>> メダロットライズ にもどる
第3話「招き手」 ( No.3 )
日時: 2013/02/21 11:16
名前: ランド

 次に月形が目を覚ました時、そこは意識を失った教室、そしてその席であった。
ゆっくりと顔を持ち上げ、回りを見渡すと、すでに外は夕暮れ時であり、
部活に勤しんでいるであろう生徒達の活気の良い声も漏れてきていた。
 まだハッキリとしない意識の中、月形はさきほど起こった事をじょじょに
思い返し始めた。

「(記憶はまだ残っている、良かった)」

 意識を保つと同時に、また記憶の方も完全に戻ってきていた。
無論、3人でこの現状を打破しようと約束したあの時のことも。
 頭の整理がつき、気持ちの余裕ができると、ふと顔を教壇の方へと向ける。
そこには、さきほどの授業までは存在していなかったまねき猫が
真ん中にポツンと置いてある。

「(招き猫?)」

「ようやく目が覚めたかな」

「!」

 じっと招き猫を見つめていると、その招き猫の方向から声がする。
 だが、不思議にそのこと自体に対してはそこまで驚くことはなかった。
今まで自分がどこかの世界の端役であろうと分かった時の驚きに比べてしまえば、
例え招き猫が喋り出そうが、踊り出そうが、比ではなかった。
 招き猫が喋るという事実をそのままに認め、会話を試みようとする月形。

「あなたは一体誰なんだ!
 って、招き猫か」

「うむ、まあ、なんだ。
 詳しい説明は面倒だから、とりあえずこの世界の神ってことにしとくれ」

「か、神だと!
 (だったらもっと神々しい登場の仕方をすれば良いのに)」

「それで、だ。
 君の望みは一体なんだい」

「?」

 招き猫は自身を神と言ってのけた。
 この事実に対しても、特に月形はそれはそれと受け止めることは難しくなかった。
ただ、なぜ招き猫を身代りに登場したのかだけは疑問だったが。
 招き猫の問いに、月形はすぐさま問いかけた。

「そんなことを聞いてどうするんだ」

「できることなら叶えてやろう。
 ま、君のあの願い以外聞く気はないがね」

「どうしてそこまでしてくれる」

「ちょっと君に興味を持ったからだよ。
 いつも同じことばかりしててもつまらんじゃろ?
 たまにはイレギュラーもありかとね」

「(招いている手をへし折ってやりたいが、ここは乗るしかない)
 ならば話しは早い!
 僕は主人公たちに勝ちたい!」

 どうやら招き猫の気まぐれによって、月形の願いを叶えられることとなったようだ。
 腹立たしい気持ちを抑え、冷静を装いながら月形は自分の意見を
率直に述べた。

「良いだろう。
 しかし、勝つか負けるかは君しだいだよ」

「どういうことだ」

「君も漫画やアニメを見たことがあるだろ。
 例えばトーナメント戦。
 1回戦や2回戦は回想のみで、いきなり準々決勝からとか、
 または絶望的な場面から脅威的な力を使って勝つ、
 そんなこと多々あるだろ?」

「うん」

「それはつまり、主人公は補正された力を使って勝ってることになる。
 その補正された力を、君と戦う時のみに限って
 無にしようというのだよ」

「ふむふむ。
 イカサマなしに、五分と五分の条件の中で戦わせてくれるということか」

「その通り。
 無論、おまえにもその力は一切働かないがね。
 条件、ただ条件を整えるだけだ。
 その後は単純な実力勝負、まあ、十分楽しませてくれ」

 俗語でいう「主人公補正」と呼ばれる、物語の都合上主人公に有利に働く力を
意図的に無くして、月形に戦わせる力を与えるという招き猫。
思えば、この補正がある故にモブキャラがモブキャラとして成り立っている
ともいえるのだ。
 続けて月形は質問を投げかける。

「どれくらいの期間をくれるんだ」

「3月から始めて約1年」

「衣食住はどうするんだ」

「住まい程度は用意するが、その他は自分で何とかしてもらおう」

「僕はまだ未成年、らしい。
 大会にでても保護者の同意が必要な場面があればどうする」

「言っただろ、ワシは神だと。
 そんな小さなことはこっちで何とでもするよ」

「もし僕が主人公を倒せないまま1年間過ぎたらどうなる」

「変わらんさ。
 その目的を放棄しない限りね。
 さて、と」

 質疑応答があらかた終わったとみると、じょじょに外の様子が変化していく。
夕暮れを映し出していた景色は、みるみるうちにブラックホールのような
うずまく黒い波に変化していく。
ついに、その時がくるのだと月形は直感した。
 覚悟を決めると同時に、とあることを思い出した。

「待ってくれ!
 この挑戦は、僕だけで決めたことじゃないんだ!」

「?」

「僕は名前は覚えてないけど、二人に話しを持ちかけたんだ!
 その二人を見捨てられない!」

「ダメに決まっとるだろう」

「だったら僕はやらない!!」

「なぜ」

「この戦いは、焦点を当たれない者達の、省かれた者達の反逆だからだ!
 僕だけが戦っていては、それは主人公のそれと全く
 変わらないことになる!」

「・・・面倒な奴だの。
 分かった、ただし二人のうち一人だけだ。
 それはこっちが勝手に決めさせてもらう。
 これが最大限の譲歩、いいかな?」

「承知した!」

 こうして、月形一徳を含めたモブキャラ、端役達の反逆の物語は始まることとなる。
消えいく意識の中、月形はあることを心に誓った。
それは倒すべき、敵。
 月形が果たすべき目的となる相手を、しっかりと照準を定めた。

「(この世界の主人公格。
 天領イッキ、おまえを僕は倒す!)」