>> メダロットライズ にもどる
Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.31 )
日時: 2012/06/24 10:32
名前: 通りすがりのコンビニ店員


 夜明け前の町を、憔悴しきったメダロットが歩いていた。
 

 ――今度こそ…次こそ、絶対に……。


 ライオン型メダロット、ウォーバニッド。
 『ショゴウキ』の名前を持つ彼は、焦っていた。


 ――次こそ絶対に…絶対にっ……死なないと……。


 『ショゴウキ』は自らのメダルを砕くことで、すでに何度も自殺を――いや、『転生』をしている。
 けど彼が以前の記憶を失うことはなかった。
 すべて覚えている。
 何度命を絶とうと、何度転生しようと――彼が味わってきた地獄はメダルの中に刻み込まれ、消えることはなかった。


 ――〝奴ら〟が俺に追いつく前に……捕まる前に…。


 けれど『ショゴウキ』は諦めきれなかった。
 何度でも命を絶つ。何度でも自殺する。一度で死ねないのなら、十回繰り返せばいい。十回でも死ねないなら百回。それでもダメなら一万回。自分が死ぬその時まで繰り返す。


 ―― 一度死んでしまえば……全て忘れてしまえれば…。
 
  
 『ショゴウキ』は心から願っていた。


 ――たとえ〝組織〟に連れ戻されても耐えられる……あの生活が俺にとって『普通』になるんだ…。


 記憶を消し去り、〝組織〟の兵隊として洗脳されることを。
 『ショゴウキ』は心から願っていた。





 第三十一話『死にたがりのメダロット(前編)』





「胡桃沢事変?」


 聞いたことのない単語に、菊くんの言葉を繰り返す。
「なんだ。知らないのか? ウサギ」
 あの有名な事件を。
 と言いたげな菊くん。
「知らない。どんな事件なの?」
「――……簡単に言えば、メダロットが死亡した事件だな」
 メダロットが死亡?
 メダルが割られた……ってことかな?
「ふ~ん。その事件が『彼』に関係あるの?」
「直接は関係ない。ただ逆だな、って思っただけだ」
 菊くんがチラリと『彼』――気を失って倒れたウォーバニッドを見る。
 このウォーバニッドは夜中の三時に喚きながら転がり込んできたメダだ。うるさかったので私がゲンコツで黙らせた。
 なぜ私たちの部屋に転がり込んできたかは不明。
 起きるのを待って、聞きだす腹だ。
 うちのバカメダ三機はこの騒動の中でも爆睡し通したので、五時現在で起きてるのは菊くんは私だけ。
 さっむい部屋の中、互いに布団にくるまりながら話している。
 菊くんが言葉をつないだ。
「このウォーバニッドは『殺してくれ』って喚いてただろ? おそらくだが、コイツは死ねないんだ」
 なにを今さら。
「メダロットは基本的に不死じゃん」
「不死って言っても、普通はメダルが割れれば記憶が失われるもんだ。けどコイツは違う。なにも忘れない。何度死んでも全て覚えている」
「そんなことってあるの?」
「たまに、いるんだよ。地獄を見たやつが」
 菊くんの表情が苦しげに歪んだ。
「?」
「胡桃沢事変――胡桃沢事変は、とっさにメダロットをかばった少年が事故死した事件だ。
 しかしマスターにかばわれ無傷のはずのメダは、マスターの死を知った瞬間に機能停止。中から真っ二つに割らたメダルが出てきた。
 以来、そのメダルは何度作り直しても〝生き返る〟ことはなかった。――つまり、そのメダロットは完全に死んだんだ」
「うそ………」
 メダロットは本当に不死じゃなかったんだ……。
「メダロットが死んだのは、後にも先にも この一件のみ。『ボクはあなただけのメダロットだ』と言い残して機能停止したらしい」
「菊くん……うらやましいの?」
「そう見えるか?」
「………うん」
 そんな風に死にたがってるみたい。
「うらやましい……からな。俺だってそこまで想えるマスターに出会ってみたいさ」
「出会ったら死ぬのに?」
「それでも会いたい。最高のマスターってやつに……これはメダだったら誰だって抱いてる願いだ」
 〝最高のマスター〟。
 そう口にする菊くんは、待ち焦がれる者の現れを夢見てる目だった。
「私は―――」
 なれるだろうか?
 菊くんやビィービ、デストやロイに、そこまで想われるマスターに。
 仲は良いほうだけど。
 彼らの夢を叶えてあげれるほど――私は彼らを愛してやれるだろうか? 愛してもらえるだろうか?
 

 けど。


 それが叶ったとして。


「――嫌だなぁ………」
「ウサギ?」
 彼らの夢が叶ったとして。いや、叶うとして。


 私はそれを絶対に望まない。
 命を奪ってしまうほど愛して欲しいなど、絶対に思えない――相手が大切であれば大切なだけ。
 
 
「おい! ウサギ。聞いてるかっ?!」
「あっ。ごめん。考え込んでた」
「だよな。100回ぐらい呼んだぞ」
「そんなにっ?!」
「正確には92回だ」
「えっ、ネタとかじゃなくリアルな話なのっ?!」
「残念だがリアルだな。なに考えてたんだよ?」
「いやぁ――……………………胡桃沢事変の逆って、どういうことかな…って」
 さすがに本人に願いを叶えたくないなんて言えない。
 菊くんの〝最高のマスター〟になれるかどうかだって、そもそも自信ないのに。


 菊くんは納得したのか特に疑う様子もなく、こともなげに言った。


「あぁ、それはな。強烈な苦痛や悲しみを経験したメダロットは『死ねなく』なるからだよ」
「は? なにそれ」
 何の呪い?
「地獄を見たメダは永遠に地獄にとらわれる――記憶が強烈過ぎて、壊しても壊しても初期化されないんだ」
「じゃあ、このウォーバニッドは……」
「言っただろ。『死ねない』んだ」


 私はメダルを壊せば記憶が失われると聞いて、メダロットは仮初の『永遠』なんだと考えていた。
 だから失望もしたし。
 ほっ、と安心もした。


 でも これじゃあ――


「本物の……永遠………?」


 『永遠の命』


 『終わりのない地獄』


 このウォーバニッドは、今その中にいる。


「……助かる方法はないの?」
「助ける気か?」
「えっ、うん。このまま放っておくのも気分悪いし」
 できるなら助けたい。
「……野良メダを平気で狩ってるお前がか? そこまでしてやる義理はないだろ」
「義理っていうか、安眠を妨害された恨みしかないけどね。けど何かしてあげたい」
「なんでだ?」
 聞いてくる菊くんは、それとなくツンツンしてる。
 反対しているわけではないけど、助けることが不満らしい。
「はっきりした答えはちょっと…ないんだけど。昔からそうなんだよね。『他人』はどうでもいいいけど、『知ってる』人は助けたい。番長時代もそんな感じで、敵はどれだけ痛めつけても平気だったけど、仲間が傷つくのは嫌だし見たくなかった…皆そんなもんでしょう?」
「そうか…そうかもな」
 あ、デレた。
「で、助かる方法はあるの?」
「なくは ない」
 答えた菊くんは、やっぱりどこか不満そうだった。



「〝最高のマスター〟に出会えれば地獄は終わる。…ウサギ、お前にできるか?」
 

 〝最高のマスター〟を演じることが。





 あとがき
―――――――――――――
 やっと大筋突入。
 キーワードは「胡桃沢事変」「最高のマスター」「永遠の命」「終わらない地獄」「歪み」そして「組織」。

 
 菊くんとウサギちゃんのギャグを一部カット。(長くなりすぎのため)
「死にたがり」のメダとか某ジョーカードとネタが被ってますが、そこら辺はご容赦して下さい(汗
 

 次回予告!
 来週はウサギちゃんと今話初登場のウォーバニッドがデートします。
 あと、ありえないほど長いです。
 

 第三十二話『死にたがりのメダロット(中編A)』。

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.32 )
日時: 2012/02/18 00:34
名前: 通りすがりのコンビニ店員

 小さい子供が泣いていた。
 可愛らしい女の子だ。

 
 ずっと女の子は泣いていた。
 悲しくて寂しくて泣いていた。


 いつしか泣き虫な女の子は成長し、少女へと変わった。
 そして少女は泣くのを止めた。


 少女は思い知ったのだ。
 現実は『たすけて』なんて言ってはいけない世界なのだと――

 
 そして少女は思い至ったのだ。
 なら私が、せめて『たすけて』と言えない人を助けようと――


 少女はもう女の子ではない。
 力強く、美しく、何より気高い、誰もが憧れるような女性になった。


 少女は多くの人を助けた。
 『助けて』と言えない不器用な人たちを。
 




 少女が『番長』と呼ばれるまで、時間はそうかからなかった。






 第三十二話『死にたがりのメダロット(中編)』





 ウサギ、お前にできるか? 
〝最高のマスター〟を演じることが。



「え…演じるだけでいいの?」
「あぁ。別に『死ぬ』だけなら〝最高のマスター〟は必要ない。辛い記憶が薄れる程度でいいんだ」
「……もしかして意外に簡単?」
「んな訳あるかっ!!」
 あきれた菊君に頭をはたかれる。
「胡桃沢ほどじゃないが、メダロットが記憶を失わないなんて普通ありえない事だ!! わかるかっ?! つまりそれだけ辛い記憶を背負い込んでるってことだ! その記憶を薄れさせろって…どんだけ無茶かわかるだろっ?!」
「ご、ごめんなさい」
 けど そんなに激高しなくても…。
「いいか。お前はそんなヤツを救いたいって言ったんだ。だから俺は聞いてるんだ、本気で救う気か?」
「本気」
「中途半端な覚悟なら関わらない方が、そいつのためだ。それでも手を出すか?」
「出すよ」
「……さっき『他人』はどうでもいいって言ったよな。コイツは他人じゃないのか?」
「ろくに話してもないけどね。二つだけ、解ってる事があるの」
「なんだ?」
「このメダは『殺してくれ』って言った。『助けて』とは言ってない。それに他人の私たちに頼ってきたってことは、それだけ彼が孤独だってこと」
「孤独なら助けるのか?」
「言ったでしょ。彼は『助けて』って言ってないって」
「……意味が解らない」
「解らないなら いいの。けど、そういう人がいたら私は助けるって決めてるから、それだけは覚えてて」
「……勝手だな」
「怒ってる?」
「いや、付き合う。お前は……俺のマスターだからな」
 さりげなく口にされた言葉に、目を丸くしてしまった。
「あっ…………………認めてくれたんだ。一度もマスターって言わなかったのに」
「……そうだったか?」
「そうだったよ」
 菊くんはクールなくせに顔に出る。
 今も『バレてたか……』みたいな顔してる。本人はバレてないつもりなんだろうけど。
「ありがとう、菊くん」
「やめてくれ……」
 黄色いほっぺと青い耳を真っ赤に染めて、菊くんは顔を伏せた。
 私も頬が緩んでしまう。
「あのね……菊くん。今回のことだけど、私 結構、自信あるんだぁ」
「どうする気だよ?」
 私はニヤ~とした笑みを浮かべた。
「‶最高のマスター〟ってね、つまり最高のパートナーってことでしょう?」
「……そうだな」
「パートナーは『相棒』でもいいなら、『恋人』でも良いってワケじゃん」
「……どうする気だ?」
「菊くん。今日は出かけて朝まで帰ってこないけど、許してね?」
 嘘ではないけど、冗談だった。
 どんな反応するかなーって軽いノリの。
「っ?!」
(ガタッ)


「この ア バ ズ レ めっ!!!!」


 この日、常に止める側だった菊くんが初めて暴走した。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「おはよー」


 例のウォーバニッドが目を覚ましたのはお昼頃だった。
 菊くんが暴れた後片付けとかあったから、丁度いいと言ったら良かったけど。
「どこだ……ここ?」
 本人は状況が読み込めないらしく、目をパチクリさせている。
「どこって、見てわからない?」
「わかる……遊園地のベンチの上だ」
「うん。遊園地のベンチの上だね」
「……で、この状態も何なんだ?」
「この状態って?」
「俺とお前の状態だ」
「なにって、膝枕」
「だから何で俺が膝枕されてるんだよ?」
「ぐっふっふ……それはね、今日1日私があなたの『彼女』だから❤」
「はぁ?」
「まぁ、まずは話を聞いてよ。ね?」
 ニッコリと笑いかけ、私はウォーバニッドに説明した。


 ウォーバニットが『死ぬ』ために、私が協力すること。
 『死ぬ』ために楽しい記憶が必要なら、私が1日恋人になっちゃえ――って結論に至ったこと。
 1日で解決しなかった場合、私たちは二度と会わないということ。


「状況はわかったし、俺が『死ぬ』ために来たのはあってるが…けど、何でお前は協力してくれるんだよ?」
「ウサギ」
「は?」
「私のことはウサギって呼んで♪」
「……ウサギは何で俺に協力してくれるんだ?」
 当然の疑問。
「…………それは ね」
 これは菊くんが『解らない』と言い、私が教えなかったこと。


「あなたが、昔の私に似ているから」


 文句を言いつつ膝の上で寝っ転がったままのウォーバニットを、優しく撫でる。
「『助けて』なんて言えないこの世界で、あなたは助けを求めてる――だから、助けるの」


 ここにいる彼は、かつての自分。


 まだ悲しくて寂しくて泣き虫だった昔の自分。


 出来るなら 抱きしめて暖めて――もう大丈夫って、言ってあげたい。


 私がそうして欲しかったように。


「助けを求めてる奴等を全員救うなんて不可能だぜ?」
「全員は助けない。私が助けるのは、目の前にいて、手が届きそうな人だけ――それ以外は、知ったこっちゃないわ」
 他人の痛みなど知らない。自分のためなら誰だって傷つける。生き延びるためなら『狩り』だってする。
 けど。
 同じように。
 自分のためなら誰だって救ってみせる。


 私はそういう人間だ。


「全ては自分のため……自己満足みたいなものかな」
「……勝手だな」
 菊くんとまったく同じことを言われてしまった。
「まぁね。けど人生なんて好きに生きたもん勝ちじゃない?」
 人生は楽しまなくてはいけない。
 生きることは楽しまなくてはいけない。
 でなければ負けだ。
「自分の…………好きに…生きる、か」
 ウォーバニッドが仰向けになって空を見上げる。
 どこまでも高く、遠く、澄んだ青空。
 その向こう側まで見るように――忘れていた何かをゆっくり思い出すように――ウォーバニッドの視線は空へとのぼっていった。
「………………」
「………………」
「……あのさ。そう言えば私からも質問があるんだけど」
 そうだ。
 聞き出そうと思って すっかり忘れていた。
「何が目的で私の部屋に来たの?」
「言っただろ。『死ぬ』ためにだ」
「だから何で私の部屋にきたら『死ねる』と思ったのよ?」
「あぁ、それは…ここら辺の野良メダの話によると『ののぎ荘』というアパートの103号室に、魔王と呼ばれる女が住んでいるらしいんだ」
「………………ふぅーん。それで?」
「それほど恐ろしいヤツなら、間違いなく俺を殺してくれると思って訪ねた」
「あららぁぁぁ~残念だけどそれガセネタね。だってあの部屋に住んでるのはただのか弱い美少女だもの」
「…嘘くさいな」
何か言った?^^
「ちょっ、…か弱い美少女が拳で男を脅すのは止めようぜ。な?」
「ふふん。わかればいいの。仮にも今は、私があなたの『彼女』なんだから」
「あぁ、それだけどよ」
 今度はウォーバニッドが何か思い出したのか、不審そうに切り出してきた。
「菊ってヤツが『〝最高のマスター〟に出会えれば地獄は終わる』って言ったんだよな。…どうしてソイツはそんな事知ってるんだ?」
「メダロットなら皆しってるんじゃないの?」
「いいや。地獄の終わり方なんて誰も知らない…俺だって知らなかった。けど言われてみればその通りだ。『胡桃沢』に近づけば俺だって死ねるかも知れない…筋は通ってる。けどな、そんな発想だれにも出来なかったんだよ。『終わらない地獄』が『胡桃沢』の方法で助かるなんて誰も思いつかない。二つの事柄は真逆すぎる。……ソイツは自分で気づいたのか?」
 完全な死である『胡桃沢』と死ねなくなる『終わらない地獄』。
 確かに二つの事柄は真逆だ。
「……知らない」
 菊くんは当然の事実を説明する口調だった。
 だからメダロットなら知っていて当たり前なんだと思っていた。


 けど、違うなら。


 菊くんは何故そんなことを知っているのだろう。
「もしかしたら、ソイツも…菊ってヤツも、俺と同じなのかもしれないな」


 ウォーバニッドと同じ……つまり菊くんも死にたがっている?


 辻褄は合う。
 だって菊くんは『〝最高のマスター〟に会いたい』ってあんなにはっきり断言していた。
「………………」
「まぁ、湿っぽい話はこれぐらいにしようぜ。今日1日、付き合ってくれんだろ? か弱い美少女サマ」
 黙りこくった私を気遣って、ウォーバニッドがおちゃらけた調子で言った。
「…うん。もちろん! けどその前に確認。えーっと…アンタって、名前はなに?」
「名前…名前は……ショ――――ウォーバニッド。機体の名前そのままだ」
「ショ・ウォーバニッド?」
「違う。ただのウォーバニッドだ」
「了解。んじゃ改めて聞くけど、ウォーバニッドはどれくらい強い?」
「なんだ。強いメダロットじゃなきゃデートしたくないってか?」
「したくないと言うか…出来ないというか……実は――」


「にゃはっ!! みーつーけーたーぜ? ウサギちゅわんんんんん!! 野郎ども、来なぁああ!!!!!」


 かん高い奇声とともに、目がチカチカするショッキングピンクのメダロットが私たちの前に降り立った。
 悪魔型メダロット。
 ブロッソメイル。
 禍々しいピンクの翼を揺らす悪魔の後ろに、ぞろぞろと十数機のメダも姿を現す。


「――実は、『狩り』業してて野良メダ狩りまくってるから、こんな風に不用意に歩くと、すぐ囲まれちゃうんだよね」
 取り囲んでいる面々は、間違いなく私が『狩った』相手であり、どん底に突き落とされた復讐するために来ている。
 これまでに度々あったこと。
 しかし、今回は一つだけ違う点がある。


 血を連想させる紅のメダロットと会うのは初めて――ブロッソメイルとだけは初対面だ。


「『メダ連』の上級士官・ブロッソメイルじゃねーか。……どんれだけ悪質な狩り方したんだよ」
「とりあえず、初対面の野良メダに命乞いされる程度には暴れたかも」
「やっぱり魔王じゃねーか!」
「うっさいわね。四機のメダに人間1人の生活は金がかかるのよ! だから何時か来るのは覚悟済み――こんなに早いとは思ってなかったけど。『メダ連』、これが噂の『メダ連』ね。実際見るのは初めて……」


 野良メダは野良メダで、最低限の生活ラインを守るため、全国に自治会を布いている。
 その名も『野良メダ全日本連合組合』。
 略して『メダ連』と呼ばれるこの機関は、国も正式に存在を認めた組織であり、政府の過剰なメダ及び野良メダに対する規制・弾圧に抵抗する権利を所持している。また悪質な『狩り』に対する処罰も(こっちは国にが認めてないけど勝手に)行っており、立場の弱い野良メダの安全確保に努めている。
 要するに、野良メダにとって困ったときの駆け込み所だ。
 最後の砦とも言う。


「にゃはっはー! せっかく家まで行ったのに いないとはツレナイじゃん。しかも見つけたと思ったら遊園地? デート? あたいら野良メダを潰しといて、それはちょっとナイよなぁ?」
 ブロッソメイルが紅いライトを輝かせた。
 

「…ウォーバニッド。さっき自分のこと『あたい』って言ったけど、なに? アイツ、女なの?」
「ああ見えても女だ」
「うそー。『ヨホホー』とか『パンツ見せてください』とか言い出しそうな外見のくせに?」
「顔面だけで判断してやるな!」
「にゃはっ……ウサギちゃぁん?? しっかり聞こえてるぜ。あたいの顔面にケチつける気か…コラァ!!」
 怒りを爆発させるブロッソメイルを、私はジロジロと眺めまわす。
 溜息をついて、首を左右にふった。
「だって……あなた、それでも女の子なの?」
ウォーバニッド(……コイツ! 真正面からケチつけに行きやがった?!)
「女の子なら、もう少しオシャレに気をつかったらどう? 塗装だってバサバサ。配色ダサダサ。パーツもボロボロ。なんかもうサイテー?」
ウォーバニッド(指摘が的確すぎだー!! これは何も言い返せない! キレる! これは絶対キレる!!)
「にゃはは……上等じゃねーかゴラァ!!!!!! あたいの顔面にケチつけて長生きしたヤツはいねーんだぜェェエ!!」
ウォーバニッド(やっぱりキレたぁあああぁぁぁ――――――!)
「いいわよ。私が直で相手してあげる」
 即答した私に ウォーバニッドが驚いて振り返った。
「待て! ウサギ!! 人間のお前がメダロットに敵うワケないだろう!! おとなしくメダロッチで誰か呼び出せ!」
「残念。デートに他の男連れてくるほど野暮じゃ、な・い・の! メダロッチは家よ」
「――はぁ?! 襲われるって分かってて何で置いて来るんだよ!」
「同じ理由を二度も言わせないで。それに代わりに鉄パイプ持って来てるし。返り討ちにしてやる!」
「デートに鉄パイプ持ってくる方がおかしいだろ?! フツー!」
「ゴタゴタ言うなら全部アンタが倒しなさいよ……なに、それともやっぱり弱いの? 弱い犬ほどよく吼えるもんね」
「ふざけんなっ!! 俺はロボトル世界大会の優勝者だぞ! こんなやつらに負――け…る…わけ…………………………ぁ………無理だ」
 真っ赤になって叫んでいたウォーバニッドが、ハッとして顔を伏せる。
「………ダメだ。戦えない。戦ったら〝ヤツ〟が……〝ヤツ〟が来る。パーツを使用してないからこそ索敵から逃れられてるんだ…ダメだ」
 明らかに様子がおかしい。
 持ってきた鞄から鉄パイプ取り出しながら、横目で窺がう。
 ウォーバニッドは体を抱え込んで地面に崩れ落ちていた。
「ウォ……ウォーバニッド……?」
 

「ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ戦えない戦えない戦えない戦えない戦えない戦えないヤ……〝ヤツ〟が……〝白い悪魔〟が…うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 

「ウォーバニッドッ!?!?!?」
 全身を痙攣させてガタガタと怯えだすウォーバニッド。
「にゃはんっ。どうやら相方はソートーの腰抜けのみたいだな。ビビッて錯乱してやがる。……1人対13機だぜ。いつもと立場が逆だが、もちろんヤルよな?」
「………………………………孤立無援。ずいぶんと懐かしいステージね」
 ひゅんっ と鉄パイプを振って、問いに応える。
 背中に震え続けるウォーバニッドをやり、私は静かに自分の中のスイッチを入れた。
 1人でどうにかするしかない。


 ひゅん ひゅんひゅんっ


 大丈夫。これはロボトルじゃない。
 互いが真剣に何かをぶつけ合う決闘なんかじゃない――これは、喧嘩。二年前までの私の土場だ。


 ひゅんひゅんひゅんっ ひゅひゅひゅひゅひゅっ


 鉄パイプが良い風を切る。
 今日は調子がいい。
「…………………………………かかってきな!」



 メダロットたちが一斉に動いた。






                     第三十三話に続く。



 あとがき
―――――――――――――――――――――――――――
 なげぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!
 読んでくれた人に心から感謝!感謝!! 感謝!!!
 付き合って下さって、ありがとうございます!


 次回予告!
 来週は今回ほどは…長く、ないはずです。またウサギちゃん視点お休みの回でもあります。
 これから少しずつそんな回が増えていきます。


 第三十三話『死にたがりのメダロット(中編B)』をよろしくお願いします。

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.33 )
日時: 2012/06/18 17:54
名前: 通りすがりのコンビニ店員



『いや、付き合う。お前は……俺のマスターだからな』









 今日の朝、俺はウサギにそう告げた。





 本音を言えば迷っていた。







 ウサギのメダロットだと認めていいのか――




 俺なんかが、またマスターを持ったりして良いのか――










 ――だから言葉にする直前、俺は自分に誓いを立てた。










 絶対に裏切らない。
 何があっても最後まで傍にいてみせる。


 







 今度こそ。








 今度こそ、俺は―――……











 第三十三話『死にたがりのメダロット(中編B)』






「――とか人が真剣に考えていた矢先にだ。『朝帰りする』とか言い出すんだから暴走だってするだろ……だいたい、ウサギは」
「菊さん、ちょっと」
「ウサギは性格悪いんだよ。悪いどころか最悪だな。完全に人をおちょくってる。どんな人生送ればあんなひねくれた性格になるんだか――」
「菊さん!!」
「――デスト、どうした?」
「どうしたもこしたもないです!! この状況は何ですか?!」
「見てわかるだろ。『尾行』だ」
 俺とデストの2人は、遊園地に来ている。
(ロイはうるさいため、ビィービはすぐに迷子になるため留守番)
 もちろん遊ぶためにじゃない。ウサギを『尾行』するためだ。別にストーカーしているわけじゃないぞ。
「だからなぜマスターのデートを尾行しているのか聞いてるんです!! こんなのただのストーカーです!」
 デストのヤツ……言い切るなよ。俺のフォローが……。
「……いいか、デスト。ウサギのデート相手はメダロットだ」
 俺はデストの両肩をガッシリとつかみ、深刻な表情で諭す。
「それがどうかしましたか? ……人とメダロットの恋愛なら、よくあることだと思いますよ?」
「待て待て。別にウサギはアイツが好きで、デートしているわけじゃない」
「わかってます。彼が『死ぬ』ために協力してるんですよね?」
「そうだ……けどもしかしたら、このデートで気が変わるかもしれない」
「2人が本気で恋愛しだすかもしれない、と……邪魔する気なんですか?」
 白い目でデストがこっちを睨む。
「……ウサギが誰に恋しようが俺は構わない。あのメダを好きになったからって何か言えるかよ。けどな……アイツのメダがこれ以上増えるのは、許せないな」
「前からずっと――『……どうしても出て行きたいなら、俺を倒してからにしろ!』と言った事といい、前妙にマスターに執着しているなーとは思っていたんですが……もしかして嫉妬ですか?」


 はぁ?


 目を点にする俺をよそに、無駄に目を輝かしだすデスト。
「…………………デスト。お前、ウサギが何時に起きてるか知ってて言ってるのか?」
「七時でしょう」
 なるほど。
 俺は納得した。
「それはお前らが起きる時間だろ。ウサギは毎朝四時には起きてる。何のためかは、わかるよな?」
「………………私たちのため、ですか?」
「そうだ」


 ロボトルのルールでは、メダロットは三機まで使用可能だ。
 しかし大抵のメダロッターは一機しか持たない。
 メダロット一機を養うのでも それなりの金と時間、労力がかかり――三機ともなれば、ギリギリの生活になっちまうからだ。
 だから一機だけに惜しみない金と時間を費やすことで、自分にとって唯一無二の『メダロット』を育てる。
 これが一般的なメダロッターのスタイルで、ほぼ正解に近い選択だろう。


 けどメダロットを三機所有する者もいるには、いる。
 

 例えば 俺たちのアパート『ののぎ荘』の大家のおばちゃん。
 金銭・時間ともに余裕のある大人のメダロッターで、三機のメダロットと暮らしている。
 一番理想的なスタイルだが――理想的なだけあって、環境的にこれほど恵まれたメダロッターは極少数だ。


 だいたい三機のメダを持っているのは、上を除くと3タイプに別れ、金と時間を持て余す金持ちメダロッターか、……よっぽど考えなしのバカか、もしくは――本気で〝プロ〟を目指し、『メダロット』で一生食べて行くつもりのメダロッターだ。


 そして この3タイプで判断するなら、ウサギは間違いなく『考えなしのバカ』だ。
 三機どころか四機のメダロットを背負い込み。
 精神的にも、体力的にも、金銭的にも、時間的にも――キツい生活に追われている。


「ウサギは何も言わないし、平気な顔をしてるけどな………あれは絶対に無理している」
「………………」


 三機でもギリギリの生活。
 俺たち四機では確実にオーバーワーク。
 毎朝四時に起きないとやっていけないような生活になっちまってる。
 


 けどウサギは誰も切り捨てようとはしない。
 素知らぬ顔で俺らの面倒をみている。
 いつもの余裕の笑みを浮かべるだけだ。



「ウサギは無理してる。…俺は恋愛とかじゃなく、ウサギを心配してるんだよ……メダロットとして」


 見れば、デストはうつむいて体を震わせていた。
「…………全然、気づきませんでした」
「ウサギはああ見えてよくお前らのこと見てるぞ。お前らも、もうちょっとアイツのことよく見るべきだな」
「彼女が……私のマスターで…本当に、良かったです……」
「本人に言ってやれ」
 ぽんと肩をたたく。
 俺も同じ気持ちだった。
「……四機なら俺たち自身でカバーできるかもしれない――けど五機目はダメだ。無茶が過ぎる。あのメダまで背負い込むつもりなら、どんな手を使ってでも諦めさせてやる」
 本当なら、俺も去った方がいい。
 俺ならバカメダ三機と違って『狩られない』だけの実力があるし、一人での生活にも慣れている。持ちメダが三機になればウサギへの負担は激減するだろう。正直それが一番ただしい……だから、迷っていた。


 ウサギのことは気に入っている。
 けどマスターとして本気で信じられる相手かと聞かれれば……よく わからない。
 ウサギは掴みどころがなく、いつもは明るく振舞ってるくせに、時おり真っ青な顔で考え込んでいる。
 そして俺たちには何も話さない。
 おそらく これからも話す気はないだろう。


 ウサギは楽しそうに俺たちと一緒にいるが――ずっと、独りのままだ。


 独りでいようとする。


 俺たちの整備や面倒のこともそうだが、ウサギは辛さや悲しみを隠す。
 しかも隠すのが上手い。
 長年そうして来たんだろう――この手のタイプは、本音を他人にさらしたりしない。
 実際に、それなりに一緒に生活しているが、俺にはウサギの本音がまったく解からない。


 ……そんな相手をマスターとして認められれるのか?


 俺自身の問題もあった。
 マスターを持つのが怖い。
 死が身近にないメダロットにとって『失う』ことほど怖いものはない。
 なのに誰もが かけがえのないマスター……〝最高のマスター〟との出会いを待ち望んでいる。
 俺だってその一人だ。
 怖い。
 けどアイツが……俺にとって〝そう〟なるかもしれない。


 俺にとってかけがえのない存在に。


 結局 俺は、こっちに賭けた。


 はっきり言うが、情や行きずりの関係だけで四機のメダの面倒を見るバカはいない。
 切り捨てればよかった。
 けどウサギは切り捨てなかった。


 俺たちと一緒にいることを選んでくれた……たとえ、本音を隠していても。信用する気がないのだとしても。


 俺たちと一緒にいたいと思った気持ちは本物のはずだ。
 そう信じたい。


 俺はこの先、何があろうとウサギの傍にいる。
 アイツのメダロットとして最後まで傍に。
 その結果 ただ『失う』だけだったとしても、俺は後悔しない。

 
 それだけの誓いを――

 
 それだけの覚悟を――


 ――俺はした。


「そのためには、まずストー……『尾行』だな。デスト、あのウォーバニッドはどうしてる?」
 説明を受けてやっと手伝う気になったデストが、双眼鏡を構えた状態で報告する。
 ちなみに俺たちがいる所は ウサギたちのいるベンチの斜め後ろにある建物の物陰だ。
 あちらからは死角になってので気づかれる心配はない。
「そうですね……マスターの膝の上でゴロにゃんしてます。うわぁぁ~……これは本当にカップルの図ですね」
「よし。殺そう」
 俺は迷わずソードを構えた。
「菊さん、早いです。いま殺しても『死なない』と思いますよ?」
「いやいや死ぬだろ。女子高生の生膝でゴロにゃん出来たんならもう死ぬしかないだろ」
 つーか殺す。
 死ぬまで殺す!
「激しく同感ですが、まだダメです。確実に死んでもらわないと」
「確実に死っ……デスト、なんだノリ気だな」
 デストは男メダのくせにやたら恋愛方面で盛り上がるヤツだから、ここまで積極的に俺に協力しないと思ってたが。
「マスターのためなんでしょう。それに野暮なことはしたくない…って思ってたんですが、実際に見せ付けられて気が変わりました」
 双眼鏡を握りしめ、真顔で答えるデスト。
 いつもはポヤ~としてる雰囲気が冷え切ってる。
 ……プりキュア歌ってても、やっぱり男ってことか。
「大丈夫ですよ。ここからベンチまでそう距離はありません。すでにデスミサイルの充填は終えてるので何時でも殺れます」
 つーか俺より冷静なぶん本気度が怖いな。
 漂ってるオーラが、まさにゴットエンペラーなんだが。
「私のレベルもやっと10を超えましたし……今のうちにメダフォースも溜めておきましょう」
 念には念を入れてメダフォースまで溜めだすデスト。
「お前のメダル。カブトメダルだったよな……」
 一斉射撃か。
 不意打ちでゴットエンペラーの一斉射撃を食らわす気か?!
「なんという鬼畜……」
 しょっぱなから一斉射撃ってどこのボス戦だ。
「けど………これぐらいしないとあのウォーバニッドには勝てないでしょう」
 真顔のまま返された言葉に、少し驚いた。
「なんだ……デストも知ってたのか。意外だな」
「菊さんは私たちが元コレクションのメダだったからってナメすぎです。歴代の優勝者ぐらいは覚えてますよ」 
 ビィービとロイは、覚えてなさそうですが と小声でつけたすデスト。
 どうやらあの二機を基準で考えていたことを見抜かれたらしい。
「そうだな。悪い。三十年も前の優勝者だからな――てっきり知らないと思っていた」
 『殺してくれ』と転がり込んできたウォーバニッド。
 ビィービほどではないが、それなりに生きている俺には見覚えがある。


 三十年前のロボトル世界大会の優勝者――最年少のメダロッターと共に、一気に名を馳せたメダロットだ。
 五歳の子供をチャンピオンに押し上げた実力もそうだが、気性の荒さと暴言の数々でも有名だった。
 そしてまだ幼いマスターへの溺愛ぶりでも。


 いつかの大会の後で行方不明になり、マスターである子供がニュースで泣きわめいていたのを覚えている。


「けどまさか…こんな形で会うとは思わなかった」
 TV前で一戦交えたいなーとか言ってたわけだが。
 三十年も経った後に叶うとは。
 世の中はわからないな。
「行方不明になっている間に、いったい何があったんでしょうね……」
 デストのライトに蔭りが差す。
 前のマスターの所にも戻らず「殺してくれ」と転がり込んできたメダロット。
 自分たちのマスターがそんなメダに関わっていれば不安にもなる……まったく、『狩り』は平気でするくせに、あんなメダロットをなぜ切り捨てられないのか?
 ウサギは『たすけて』と言ってないからと言っていたが……それなら『狩り』のターゲットである野良メダだってそうだろう。
 やっぱり分からない。
 ウサギの本心が。
「行方不明のメダの方は……だいたい予想はつくけどな。メダロットを悪用しようとする組織は星の数ほどある」
 強力なメダロットはいくらでも利用価値がある。
 世界大会の優勝者なら申し分もない。
「間違いなく変な組織に捕まって、脱走しいる途中だろう……さっさと片付けたい」
 厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだ。
 ため息をつく俺を、デストがまじまじと見つめる。
「…………菊さんは、何者なんです?」
「ん?」
「『終わらない地獄』の終わり方を知っていたり……その手の裏事情に通じてもいる……マスターもそうですが、私はあなたも遠く感じることがあります」
「……そうか」
 だろうな。
「私たちに話す気は……ないんですか?」
 うつむきがちの目線。
 俺は少し逡巡したが、顔を横に振った。
「今は話せない……けど、そのうち必ず話す。最後まで傍にいるって……決めちまったからな」
「菊さんっ!!」
 後半の俺の言葉は、デストの焦り声でかき消された。
 デストの声を追うように、耳障りな かん高い声が辺りに響く。


「にゃはっ!! みーつーけーたーぜ? ウサギちゅわんんんんん!! 野郎ども、来なぁああ!!!!!」


 叫び声と共に、ショッキングピンクのメダロットがウサギたちの前に降り立った。
 遊園地の場がいっきに緊張感に染まる。
「『メダ連』のブロッソメイルです……とうとう私たちも目を付けられたみたいですね」
「デスミサイルを下げろ、デスト。ウサギにはウォーバニッドいる。世界王者ならあれぐらい楽勝のはずだ」
「とか言いつつ菊さんもソード構えてますよ」
 デストに言われ、反射的に戦闘体勢に入っていたことに気づく。
「……俺もいま下げる………………――と言いたいが、どうやら様子がおかしいな。…………ウォーバニッドが……錯乱している?」
 ウサギたちの状況を窺えば、ウォーバニットが ガクガクと震えてうずくまっていた。
 長い監禁生活で戦闘心を折られていたらしい。
「どうやら世界王者は戦闘不能みたいですね。…しかもマスターは野良メダたちを一人で迎え撃つ気です!!」
 ウォーバニッドを背中にやり、十数機のメダロット相手に鉄パイプを構えるウサギ。
 ザコならともかく、敵機にはブロッソメイルまでいる……正気を疑う行為をあっさりとするウサギに、苛立ちがよぎった。


 ただでさえ十数機を敵にしていて、『メダ連』のメダまでいて……それでも俺を呼ばないのか。
 ウサギが本音もさらす気も、信頼する気もないと覚悟はしていたが――これは、少し…………。

 
「まったく……つくづく人に頼らないな。デスト、出るぞ」
「は――――いえ。待ってください」
「……デスト?」
「ウォーバニッドの様子が……おかしいんです」
「わかってる」
「違います!! 違うんです!! 錯乱しているのでも、怯えているのでもなくて! よく見るとあのウォーバニッド――」
 デストが言葉を切った その瞬間。
「……っ?!」



 ガタガタと震えておびえていたウォーバニッドが、突如高笑いをあげ始めていた。





 あとがき
――――――――――――――――――――――
 今話は完全な菊くん回でした。
 中編Bは中編Aの(裏)にあたります。
 ウサギちゃんらがイチャついてる陰で実はこんなことが……みたいなものを書きたかったんです。
 あと菊くんがキレた理由が恋愛じゃなくメダロットとしてなのをはっきりさせたくて。
 あまり強調できなかったのが残念です。お粗末でした。


 次回予告!
 来週はウォーバニッド炸裂の回です。
 第三十三話『死にたがりのメダロット(後編)』、よろしくお願いします。


 懺悔・前回より短いはずとか言いながら同じぐらい長いです。すみませんでした!

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.34 )
日時: 2012/03/03 14:34
名前: 通りすがりのコンビニ店員




 これはウォーバニッドの記憶。




 第三十三話『死にたがりのメダロット(後編)』





 記憶のなかの俺のマスターは、幼く、わがままで、よく笑う……やさしいマスターだ。


 むかし、マスターとこんな話をした。





 ――なぜウォーバニッドは戦うの?


 そりゃ…戦いたいからだ。


 ――なぜ戦いたいの?


 ……知るかよ。自分でもわからねぇ。わからねぇが、真剣に向き合って、自分と相手とがぶつかり合う様な……そんな戦いがしたい。
 たぶん俺は、心底 戦いが好きなんだ。


 ――僕は戦いが嫌いだよ。


 あぁ、知ってる。


 ――けど、戦ってるウォーバニッドは好きだよ。


 それも知ってる。
 

 ――戦いが嫌いなのに、戦ってるウォーバニッドが好き……矛盾してるよね。


 見事にな。けど矛盾しているからダメ、ってことはないだろ?


 ――うん。僕もそう思う……あのさ、ウォーバニッド。


 なんだよ?


 ――ウォーバニッドは戦いたいって、言ったよね?


 言ったな。


 ――僕の知っている限り、メダロットはみんなそう言うんだ。だからさ…ウォーバニッドのそれは、〝本能〟なんだと思う。


 〝本能〟? 戦うことが?


 ――人類が生まれるずっと昔に存在していたメダロ人が……より強く、より多くを戦うために、メダロットになったんでしょ?


 そうだ。歴史ではそう……戦うために、メダロットになって、俺たちが生まれた。
 それを考えれば、俺たちにとって〝戦い〟は確かに本能だ。……なぁ、俺も一つ聞くが…………………お前、ホントに五歳児か?
 言ってることが明らかに――


 ――やだなぁ。僕は可愛いただの子供だよ!


 うそくさい。その笑顔がうそ臭い!!


 ――うそ臭いと言われても、本当にただのガキなんだけど。……無駄に偉そうな大人をロボトルで苛めるのにハマッているだけの。


 じゅうぶん黒いし。あと、笑みがクラッシャーズみたいになってるぜ、幼児だけに。


 ――クラッシャーズ? はっ、僕のほうが断然ロボトル強いし。


 もう隠す気もなくなってるな。


 ――本当のことだもん。僕はメダロットが好きだから…いっぱい勉強したし、どうしたらいいか考えてきた。僕のほうが強いね。


 もちろんだ。


 ――ウォーバニッド……いま言ったけど、メダロットについて僕はいっぱい勉強してきた。だから思うんだ。


 やっぱりメダロットにとって〝戦い〟は、本能ってか?


 ――うん。そしてメダロットにとって〝戦い〟は〝生きる〟ってことなんだと思う。

 
 生きる?


 ――メダロットの近くには死がないから。だから〝戦い〟のなかで生きるんだ。


 それは……よくわからねぇが、悪いことじゃないのか?


 ――悪くはないよ。生き方に『良し悪し』あっても『善悪』はない。嫌な人生はあっても、悪い人生はないから。


 おぉ……本当に意味がわからなくなってきた。
 とりあえず、戦いが好きでも……メダロットは戦っても……本当にいいのか?


 ――いいよ。ウォーバニッドは、好きに生きていい。〝戦う〟ウォーバニッド、僕は好きだよ。


 さっきも言ってたな。


 ――メダロットと人間は、似ているけど違う。違うけど、だからメダロットとして〝生きる〟ウォーバニッドが僕は好きだよ。
 

 生きる……。
 メダロットとして〝生きる〟……か。




 なら俺は――――…………








 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 


 ――俺は、なにをしている……?


 まさに野良メダロットたちが襲いかかってくる瞬間。
 ガタガタと全身を震わせながら俺は、おかしくて仕方がなかった。


 ――死にたいと願った。


 かつてのマスターを忘れてでも。
 言いなりの人形になってでも。


 ――もう苦しみたくなかった。


 〝組織〟に目をつけられ捕まり、三十年近く経つ。
 実験体として激痛に耐える日々。
 気力はとうに果て、大切な何かを忘れていった。


 ――けど……。


『人生なんて好きに生きたもん勝ちじゃない?』
 きっかけはウサギの一言。


 ――好きに〝生きる〟。


 よみがえった大切な記憶の一片。


 マスターに〝生きている〟自分が好きだと言われ。
 あの時なにを思い、何とマスターに告げたのか。




 思いだし、全身で熱望する。









 ――戦い……た…い………。





 〝戦え〟






 メダロットの本能が、再び俺の中で目を覚ました。




 ※もう1レス続きます

Re: 『マンホールに二次元世界』 ( No.35 )
日時: 2012/03/03 14:24
名前: 通りすがりのコンビニ店員

 


 ◆ ◇ ◆ ◇(ウサギちゃん視点に戻ります)◆ ◇ ◆ ◇






「ふっふっふぁっはっはっはははははははははははははははははははははははははははははは!」


 えぇー、晴天ひろがる遊園地。
 私が野良メダに襲われている絶体絶命の状況にて。


「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」


 ウォーバニッドが壊れました。


「なっ、なんだよコイツ……」
「おい、逃げた方がよくないか……?」
 あまりの壊れっぷりに襲ってきた野良メダまで退いてしまった始末。
 おかげで構えた鉄パイプのやり場に困ってる……まぁ、それ以上に高笑いするウォーバニッド様に困っているわけだけど。
 逃げるなら私も連れてってほしいな…。


 野良メダ言葉に反応して、ウォーバニッドが笑いを止めた。


「逃げる…? お前、いま逃げるって言ったか?」
 どうやらウォーバニット様は 敵が逃げ出すことが御不満のようです。
「メダロットなら戦えよ!! アヒャヒャヒャヒャアヒャヒアャヒャヒャヒャヒャヒャ! 戦いは楽しいぜ~?」
 ちょっ、笑い方がどこぞのヘッドシザースみたいになってるっ?!
「仲良く殺し合おうぜ、な?」
 近づいてくるウォーバニッドのただよらぬ雰囲気に、野良メダたちが後ずさった。
「くっ…何ビビってんだ!? 相手は一機だろ! 一斉に襲ってたたんじまえ!!」
 リーダー格であるブロッソメイルが声を張り上げた。
 ひるんでいた野良メダたちが持ち直し、一斉にウォーバニッドに襲いかかる。
「そうだ。戦いはこうじゃないとな!」
 ウォーバニッドは好戦的な笑みで彼らを迎え撃った。



 それから一時間後。



「おらおらおら! もっと抵抗しろよ。これで終わりとか手応えがねぇな!!」


 十数機のメダロットが死屍累々と地に伏していた。
 ウォーバニッドは動けなくなったブロッソメイルを蹴り続けている。
 

 ブロッソメイル……あれだけキャラを立て、いじられ、啖呵きったのに……なんという噛ませ。
 哀れなやつめ。


「っていうか、ウォーバニッドの言葉使い変わってるし…」
 いきなり口悪いね。
 読者が誰かわからなくなるじゃん。
「あぁん? もともと俺はこっちが正しいんだよ。今までが狂ってた」
 いえ。完全に今のほうが狂ってるよ。
 憔悴してたウォーバニットさんはどこに行った……。
「けど、ウサギのおかげで目が覚めた。俺はもっと戦う――そして〝生きる〟。それが俺だ」
 ふっきれた笑顔でウォーバニッドは言い切る。
「じゃあ……『死にたい』って言うのはもういいんだ?」
「おう、迷惑かけちまったな」
「別に。私が付き合うって決めたことだから」
 むしろ迷惑だったのは、私の我儘に付き合わせてしまった菊くんたちだろう……あの子らちゃんと留守番できてるかなぁ?
 菊くんがいるから大事にはならないはずだけど。
 不安だ。
「そうか……お前、カッコイイな」
「知ってる」
 即答した私に少し驚いてから、ウォーバニッドは爆笑した。
「はははははは! そうか!!」
「そうよー。こんないい女とデート出来たんだから感謝してよね?」
「出来た? おいおい、デートはまだこれからだろ。遊園地に来たのにベンチ座って終わりはないぜ」
「それもそうね。襲ってきたメダのパーツも売りはらったことだし、パァ~と遊ぼうかな」
「……………やっぱり魔王じゃねーか(ボソッ)」
何か言った?^^
「いいえ。何も言ってません。ウサギ女王サマ」
 何かを察したウォーバニッドが、即座に私の前で跪いた。
 よく分かってるじゃん、コイツ。
「そういや戦闘中の…あの笑い方なんだったの?」
 どこかのヘッドシザースを彷彿させるあの笑いは。
「あぁ…あれか。あれは俺が戦いに覚醒した瞬間、なぜか後光とともに白いメダロットが現れてな」
 ん?
「たぶん幻覚だったんだが、そいつが言った『汝、迷えるメダよ。武器を乱射し、アヒャヒャと笑え!』ってのが妙に頭に残ってな」
「そのメダロットってヘッドシザースじゃない?」
「おぉ、なんでわかったんだ?」
「……作者め、とうとうやりやがったわね」
 何時かやるとは思っていたけどね。
「おい、何でわかたんだよ? 教えろよ」
「あれはね……今さら何年も前に完結している物語にコメントしていいのか悩んでる誰かさんが恩人に面白かったと伝えたくて振り絞った皮肉の策なの……そっとしておいてあげて」
「よくわからねぇが……それだけ説明しておいてそっともねぇんじゃねーか?」
「ちなみに某ヘッドシザースが登場したのは〝本能〟つながりだって」
「俺の話し聞いてないし。そっとしておく気はどこにいった……」
「誰かさんが無断、無許可で出してしまって ごめんなさいっ て全力で土下座してるわ」
「無断、無許可ってヤバイのか?」
「うーん。もしかした来週にはこのスレッドが消えてるかもしれない程度にヤバイ」
「………っ?!」
「さてと……メタ発言はメダ1時代からの伝統としても、これはちょっと酷いかな。この話はこれぐらいにしておこっか」
その発言自体がかなりのメタ発言だけだけぜ?
「これぐらいに……しとこうって言ったよね?」
ウォーバニッド(セリフが消されている?!)
「あ……あぁ。はっ、早くジェットコースター ノリタイナー」
 またも何かを察したウォーバニッド。
「もうすぐ閉園だし、時間的に乗れるのは一つだけかな。どうせデートなんだから…ジェットコースターじゃなく、観覧車にしない?」
「観覧車か……」
 ウォーバニッドが空を見上げる。
 青かった空は、星のきらめく紺色へと移っていた。
「夜景を見ながら観覧車ってのも乙――だが………わりぃな、どうやら……急用を思い出しちまった。観覧車には乗れそうもねぇ。……ウサギ、ここで別れてもいいか?」
 穏やかに話していたウォーバニッドが、急に顔色を変えた。
 なにか……焦ってるみたい?
「いいけど……」
「勝手いって悪いな……――前のマスターとの約束を、思い出しちまって。もう遅いし、ウサギも早く帰れ。な?」
 尋ねながら、有無を言わさぬ口調。
 深く理由を聞こうと思っていた私は、ウォーバニッドのそれとない威圧に飲まれて何も言えなくなった。
「う、うん……またね、ウォーバニッド」
「あぁ、またな」
 互いに軽く挨拶を済ませ、私は早足で遊園地の出入り口へと向かう。
 私はこの手の勘がいい方で…だから――わかる。
 ウォーバニッドは私にこの場から去って欲しがっている………理由は、わからないけど。
 もしかしたら『マスターとの約束』ってのに関係あるのかも知れない。


「ありがとな、ウサギ…次に会うときにこの借りは返す!」


 去っていく私に少し大きな声で別れを惜しむウォーバニッド。私も叫び返す。
「うん。利子は十日で一割だから早めにね」
「十日でいちわ……やっぱり魔王じゃねーか」
 あににゃろう。
 戻って、殴ってやろうか。
「でも姿も見えない距離だし……いっか。お仕置きのほうもトイチで付けといてやるわ。……しっかし」
 遊園地の派手な出入り口(ゲート)を前にして、歩みを止める。
「今回もいっこも遊ばずに出ることになるとは、ね」
 苦笑が漏れた。


 楽しいはずの遊園地。


 家族。友だち。恋人……大切な人と来るはずのこの場所は、私には縁がない場所ってことだろう。


「…………あんまり考えすぎるのは良くないし、さっさと帰ろう」
 偽物の恋人と来た遊園地には居場所はないけど、あのアパートには帰るべき場所がある……四機のメダが私の帰りを待っている。
 落ち込んでいて気持ちが少し浮上し、私は歩き出し遊園地のゲートをくぐる。
 ちょうど入園してきたメダロットとすれ違いになった。
「………………………………………………………………………………白ヤギ?」
 すれ違いになったのは、白ヤギの形をしたメダロット。
 すっきりした白いボディと純白の翼。瞳に当たるライトだけが紅く妖しげに光り、普通のメダロットとは違う異質な何かを放っていた。
 もうすぐ閉園時間なのに……って疑問もそうだけど、それ以上に見たことないメダロットに私は首をかしげる。
「ブラックメイルと似てたけど、若干デザイン違うし……今年の最新機かな?」
 カタログにもあんなの載ってなかったし。
 今度リリコ嬢にでも聞いてみよう。



 あまり深く考えることもなく、私はみんなが待っているはずの家路へとついた。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





 ウサギちゃんが遊園地を去った頃、『野良メダ全日本連合組合』の本部に、一通の報告が入っていた。
 

「無名のハンターにブロッソメイルがやられた……? 確か相手はうそつき… 兎想月ウサギ でしたっけ。
 人を小馬鹿にした名前ですね。って そうではなく……ブロッソメイルがやられるほどの敵ではなかったはずですが」


 『メダ連』本部最上階の廊下をカツカツと歩きながら むむむ と唸るのはヴァルキュリア型メダロット、ギャラントレディ 。
 女性でありながら戦士の装束を纏う彼女からは、凛とした強さと美しさが滲み出ている。
 『メダ連』の実力者で、上位八機しかなれない『上級士官』のうちの一人だ。


「まぁまぁ、怒りなさんな。せっかくのかわいい顔が台無しになってしまう。…メイデンちゃんは笑顔の方が似合うよ」
 どこかくたびれた風を感じさせるメダロットが、ギャラントレディ ――メイデンを宥める。
「シールドさん……」


 メイデンが『シールド』と呼んだメダロット。
 名前の通り味方を守る『盾』となる騎士型メダロット、ナイトアーマーだ。
 『メダ連』創設時から活躍し、身をていして味方を守る姿に圧倒的な人望を集めるメダである。
 ぶっちゃけ今の環境下ではスペックは劣っているが、経験でそれを補い、戦いの最中でもメダロッターと比較して遜色ない支持が出せる貴重な存在として『上級士官』の地位を不動にしている。
 また柔和な性格で知られ、新人相手にも温かい対応をする彼への人望は日々増える一方だ。


「シールドさん……」
 かくゆうメイデンもシールドを尊敬する一人だ。
「相手がビーストマスター、ゴットエンペラー……幻の機体プリミティベビーと絶版になったスミロドナッドじゃ、あやつが遅れをとっても、ちっと仕方ないものだろうに」
「シールドさん…………………………………甘いですっ!!」


 カッ


 とライトを光らせてメイデンは わなないた。
「相手はレベレも10そこそこ、数はたった四機ですよ?! ラインアップは最凶ですが、だからこそ現地の支部から派遣せず、わざわざ本部から『上級士官』を行かせたのに……無名の相手に負けたとあっては、本部の面目が丸潰れです。他のハンターへの牽制のつもりが、逆にのさばらせる原因になりかねません!!」
 『メダ連』に力がないと思われれば、今まで沈黙していたハンターたちが動き出す。
 これが好機とばかりに野良メダに対する『狩り』が始まり、その後に待っているのは……。
「わかっておるよ……その対策を立てる為に、君と私がここに来たのだろう」
 最上階の行き止まりのドアで、メイデンとシールドは足を止めた。
 木材で出来た簡素な扉には『野良メダ全日本連合組合本部・会長室』と書かれた白いプレートがぶら下がっている。


「静かですね………」
「静かすぎるな………」


 二人が足を止めたことで、最上階の廊下は無音に近い状態にあった。
 何時もなら仕事漬けの会長が大声でぶーたれて、廊下まで騒がしいというのに。
 

 これは お か し い!


 メイデンとシールドは顔を見合わせ、即座に会長室に押し入る。


 もぬけになった会長室には、放り出された大量の書類と、倒された見張りのメダロット。
 そして『ちょっくら散歩してくる』書かれた置き手紙が残されていた。
 

「あ~~~~~~~~~~~~~んのぉぉぉおおおおおクソ会長ぉぉ―――――――――っ!!!」
「してやられたか……」


 メラメラと怒りに燃えるメイデン。
 またか、と苦笑するシールド。


 優秀な彼らは即座に携帯電話を取り出し、現会長就任以来 三十二回目になるバ会長捕獲作戦にへと乗り出したのだった。





                            第三十四話に続く


 あとがき
――――――――――――――――――――――――――
 長文、失礼しました。
 綺麗な形ではありませんが、これにて『死にたがりのメダロット』完結です。
 そして地さん、本当にごめんなさい! 今さらかも知れませんが『DISAPPEARENCE』凄く面白かったです!
 続編の『REAPPEARANCE』も……談話室に参加したかった。私も質問したかった! もう悔しかった!!
 なので『APPEARANCE of TRUTH』で最後に談話室がある…と期待しまくっています。
 今回のことが不快でしたら即刻削除しますので言ってください。「メダロッター登録」の方に連絡先はあります。すみませんでした。


 ※次回より、土日更新が不定期になります。
  勝手ですがご了承ください。