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Re: THE END OF DISAPPEARANCE ( No.38 )
日時: 2013/01/18 07:06
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第三十六話【絶対支配】


ローラ:「デ、ディスト!? 何をしているのだ!」

突然敵に向かって土下座を始めるディストにローラは困惑する。

ディスト:「か、体が勝手に……ッ!」

ディストは体を起こそうとするが、何故だか体が動かない。
マティグアドが口を挟む。

グアド:「当然だ。 大王の言葉に逆らう愚か者など存在しない……と言いたい所だが」

マティグアドは不満げにローラを睨み付ける。

グアド:「何故、そこの女はこの大王の命令を聞かないし、効かないのだ?」

ローラは何故ディストがマティグアドの命令を聞いているのかを不思議に思っていた。
しかし、マティグアドは逆。まったくの逆の発想。
彼の命令を聞くのが当然であり、それを聞かないローラの方が異常であると思っている。

いや、土下座のせいでローラもディストも失念していたが、ローラもディストももう一つ違和感を持っている事がある。
マティグアドの性格が一瞬にして変わった事だ。
先ほどの謙虚な言葉づかいとはまさしく逆。真逆の性格。
傲慢で、自分の命令を聞いて当然などと言っている。

ローラ:「大体、貴様……いきなり性格が変わったようだが、何者だ?」

マティグアドはひとまずローラが土下座しない理由を置いておいて、言う。

グアド:「この大王をあの〝下僕〟と同じ存在だと思うな。 あの下僕は『服従者』だが、この大王は違う
      この大王は『支配者』だ。故に、大王は謝らなければ、他人の機嫌もとらぬ」


つまり、簡単に言うとこういうことだ。
『大王型メダロット:マティグアドは〝二重人格〟である』
メダチェンジ前の服従者とメダチェンジ後の支配者の性格、2つの人格が同じ体に宿っているのだ。

グアド:「分かったならば、この大王の命令に耳かたむけよ」

そういい、マティグアドは腕組みをして仁王立ちになる。
彼が腕を引っ込めたからなのか、どうかは分からないがディストは急に体の自由がきくようになり起き上がった。

ディスト:「ローラ! ダブレストだ。 多分ローラだけがあいつの命令が効かないのは」

グアド:「 黙 れ ! 」

ディスト:「…………ッ!!」

マティグアドが右腕を上げて再び命令をするとディストは言葉を発せなくなる。

グアド:「大王はお喋りな奴は嫌いだ……しかし貴様は良い事を言った。 それは褒めてつかわそう」

そう言ってマティグアドはローラのダブレストを見る。

グアド:「なるほど……フォーパーツダブレストか。 おい、そこのディスなんとか…… 女 を 攻 撃 し ろ」

マティグアドがそう命じると、ディストは言われるがままにローラに向けてエアストを振り下ろす。
ローラは素早く反応してそれをかわす。
と、言っても普段のディストと比べると攻撃のキレが明らかにないのでそれをかわすのは容易だった。

ディスト:「……クッ! 違うんだローラ、体が勝手に!」

ローラ:「分かっている! やつの命令には何か秘密があるようだ!」

ローラはディストの攻撃をかわしながら思案する。
一体どのような仕組でマティグアドはディストを操っているのか。
ディストが言うように、ローラの持つダブレストの効果でマティグアドの命令を打ち消していると考えられる。
これはマティグアドの反応からも分かる。

マティグアドの命令の正体はなんなのか?
味方を攻撃してくるところをみると、混乱行動の一種だろうか?
だとするとダブレストを装備したローラにそれが通じないというのも納得できる。
しかしそれにしてはディストは自我を保ちすぎている。
かつて、ベビーと旅をしたローラには分かるが混乱行動とはもっと正常な思考を保ちがたいものだ。
そして混乱行動の常として〝敵味方自分見境なく狙う〟というものがあるが、今のディストは明らかにローラだけを狙って攻撃をしつづけている。何かが違う。

軽い混乱状態にして、命令を効きやすくするような効果だろうか?
そうだとするならば、今のディストに命令すればディストはローラの命令も聞いてしまうのではなかろうか?

ローラ:「ディスト! 攻撃をやめろ!」

ためしに命令してみるが、ディストはまったくためらう様子もなくローラを攻撃し続ける。
ローラの推理は外れの様だ。
ディストは苦痛な表情を浮かべて何かを必死で話そうとしているが、声が出ない。
いつの間にかマティグアドに言葉を封じられてしまったようだ。

ローラ:(一体どうなっているのだ……! 大体マティグアドが黙れと言ってから、ディストは一度言葉を話した。
   ならばもう一度、黙れ、と命令し直さなければならないのではないのか?)

そうローラの頭こんがらがってきている中、マティグアドは今上げている右腕に加えて、さらに左腕もあげる。
その瞬間にディストのローラに対する攻撃がさらに正確になった。

ローラ:(両腕を上げるとディストの攻撃が精密に……?)

ローラは何かの違和感を感じた。
ディストはマティグアドの〝言葉〟による命令に逆らえないのではないのか?
両腕を上げる事によって〝言葉〟に何らかの効果を付加できるのか?

いや、そもそも「女を攻撃しろ」の命令以降マティグアドは何も命令をしていない。
それにも拘わらずディストはローラに対して〝的確〟に攻撃をしてくる。
これはおかしいのではないのか?
ローラの動きについていけるよう命令するのであれば、逐一、適切な命令を送らなければならないはず。
それこそ、かつてメダロッターと呼ばれる人間がパートナーのメダロットにそうしていた時代があったように。
「攻撃しろ」なんていう単純な命令で全て事を進めるのであるならば、ディストの精神を全て乗っ取る必要がある。
つまり、ディストが心からマティグアドの下僕となることを認め、自分で判断してローラを攻撃しなくてはいけないはずだ。

しかし、ディストは「体が勝手に」と言っている。
これは明らかに精神まで乗っ取られた反応ではない。

とすると、実はマティグアドの命令の正体は言葉とは別の場所にあるのではないか?
あの両腕パーツの効果で無理矢理動かされているとして……。
あのパーツの効果は一体何なのか?

ガシンッ!

ローラ:「クッ……!!」

その時、ディストの攻撃がローラにヒットする。
ローラは一瞬ダブレストで防御しようと考えたが、ローラが操られていない原因がダブレストにあることを考え、
ダブレストを守るようにして脚部で防御した。
ローラは空中に投げ出され、地面を転がる。
石に覆われた地面を。

ローラ:(……そういえばこの石)

ふとローラの思考は別のところへと向かう。
何故この基地は石で覆われているのか?
何故普通に金属剥き出しではないのか?

基地全体を石で覆うメリットがあるはず。
そのメリットはなんだ?
ジェノムスのネオの力を底上げする効果でもあるのか?
いや、そうであるならば、ここはもっとネオの力で作られた死神が多く存在しているはず。
そもそも、この状況を考えるとこの基地の防衛はマティグアドに一任されているような節がある。
とすると、この石はマティグアドの為のもの。
しかし、先ほどの〝服従者〟のマティグアドはこの石とは関係の無い攻撃ばかりをしていた。
……とすると、この石によって得をするのは〝支配者〟の方のマティグアド……。


ローラ:「……ディスト、すまんが試したい事がある」

ローラは何かに気が付いて、ディストにあたらないギリギリの場所にファイヤー攻撃をする。

ディスト:「アチチッ……!」

ディストがしゃべった。
マティグアドの命令に背いて。

グアド:「貴様……!!」

マティグアドの様子を見てローラは確信する。

ローラ:「これは……サンダー攻撃!」

ローラの声が部屋の中に響く。
マティグアドは最初は顔をしかめていたが、やがてローラをたたえるように、しかし偉そうに声を上げて笑う。

グアド:「フ…フハハハハ。 見事だ、褒めてやろう。 お前の言うとおり、この大王はサンダー使いだ
    と言っても単なるサンダーではない、繊細なサンダーだがな」

マティグアドはトリックを見破られたと分かるやいなや、ペラペラと自信の能力について語り始める。

サンダー攻撃とは〝停止〟効果のある攻撃である。
停止と言えばローラのフリーズ攻撃も停止行動の一つだが、その原理は全く違う。
その名の通り、相手を凍らせて動けなくするフリーズとは違い、サンダーは相手の機能に誤作動を起こさせる。
基本的にメダロットとは電気の流れによって、腕や足を駆動させる。
サンダーは動くことができないほどに、体を流れる電流を乱して、相手を停止させる。

そして、この原理を応用すると。
サンダー攻撃によって相手の体に流れる電流を操作する事で、相手の動きを操れるという事になる。
それが支配者マティグアドの繊細なサンダーだ。
当然、自分の意のままに相手を操作するには、極めて精密にサンダーを操る必要がある。
そして、その際に地面が電気を通しやすい金属であるというのは大きなマイナス要素となる。
メダロットに電流を流しても、金属の地面がアースの役割をはたしてうまく相手を操作することができないのだ。
そのためにこの基地は、支配者マティグアドの為だけに、全体を石で覆っているのだ。

そして、今、ローラが行ったファイヤー攻撃はディストを攻撃するためのものではなく、『ディストの温度を上昇させるためのファイヤー』だ。
電流が流れる時の抵抗とは一般に、温度が高くなるほど大きくなる。
それを利用して、ディストの電気抵抗を、温度の上昇によって急に大きくすることで、マティグアドの繊細なサンダーの調節を乱したのだ。

ローラは停止効果のあるフリーズ使い。
故に、同じ停止効果のあるサンダーの特性にも精通していた。
だからこそマティグアドの攻撃を見破ることができたのだ。

グアド:「見事だよ……流浪人ローラ!! この大王、最大の称賛を送ろう。だが、だがしかし……」

マティグアドは見下したような目で、
罪人を傍聴席から眺めるように、
泥酔し道端で眠る者の横を通り過ぎるように、
蜘蛛の巣にかかった哀れな昆虫を見るように、
ひどく冷たく、奥の奥まで濁った目をローラにむけて言う。

グアド:「 少 し 遅 か っ た な 」

ディスト:「ローラ危ない!!」

ディストがローラに注意を促すがもう遅い。
ローラの周りから急に触手が伸びてきてローラの手足をつかみ、拘束する。

ローラ:「これは……トラップ!?」

グアド:「あの下僕の記憶は、この大王にもちゃんと残っている。トラップを仕掛けた場所もな」

マティグアドはローラにサンダーによる停止および操作が効かないとみるや、先ほど服従者マティグアドが仕掛けたトラップを利用する作戦に切り替えていた。
ディストを操り、ローラを所定の位置に移動させるつもりだったのだ。
なんとかディストの攻撃をローラに当て、トラップの上に動かしたはいいが、トラップが発動する場所をローラは転がって横切ってしまった。
触手トラップは発動がやや遅いため、ローラをつかまえる事はできない。
これはマズイと、マティグアドは繊細なサンダーで〝トラップを操って停止させた〟
そして、その後ローラがファイヤー攻撃をした後、そのトラップの上に戻ってきてくれたので、トラップを操作してローラを拘束したのだ。

グアド:「貴様がトラップを横切った時はどうしようかと思ったが……やはりこの大王には運命すら跪いたらしい
    フォーパーツを捨て、大王の支配を受け入れるべきだったな」


エルドラージメンバー、大王型メダロットメダチェンジ後:マティグアド。
繊細なサンダーによる命令と、メダチェンジ前と同等かそれ以上の知略で、全てをその支配下に置く。
大王の真の姿だ。


グアド:「これが…… 絶 対 の 君 臨 だ ! 」