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Re: メモリアルリミット ~Limit of memories~ ( No.34 )
日時: 2012/09/13 20:32
名前: メダフィーミング・KR

◇~第33章 Second anniversary(1/2)~


 今日から三月に入る。世間は卒業シーズンを迎えているようで、テレビのニュースでは卒業式の映像が流されるようになっていたし、音楽番組では卒業ソングが上位を占めるようになっていたし、スーパーのチラシはスーツのセールとともに門出を祝う宣伝文句が目立つようになっていた。
 もちろん卒業生を送り出す学校だけでなく、多くの企業も年度末に向けた準備や決算に追われ多忙な時期であろうことは想像に難くない。
 俺だって高校を卒業してから明日で一年になるわけで、在りし日の郷愁に浸るのも悪くはないが、今日は俺にとって割と重要な日なのだ。
 なぜなら今日は望と正式に交際を始めて二周年にあたる日だからだ。去年の一周年は望に指摘されるまで気が付かないという大失態――というより俺はバレンタインの方が印象が深くてこっちは頭になかった――を演じてしまい、うっかりでは済まされないマネをしでかしてしまっている。
 そんな教訓があったおかげで、ということを理由にしたくはないのだが、のんびりした春休みの折り返し地点となる今年の記念日はしっかりと記憶に刻み込んであったので、事前準備も抜かりない。ガソリンを満タンにして洗車もしたし、ついでに新しい服も買い足しておいたくらいだ。
 まぁなんだ、今日は俺の運転で望と横浜に行くことになっている。
 大晦日の夜と同じ場所で同じように待っていると、約束の午前十時の五分前に望が現れた。あの夜と違うのは時間帯と望の格好くらいか。
 今日の望は白いスプリングコート、緑とグレーのチェックスカート、そしてセミロングの黒髪の天辺には桃色のカチューシャが乗っかっている。
 まぁなんだ、いつも可愛いけど今日は一段といい。俺がそうコメントすると、
「えへへ。せっかくの記念日だから、ちょっと見栄張っちゃった」
 望はくりくりした目を泳がせつつも笑顔で返してくれた。こんな時間が永遠に続いて欲しい。


「それにしてもこの間の祝賀会、びっくりしたよね」
 出発してからすぐに望が話を振ってきた。確かにな。九条さんの豪邸には舌を巻いたぜ。
「それもあるけど、九条さんのサプライズ企画だよ」
 左手薬指の指輪に触れながら――きっと無意識だろう――望は伏し目がちにそう言った。
 そっちか。いや、まぁ俺だって驚いたと言えばもちろん驚いたんだが……。
 今回の祝賀会がただ単に今年度の学業修了を祝うためのものではないんじゃないかってのは薄々感じてたんだよな。
 九条さんのリムジンに乗り込んですぐ、司馬が目敏く望の左手薬指に目を向けたのに何も言わなかった時からそんな予感はしてた。
 あの夜に聞いた言葉通り、俺の知る限り片時も指輪を手放したことがない望も望だけど、九条さんと司馬は秘密裏に結託していたに違いない。
 彼女のサプライズ企画に本気で驚いていたのは、望と五月&五十嵐コンビくらいじゃないかと思うね。
 ぶっちゃけよう。あの後、午後のメインイベントと題して突如九条さんは、俺が望に指輪を贈ったことを皆の前で暴露してしまったのである。
 おかげでこっちは冷やかしまくられる羽目になった。
「深也が九条さんに相談してたっていうのは驚いたけど、私はすごく嬉しかったよ?」
 シートベルトを弄びながら、望は楽しそうに祝賀会を振り返った。
 まぁいつものことだが、望が喜んでくれるなら俺は他に望むべきことなど何一つない。そりゃ喜んでもらえて良かったよ。
 その後、料金所を抜けて経験の少ない高速道路に入ると、二人して押し黙ることになった。
 前に親父さんより運転が上手いなんて誉めてくれたけど、俺の運転での高速は初めてだからやっぱり望も緊張してるのかもしれない。
 そう言う俺もちょっとだけ手汗を掻いてるんだけどさ。
 俺はサイドミラーで後方を確認してから、アクセルを踏み込んで車線を変えた――