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Re: メモリアルリミット ~Limit of memories~ ( No.31 )
日時: 2012/08/31 23:31
名前: メダフィーミング・KR

◇~第30章 Lovers' quarrel~


 春休みに入ってから一週間が経過し、季節は極寒真っ盛りの二月初旬である。
 気温は連日のように一桁台が続いており、現在大学受験という名の戦火に放り込まれている後輩たちに心底シンパシーを感じつつも、俺は今日も昼頃になってのそのそとベッドから這い上がり、朝飯とも昼飯ともつかぬブランチ代わりのトーストと目玉焼きを交互に口に運んでいる。
 いや、全く以って大学生ほど楽なものはないと思う。去年の今頃は地獄絵図だった。今の大学に受かるまでは全戦全敗八方塞だったからな。
 ミズーリ号で降伏文書に調印した重光葵はこんな気分だったんじゃないかね。最後の最後に受かってくれてマジで助かった。そうでなければ今頃、望たちの大学生活を尻目に、一人孤独に後輩たちともう一度受験生をしなければならず、こんな呑気な生活とは無縁だっただろう。
 これから大学受験に挑む後輩諸君。悪いことは言わん。マジで勉強しといた方がいいぞ。
 ま、俺が言ったところで説得力なんか皆無だろうけどな。大学の長期休暇は何をすりゃ良いのか分からないくらい時間があるからな。司馬みたいに真面目な奴だったら有意義な時間を過ごせると思うぜ。俺? 俺は親にバイトでもしろとせっつかれてはいるが、まぁそう慌てることもないさ。
 なんたって、休みは始まったばかりなんだからな。


 食事を終えて手をはらい、自室に戻るとちょうど携帯が着信を告げていた。慌てて手に取ってディスプレイの表示を確かめると、五十嵐からだった。
 何だ、別に慌てることもなかった。
「もしもーし」
『おう、夢原。久しぶりだな! なんだ、間の抜けた声出して。寝起きじゃないよな?』
 まぁ起きたのはさっきだが。てか声がでかい。俺の安穏たる休息の邪魔をしてくれるな。
『相変わらずつれないこと言うねぇ。そんなんじゃ望ちゃんに愛想尽かされるぞ』
 うっせぇ。用がないなら電話切るぞ。
『あぁっと! 悪い悪い、だから待て。実はお前に重大な相談があって連絡したんだ』
 五十嵐はそう言って、急に声を落として真面目な声を出した。
 重大な相談? それなら俺より司馬の方が的確なアドバイスをくれると思うぞ。
『いいや、お前が適任だ。お前にしか話せないことなんだ』
 ふむ。まぁそこまで言うなら聞いてやらんこともない。とりあえず言ってみろよ。
『どうしよっかなぁ。そんなに聞きたいなら話してやってもいいけど?』
 何だこいつ。やっぱ電話切るか。
『嘘、嘘だって! 実はさ、佳織がここんとこ全然連絡くれなくて。最後に会ったのも一ヶ月前だし』
 ほう。それで?
『ほら、あいつ薬学部だし忙しいのかなって思ってたんだけど、もう春休みだろ? おかしいだろ?』
 まぁもう春休みには入ってるよな。てか本人に直接聞けば良くないか?
『メールも電話も全然くれないんだよ。原因も分かんないし、もう俺参っちゃってさぁ……』
 それこそ愛想尽かされたんじゃねーの。思い当たることはないのか。
『全然ないんだって。だからこうやってお前に相談してるんじゃないか』
 最後に会った日はどうなんだ。何を喋ったんだ。よく思い出してみろよ。
『あの日は確か……サークルの飲み会に行った翌日だったから、その時のことを話して……あっ』
 何だ。やっぱ思い当たることがあったのか。
『そういえば、あの時は同じサークルの女の子全員に奢ってあげたんだ。酒が入るとつい気前が良くなっちゃうんだよなぁ、俺。だけどさすがに全員分奢ったら懐がきつくってさぁ……』
 まさかとは思うが、五月に奢る金がなかったとかいうオチじゃないだろうな。
『そのまさかでして、その日の食事代は佳織に奢ってもらったんだけど、それが原因……かな?』
 呆れてものも言えんな。五月じゃなくても怒るだろ、そりゃ。
『マジかぁ。なぁ、どうすればいいかな? 俺は』
 さっさと誠心誠意謝った方がいいんじゃないか。パーティーまでには仲直りしとけよ。
『あぁ、すぐそうするわ。相談に乗ってくれてさんきゅーな。じゃ、またパーティーで会おうぜ』
 おう。じゃあな。
 俺は電話を切って、携帯をベッドに放り出した。
 はぁ。ったく、世話が焼けるな。痴話喧嘩なら自分たちで解決してくれっての。
 しかしまぁ――よく二人が口論してた高校時代のことを思い出して、ちょっと懐かしくなったよ。
 そういや、俺と望は本気で喧嘩したことないな。口喧嘩だってほとんどした記憶がない――