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ゲームside 6 お久しぶりさようなら (1) ( No.57 )
日時: 2013/06/29 18:24
名前: 雪の城


ゲームside

目が覚めた先が見慣れたいつもの簡素な部屋だったことに僅かに安心する。昼間、いや朝からログインすることに不満はあるが、今は相手を宥めるのに集中しなくてはいけない。
短い前髪をかきあげ、腹筋の要素で起き上がろうとしたとき、ドアの方からけたたましい音がした。


ガァン!ガァン!!


何か物を強く叩きつけているように聞こえるその音に、一瞬体を震し、それでもそれが何かは知らなくてはいけない状況の李皇は体を起こし、その音が鳴り響く場所へ視線を動かした。


ターコイズが部屋の隅に置いてあったはずの電気ストーブと扇風機、冷蔵庫をドアへと押していた。
ターコイズのモノアイはいつもと変わらない半円型の光で、その行動の意味である「外部の侵入妨害」をしているとは思えない。ただのイタズラで、すぐに戻すつもりだと言ったほうがまだ納得がいく。


ターコイズは身を翻した。


視線があうとターコイズは何も言わずに微笑んだ。


狂ってる。


冷や汗が流れる。
扇風機、ストーブなんて簡単にそこから動かすことはできる。冷蔵庫だってここにあるものは小さい。ずらすぐらいは俺一人でも十分だ。
だが、問題はそこではない。
さらにその積み上げた『壁』に布団を追加されたが、ターコイズ本人(機?)だってそれが意味をなさないことは理解している。


その『壁』の意味するものは、ターコイズの『本気』だということだ。


壁を崩した場合、俺は革命や変革やそんなことを言う前に、ターコイズによってゲームオーバーの運命にあう。
そういうことなのだろう。


俺が今攻略するのは、ターコイズの心理だ。
ターコイズを納得させ改心させる。それしか俺の勝つ道はない。


「ターコイズ」



壁をただみていただけのターコイズが、小さく反応する。だが、顔を俺には向けず、まっすぐに自分が築き上げた壁をみている。


人に嫌われたことはないが、心理は苦手な方だ。
自分の歪んだ性格は理解している。その歪みを理解しているから、通常をできるのであって、歪んだ相手に対応するための知識も経験も備わっていない。
歪んだ相手は避けていたし、突飛な性格していると思う相手で友人になっている相手はこちらに元から好意を抱いている場合が非常に多い。
最初から好意を持っている相手というのは補正効果がついて色々とこちらに優位に働く。そして相手が願っているものも非常に解りやすくそれを自分にできる範囲で叶えてやれば簡単に自分の味方になってくれる。だから付き合えるというものだ。


しかし。今回はそれすらも不可能だ。


ターコイズは俺のことが嫌いらしい。だが、俺に好んで欲しいと思っている。とはいえ、好まれようと相手の望む好意を言えば、嘘と見抜き現状はより悪化する。
しかし、嫌悪を伝えればターコイズのする行動はこの監禁状態の強化だろう。ターコイズ自身は俺がターコイズを好んでいないということは解っているに違いない。だからこそこんな強引な手段に出たのだ。
しかしターコイズは混乱しているわけではない。自分で間違っていると解っているのだ。解っていながら行動に移したのだ。


どうしたらいい。


ターコイズを見る。ターコイズはこちらへ視線を向けない。


どうしたらいい。
自分が助かるにはターコイズの心を動かすしかない。
けれど、自分は今までターコイズに対して簡単に嘘をついてきた。そしてそれをターコイズは知っていたのだ。


だが、どうして。


今まで自分の嘘がバレたことなど数える程しかないはずだ。
緻密な計算と隙を見せずにやってきた。
生まれて今まで、ある一人の親友を除いて友人と口喧嘩をしたことすらない。いや、友人だけでなく、本気で喧嘩しそうになったのはその親友と兄貴分と言い張る総司といとこのあいつだけだ。それはその他の人達に対して自分は嘘の付き合いをしてきたからだ。本当の自分ではなく、梓李皇という人間の表面だけを見せ、適当に付き合ってきたから。
ターコイズに対しても俺はリオという表面しか見せなかったはずだ。時々ボロは出たがきちんとその度にフォローはした。
最後にサーバー(?)にのっとられた時のアレがきっかけになったのは確かだと思うけれど、それだけで崩れるような甘いものだったというのだろうか。
いや違う。
それだけでバレるはずはない。むしろあれはありえないぐらいターコイズには好意を示していた。上手く騙せていたのであれば、ターコイズは笑って礼を述べるはずだ。
俺の知っているターコイズはそうだった。明るくて素直で天真爛漫そのものだった。


まさか、俺が知っているターコイズは『ターコイズが作り出した表面の姿』だったというのか。
そして今このターコイズが本当のターコイズだというのか。


ないとはいえない。


だが、騙されたのか。俺が。ターコイズに騙されたというのか?
いやある意味騙されたのは確定しているのか。
こんなことをするやつだとは思いもしていなかった。もう少し常識や現実を見ていると思っていた。こんなありえないことをして、現実の世界に戻ろうとする道すら閉ざす奴だとは考えもしなかった。


奢った結果だというのか。


ターコイズに気付かれないよう、口内の肉を噛み締める。


悔しすぎて何も言えない。こんな展開になるなんて思ってもいなかった。
経緯や後悔、反省ばかりが浮かんできて突破口が見えてこない。
ターコイズを納得させる手段が浮かんでこない。何を言っても通じる気がしない。それどころか全て悪手に思える。

ゲームside 6 お久しぶりさようなら (2) ( No.58 )
日時: 2013/06/29 17:42
名前: 雪の城

腹の探り合いで負けるとは思ってもいなかった。
だが、これは最初から自分が慢心していた結果だ。ある意味ターコイズの不戦勝というものだろう。


「ターコイズ」


もう一度名前を呼ぶがターコイズはこちらを向かない。
皮を被るのをやめ開き直った俺は盛大にため息をついた。驚いたのかターコイズが俺を見る。


「どうしたらいい」
「え?」
「俺はここに住めばいいのか。お前と一緒にここで」


ターコイズのモノアイが点滅する。


「え、え?」
「お前がしたんだろう。ログアウトができない。それに、玄関をそう塞がれてしまっては退かすのも大変そうだが、まず出るのはお前が阻止するんだろう」
「・・・そうだけど」
「だけど?」
「抵抗しないの?」
「意味あるのか?」


即答すればターコイズの目が丸になった。
驚いているのだろうか。それとも敗北宣言に見えるそれを喜んでいるのだろうか。


「いいの?」
「悪いと思うなら元に戻してくれ。今なら許せる」
「嘘だ。許してくれないよ。リオはそういう人だ」
「ああ。嘘だ。許す気などない。だが、お互い様だろ。騙しあった結果、お前が勝った。そういうことだ」
「僕は騙されてない。それに僕はリオを騙してなんかいない」


返す言葉を無くす。


「僕は真剣にリオにぶつかってきたよ!リオの事は本当に嫌いだし、本当に大好きなんだ」
「意味がわからない」
「今のリオは大好きだよ。本音で僕と話をしてくれる。あと、作戦を考えているリオも大好きだ。顔も声もかっこよくて好きだ。だけど、嘘をついているリオは嫌いだ。僕に嘘をついているリオは本当に大嫌いだ」
「嘘をつかなければいいのか。お前に」
「一番は、傷ついているリオだ」
「傷つくなというのか」
「無理なのは解ってる。だから、出したくない。僕が守れる範囲にいてほしい。僕がいない場所でリオが苦しむのは堪らなくつらいんだ」
「理解できない」
「僕もだよ」


ターコイズが笑う。自嘲気味な笑い声だった。


「でも、リオは理解できなくていいと思うんだ。こんな狂った感情知るのは僕だけでいい」
「ターコイズ」


心のどこかが騒ぐ。警報のような何かが鳴り響く。
ここから出ることが不可能だという知らせだろうか。
それとも、自分よりも深く傷ついているターコイズに対する何かだろうか。


「なぁ、ターコイズ。お前って古い型だと言っていたな。前に主人がいたのか?」


ターコイズの体が一瞬大きく震えた。


「リオ」
「お前が電話で言っていたゲームオーバーと、俺が傷つくこと何か関係しているのか。まさか、お前」
「流石、感がいいね」


窓の方からした声に驚き振り向く。ターコイズが素早く動くのとほぼ同時に、窓ガラスが割れた。
西洋槍を持った銀にうすく水色かかった西洋甲冑姿の(声が男性の変声期後のものだったからおそらく)男が窓ガラスから侵入し、ガラスが飛び散る床へと足を下ろした。


「ランス!!」

ゲームside 6 お久しぶりさようなら (3) ( No.59 )
日時: 2013/06/29 17:44
名前: 雪の城

ターコイズからかすれた低い声がした。明らかに殺意がこもったその声に、ランスと呼ばれた西洋甲冑の男は兜の空いた部分から唯一見える口元に笑みを浮かべる。


「お久しぶりターコイズ。そしてさようならターコイズ。彼はマザーの所有物なんだ」
「貴様やはり!王を裏切ってマザーに!この卑怯者ォ!!」

長身につけられたごつい甲冑と大きな西洋槍からは想像できないほどの明るくてフレンドリーな声が出る。少し驚いたがそれよりもターコイズから放たれる空気と彼らしくない低い声に驚く。
ターコイズは床を蹴った。ランスへアサッシンを決めようとスラッシュバイトの爪を開き斬りかかるも、それをランスは西洋槍で軽々と防いだ。すぐにターコイズはハンマーに変えるがそれすらもランスは避ける。明らかに力が違う。


「ター」


名前を呼び静止をかけようとしたが、思いとどまる。
この甲冑の男は非常に怪しいが、今自分が危険な目に合わされているのはターコイズの方だ。ならば、ターコイズがここで機能停止したら自分は自由になれるのではないか。そして、その隙に逃げ出してイリネに逃げ込めばミライや彼変が助けてくれるのではないだろうか。
自分は今、すごく好機なのではないだろうか。


「リオ!逃げろ!」


掠れたターコイズの声に思わず息がつまった。直後に心に鈍い痛みがくる。


「リオ!」


必死に叫ばれる声に今まで考えていたことを後悔する。
痛みと同時にさっきまで解らなかった攻略法がしっかりと解るようになった。ターコイズが望んで居た事が解った。
本音できちんと話すだけでよかったのだ。
辛いことも悲しいことも苦しいことも嫌なことも全て。
ターコイズに打ち明けて一緒に考えてもらうだけで、自分たちは互いが居ない場所はなくなる。


プライドの高い自分にはとても難しいことだけれど、ターコイズはそれを望んで居た。
ターコイズに逃げるように言う為に顔をあげ彼を見る。それとほぼ同時にランスの槍が光る。
危ないと叫ぶより先にランスの動きは素早くまっすぐそこに向かう。

「全てはコノタメに」
「リ・・・お・・・」


ランスの槍がターコイズの胸部に突き刺さった。


貫通はしていないし、自分の体に異変もない。ただ、ターコイズの機能停止の音がスマートフォンから聞こえた。しかしメダルは射出されない。
何がおきた。こいつはターコイズに何をした!?


「お前!」


俺は声を荒げ、ランスに掴みかかろうとした時、彼の槍の先端が光った。強い光に目を手で覆う。光がなくなり、目から手をどかすとターコイズのメダルが背中のハッチから射出された。
ランスは槍を引き抜き、倒れるターコイズのパーツを支え持ち上げる。槍をその場に置くとメダルを拾い上げ、そのメダルとパーツを持ったまま俺の目の前に来るとそれを差し出した。


「お前、どういうつもりだ」
「心外だな。助けたんだろ。どこからどうみても」
「ターコイズに何をした」


あの光。ただの光ではないはずだ。あんなにまぶしく輝いて何もないなどあるはずがない。
それになぜ機能停止直後にメダルが射出されなかった。

「暴走しないように封印をかけた。彼は元々危険だったしな」
「危険?」
「君は3番目の主人だから知らないだろうが、彼は1番目の主人に捨てられた際野良メダロットの軍団を率いるボスになった。それからその話題を聞いた当時のメダロットの世界の王に引き抜かれ王の犬になったという経緯がある。
実力もそれなりのものだっただろうが、野良のボスというだけでも問題があるものがさらにメダロット世界を統一した前王のメダロットだったなど異常な他にないだろう」


驚き差し出されたまま受け取らないでいたターコイズを見る。
何も知らなかったというのも問題だが、メダロットの王様に仕えていたなんてありえないことがあるのだろうか。
サーバーは言ったのだ。
自分の為にターコイズを用意したと。
いつか起きる革命を阻止するためだとしても、そんな優秀な人のメダロットだったならば、サーバーは俺ではなくその王に願えばよかったのではないだろうか。
そうすればターコイズも苦しむことはなかったのだ。


「受け取ってくれないか」


ランスに要求され、ターコイズを受け取る。
刹那、激しい頭痛が起きた。
あまりの痛さに頭を抱えその場に蹲ると、落としたターコイズの方から声が聞こえた。


《帰ってもらおうか》


視線だけをあげれば、赤色の透けた人影が見えた。背中より上を見ようと視線を動かすと痛みがさらに激しくなり、痛みに瞳を閉じ頭を抱えた。


だが声は解る。この声は間違いなくサーバーだ。
それに反応したのかランスが後退し武器を構える音がした。


「やはり君か。いや、君しかいないと思ってたよ。前王」


サーバーだと思っていた影が前王と呼ばれた言葉に驚くも、何かを発する気力はない。激しく痛む頭が全ての行動を妨害する。


《お前が非現実的なものを信じるとは思っていなかったが、解ってもらえて嬉しい限りだ》
「君に免じて退きたい所だが、僕にもしなくてはいけないことがある。覚悟してくれ」
《それは俺も同じだ。俺とて手段は選んでいない》


弾ける音がする。


頭痛が収まった。顔を上にあげるとサーバーが消えていて、そこにはランスだけがいた。だが、様子が違う。
ランスは槍を置くとターコイズのメダルを拾い、倒れたままになっているターコイズのパーツへとはめた。


「リオ」


呼ばれた事で気付いた。
ランスから出た声はサーバーのものだった。


「お前は前王なのか」
「そうだ。私は今現在前王と呼ばれるものだ」
「メダロットの世界を統一したターコイズの主の」
「そうだ」
「何故自分でしない」


前王は小さく笑った。優しい意味の笑いではないとわかったがわかるのはそれだけだった。


「私はもうお前に力を貸すことができなくなった。これからは私の助言を頼りにせず、自分一人で革命を止めろ」
「ふざけるな!自分でやれ!それに、ターコイズはどうするんだ!」
「お前に預ける。いつか私に返しに来い」
「お前!ターコイズは!」


掴みかかろうとした時、再び頭に激しい痛みが走った。視界の端にランスが窓から出て行く所が見えた。それから頭痛が和らいだのはしばらくたってのことだった。







ターコイズが目覚めるまではログインしていようと思った。
荒らされた部屋をできるだけ元に戻しながら、割れたガラスなどを片付けながら、今度はきちんとターコイズと話をしようと決めた。
ある程度部屋が綺麗になり、寝かしたターコイズの隣に座っていると、突然ターコイズは体を起こした。
左右を見てからモノアイを点滅させ、自分を見た。


「ターコイズ。無事か?」
「・・・」


答えないターコイズに嫌な予感がした。









「マスター、私はターコイズという名前なのですか?」










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