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Re: THE END OF DISAPPEARANCE ( No.29 )
日時: 2013/01/04 01:21
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第二十七話【スターダストクルセイダース】


ラヴドでの戦いも始まっていた。
大量の死神と、それを率いるケフクージャの猛攻によりラヴドの戦線は後退を余儀なくされていた。

『第一線突破されました!』

ブラックメイル:「ちぃッ…! エルドヴァランに向かった奴らもテンヤワンヤってのぉ~…にッ」

エデン女王コスモス同様、ラヴド国王ブラックメイルもまた戦いの指示に追われていた。
本来なら外で暴れまわる方が得意な彼であったが、国王という地位であるため、本部にこもって戦いは部下にまかせるという形をとっている。
ブラックメイルは、このような兵士一人一人の命のかかった重要な局面での指示を出すのが苦手だった。
彼は元々深く考えるタイプで無いが、そういう状況になると深く考えざるを得なくなる。

竜:「……ここまで早く第一線が突破されましたか……」

その隣で竜がタインの上に座り込んで考えていた。
タインはいつもの事なので、もはや諦めていた。

タイン:「なぁ、さり気に俺って座り心地いいの?」

竜:「いいえ、最悪です。立っていた方がましですね。
   タインに座るか、ゴキブリを素手で潰すかと聞かれたらゴキブリを選びますね
   死ぬかどうかと言われても少し悩むくらいですね。それくらい最悪です
   っていうかタインが死ね。バカでマヌケなので死んでも事故って事で片付きますし」

タイン:「さり気に色々言いたいけど、取り敢えず、じゃあ座るなよ!」

この状況でも相変わらずな二人である。
戦争だとか修羅場だとかになれていて、かつブラックメイルの様に責任のある立場ではないためだろうか。

ブラックメイル:「(噂に聞いてたが凄いぃ~…なッ。いつもこうなのか?)」

ブラックメイルがタインに耳打ちする。
なんとなく竜に聞こえたらマズイような気がした。

タイン:「(いや、さり気にいつもより気が立ってるな)」

ブラックメイル:「(ほう?)」

タイン:「(罵倒する言葉にバカとか死ねとかさり気に単純なのが多いだろ?
    普段の冷静な竜ならもっと、それどうやって思いついたの?って感じの洗練された罵倒が飛んでくる)」

『敵が第二線と戦闘に入ります!』

ブラックメイル:「おっとっと……了解だぁ~…ぞッ」

現場からの報告が来て、慌ててブラックメイルは定位置に戻った。
そして、指示を出しながらタインの竜の理解度に感心していた。
そういえばタインは竜と暮らしてもう7年になる、お互いの事をお互いに分かっていてもおかしくはない。
しかし、よくあんな罵倒を受けながら一つ屋根の下で暮らせるものだ。嫌にならないのだろうか。



―――――――――――――――――――――――――――――――


ケフクージャ:「時に死神37690号君! ボランティアは好きかね!?」

…………。

ケフクージャ:「40391号君はどうかね!? ボランティア!?」

…………。

ケフクージャ:「うむ、君たちは実に無口だな」

ケフクージャは、移動中、近くにいる死神を捕まえては、ボランティアが好きか尋ねていた。
が、勿論この死神達はジェノムスの力によって生み出された傀儡。
心を持たない者達であるが故に答えがかえってくることはなかった。

ケフクージャ:「まぁ、いい。君たちは大切な物を持っている……そう、それは〝協力する事〟!
       皆で手を取り合い協力する姿……素っっ晴らしい!!
      その素晴らしさを評価して、君たちにはこのぼらんてぃあ・ばっちをあげよう」

そういってケフクージャは懐からぼらんてぃあ・ばっち……ケフクージャに殺害されたメダロットの成れの果てを死神達に配って回った。
200体くらいに配ったあたりだろうか、死神達の様子が変わる。
武器を構え、臨戦態勢に入る。
その視線の先にはラヴド軍の兵士達が見えた。

ケフクージャ:「おや、ラヴドの軍勢か」

そして、死神達はラヴドに向かって走り出す。
……手に持っていたぼらんてぃあ・ばっちを投げ出して。

ケフクージャ:「あぁ~~~っ!」

ケフクージャは慌てて、死神達の落としていったぼらんてぃあ・ばっちを拾い集める。

ケフクージャ:「……実に無欲だね」



そして、ケフクージャは向こうの方で行われているラヴド軍と死神との戦いを眺めていた。
ラヴド軍は訓練されたであろう、堅実な連携で数の面で勝っている死神達との戦いを互角に進めている。
ケフクージャは素直に感心していた。

ケフクージャ:「素晴らしい! たとえ不利な戦いであっても力を合わせて、手を取り合って、〝協力する姿〟!
      やぁやぁ敵ながら天晴ではないか!!
      ……と言いたいところだけど」

ケフクージャは更に戦いを眺める。
今度はラヴド軍の戦い方ではない。
戦う姿、戦う表情をよく見ている。

ケフクージャ:「透けている……透けているよぉ! この戦いに勝てたら昇進できる、とか、自分だけは生き残りたい
      とか……見返りを求める醜い心がねぇ!」

ケフクージャの右手に縦の長さが30センチ程の十字架が現れる。

ケフクージャ:「残念だ……実に残念だよ!」

そして、その十字架を上空に放り投げる。
十字架は空中10メートル付近でピタッと静止する。

ケフクージャ:「ボランティアにおいて〝協力〟と共に必要となるもう一つの柱……」

更にケフクージャは次々と追加の十字架を作り出し、それを次々に空中に設置していく。

ケフクージャ:「それは〝無償の愛〟!! 見返りを求めぬ慈悲の心……それなくしてボランティアは語れない!」

ケフクージャは左腕を空に掲げる。
その瞬間に死神達が一斉に飛び上がり、戦場から離脱する。

ケフクージャ:「正義なる者よ、善なる者よ、常に〝協力〟と〝無償の愛〟を忘れるな
      愚かな者よ、悪を貫く者よ、……これが素晴らしき〝ボランティア〟の力だァ!!」

上空に設置された十字架がケフクージャの左腕に反応して光り輝く。
直後、空に浮かぶ無数の十字架から、星のような形の弾が放たれる。
無数の星の弾幕は流星群の如く降り注ぎ、ラヴド軍に襲い掛かっていく。

クロス攻撃ファイア。
砲台を設置してから、攻撃をしなくてはならない面倒な技だが、撃つことさえできればその威力は高い。
この場合ケフクージャは死神と協力することで、無数の砲台を設置する時間を得ることができたのだ。

エルドラージメンバー、十字架型メダロット:ケフクージャ。
彼は、その星形のクロス攻撃から、他の次元では『星屑の十字架』と呼ばれていた。

一瞬にしてラヴド軍を全滅させたケフクージャは呟く。
星がふりそそぎ、小さなクレーターがあちこちにできた地面とそこに横たわるラヴド兵達を見て。

ケフクージャ:「あぁ、素晴らしきかなボランティア……」




―――――――――――――――――――――――――――――――


『第二線、突破されました!』


司令室に通信がはいる。
ブラックメイルは苦い顔をして、低く小さな声で「了解」と答えた。

ブラックメイル:「竜、どう思う? 俺はいっそ全軍を最前線に送り込んじまった方が早い気がするんだぁ~…がッ」

ブラックメイルが悩みながら出した考えに竜はタインの足を踏みつける片手間であっさりと返答する。

竜:「そういう奇襲は嫌いではありませんが、守るべき国ががら空きになることをお忘れなく……」

ブラックメイルは嫌な事を思い出した。
かつて、ラヴド軍がビッグブロックを攻めたとき、その隙にトゥルースに侵入され、本部を爆破された苦い経験だ。それを考慮せずに全軍突撃を提案するあたり、やはり、彼は物事を考えることに向いていない。
こういう事はビーストマスターの方が向いている。
彼は本来考えるよりも先に直観で、理屈などない野生の感性で物事を運ぶことに長けているのだ。

ブラックメイル:(くそッ頭がぐるぐるして考えがまとまんねぇ~…ぞッ。
      大体俺はいつも勘でテキトーに動くからこういうのに向いて……
      …………じゃあ勘で作戦決めてみるか? 俺の直観だとぉ~…)

ブラックメイルは頭を抱えていたが、とうとう考える事をやめた。
そして、直観で話してみる。
何かまずいことがあったら竜が指摘するだろう。
そんな軽い気持ちで言ってみた。

ブラックメイル:「全線を本部に集中させるべきじゃねーか?
       敵を本部まで進めさせるリスクはあるが、こっちの方がいい気がするぅ~…ぞッ」

竜:「大まかには私もそう思っていたところです……もう一手間かけるつもりですが」

ブラックメイル:「細かいことはまかせたぁ~…ぞッ」

タイン:「さり気に適当だな!」

ブラックメイル:「適材適所だ! 作戦は竜に任せたぁ~…ぞッ」

何か開きなおってしまったブラックメイルだったが、彼の場合これくらいの方がいい指示を飛ばせる。
すぐにラヴドに配置された全兵に、本部へ戻るように彼は通達をした。

竜:「……ではタイン出ますよ」

タイン:「お、さり気に俺達の出番か!」

竜:「はい、さっさと行きますよこの戦闘バカ」

いつも通りにタインを適度に罵倒しながら竜は司令室から退室する。
ブラックメイルは彼らの背中に声をかける。

ブラックメイル:「気をつけろぉ~…よッ」

本当は自分も一緒に戦いたかっただろう。
しかし、彼は司令塔として最後までここに残らなければならない。
タインは「おうよぉ!!」と元気よく声を出してさっさと出ていった。
竜は振り返って、こう言ったあと出て行った。

竜:「まぁ、わざわざラヴドに作ってもらった〝仕掛け〟があるのでね……」


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ラヴド本部にすべての戦力を集めたおかげで、ケフクージャ達は問題なく進軍することができていた。
いよいよ、敵の本拠地の門が見えるとこまで来た。

ケフクージャ:「うーん、そろそろお出ましするのではないかな? 敵の全軍が」

流石にここまで敵と一切出会わなくなったので、本部で全軍との激突になることはケフクージャも承知していた。
しかし、一向に敵が現れる気配がない。
そして、なんと敵の本部の門の前までたどり着いてしまった。
不審に思いながらもケフクージャは死神達と共に歩みを進める。

ゴゴゴゴゴ……!!

不意に本部の一番大きなメインゲートが開かれた。
その奥から今までの4,5倍はいるだろう大勢のラヴドの精鋭軍が一斉に飛び出してきた。

ケフクージャ:「やはり全軍突撃か!」

ケフクージャは後方に下がろうとしたが、ふと一つの考えが浮かぶ。
メインゲートはあいたままだ。
このまま本部に侵入してしまえばいいのではないだろうか。
ラヴドのこの作戦の弱点は守りを捨てたが故に、警備が手薄になるという所にあるはずだ。

ケフクージャは隙を見計らってラヴドの本部の中に飛び込んだ。
ほとんどの兵は外に出てしまったから、内部は警備が薄いはず。
そして、突撃命令を受けているラヴド兵士たちはすぐには本部の内部に戻ることはできない。

勝った。
と思いケフクージャはラヴド本部のさらに奥に進もうとする。
その時、

ガシャアアン!!

後方でゲートが閉まる音がした。
まぁ敵に侵入されるリスクを考えればむしろもっと早く閉めるべきだったのだが、しかし何か違和感を感じた。

まるで、ケフクージャが侵入したのを確認してゲートがしまったかのような……。


竜:「面倒な死神とは分断できましたね」

タイン:「さり気に作戦成功ってやつか?」

ケフクージャの右方から竜が、左方からタインが現れる。
そう、彼らはこの部隊の核と思われるケフクージャを倒すため、わざと扉を開けたままにしておくことで彼と死神と分断させたのだ。

ケフクージャ:「やれやれ、罠にかかってしまったようだね、はぁ……そんなことはどうでもいいか」

ケフクージャは溜息をついたが、その態度からは余裕しか感じられなかった。
死神がいなくとも、自分はメダロット2体くらいなら片づけられるといわんばかりに。

そして、挨拶代りのいつものセリフを竜とタインに投げかける。


ケフクージャ:「ところで諸君……、 ボ ラ ン テ ィ ア は 好 き か ね ? 」


それに対して、竜が答えるまでの時間はわずか0.2秒。


竜:「 大 ッ 嫌 い で す ね … 」