声
チア「憧れちゃいます」小声



ヨシノ「女ってばかだな」小声
ラスト「鏡役でも鏡の声でもなく、鏡だからな」小声
斗的「間違いなく割るよな。勢いよくストレートが放たれるよな」小声
傑「ご愁傷様。タイン」小声

タイン「?べつにオレ鏡役でも構わねぇけど」
竜「なら決定ですね」

柚木「よし。二人の気が変わらないうちに早く書け副会長」
李皇「はいはい」カキカキ
リーブ「ところでなんでお竜さんが王女なん?お似合いやと思うけど」
柚木「私を差し置いて人気投票一位なのが気に入らないからだ!」

全員(だめだこいつ!つーか誰だよこいつを学級長に推薦したの!

そうだよ、立候補だった……!!)



柚木「木こり役だがやりたい奴いるか?」
ヴァハ様・ジェノムス「私がやろう」

柚木「そうかありがたい。だがどちらにしようか」

全員(武器持たしちゃいけない奴がキターーーーーーー!)

ヨシノ「シオン、頼む」
シオン「(主の為ならばたとえこのメダル砕かれようとも!)僕も木こり役したいです」
ヴァハ様「ほぅ」
ジェノムス「ヴァハムートならば考えたが、お前では真意を悟りはできまい。譲れんな」
シオン「僕も譲れません!木こりの役の意味を貴方達は理解してません!」
ヴァハ様「言ってくれるな」
ジェノムス「ならば、教えてもらおうではないか」
シオン「表で話しましょう」

ヴァハ様とジェノムスとシオンが出ていくのを見届けてから、全員はヒットプロミス+サクリファイスの力を信じる事に決めた。

柚木「木こりは保留だな。よし、次は7人の小人だが、存在が薄い奴がいいな。よし、伊滓、蜜柑、ウサギ、望、恵、幼女、ワンダでいいだろ」
ルク「ディサピアのヒロインは私だから!」
柚木「ルクは木だろ?それにディサピアのヒロインは正直解らん。だからワンダだ」
ワンダ「わーい。何が嬉しいのか解らないけどわーい」
笹沼「各作者のヒロインから私をハブるのやめて!」
柚木「何言ってる?あいつの話にヒロインはいないだろ。特に変革は」
ターコイズ「えー、変革のヒロインはり、あだっ」(李皇が投げたチョークが額に直撃)
李皇「そろそろあざとい柚木の暴走を止めないと、ゲスト参加の話が消えるぞ」
菊くん「メタ発言やめないと消されるぞ」
恵「けど真剣に決めたいわね。小人でも構わないけど」
傑「いいのか?」
恵「ええ。ただあざといヒロイン潰しは嫌だけど。名前を呼ばれなかったのに比べれば」
傑「さりげなく酷いな」
ヒロキ「そいやレジェンドのヒロインって誰だっけ?」
サーガ「プリンのママじゃね?」
菊くん「だからメタ発言は以下略
ウサギはどうするんだ?」
ウサギ「え?やるけど?別に嫌じゃないし、ここまで盛り上がってんのにやらないのはなしでしょ」
よしの「お姉さまかっこいいです!」
伊滓「私の演技でいいなら。喜んでやらせていただきます」
望「少し恥ずかしいけど私もいいよ。他にやりたい人がいなければ」
柊「いおりんマジ天使ィ!」
深也(望もマジ天使!)

蜜柑「やるならとことんきっちり最後までやらないとやらないと!」
斗的「お前は逆に怖いから適度に手を抜け」
蜜柑「えー。ところで斗的ヒロインの座奪ってごめんな?」
斗的「そのネタ一度やったからやめろ」


時雨「鈴はもう小人にうってつけだよな」
鈴「むー。またそういう冗談に聞こえないこといってー」
時雨「俺本気でこのメンバーで一番の小人だと思ってるぞ」
鈴「やったー!ならがんばるー!ボクがんばるー」
時雨「おー」
傑「もう少しやる気出して応援しろよ。時雨」
時雨「感情込めたら新たに一枠空いて争奪戦が始まりそうだから、あえてこめない」
傑「……そうか」

柚木「よし!最後は王子だな。まぁあえて言う必要もないが王子は」
全員「中川良太」
柚木「なんだ解ってるじゃないか!皆やれば出きるんだな」
ラスト「残念だがこれクラス発表だからな」
柚木「ああ知っているとも!」
ヴァレン「クラス発表はクラス全員で作るものだからな」
柚木「その通りだ!」
ヒロキ「解ってるとこわりーけどさ」
柚木「ん?なんだ?」
傑「中川君隣のクラスだから参加できないから」
斗的「しかも中川は隣のクラスでシンデレラだから。彼女がシンデレラで中川が王子のシンデレラ」

柚木「っっっっっっっっっっっ!」くらり
李皇「おっと」(柚木を支える)
時雨「どうするんだ。柚木」
柚木無言で李皇の手に触れる。
李皇「?」
柚木「ヒロインは譲ろう」にっこり
李皇「いらないぞ」にっこり

柚木「・・・何か代案ある人はいるか。HRの時間がもう終わりそうだからなるべく簡単で楽に決まるものだ」

惣葉「もうこのメンツなら即興の劇でいいと思うんだけどな」
一歩「それじゃね?」
サーガ「あーそれならおもしろそうだな」
ラスト「まて、本気か?」
傑「すごいぐだぐだして終わらない可能性が非常に高くないか。それ」
ヒロキ「そういうのまとめるの得意な奴もいるじゃん!!」
斗的「確かに居るけどな。下手したら殺される可能性もある奴がうじゃうじゃと」
時雨「それボケだから!!!」
李皇「・・・だが、いけるかもしれないな。最初に自分がやる設定のキャラを決めてそれを元に即興で演技をする。クラスには適度に気遣える存在も居るし、馬鹿もいる。おもしろいことになるかもしれない」
岬「やだ。李皇が狂った」
神「疲れると人間は狂う。軟弱な生き物だ」

河内「ああ、じゃあ、もういいな。即興で。李皇の言った設定でやることでいいな。まだ決定していないクラスうちだけだからとっとと決めてしまいたいんだよ。先生は」
柚木「いいです!それでお願いします!先生」
斗的「中川の彼女設定はだめだぞ」
柚木「先生やっぱりなしで!!」
河内「・・・、もう決定な」



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タイトルがしょぼいのと内容が残念なのは私のクオリティのなさ。
ただ、私は楽しかった。
誰かライズの仲間達で学園物をやってください。

ちなみに勝手に使ったキャラは私の独断と偏見と偏った知識で歪んでいますが、お許しをくださいまし。

ちなみにシオンは即死して、ボス達はボス同士で戦っていて数十分後に校舎破壊までして、ようやく落ち着かれました。


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